はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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フフフ、息子よ。Ⅶ組と再会しよう③

「お見苦しいところを見せて申し訳ありませんでした」

 

 再会の衝撃から立ち直ったクレアの案内により、リィン達はルーレにあるバーの一室に案内されていた。

 裏口から入店すれば、店内ではなくその奥に仮拠点を設けているようで、リィン達を連れてきたクレアに驚きこそあれど何も言わずに奥へと通してくれた。

 

 クレアの身分を思えば民間人のリィンをその場で帰すのが最善。

 けれどこの民間人、騎神やら何やらで色々な意味でその枠を大きく超えている。むしろ民間人にカテゴリするのは民間人に失礼である。

 七月に彼と同行した経験がきちんと事情を説明しないと勝手に動いて困ったことになる、と告げていたのだ。

 

 アッシュは周囲の酒に興味があるようだったが、リィンが目を光らせることで舌打ちと引き換えに大人しくしている。

 ロジーヌはシスター服、アルティナは年齢制限とは言わないが見た目は日曜学校に通っているような少女のため、目立たぬよう裏口から入れたのは僥倖だ。

 お互いに自己紹介をして、謝罪から入ったクレアを見やりアリサはリィンへ目を向ける。

 

「リィン、貴方何したのよ」

「何もしてないぞ?」

「まあまあ。世間ではリィンさんはオズボーン宰相を守って死亡したとされていますからね。実際、映像も流れたでしょうし……そんな人が突然現れたら、軍人だとしても混乱するのも仕方ないですよ」

 

 ロジーヌはやんわりとクレアが混乱した理由をしっかり客観的に代弁する。

 リィンとしては出会い頭で泣かれたので、そのことを思い至っても何か行動することは出来なかった。

 結果的にそれが幸いだったのは運が良かった。

 

「ん、確かにそうね……普通心臓撃たれたら死ぬし、蘇るなんて思わないわ」

「アンタ、割とまともだと思ってたけど実は頭おかしいのか?」

「失礼ね! おかしいのはリィンよ!」

「その発言が失礼じゃないと思ってるのが失礼だよ」

 

 少なからず影響を受けていることは確かだが、同じにされてはたまらないとアッシュに怒鳴るアリサ。

 話が進まない、とげんなりするリィンに苦笑するクレア。

 では改めて、とリィンは彼女に尋ねる。

 

「ではこの件は無事再会出来て嬉しかった、ってことで終わりにして……どうしてクレアさんはルーレに? ミリアムも居るようですが」

「……ノルディア領邦軍がノルドから撤退したという情報を入手したからです。その調査の一環、といったところでしょうか。

 あの場を見張っていたのは、以前北の猟兵がそこから流れてきた経緯がありまして。警戒網を広げた先でリィン君達を発見した、というのが事の経緯です。ミリアムちゃんが戻るまで、何もしないというのも何なので」

 

 なるほど、と頷くリィン。

 ノルドの戦いが終わってからそう時間が経っていないはずだが、導力通信が復活したことで戦況はリアルタイムで伝わっているようだ。

 

「そういうリィン君達はどうしてここに?」

「黒竜関にフィーが捕まっているという情報を得まして。だから助けに来たんです」

「……貴方はいつも他人のために動いているのですね」

 

 クレアの視線の先にはロジーヌ。

 ロジーヌは七月のことを思い返しているのか、やや申し訳なさそうに、でも照れくさそうに微笑を浮かべながら頬をかく。

 自分のためですよ、と返すリィンにアテはあるのかとクレアは聞く。

 もしあの時と同じように無計画であるのなら、ミリアムに連絡くらいは出来るかもしれないと考えたのだ。

 その問いにリィンはアリサを見やり、彼女は頷いた。

 

「私の実家のツテを借りようと思います。母は良くも悪くも顔が広いですからね。勝ち取るための交渉はこれからですけど」

「ラインフォルトとなれば、それこそ無視出来ない勢力ですからね。納品に紛れるなりして、内側に入ってしまえばリィン君なら牢屋に侵入など簡単でしょう」

 

 リィンが鬼の力を失っていることを知らないクレアはそう評する。

 当時の技能、特に実体を持つ分け身などがあれば、アリサに頼ることなく黒竜関へ突貫していた可能性もある。

 確かに鬼の力はおろか騎神すら弱体化しているが、数々の死闘をくぐり抜けたリィンもあれから素の実力は上がっている。

 その上で問題ない、とリィンは笑った。

 

 その横では、怪訝な目でアリサを見ているアッシュの姿。

 どうかしたの、と目で訴えればアッシュはあー、と口を濁しながらも答える。

 

「アンタ、ほんとにラインフォルトなんだな」

「今まで何だと思ってたのよ」

「自称親族」

「あー、お父様が亡く……行方不明になった後、そういうのあったって聞いてるわ。勿論、その全員に報復したそうだけど」

 

 夫を失くした直後ということもあり、経済制裁とばかりの怒りだったとシャロンから聞いていたアリサだった。

 怒ることなく流すアリサに肩透かしを食らったアッシュはそのまま押し黙る。

 以前ならともかく、士官学院に入学して様々な経験を経たアリサもまた成長しているのである。

 

「クレアさんの邪魔をするつもりはありません。ただ、叶うなら俺の生存報告をと……オズボーン宰相へお伝えしていただければ」

「はい、必ず」

 

 力強く断言するクレア。

 オズボーンがリィンのことを気にしていたのは察しているので、生存となれば張り詰めた緊張を少しは和らげる良い報告になるだろうと信じて。

 

「本当はミリアムにも直接会って無事を伝えたいのですが……」

「ごめんなさい、私もあの子も任務中なので。多分ARCUSでの連絡も、私達以外の回線では取ることもないと思います。でも生存は伝えるから、機会があれば貴方達を訪ねるよう伝えておきますね」

「こちらこそ、お邪魔して申し訳ありません」

「ふふ、随分聞き分けが良くなりましたね?」

「クレアさんにしこたま怒られましたからね」

 

 互いに笑い合うリィンとクレア。

 七月の特別実習以前ですでに知り合っていたと思ったが、予想以上に親しいのねと毎度のリィンの交友関係の広さに呆れる。

 そしてロジーヌは、二人の出会いが己に関係あるため何か言おうにも言葉にならず口の中にしまい込んだ。

 

 そんな近況報告が終わり、クレアは裏口から去っていく。

 会計は済ませているので、追加注文がなければミラを払う必要はないとのことだ。

 とりあえずドリンクを飲み終えたらラインフォルト社へ行こう、ということが決まった。

 そしてコップに注がれたソフトドリンクをストローで飲んでいたアルティナが、クレアが去っていった方向を見ながら言う。

 

「リィンさん」

「?」

「殿下達のことは告げなくて良かったのでしょうか?」

「……言ったらエリンのこともバレそうだしな。俺の暫定目的はⅦ組との合流だけど、殿下達がセントアークで行動方針を変える可能性だってある」

「その結果、貴族連合に付くと?」

「それは流石にないと思うけど……正規軍にとってあまり喜ばしいものじゃない行動の可能性だってあるしな」

 

 思いつくのは、《皇族派》として第三勢力を率いて介入することだろう。

 それが貴族連合に向けられるならともかく、下手に貴き血筋の方々が自発的に動くとなれば気を使うのは正規軍のほうだ。

 無論、海千山千のオズボーンならばあしらい方も心得ているかもしれない。

 むしろ旗頭に据えて大義名分を得て、ここぞとばかりに貴族連合を追い詰めることだろう。

 それは帝国に反旗を翻した彼らへの制裁ならば構わないが、そうなると若いアルノール姉弟の意志が飲み込まれてしまう。

 つまり、オズボーンによる傀儡政権(かいらいせいけん)の誕生である。

 

(……黒の史書による予言が提示されている以上、それに反した行動は父さんに潰される可能性が高い。だとしても、正規軍に付くのは父さんの思い通り……黒の史書通りにしかならない。

 この内戦に関しては示唆されてないから解釈……行動の余地は多いだろうから、最後の予言を覆す準備期間でもある)

 

 セドリックやアルフィンの生存報告は、すでにセントアークはハイアームズ家に伝わっているはずだ。

 それがどういう結果をもたらずかわからないが、少なくとも、リィンだけで考えることではない。

 今は、友との再会を優先すべきだと意識を切り替える。

 そうしてクレアからのおごりのドリンクを飲み終え、裏口から店を出たリィン達に予期せぬ出会いが待ち構えていた。

 

「おん? なんやボン達やないか」

 

 ラインフォルト社へ向かう途中、振り返った先に居たのは鳥の刺繍が刻まれた黒いジャケットを着こなす男が二人。

 糸目を見開き気さくに話しかけてくる彼の名は、ゼノ。

 もう一人の屈強な体格を持った色黒の男、レオニダス。

 リィン達が助けようとしているフィーがかつて所属していた猟兵団、西風の旅団の連隊長である。

 

「貴方達は……!?」

 

 五月の記憶が脳裏によぎったのか、アリサは即座に導力弓を構えようとする。

 だが咄嗟にリィンが手を止めることで、猟兵相手に武器を向けることは避けられた。

 ひゅう、と口笛を吹くゼノ。

 わずか半年の間に、ただの学生でしかなかったアリサの反応(せいちょう)に感心したのである。

 

「ドライケルス広場の出来事は我々も承知している。貴様もまた、『同じ』になったのだな」

「同じ……?」

「事情、話してへんのか? まあ、そう簡単に言えることでもないしな」

 

 アリサのつぶやきに、ゼノが神妙な面持ちで首を振る。

 何かがズレているような気がするが、そこにアッシュが声を上げる。

 

「なんだこいつらは?」

「猟兵さ。少し前に解散した、ゼムリア大陸における最高峰の猟兵団の一つ、西風……その連隊長達だよ。今は《貴族派》……いや、貴族連合に雇われている」

 

 アッシュのつぶやきに、リィンが答える。

 ラクウェルという都市の性質上、そういった情報も集まるのだろう。アッシュは目を見開いてゼノとレオニダスを見やる。

 

「へえ、団が解散したのに休む間もなく就職先を見つけるなんて働きもんだな。さぞかしミラを稼いでるんなら、あやかりたいもんだぜ」

 

 歴戦の猟兵を前に物怖じすることなく、アッシュは軽口を叩く。

 ラクウェルの生まれということもあるが、最近のエリンでの揉まれっぷりで胆力がさらに増したようだ。

 そんなアッシュに、レオニダスがサングラス越しの眼で観察する。

 

「ほう。我らの名を聞いても怯むことなくそう言うか」

「こちとら、物怖じするってことを忘れちまってなあ」

「アッシュ」

「わーってるよ、シュバルツァー。こっちから手を出す気はねえ」

「ハッ、手を出されてもなんとかするって顔に書いてるなあ。舐められたら終わり、みたいな性格嫌いやでないで」

 

 三下ムーブみたいやけどな、とくつくつ笑うゼノに、アッシュを見定めるレオニダスも一見すれば隙だらけに見える。

 侮っているわけではないが、仮に攻撃されても問題ないと感じているのだろう。

 それは、事実である。

 数の上では五対二だが、その実力と連携の差はARCUSでも埋まることはない。

 その理屈が通用するならば、遠隔操作といえ騎神まで導入した五月の特別実習での戦いはエマ達が勝っていたはずなのだから。

 

(でも、なんで西風がここに……フィーの件か? だとしても、ブリオニア島でのやり取りを思い返せば俺達と会話している暇なんかあれば、すぐにフィーを助けに行くはず……)

 

 もしフィーのことを知らないのなら、これはある意味チャンスかもしれない。

 二人にとっての家族であるフィーが捕まっているのなら、たとえ同じ勢力に属しているとしても何かしら手助けをしてくれる可能性がある。

 そう思いフィーのことを口にしようとしたリィンだったが、それを察したアルティナに袖を引かれる。

 何やら話があるように感じたリィンは、アルティナの口に耳を寄せた。

 

(どうした?) 

(あまり藪をつついて蛇を出すのはやめたほうがいいと思います。賭けになる可能性のほうが高いですから)

(賭け?)

(フィー・クラウゼルのことを知っていて、放置しているかもしれないということです。一流の猟兵ならば、貴族連合がフィー・クラウゼルを捕まえている、という雇い主の意向に反することはしない可能性のほうが高いですから。

 数日といえ、リィンさんもルトガー・クラウゼルの師事を受けたのですし、ある程度察せるのではないですか?)

 

 同じ雇われる者としての共感か、アルティナから提示されたそれに、リィンは顔を歪める。

 家族であるなら、大事な存在であるなら何を振り切っても助け出すべきだろうという考えが根底にあるからだ。

 が、そもそもルトガー達西風の旅団はフィーに事情を言わずに置いていった過去がある。

 彼らの理屈で動いているのは間違いないが、それで納得するかどうかはフィーのあの涙を思い出せば絶対に身勝手なものだ。

 

(最後には納得してたけど、フィーは泣いてたんだぞ)

 

 そう考えると腹が立つのはリィンである。

 フィーのことを考えれば目立つなど言語道断なのだが、一度思ってしまえば視線に剣呑さが混ざるのを抑えられない。

 リィンの変化に目ざとく気づいたゼノが、サングラス越しの糸目をさらに細めた。

 

「なんや自分。俺らがボン達を捕縛するとでも考えてるんか?」

「確かにノルドでの一件は聞いている。灰の騎神の変化もな。()()()がいたく気にしている様子だったが、まだ捕縛の要請は受けていない。故に安心するがいい」

「……そういうの、喋っちゃっていいの?」

「仕事でなければプライベートやもん。俺らが何したって文句言われる筋合いあらへんわ」

「逆に言えばヴァリマールないしリィンさんの捕縛命令があれば、その限りでもない、と」

「悪いが、猟兵とはそういうものだ。幼き者よ」

 

 二人に戦闘の意志はない。

 アッシュを嗜めたのはリィンだと言うのに、逆に自分から喧嘩を売りたくなってしまう。

 リィンの中に広がる危うい均衡を正したのは、大事な友だった。

 

「――リィンさん」

 

 柔らかな感触が手を包み込む。

 今はどうか、と真っ直ぐなロジーヌの瞳は物語る。

 リィンから発する熱がロジーヌの手を通して発散されていく錯覚。

 瞳を閉じて、呼気を整える。

 まぶたを開けたリィンの目に、怒りはもう宿っていなかった。

 が、そんな二人の雰囲気を目ざとく発見したアッシュが茶々を入れる。

 

「なんだよシュバルツァー。一触即発だって言うのにイチャコラしやがって。雰囲気に反したデカさが男の正義ってやつか?」

「次にロジーヌにそういうこと言ったらお前の奥歯が欠けることになる」

「何の脅しだ!」

「歯は基本的に二十八本あると聞くし、一本くらい欠けてもいいだろ?」

「よくねえよ!」

「なあに、ただなんか食べる時に微妙に詰まる感じが気になるくらいだ」

「嫌がらせか!」

 

 ちなみに親知らずを含めれば人間の歯は三十二本だが、それが生えない人もいるので少なく言ったリィンだった。

 

「骨のほうがいいか? 骨は歯よりもっと多いし」

「痛みの割合も含めて、そちらのほうが重傷かと思うのですが」

「アッシュが悪かったといえ、年下を脅すのはやめなさいっての」

「私は気にしてませんから……」

 

 気恥ずかしさを覚えているのか、少し照れ気味のロジーヌから手を離し、アッシュの口元に向けて人差し指と中指を立てる。

 距離を置くアッシュにアリサが割って入り、冗談だよとリィンも手を収めた。

 絶対冗談じゃねぇな、とアッシュは思い、ラクウェル流の会話はリィンの前では少し控えておくかと判断した瞬間だった。

 そのやり取りを見て、ゼノが笑い声を上げる。

 

「ま、やり合う理由はすぐに出来るかもしれへんが……少なくとも()()はせえへん。何しに来たか知らんが、気張りや」

 

 そう言ってこの場から去ろうとするゼノとレオニダス。

 リィンはせめて、オズボーンに雇われているというルトガーの件について言及しようとしたが、それを遮るようにARCUSの通信音が響く。

 はっとそこに気を取られたのは一瞬、目を向け直せば二人の姿は遠く離れた背中しか見えなかった。

 

「……もしもし。こちらリィン・シュバルツァー」

 

 やや納得がいかない気持ちもあるが、今はARCUSの通話に耳を傾ける。

 そんなリィンの鼓膜を、元気な少女の叫びが貫いた。

 

「繋がった!? それにリィン君!? ほんとにリィン君!?」

 

 きーん、と耳鳴りを生まれて一瞬意識が飛ぶ。

 しかしその声の持ち主に、リィンは聞き覚えがあった。

 

「ミント?」

「うん! 良かったあ、生きてたぁ」

 

 若干の涙声、鼻声が届いてくる。

 通話先の向こうでミントを叱る声が届いたが、彼女は気にしていない様子だった。

 

「そっか、ルーレはミントの実家があるんだっけ」

「うん。士官学院が襲われたこともあって避難したんだぁ。うっかりノルドまで行っちゃうところだったけど、親切な人に助けてもらってさ」

「はは、それは何よりだ。あと、ロジーヌも一緒にいるぞ」

「そうなんだ! こないだ無事を確認したけど、シュミット教室のメンバーも揃って……って、そうだ! リィン君、今時間ある?」

 

 突然の話題転換に驚きつつも、リィンは一体どうしたのかと尋ねる。

 すると、ミントからこう返ってきた。

 

「ジョルジュ先輩からの伝言! ちょっとARCUSで言うのもアレだし、直接確認もしたいからちょっとウチに来れない?」

 

 

「良かったのか。フィーのことを言わず」

「ありゃあ気づいてたやろ。その上でなんで助けてやらんねん、って怒りやで。レオかてそう感じたんやろ?」

「まあな。団長から聞いたリィン・シュバルツァーの印象とも一致する」

 

 リィン達と別れた西風の猟兵達は、先程までクレアとの話し合いに使われていたバーで酒を嗜んでいた。

 本来ならば、ここで正規軍のメンバー、それも氷の乙女を目撃したという情報を突き詰めて行きたいところだが、リィン達を発見したことで目的を切り替えたのだ。

 

「団長の話通りなら、あのボンはとにかく目的を果たすためなら()()()()()()。それこそ無関係の身分から勝手に介入する」

「迷惑な話であるが、不思議と良い方向へ作用するという話だからな」

「団長と一緒で、そういう運の持ち主なんやろ。好き放題やってるのに、恨むより慕われる猟兵なんて団長以外見たことあらへんわ」

「しかし、だからこそそういった相手への対処は慣れている」

 

 やな、とゼノは笑う。

 彼らがここに居る理由は、貴族連合の総参謀ルーファスからの要請である。

 オズボーンが画策するであろう、ある任務の妨害、万一の場合への備えという二段構えのためだ。

 だが、そこにリィン達の存在が彼らの意識を変えた。

 彼の今までの軌跡を色々聞いているので、何かしら本来の目的以外のアクションを起こすだろうと判断したのだ。

 そして、それが自分達の役に立つであろうということも。

 

 無論、彼らの本来の目的であるフィーのことは助けてやりたいが、ああ見えても西風の旅団において二つ名を持つ猟兵の一人。

 何もせずとも脱出出来る技量を持っているし、何かあっても対処出来るだろうと彼らは信じていた。

 

「一から全部世話する段階はとうに過ぎてるっちゅーねん。赤ん坊の歩行器やないんやから、いつもべったりしとったら逆に怒られるやん?」

「あの者が出会ったのは情緒不安定なフィーだろうからな。その印象が強いのか、ただの世話焼きか……あるいは、あの者も同じだったのかもしれんな」

「家族に置き去りにされたって? その割には元気ってか活力に満ち溢れるように見えるけどなあ」

「まあ、どんな過去があろうとも我らがすることに変わりはない」

 

 せやな、と酒の注がれた器を打ち合う。

 一気にあおり、燃料補給を済ませたとばかりに席を立つ。

 店を出て、仕事へ向かう男達の口から漏れたものはその意気込みではなかった。

 

「ただ、気になるのはフィーやな。聞いた話じゃ、結構ボンに入れ込んでるっちゅー話やし……」

「仮に脱出に手間取っているところにあの男が颯爽と現れる、か?」

「年頃やし、そんな錯覚の一つ覚えても……あかん、言ってて腹立って来たわ」

「こちらもだ。やはり一度直接見極めたほうが良いかもしれんな」

 

 自分で言って自分を高揚する西風の旅団。

 これもまた、一つの猟兵術なのかもしれないが……その姿はただの親ばかである。

 二人は真剣に黒竜関に向かうかどうか、その葛藤を続けながら勝手に激昂と高揚を繰り返すのであった。

 




この作品のリィン君はツイッターさせたらダメなタイプだな、とふと思ったり。
関係ないレスに割り込んで騒ぎを大きくする予感がすごい。
あるいはオズぼん効果でリアルに凸する。
絶対関わりたくねぇ…

創の軌跡ではまだそこまで時間経ってないですが、ARCUSの進化による動画や画像メールの導入もありますし、いずれ導力ネットが発達したゼムリア大陸にもその辺導入してきそうですね。
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