はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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軌跡でポン、にベリルだと…!?
社長のインタビューにも言及されてますし、カンパネルラ枠というか、やっぱり只者じゃない感ばーりばりですわぁ…


フフフ、息子よ。Ⅶ組と再会しよう⑥

「二人とも、無事か!」

 

 怪しい不審者を導力バイクで吹き飛ばしたリィンは、急制動でバイクを止めてアリサとアッシュの無事を確認する。

 リィンの眼には呆然とする二人の姿が映るが、怪我らしい怪我がどこにもないことに安堵の息をつく。

 

「シュ、シュバルツァー……?」

「リィン、一体何してるのよ!」

 

 復帰しないアッシュをよそに、耐性の高いアリサがリィンに怒鳴る。

 彼女の認識からすれば、話しかけてきた教授をリィンが突然バイクで轢いたようにしか見えないからだ。

 

「確かにアンタはむちゃくちゃするけど、ルーグマンさんは帝国学術院の教授で……とにかくリィンは一般人にここまでするようなやつじゃ」

「っ、ロジーヌ手を離せ!」

 

 リィンが叫ぶと同時に、色濃い疲労を残しながらも指示に従うロジーヌ。

 その瞬間、弾けるように導力バイクから飛び降りたリィンの手には抜き放たれた太刀が握られていた。

 刹那、金属同士が噛み合う重々しい音と火花がアリサの背後で生まれる。

 

「っぅ……重っ……!」

 

 慌てて振り返るアリサの視線の先には、リィンの太刀が角のように鋭い金属を受け止めているところだった。

 だが鍔迫り合うのは一瞬だけ。

 息を乱しながらもボウガンを構えたロジーヌの射撃が別の方角へ放たれると、角のような何か――ミリアムやアルティナの持つ戦術殻に似た傀儡がそれを守るように矢を切り落とす。

 

「シュバルツァー! 狙われてるのはパツキンお嬢だ!」

 

 その乱入が援軍ということを察したアッシュのフォローに、リィンは即座に手を掲げた。

 

「来てくれ親父!」

 

 呼びかけに応じて召喚されるヴァリマール(オズぼん)

 空間が揺らぎ、隻腕の騎神が現出する。

 リィンはアリサに目を向けると、一時的に避難していてくれと告げた。

 

「待ってよリィン、一体」

「後で話す!」

 

 起動者の指示に従い、アリサが灰の中に搭乗すべく体が光に包まれる。

 

「よし、これでひとまず――」

「いけません、リィンさん!」

 

 安心だと思っていたリィンの胸中を、導力バイクから降りたロジーヌが遮る。

 どうして、という声は強制的に閉じられる。

 それは、ロジーヌを通して感じ取っていた悪意の瞳をこれ以上なく実感したため――まるで瞳の中という牢獄に囚われているように、リィンは自分達が周囲から切り離されたことを知った。

 

「ふむ?」

 

 オズぼんの声が響く。

 気づけば虚空から現れた赤い糸がヴァリマールの体を拘束し、空中に釣り上げていた。

 関節部を固定するような赤いリングが機体の動きを封じ込める様子に、リィンは己の判断の致命的な間違いを知った。

 

「親父! アリサをすぐに――」

 

 言い切る前に、先程リィンと鍔迫り合った何かが眼前に現れる。

 目の前にいるのは、士官学院のテストで見たものやミリアムやアルティナが持つ既存の戦術殻よりも巨大で、凶悪な存在。

 角と思っていたものは蛸を思わせる多足、あるいは節足動物を思わせる。

 見た目は機械であるはずなのに、まるで生物のように蠢くそれは、生理的な嫌悪感を催さずにはいられない。

 

「腹立たしいなどという感情が私に残っているとは思わなかった。感謝を告げるべきかな、リィン・シュバルツァー」

 

 悪意を孕んだ声音がリィンの耳をつく。

 導力バイクで跳ね飛ばされたはずのルーグマンは、その身に傷はなく服装についた汚れを払いながら歩み寄ってくる。

 

「俺を知ってるのか?」

「いろいろな意味で有名だよ、君は。ある意味私は君よりも君を知っている」

「君君言うとゲシュタルト崩壊起こしそうだな」

 

 見知らぬ相手が己を知っている、という感覚に戸惑いながら軽口を帰す。

 その様子に、ルーグマンの持て余した腹立たしさが反応した。

 

「クク……かつてここまでふざけた起動者は見たことがない。騎神の所有者といえ、所詮は灰という余り物に選ばれただけの者というわけか」

「余り物には福があるって東方のことわざがあるんだよ。俺にとっては最高の騎神だ。そんなこともわからないなんて、頭良さそうなのは格好だけか?」

 

 悪意に呑まれぬよう皮肉を返すも、ルーグマンの態度は変わらない。

 だが周囲の目には、かすかな苛立ちという薪へ盛大に煮えたぎる油をぶちまける様子が見て取れる。

 幸運にも薪が湿気ていて着火しないのが幸いか。

 

「格好と言えば貴様も似たようなものだろう。そんな人形を左腕に付けて、父親の影を追いかけているつもりかな? 随分と繊細なことだ」

「えっ」

「リィンさん、ソワソワして気を取られないで!」

「はっ」

 

 左腕に付けたオズぼんの人形は、意志がヴァリマールに映ってもなお見えるのは魔女の関係者と例外(ベリル)しかいなかった。

 

(ルトガーさんですら言及してこなかったってことは、起動者にも見える見えないに関する適正があるはず……でもそうなるとこいつ……この人は一体?)

 

 オズぼんの存在は騎神に乗り移ったことで認められつつあるが、それでも見えないものが見える相手と友好を結ぶという初心はリィンの心の中に焼き付いている。

 故に目の前の不審者に暴言を謝罪しかけてしまうが、ロジーヌの叱咤で我を取り戻す。

 

「くそ、精神攻撃とは卑劣な……」

「……どうやら言葉を介する知能がないようだ。ならば貴様には文句でなく行動で黙ってもらおう。――ゾア=バロール。稼働テストの時間だ。コトが済むまで嬲ってやれ」

 

 言下、巨大戦術殻が動く。

 足取りなど関係ない、転移が一歩と言うべき連続の空間移動に間合いの把握が難しくなる。

 リィンが戦ってきた格上の強敵は純粋に強く、武術の腕も超一流だった。

 故に移動は歩法が主であり、こうした転移による移動の連続に、リィンは一瞬だけ手間取る。

 その一瞬、ゾア=バロールには十分な時間だった。

 

 突き出された触手のような六腕が突き出される。

 槍のように鋭く尖った角が太刀を掻い潜りリィンの心臓を穿つ。

 だが、訪れた感触はなく代わりに耳が捉えたのは硬い金属同士による接触だった。

 

「オラァ!」

 

 仕込み戦斧。

 アッシュの持つ武器の穂先が分離し、鞭のようなしなりを見せてリィンとゾア=バロールの間に割り込んでいた。

 仕込み戦斧の穂先はゾア=バロールの攻撃を防ぐ――ことはなく、あっさりとそのギミックごとアッシュの得物を貫いた。

 驚愕するアッシュだが、武器のぶつかり合いによる接触は彼女に体勢を整える時間となって与えられていた。

 

「ガーデニアコクーン!」

 

 ロジーヌの法剣が伸縮し、リィンを繭の中へ包み込むように展開する。

 アッシュの仕込み戦斧と違い、ロジーヌの持つ法剣はシュミット教室によって揃えられたゼムリアストーンの武器の一つ。

 ゼムリア最硬度を誇るそれはゾア=バロールの攻撃からリィンを守ることに成功する。 

 戦術リンクでロジーヌが守ってくれることを確信していたリィンは、すでに攻撃の準備を終えていた。

 

「閃光斬!」

 

 ほぼ同時に振るわれた連刃がゾア=バロールの体に叩きつけられるが、距離を下がらせただけでダメージらしいダメージは認められない。

 リィン自身の技量も向上しており、たとえゼムリアストーンの太刀でなくとも成せる斬鉄だったのだが、ゾア=バロールには通用しなかったようだ。

 

「アッシュ、戦術リンクを!」

「ッ」

 

 リィンも同じように距離を取りながらアッシュに叫ぶと、彼は舌打ちを残しながらも了承。

 ロジーヌも彼の横へ移動し、戦術リンクの駆動と同時に法術を展開していた。

 

「悪いな、お前の目を借りるぞ」

「……ならせいぜい感謝しろや」

 

 リィンの意図を察したアッシュが鬼の力を目に集め、ロジーヌの法術がARCUSに落とし込まれる。

 魔術を埋め込み、中継する機能はエマで実証している。

 ぶっつけ本番だったが、無事成功してロジーヌも息をつく。

 

「親父! 聞こえるか?」

 

 応答はない。

 空の上で拘束されたヴァリマールは無言のまま、ゆっくりと降下する。

 普段であれば街中での騎神召喚など騒動にならないほうがおかしい。

 

(人が全然寄り付かない……この人も因果律操作が使えるのか。魔女の関係者?)

 

 そう、アッシュが見たルーグマンから発する力――因果律操作がそれを覆す。

 周囲には貴族連合の巡回兵士が寄り付いて来ないため、この戦術殻の相手を押し付けて逃走するのも難しい。一般人も寄って来ないのは不幸中の幸いか。

 オズぼんと中にいるアリサを見捨てる気などないが、救出のための行動は目の前の戦術殻によって遮られている。

 冷静さを取り戻したリィンが、この状況下における最適解を紡ぎ出す。

 

「……アッシュ。少しキツいの頼んでいいか?」

「ハッ、えらく殊勝じゃねえか」

「随分粘ってくれてたみたいだからな。()()より遥かに負担を強いることになるけど……頼めるか?」

 

 リィンという、アッシュの中で圧倒的強者に位置する人物からの懇願に唇の端が釣り上がる。

 自尊心を満足させる以上に、何か高揚感のようなものがアッシュの中から生まれていく。

 

「いいぜ、やってやんよ。せいぜい俺に感謝するんだな」

「ああ。アッシュが同行してくれて助かったよ」

「そういうのは、しのいでから言えや」

 

 どの道アッシュは武器を失っている。

 自分に出来るのはそれだけと言え、悪い気分でないのは確か。

 目の奥の鈍痛に熱が宿る。

 まるで高揚感に同調しているような感覚だ。

 ロジーヌの法術はそんなアッシュの感覚を全員に共有させ、アリサを隔離させようとする因果の糸とゾア=バロールの動作を映し出す。

 

「ロジーヌ、行くぞ」

 

 戦術リンクを使わずとも、付き合いの長いロジーヌにはリィンが何をしようとしているのかを把握していた。

 無言で頷きながら、ロジーヌは法剣の刃を分離。

 その刃片はゾア=バロールでなく、リィンの太刀を覆うように再集結する。

 一回り大きくなった太刀を手にリィンは駆ける。

 それはかつてクロスベルにおいて、ワジの聖痕を宿した太刀のような煌めきを放っていた。

 

「相ノ太刀――雲心月性(うんしんげっせい)

 

 付け焼き刃のゼムリアストーンの太刀とゾア=バロールの触腕がぶつかり合う。

 今度は武器が負けることはない。

 ならば、『技』で持ち込める。

 (リィン)で攻撃を受け止め、再分離した法剣(ロジーヌ)の刃がゾア=バロールを切り刻む。

 一刻も早く二人を救出すべく、リィン達はゾア=バロールとの戦いに集中していった。

 

 

「さて、こうして見れば損傷した騎神に他ならないわけだが……」

 

 囚われたヴァリマールの中で、アリサは画面越しに己を見やるルーグマンに戦慄を抱いていた。

 その強さ、というより自身と灰を見る目が実験動物に対するソレ、あるいは微塵も『命』を見ている感情が伺えないのだ。

 

 掃いて捨てる、というほどではないがただのデータの羅列、数でしか人を判断していないような、そんな錯覚。

 ラインフォルトの生まれだからこそ、そうした目にはある程度理解が出来る。

 ただ、だからと言って気分の良いものではない。

 アリサはヴァリマールを操作して拘束から抜け出そうとするが、身じろぎをするだけで戒めが解ける様子はない。

 その不安と苛立ちは言葉となってルーグマンへ投げられる。

 

「ちょっと貴方一体何なのよ!」

 

 途端、画面が乱れる。

 まるで導力端末がウイルスに侵食されるように、画面が勝手に《瞳》を映した。

 リィンの鬼眼よりも禍々しいそれに、アリサは小さく悲鳴を上げる。

 

「……メモリーから察するに、騎神が変化する事前に乗っていたのは君だったかな、アリサ・ラインフォルト」

「へ、変化……? 人馬になったヴァリマールのこと? 私は見てないから何もわからないわよ」

「それだ。何故君は生きている?」

「何故って……」

 

 突然の話題に戸惑いを隠せないアリサ。

 ノルドでの戦闘は、アリサの中ではシュミットに打ちのめされた矢先に現れたゴライアス以降ぷっつりと途切れている。

 後から聞いた話ではエリオット達が率先して治してくれたということしか理解出来ていない。

 

「そんなの……仲間が助けてくれて」

「私が聞きたいのはそういったつまらないものではないのだよ、アリサ」

 

 パチン、とルーグマンが指を鳴らす。

 同時にアリサは()()()ヴァリマールから降りる操作を行っていた。

 気づけば、尻もちをつくように地面に降ろされたアリサの目の前には、己を生物と見ていない無機質の瞳。

 咄嗟に逃げようとするが、遅い。

 

「さあ、教えてくれ。アリサ、君は一体何をした?」

「覚えていません。私はゴライアスによって致命傷を負っただけです。ただ、ヴァリマールが言うには、魔煌兵をリソース化して取り込んだ結果だと」

 

 あっさりと。

 反抗的な感情などそこになく、瞳から光を失ったアリサは淡々とルーグマンに詳細を語る。

 ルーグマンは慣れたようにアリサの認識と記憶を歪める異能――催眠術を模した洗脳じみたそれによってアリサから情報を収集しているのだ。

 エマ達が使う魔術と違い、技術として確立されたそれを前にアリサは抵抗することなど微塵も出来なかった。

 

「魔煌兵のリソース?……そして致命傷、か。なるほど、君は()を一時的に受け継げる状態にあったのかな?

 それでいて、別の血(イリーナ)が混ざることで突然変異の異能が開花した……検証の必要があるな。長の名は与えられないが、眷属としての器は十分だ」

 

 そっとルーグマンの手がアリサの頭の上に乗せられる。

 まるで撫でるような手つきだが、もたらされるのは決してそんな甘いものではなかった。

 

「さあ、我らが主よ。新たなる従僕に祝福を与え給え」

「……っ! あ……ああああああァァアアアアァア!」

 

 ルーグマンの手を通して、()()()がアリサに流し込まれる。

 髪を束ねていたリボンが弾け飛び、まるで電流を受けたような衝撃にアリサの全身が痙攣を起こす。

 それはリィンからクロウへと渡った時のような大海嘯(だいかいしょう)の如き力の放出。

 鮮やかな黄金の髪が反転するように白へ染まり、その瞳が灼熱のような深紅へ塗り替えられる。

 まさしく鬼の力の変化が、彼女の中に起こっていた。

 だがアリサという器に注がれるには過剰すぎる霊力の流れは、彼女の意識を消失させ――ることなく、洗脳を解く衝撃となってアリサを目覚めさせた。

 

「こンのぉ――」

「――――なっ」

「不埒者めぇ!」

 

 煮えたぎる怒りをその手に込めたアリサが吠える。

 戸惑いを隠せないルーグマンの頬に、鬼の力によって強化されたアリサのビンタが炸裂し――彼は再び導力バイクに跳ね飛ばされた時のように殴り飛ばされていった。




一カメ(アッシュ視点
二カメ(リィン視点
三カメ(アリサ視点
によるルーグマンが吹き飛ぶシーンのリプレイでした。三カメは新規収録とする。

そしてクロウ、アッシュに続きアリサも鬼の力に(強制的に)覚醒です。
というかゲオルグ枠がアリサでも良かったのでは感。裏切りのインパクトと父との確執、アリサの地精設定も活かせそうですし…
まあそうなるとヨシュアの二番煎じかつ、先輩達の絆が書けなかったかもですが…ノーマルエンドでクロウの側にある三つの光の演出が安くなりそうですしね。

灰がもう色んな人を乗せる伝説の騎神でないように、鬼の力もまたリィン君独自のものでなくなっていく…
起動者もまた騎神に影響を受けているということですね。

ロジーヌのガーデニアコクーンはオリジナルクラフトです。
法剣で壁を作って範囲内のDEFやADF、回避率を上げるイメージです。
Ⅳの頃にはプラチナムシールドばりの性能に進化してそう。

雲心月性は描写通りワジとの聖痕の太刀+一度で複数攻撃になる重複攻撃、って感じで考えてもらえれば。



シャンフロコミカライズ、書き下ろし小説共々面白かった…
カラーページからフェアカス入れてくれてよかったし、力も入ってるから新しいマガジンの看板にするぜ!って意気込み感じられますね。
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