はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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フフフ、息子よ。Ⅶ組と再会しよう⑦

 アリサのビンタによる衝撃で、ゾア=バロールの動きが止まる。

 リィン達からすれば突然起動しなくなった戦術殻に対して疑念が浮かぶが、動かないということならその隙をつかせてもらう。

 アッシュの視界を借りてアリサ達の元へ走り寄れば、そこに居たのはアリサでなく銀髪の少女だった。

 興奮しているのか、ふー、ふーと肩を上下させながら息を切らしている。

 フィーやアルティナよりも身長が高いが、服装はスカートが少し短いくらいでいたってまとも。

 というよりアリサの服そのもので……

 

「え、アリサ?」

「リィン!」

 

 ぱっと花咲くような笑みを浮かべてこちらへ走ってくる銀髪の少女、ではなくアリサ?

 ぽかんと口を呆けていると、一体何事かとアリサ? は首を傾げている。

 

「それより、いきなりヴァリマールの中に押し込むなんて……避難と言っても事前に説明くらいしてよね。おかげでひどい目にあったわ」

「あ、ああ。悪い」

「そうだ、ヴァリマール! 無事なの?」

「フフフ、アリサ嬢。すまないがもう一度搭乗を頼む。拘束を解きたいのでね」

 

 オズぼんがアリサと呼ぶ以上、彼女はアリサで間違いないのだろう。

 彼女自身、自分の容姿の変化に気づいていないようだ。

 最初こそ戸惑ったが、今ならよくわかる。

 アリサは、鬼の力によって変身しているのだと。

 

「リィンでなくていいの?」

「今はアリサ嬢のほうが適切だ」

「でも……」

「アリサ、鏡持ってるか?」

「え、そりゃあ女の子なんだから身だしなみチェックくらい当然……」

 

 スカートのポケットから取り出した小さな鏡を取り出すアリサ。

 リィンは一言断ってからそれを手に取り、アリサに見せた。

 

「ん、誰かしら?」

「アリサ本人だよ」

「いやいや、私の髪はこんな……こんな……」

 

 自分の髪を触れば、鏡の中の少女もまた動く。

 瞬きすれば灼眼は同じように開閉し、リィンと鏡へ交互に顔を振る。

 じっと鏡を見やり、バッと機敏な動きでヴァリマールの装甲へ顔を向けるアリサ。

 ゼムリアストーンの装甲は鏡のようにアリサの現在の姿を映し出していた。

 

「な、な、な」

「親父」

「フフフ、任せろ」

「何よこれえぇぇぇ!」

 

 これぇ……れぇ……ぇ……とエコーをかけながら騎神の中に入っていくアリサ。

 同時にリィンが導力バイクへ走り、戦術リンクでその考えを察したロジーヌと遅れてアッシュがヴァリマールへ駆ける。

 

「待、て。貴様ら……!」

 

 そこへビンタで吹き飛んだはずのルーグマンがよろよろと立ち上がる。

 ゾア=バロールが呼応するように再起動するが、それより早くアリサは動いていた。

 

「よくわからないけど……これで!」

 

 再搭乗したアリサは、オズぼんに言われるがままに機体を操作していた。

 すると画面に映っていた気持ち悪い瞳は消え、拘束していた赤いリングや糸が溶けるように虚空へ消える。

 クリアな視界となった画面端にゾア=バロールの姿を認めたアリサは、直感の赴くままにヴァリマールを動かす。

 

「こんのぉ!」

 

 健在な両足の右側が天へと反り返る。

 達人級に手を届かせるリィンから見ても、いっそ見事と評する他ない姿勢。

 深く踏み込んだ軸足がブレれば、半円を描く騎神の足刀が放たれる。

 

 ゾア=バロールは転移で避けようとするが、その動きをアッシュが認め、リンクしたロジーヌの狙撃が妨害していた。

 ゼムリアストーンの武装による衝撃はゾア=バロールを一瞬だけ動きを止める。

 結果――ゾア=バロールはヴァリマールのインフロントキックを受け、黒鋼の都ルーレの空を舞う。 

 

 騎神の蹴りでダメージはあっても、戦闘不能になるほどの大破ではない。

 ゾア=バロールの転移を考えれば距離を取っても意味はない。

 しかし、アリサにはリィン・シュバルツァーという人間を形作ったオズぼんのアドバイスがあった。

 ノルドで事前にハッキング操作をした経験値もあるのだろう。 

 淀みなく動く指はヴァリマールの端末を遺憾なく発揮し、その能力を発揮した。

 

「配給に支障ない予備導力の確保、成功。導力の属性を火・空・風に固定。対象と周囲の空間を隔絶。オーバルエネルギー充填完了……!」

 

 アリサの灼眼と感覚が、ジェネレーターによって供給されるルーレの導力の一部を借り受け、一つの失われた属性を組み上げていく。

 属性の名は陽。

 アリサの胸の奥から湧き上がる気持ちを、これ以上なく表現する力は騎神の力を借り受けたアリサによって放たれた。

 

「ソル・イラプション!」

 

 空にいるゾア=バロールを閉じ込めるように、焔をまとう複雑な紋様が刻まれた赤い球体がルーレの空に降臨する。

 普段であれば大パニックに陥るはずの町並みに変化はない。

 ルーグマンの使う因果律操作により、全員がこの状況に気づけないからだ。

 それを逆手に取るように、アリサは大技――ロストアーツと呼ばれる複合属性をこの場で再現したのだ。

 

 炎熱の球体の中に閉じ込められるゾア=バロール。

 本来なら太陽を落とす大技だが、アリサはそれを反転。上昇するように操作した。

 空には大地のような受け止めるための地面が存在しない。

 自力で脱出しない限りゾア=バロールは脱出不可能だが、転移は空間を隔絶することで逃げ場をなくしている。

 ゾア=バロールに出来ることは、焔が自然に鎮火するまでその装甲で耐える他なかった。

 天に堕ちていくゾア=バロールを驚愕の目で見送るルーグマン。

 そこに先程感じた無機質な瞳はなく、人間らしい感情が伺え……

 

「え?」

 

 アリサは見た。

 ルーグマンに重なるように彼の姿がまるで陽炎のように揺らめき――アリサの父、フランツ・ラインフォルトの姿に切り替わった瞬間を。

 

「父……様?」

「アリサ、このまま黒竜関へ行くぞ!」

「…………」

 

 リィンの声は届かない。

 アリサの五感すべてが、ルーグマン……フランツに全集中していた。

 でも、もう違う。

 ルーグマンの体は別段変化はなく、フランツの姿はそこに見受けられない。

 ルーグマンは歯噛みするような形相と悪鬼眼でリィン達を睨んでいたが、やがて足元に転移陣が浮かびその場から去ろうとする。

 

「アリサ!」

「!? え、ええ」

 

 焦燥感がにじむリィンの声に、アリサはようやく復帰する。

 ヴァリマールの右手にロジーヌとアッシュを乗せ、リィンも導力バイクのエンジンを吹かす。

 本当ならオズぼんが見えるルーグマンをふん縛ってでも連れて行きたいところだが、すでに彼の姿は消えている。

 やはりエマに頼らない転移妨害を自分も身につける必要があると切に感じた。

 

 残念に思いながらも、リィンは適当な傾斜を見つけてヴァリマールへ飛び移ろうとする。

 オズぼんの力があれば、導力バイクの収納も可能だからだ。

 トヴァルからはあまり見せつけないように、と言われているが、ここに居るのは見知った面子ばかり。

 アッシュには後で説明すればいいだろう。

 そう割り切ったリィンが導力バイクを丁度いい傾斜へ向かわせようとした途端、彼は横殴りの衝撃によって横転した。

 

「ぐっ!」

「シュバルツァー!」

「リィンさん!?」

 

 咄嗟に導力バイクを乗り捨てるが、その攻撃を仕掛けてきた()()()を認めた途端、リィンは叫ぶ。

 

「後で追いつく。皆は先にユーシス達と合流を」

 

 ロジーヌ達の静止を求める声が聞こえてきたが、謝罪と共に送り出す。

 この場に残らなければいけない理由が、リィンには出来てしまったからだ。

 

「――久しぶり」

「うん。一ヶ月ぶりくらいかな?」

 

 白い影――戦術殻、アガートラムに乗った緑髪の少女が黒髪の少年を見下ろす。

 

「リィン」

「ミリアム」

 

 互いに親しみを舌に乗せながら、リィンはⅦ組最後の一人――ミリアム・オライオンとの再会を果たした。

 

 

「ユーシス様がわざわざ来ていただかなくとも……」

「構わん。クラスメイトが()()に牢へ入れられるより苦労はない」

 

 ユーシスの皮肉に顔を青くする貴族連合兵。

 ノルティア州の兵士といえ、公爵家の威光は貴族に関連していればしているほど効果は高い。

 以前はこういった権力による強引な仲介は嫌っていたが、仲間が捕まっているのなら話は別だ。

 

「とはいえ、そなた達も俺も互いに仕事を果たした成果だ。それ以上追求する気はない」

「は、はい!」

 

 明らかにほっとする顔を見せる男はさておき、ユーシスはルーレから南下し、ノルティア街道を通り一足先に黒竜関へ到着していた。

 その足は普段よりも早い。

 一刻も早くフィーを救出する。

 その考えは当然ある。

 だがそれ以上に、彼には急ぐ理由があった。

 

(ログナー侯は俺のことを見極めようとしている……ノルドでの行動はすでに報告されていると見ていいだろう)

 

 アルバレア家の威光により、ログナー侯への渡り自体は簡単に繋ぐことが出来た。

 当然彼も正規軍との戦い、それもヘイムダルに近い黒竜関での奮戦に力を入れている。

 ラインフォルトの最新技術を導入出来るのも強みだろう。

 そんな忙しいはずの人物が、わざわざ黒竜関でユーシスとの面会を希望した。

 

 陣中見舞いへの挨拶という体裁だが、それは願ったり叶ったり。おかげで黒竜関にも難なく入ることが出来た。

 だが、ユーシスはログナー侯が来る前に一足先にフィーだけでもこの場から脱出させようと考えているのだ。

 

(……アルティナ、だったか。聞こえるか?)

(問題ありません。ユーシス・アルバレア)

 

 牢へ向かうユーシスが胸の内ポケットに入れた通話状態のARCUSへ呼びかけると、リィンの指示によって黒竜関を探っていたアルティナが反応する。

 彼からの追加指示にて、ユーシスと合流しそちらに協力するという要請を受けたアルティナはユーシスが一人になるのを見計らって接触した。

 

 ユーシスもユーシスで光学迷彩による姿が見えない状態からの声かけはミリアムやそれに便乗したリィンによって慣れていたため、動揺することなく冷静に受け答えが出来た。

 最も、相手がミリアムよりも幼い少女であることには面食らったが。

 

(これから牢へ向かうが、万一の時のために逃走ルートの確保を頼む)

(了解しました)

 

 それきり、アルティナの声が途切れる。

 話によればミリアムと同じ名字と戦術殻を持つとのことだが、感じる印象は正反対だ。

 とはいえ、アルティナ曰くミリアムに出来ることなら自分にも出来る、と言っていたのでユーシスは能力を想定しながらも頭を働かせる。

 

 案内された先では、フィーが高い位置の鉄格子に手をかけて変則的な懸垂をしているところに出くわした。

 

「あれ、ユーシスじゃん」

 

 軽く汗を滲ませながら、フィーがなんでもなさそうに言う。

 何をしている、と尋ねれば筋トレ、と返すフィー。

 捕まっていると聞いて救出に来たのに、出会い頭に筋トレをされていたユーシスを頭痛が襲う。

 

「もう少しこう、何かなかったのか?」

「や、だって助けが来るって聞いてたし。それなら少しは体動かしておかないと訛っちゃうでしょ」

「お前はそういうのとは無縁と思っていたのだがな」

「まあ、叶うならのんびり寝ていたいけどね。私も」

 

 この空気じゃ無理でしょ、と静かに告げるフィーから、確かな戦闘の気配を察知するユーシス。

 戦いの予感、というものだろうか。

 元猟兵であるフィーはそれを鋭敏に感じ取っているようだ。

 

「さて、このまま連れて行って構わないのか? 書類などがあれば……」

「は、はい! いえ! それはこちらでやっておきますので!」

「そうか、よろしく頼む。ログナー侯には良い案内をされたと伝えておく」

「! あ、ありがたき幸せ!」

 

 ユーシスの貴族としての振る舞いに、フィーがニヤニヤと猫口を作る。

 面白いものを見た、とばかりに目を細めた半眼と、口元に手をやる仕草は猫そのものだ。

 うるさい、と軽く手で払いながら兵士が抱えていたフィーの荷物を取って投げ渡す。

 武器や道具を身につけながら、フィーは改めて牢屋から出た。

 

「ん、ありがと。苦労話とか聞いたほうがいい?」

「そんな暇はない。俺はここに残らねばならんが、フィーはとりあえずルーレ空港にあるアルバレアの飛空艇へ向かうがいい。これを見せれば通してくれるはずだ」

 

 ユーシスはメモを忍び込ませた書類を渡す。

 メモにはリィン達とのやり取りや、アルティナのことが書かれている。

 さんきゅ、と言いながら早速ARCUSの通話モードを兵士に気づかれぬよう入れたフィーを認め、ユーシスは頷いた。

 

 フィーだけでも早くこの場から脱出を、と思っていたユーシスだったが、それは寸でのところでかなわない。

 

「ユーシス様。もう十分ほどでログナー閣下がご到着になるようです。お連れの方もぜひに、と」

「わかった。忙しい中、手間をかける」

 

 牢に通じる階段から出た矢先の言葉だった。

 あるいは監視でもされていたか。

 どちらにせよ、フィーだけ先に脱出させるのは不可能となってしまった。

 歯がゆく思いながらも、フィーはのんきに待機場所を聞いている。

 

 案内された場所に腰掛けると沈黙が間を埋める。

 ユーシスもフィーも、顔を見れば口を開こうとして、互いに閉じてしまうという奇妙なやり取り。

 ややあって、フィーがユーシスを手で制した先に言った。

 

「ユーシス、ミリアムとはもう会ってるよね?」

「……ああ。お前がここに居ると知ったのもあいつのおかげだ」

「そ、か。……リィン、生きてるんだよね?」

「ああ。ノルドで再会した。相変わらずのリィンぶりだ」

 

 苦笑しながらも、頬の緩みが止まらないユーシス。

 こちらが悩みなど知ったことか、と言わんばかりの態度はそれでこそリィン・シュバルツァーとは思ったが、それはそれで腹立たしいものがある。

 

「だが、ミリアムは止まらんだろう。クロウがリィンを殺したことに変わりはない、と断言していた」

「……それは、リィンと再会しても?」

「おそらく、は。だが俺達には知らない何らかの事情を知っているようにも思えた。それがミリアムを()()しているのだろう」

 

 それは、天真爛漫に見えて感情の機微に疎かった少女を、真に人間らしく行動させる理由。

 

「でも、嫌だよね。私が言うなって話かもだけど、あんまり人殺しは良い気分じゃないよ」

「……そうか。フィーは元猟兵だったな」

「最初はやらなきゃやられる、って感じだったけど、一度したら後は慣れ。気持ちの良い感覚じゃないけど、出来なくないわけじゃない」

 

 したくない、と出来ないには大きな差がある。

 出来ない者は何があっても、どうあっても無理なのだ。

 フィーとユーシスの差はそこでもある。

 

「たとえミリアムが望んでたとしても、私は嫌かな。少なくとも、リィンはミリアムに復讐なんて望んでないだろうし」

 

 予想でしかないけどね、とフィーは言うが間違ってもいないと思っていた。

 あのわがままくんが、自分がして嫌なことを友達にさせることなど絶対にしないと思っているだろうから。

 

「フィー。ミリアムのこととは違うが、一つ質問しても構わないか?」

「ん、いいよ」

「フィーの父親は死んだ後に蘇ったと聞く。実際に会って、どう思った?」

「どう、って……」

「死体が動いている、と感じたか?」

 

 突然のユーシスの質問にフィーはきょとんと呆ける。

 だが、真剣な声と表情のユーシスに軽い気持ちで答えるべきではない質問なのだとわかる。

 

「……ううん。あれは団長……お父さんそのものだった。死体なんて全く思わなかった」

「……俺はノルドで、機甲兵の生体パーツとして生存を許された人間を見た。それは、人のための機甲兵でなく、機甲兵のための人間(パーツ)だった。

 ミリアムは、騎神と起動者の関係を同じように称していた。聞けば、ルトガー・クラウゼルもリィンと同じ起動者だと聞く。ならば、それは生者としてカウントしていいのだろうか?」

「ユーシス……」

「そんな考えが、あれからずっと浮かんでいる。無論、兄上が金の騎神の起動者である以上、全てがそうではないとも知っている。

 何よりARCUS越しにリィンと話しても、あいつが死体だなんてまるで思えぬ。

 だが、姿形が違うだけで、仮に死んでも騎神があれば生きることが許されるというのであれば……人として、貴族として、俺は」

 

 再び殺して人として死ぬべきでは、という声は飲み込んだ。

 フィーに父親を殺せ、と言っているようなものだ。

 猟兵として過ごした彼女ならば、嫌ではあるけど出来なくはない、と言った。

 ならばフィーなら、ユーシスの葛藤に対して答えをくれるかもしれないと思った。

 しかし、ユーシスの予想は別の方向から返ってきた。

 

「ユーシス・アルバレア。貴方はリィンさんに死んで欲しいと思っているのでしょうか?」

「何?」

 

 ARCUSから漏れる言葉は小さな声でなく、隠れているのを無意味にするような大きさ――はっきりとした意志をアルティナが告げる。

 

「私は困ります。私は今、彼が雇い主なので。リィンさんが死ねば、どうすればいいのかわかりません」

「……誰?」

「アルティナ・オライオンと申します。黒の工房から派遣され、現在はリィンさんに雇われています」

「まるで猟兵みたい」

「その表現は不適切、と答えます。フィー・クラウゼル」

 

 どこか拗ねたような声が聞こえてくるが、ユーシスはしばし虚空を眺め……クク、と笑いを漏らした。

 

「ユーシス?」

「いや、俺も難しいことばかり考えてかつての副委員長殿になっていたようだ、と思ってな」

 

 簡単な話だ。

 ユーシスはリィンを殺したくない。

 フィーも言っていたように、ミリアムに人殺しなどしてほしくない。

 ゴライアスのパイロットも、生かす手段が機甲兵だけではないはずだ。

 《貴族の義務(ノブレス・オブリージュ)》に惑わされて、ユーシス・アルバレアの本音を見失っていたことに気付かされた。

 

「なんか、勝手に悩んで勝手に解決した?」

「すまんな。だが、フィーの言葉にも助けられる」

「それならいいけど。まあ、さっきの私の答えとしては……まだわからない、かな。団長からも世界を知れ、って言われてるし、私には……私達にはまだ知るべきことがたくさんある。

 答えを出すのは、それらを知ってからでいいんじゃない?」

「ああ、そうだな――」

 

 そこに、ノックの音が叩かれる。

 

「失礼。ログナー侯がご到着されました」

「ああ」

「待機モードに移行します」

 

 アルティナはそう言って通信を切る。

 呼びかければ現れるだろうが、今ここでそんな愚をする必要はない。

 ややあって、扉からゲルハルト・ログナーが顔を出す。

 貴族同士の挨拶から、フィーを同行させたことへの軽い言葉などを交わしながら、彼は用件を告げた。

 

「さて、ユーシス君。ノルドでの一件は聞いている」

「……ゴライアスに対して攻撃したのは、謝罪する。だがそれは――」

「いや、事の顛末はシュミット博士から聞いている。それ故に、願おう」

 

 そう言って、ゲルハルトはユーシスに向けて頭を下げた。

 同格であるはずの四大名門の彼が、アルバレア家の代表でもないユーシスに、だ。

 そのことに驚きを隠せないでいると、ゲルハルトはその真意を告げた。

 

「どうか、私の娘とその友を助けて欲しい――」




黒竜関にはマルガリータが居るはずですが、今回はスルー。
ミリアムとの仲もあるので出そうと思えば出せたかもですが、広げることが難しいと判断して断念。申し訳ありません。

Cはルーファス説、みたいなのも最近見ました。
ノーマルエンドリィン?が居て一つの世界に同一人物の存在が許されるなら、それもありなのかなぁ、と。
Ⅲで羅刹様やアン先輩がいないプロローグも、実は別世界線のお話を描写していた、ってことなら叙述トリックじみたやり方で見せることも可能そうですが…
盟主が三つの糸を束ねているのも、三つの世界線を同一軸に、なんて表現かもしれませんしね。

没ネタ。ゾア=バロールを蹴り飛ばすシーン

「よくわからないけど……これで!」

 再搭乗したアリサは、オズぼんに言われるがままに機体を操作していた。
 すると画面に映っていた気持ち悪い瞳は消え、拘束していた赤いリングや糸が溶けるように虚空へ消える。
 クリアな視界となった画面端にゾア=バロールの姿を認めたアリサは、直感の赴くままにヴァリマールを動かす。

「こんのぉ!」

 隻腕の騎神が持つゼムリアストーンの武装が変化する。
 なんでデータがあるのよ! と他ならぬアリサ自身が驚愕しながらも、千変万化の武装はクロスと呼ばれるラクロス用のスティックを形成する。
 そしてリィンは、自分達がヴァリマールに乗って逃げようとすれば必ず敵は追いかけてくると読んでいた。
 それはつまり、高速の切り返し。
 転移によってヴァリマールの側へ殺到していたゾア=バロールの下部へ滑り込むように体を低くした構えからの抜刀。
 残月による打ち上げは、ゾア=バロールの機体を天の軌道に乗せる。
 そこへ振り抜かれるゼムリアストーンのクロスは、まるでボールのようにゾア=バロールをすっぽりと覆われ――勢いのままに黒鋼の街ルーレの空へ投げ出された。

Q.なんで没なの?
A.コメディ度を考えればこっちですが、テンポ悪いかな、と思ったので。
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