はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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夏バテでモチベが下がってて少し遅れました、すみません。


フフフ、息子よ。Ⅶ組と再会しよう⑩

「ああ……くっ、私はもうダメだ……」

「アンちゃん、しっかり!」

 

 アイゼングラーフ号の一室。

 閉じ込められたアンゼリカが苦しそうに呻き、トワがそれを介護していた。

 

「うう……ぐぅ~……」

「ど、どうすれば……」

 

 アンゼリカは胸を抑え、はあはあと息切れをしては声を荒げている。

 おろおろとしながらも、適当に水と薬を持ってトワはアンゼリカへ水差しを含ませようとする。

 

「はあ、はあ……」

「ほらアンちゃん」

 

 アンゼリカの口からあえぐように伸ばした舌の上に、トワがゆっくりと薬を乗せる。

 流れに沿って口の中へ運ばれていく錠剤を見ながら、水差しの先を寄せるトワ。

 ここ数日の間に何度も起きたため手慣れたようにトワの介護だが、今日に限っては違った。

 がしっと、トワの腕をアンゼリカが掴む。

 苦しそうにしていても泰斗流によって培ったアンゼリカの力は強く、トワは戸惑いながらも彼女の顔を見やる。

 

「ど、どうしたのアンちゃん。苦しいなら、薬を……」

「ああ……私はもう駄目だトワ。だから最後に薬でなく君のチェリーのように愛らしく蕾む舌から分泌される唾液で私の――」

「……………何をしている?」

「あ、みんな!」

 

 そして、無言でそれらの動きを見ていたⅦ組メンバー。

 救出するつもりでアイゼングラーフ号へ駆けつけた先でこの光景を見せられた彼らは、感情の行き場をなくしていた。

 それでも話しかけないわけにはいかず、代表としてユーシスが口を開いた。

 正直に言えば聞きたくもなかったのだが、聞かなければ先に進まないことを知っていたため嫌でも選択せざるを得なかった。

 

「どうしてここに! でも嬉しい、無事だったんだね!」

「ちっ……見つけられたか。それとも父上かな?」

「ログナー侯爵のほうです。それで、一体何をされていたのですか?」

「見てわからなかったのかい?」

 

 見ても見なくてもわかりたくない、とトワを除く全員は思った。

 

「事情が事情といえ、数日間トワと二人で、密室にいるんだよ? この心の底から湧き上がる衝動を押さえつけるのに精一杯だったんだ。

むしろ数日我慢した私を褒め称えるべきではなかろうか?」

 

 つまりトワを襲わないように自制していた結果の苦しみであり、そのための鎮静剤であった。

 薬を使うほど追い詰められているという事実を強調したいアンゼリカであったが、そもそも友人と一緒にいるだけで薬と苦しみが生まれるのがおかしい。

 と、思うのが普通だが、リィンとエマの関係を知るⅦ組はそれ以上深く突っ込めなかった。

 

「知ってた」

「いつも通り過ぎて安心します」

「トールズってのは変人しかいねえのか?」

「まともな人もいるの、いるから!」

 

 アッシュのつぶやきに即座に反応するアリサ。

 しかしリィンを筆頭に出会う人物達が濃すぎるのは否定出来ない事実でもあった。

 

「っ!」

 

 そして元に戻ったはずのアンゼリカと言えば、一同を見回した瞬間に固まった。

 正確には、その目線がアルティナに向けられていた。

 件のアルティナと言えば、無言でクラウ=ソラスを呼び出していた。

 

「な、な、なんだその天使は……!」

「リィンさんと違って、純粋に不埒な意図を感じます。近づかないでもらえますか?」

「ああっ、その愛らしい声音に反して軽蔑の言葉もまた……」

「おい、元パツキンお嬢の知り合いなんだろ? アンタの変化よりチビ兎を優先してるぞあの女」

「言わないで……」

 

 こめかみを押さえながら、アリサが重々しく言う。

 言われて、トワがアリサちゃん!? と反応してくれるのが救いだった。

 

「リィン君みたいになってる!」

「おっふ」

「先輩、手を差し出すフリして突き落としたね」

 

 崩れ落ちるアリサに慌てて駆け寄るトワだが、トドメを指したのは他ならぬ彼女である。

 天然とは罪であった。

 

「話を戻しますが、会長達も無事で何よりです。……確認しておきたいのですが、お二人はここに保護される理由をご存知ですか?」

「……うん。クロウ君のこと、だよね?」

 

 流石に真面目な空気を前に、アンゼリカも姿勢を正してテーブルに座るよう促す。

 やれば出来るのに、と一同は思ったが話をスムーズにすすめるために黙った。

 

「先輩方は今回の件、どこまで把握している? 俺達はジョルジュ先輩経由でリィンから情報が届いた形になる」

「リィン君、生きてるの!?」

 

 トワが声を荒げる。

 弾んだ声に驚くユーシスだが、すぐに彼の生存を報告する。

 自分もそれに参っていたはずだが、実際に再会してからのいつも通りぶりにそう言えばこうやって心配されて当然の立場だったなあいつ、と他人事のように思った。

 

「そうなんだ……良かった……」

「それにジョルジュが伝言を残してくれたんだね。彼も無事だったか……そうだね、まず私達の現状を話しておこうか。

内戦が始まった後、最初はオリヴァルト殿下に保護を受けていた私達は、クロウのことが気になってジョルジュも含めて三人で行動していた」

 

 士官学院の急襲は、教官やエマの助け、そしてオリヴァルトが持つカレイジャスが駆けつけたことで多くの人々が無事に脱出した。

 だがトワ達は親友のことが気になり、ジョルジュのアテがあるという言葉を信じて一度下船し、その宛先である場所へ向かっていた。

 しかしその途中、突然正規軍から追われるようになった。

 

「当時は理由はわからなかったのだけど、一度は本当に捕まりかけた。その時はジョルジュの機転でなんとか逃げ出すことが出来たんだが」

「代わりに、ジョルジュ君と離れ離れになっちゃって……でも、リィン君へ私達のことを伝えてくれたなら、無事だよね、きっと」

「ええ、きっとそう思います」

 

 同じシュミット教室の一員としてロジーヌが同意する。

 

「ジョルジュとはぐれた後、なんとかこのノルティア州にたどり着いて父上の保護を受け、そこで正規軍に追われる理由を知ったというわけさ」

「おとなしく従ったの? 先輩なら、もっと反発するかと思ったのに。少なくともジョルジュ先輩を探しに行く、くらいはするかと思った」

「……………」

「おそらく、会長を巻き込むつもりかと言われてしまえば黙るしかないのだろう」

 

 ユーシスの言葉にアンゼリカは沈黙する。

 それが、答えでもあった。

 しかし、トワがここで反論するように割り込む。

 

「ううん、アンちゃんは私を理由にしてたわけじゃない。……考える時間も、欲しかったんだ。私達には」

「会長……」

「アンちゃんに比べれば腕っぷしは強いわけじゃないけど、私だって戦える。それをアンちゃんは知ってくれてるから」

 

 トワの援護に、アンゼリカは軽く息をつく。

 その理由も間違っていないが、彼女の中でトワを守りたい気持ちも確かにあったのだから。

 

「じゃあ、気持ちの整理はついたの? さっきみたいに現実逃避してたのを見れば、まだだろうけど」

 

 フィーが尋ねる。

 気持ちの整理……つまり、親友であるクロウ・アームブラストの現状について、ということだろう。

 アンゼリカの暴走はそれを紛らわせる面もあったと思うが、おそらく半分以上がトワへの大きな感情が締めているのも間違いではない。

 

「それは……」

「俺達が聞いた話では、クロウ先輩……クロウをおびき寄せる餌として二人……三人を使うという思惑が正規軍と貴族連合の間で一致している。

 後は互いにどう出し抜くかを画策しているところだろう。その辺りは俺にはわからないが……」

「ちょっと待てよ。ここでお気持ち表明、なんて青春ごっこしてる暇があるなら、さっさとあの騎神のところへ行くべきだろうが」

 

 身も蓋もない、と言ってしまえばそれまでだが、正論でもあるアッシュの言葉。

 親友と思っていた相手の裏切りと、その人物を……す手伝いを強要させられるかもしれない二人の気持ちに共感していた面々はアッシュに鋭い視線を送るが、アルティナがそれを遮った。

 

「ここはアッシュさんの言葉に同意します。悩むのであれば、エリンでも出来ることです。我々はすぐにでもお二人を避難させるべき、と提示します」

「ハッ、良いこと言うじゃねえか」

「リィンさんの判断に従っているだけですので」

 

 むしろリィンであるならアッシュを咎めると思うが、この場にいない以上は任務が優先される。

 トワはまごまごと口を濁らせるも、その意見に納得しアンゼリカも共にオズぼんの元へ向かおうとする。

 が、それをフィーが止めた。

 

「待って。もう遅いみたい」

 

 即座に双銃剣を抜き放ち、部屋全体を見渡すフィー。

 一体何事、と尋ねようとするアリサの前に、同じく法剣とボウガンを構えたロジーヌが立った。

 その動きに状況を把握した一同。

 ユーシスとアッシュは武器を取り出し、トワの側にはすでにアンゼリカとアルティナが静かに佇んでいた。

 

「まーまー、ボン達。そう気張る必要ないで」

 

 緊張した場に合わないのんきな声が響く。

 ブレードライフルを担ぎ上げ、サングラスをかけた萌黄色の髪の男、ゼノ。

 フィーが所属していた西風の旅団、その連隊長の一人である。

 

「西風の……!」

 

 彼がいるということは、とフィーは気配を探ると、彼女達の反対側の扉にその男が現れた。

 

「レオ……」

「久しいなフィー。さらなる能力の向上を確認出来て俺も鼻が高い」

 

 筋骨隆々とした体躯を持つドレッドヘアーの男、レオがゼノと同じサングラス越しにフィー達を見下ろす。

 挟み撃ちの陣形に、自然と学生達は背中合わせになるように固まる。

 

「……いつの間に乗っていたの。何かあればヴァリマールが知らせてくれるはずなのに」

「そう無理言いなさんな。今奴さんはお見合い中やからな」

 

 そう言って車外――正確にはヴァリマールが鎮座している場所を指差すゼノ。

 はっとするアリサがARCUSでオズぼんと連絡を取ると、即座にレスポンスが返る。

 

「フフフ、アリサ嬢。なかなかの窮地のようだな」

「のんきか! 一体何が起きてるの!?」

「貴族連合の部隊に囲まれている。しかも機甲兵が二体付きでな」

 

 その言葉がARCUS越しに届いたのか、息を呑む一同。

 おそらく乗り込むのと同時に機甲兵をヴァリマールに張り付かせ、動きを封じているのだろう。

 いかにオズぼんの力で転移が出来ると言っても、機甲兵に囲まれているのであればその余裕はない。

 転移があるから大丈夫、という楽観視が招いた油断とも言えた。

 

「起動者のいない騎神が通用せえへん、ってのはお嬢はよくわかっとるよな? 何やら髪の色違うけど、あの短い時間でイメチェンか?」

「ほっといて!」

「ま、色々動いとったみたいやけど、堪忍な」

「どうしてこの場所が。まさか、ログナー侯は俺達を」

「いいや、おそらく父上すら欺かれていたんだろう。言ってはあれだが、なかなかに親ばかな面があるからね」

「ハッ、身内同士で監視してたってか? 何が連合だか」

 

 耳の痛い話やなぁ、と他人事のようにつぶやくゼノ。

 ルーファスがゲルハルトにトワとアンゼリカを引き渡すよう通達があった時点で、彼の行動には監視が付いていた、ということだ。

 

「素直に渡せばそれで良し、今のように別の場所へ避難させるのであれば猟兵を使い妨害する。作戦に保険をかけておくのは、良い参謀と言えますね」

「だって、ユーシス。お兄さん褒められてるよ」

「……素直に口にしづらいことを言うな」

 

 皮肉にも似たフィーに顔を歪めるユーシス。

 褒めると言えば、とレオが言う。

 

「あの者はやはり我々に都合良く動いてくれたな。正規軍の追手を抑えているため、こちらの消耗が抑えられる」

「あの者……リィンのことか」

「正規軍の追手……ひょっとして、ルーレに残った理由ってミリアム?」

 

 直接今のミリアムと出会ったフィーとユーシスは、なぜリィンがわざわざアリサ達と離れたのか、その理由を察する。

 おそらく一目見て、ミリアムの様子が尋常でないことに気づいたか……どちらにせよ、今リィンはミリアムといる、ということだ。

 それを聞けば、ニヤリと二人は笑った。

 

「色々とあるようだが、この場での答えは簡単だ。貴様らを倒し、会長達を避難させ、リィンと合流する」

「結局、この場で出来ることなんてそれだけだもんね」

 

 後輩達がこの状況を打開しようと意気込む中、アンゼリカがトワに語りかける。

 

「……トワ。クロウを止めるという目的を、大人に任せるか自分達でするか……どうやら覚悟を決める時のようだ」

「っ」

 

 アンゼリカの言葉にトワがびくりと体を震わせる。

 彼女達が悩んでいた理由は実に単純だ。

 クロウをどうするか、である。

 彼が蒼の起動者であり、貴族連合側。加えて自我すらまともではない状態で暴れていることを聞いて思ったのはそれだ。

 

 暴力を恐れ、暴力を知るためにトールズ士官学院に入った彼女は、親友(クロウ)という暴力への答えを強いられていた。

 大人……貴族連合の考えは、クロウを利用してこの内戦を早く終わらせるというものだ。

 それは内戦による被害を考えれば、うなずける言葉だ。

 けれど、それはクロウを犠牲にするのだとも理解していた。

 彼が起こした様々を思えば、それは一理あると思った。思ってしまった。

 そんなふうに考える自分に、トワは嫌悪し悩みは深まってしまったのだ。

 

「お祖父ちゃんから言われてたのにね。都合の悪いことから目を逸らすな、って。あの時*1、リィン君が言ったことにうなずいてたら、こんなことにはならなかったのかなって考えがずっとあった」

「トワが悪いわけじゃない。悪いのは私達より別のものを取ったクロウだ」

「うん。だから。だからね――必要だったのは、自分から動くことだった」

 

 取り出すのは、オリヴァルトより渡されたツァイス中央工房製(ZCF)の魔導銃。

 

「こうして、みんなが私達を助けに来てくれたみたいに――私も、私達もクロウ君と話したい。少なくとも、暴れてるだけのクロウ君は助けたい!」

「やれやれ、難しいことを言ってくれるが……試す前から諦めるよりかはいいか」

 

 上辺でなく、トワが心から立ち直ったことを察し、アンゼリカもまた心からの笑顔を浮かべる。

 自分が本心混じりの冗談で慰めていた甲斐もあったというものだ、と。

 そうして、上級生を加えたユーシス達は西風の旅団と対峙する。

 歴戦の猟兵は、それを笑顔で迎えた。

 

「ま、こうなるだろうとは思っとった。今みたいに、若いんやから思う存分気持ち吐き出していきや」

「目的は果たさせてもらうがな」

 

 それぞれ、ブレードライフルと機械化手甲を構えるゼノとレオ。

 

「――行くよ」

 

 己の成長を見せつける。

 そう言わんとばかりに、古巣との戦いはフィーが先陣を切った。

 

 

 西風の旅団の実力と連携は、リィンが居た時よりも数が増えたといえ実力差は歴然としているはず。

 しかし、当時と今との決定的な違いがその差を大きく埋めていた。

 

「ちっ……やり辛い!」

 

 舌打ちするのはゼノ。

 アイゼングラーフ号の車内にあって逃げ場のない場所にばらまかれた爆弾に対し、ロジーヌのボウガンがその全てを撃ち落とす。

 戦術リンクで援護を読んでいたフィーが、その合間を駆ける。

 ゼノは応戦しようとするが、そこに伸びる法剣の刃がブレードライフルを絡め取り、満足に武器を振るえなくする。 

 間隙を縫いつけるスカッドウイングがゼノを斬りつけ、追撃の銃弾が放たれる。

 射撃はなんとか避けたものの、すぐさまフィーが迫る。

 

 ゼノは力ずくで解いたブレードライフルを一閃するが、すでにフィーは視界から消えていた。

 

「うっとおしい!」

「余裕なくなってきてるよ、ゼノ」

 

 法剣が伸びる。

 それは空中にフィーの足場を作り、戦術リンクによって法剣の軌道を見抜くことによって三次元機動をフィーに与えていた。

 二人の連携が優れているのもあるが、ゼノを追い詰めている理由はロジーヌの疑似聖痕にあった。

 鬼の力ほどの力の上昇はなくとも、異空間の検出……つまり空間把握能力という副産物は縦横無尽に動き回るフィーへこの上ない援護として機能しているのだ。

 さらに……

 

「斬!」

「ラァ!」

 

 ユーシスとアッシュの同時攻撃がゼノのジャケットを切り裂き、浅いながらも肉をえぐる。

 ユーシスは内戦中、ルーファスの指示によって指揮力が向上し、その意図を戦術リンクが繋げることでよりその連携に磨きがかかっていた。

 ゼノはそれらを凌ぎながらも、内心で少しまずいことになってきたなぁ、と予測を超える成長をしている家族とその仲間への評価を上げた。

 

 対し、レオニダスも苦戦を強いられていた。

 

「そこっ!」

 

 特筆すべきはアリサだ。

 鬼の力による身体能力の向上は、彼女の導力弓をバズーカじみた威力を伴った一撃に昇華させていた。

 パワータイプであるレオニダスが防御に回らなくなるほどの一撃を前に、泰斗の拳士であるアンゼリカが隙を見逃さない。

 

「ゼロ・インパクト!」

「――追撃します」

 

 闘気が十分に練られた正拳突きがレオニダスに突き刺さる。

 思わず吹き飛ぶレオニダス。

 

「強化するよ!」

 

 さらにトワによってブーストされたアルティナのアーツが展開した。

 

「シルバーソーン」

 

 レオニダスの周囲を光の剣が降り注ぎ、切っ先から生まれた線が走り魔法陣を描く。

 包み込むように輝くそれは六芒星となって中心にいるレオニダスごと爆ぜた。

 思わぬ苦戦、とはこのことだろう。

 西風の二人は、五月の時より成長しているといえまだ二人でなんとか出来るレベルでしかない、と思いこんでいたのは反省点でもあった。

 しかし、そこは歴戦の猟兵。

 予想が上回ったというのであれば、次善の策をいくつも用意しているのがプロである。

 

「レオー! しゃあない、プランBや!」

 

 フィー達の波状攻撃を受けながら、それでもシルバーソーンを撃たれたレオニダスへ追撃しようとするアンゼリカを牽制射撃で止めるゼノ。

 

「出せ!」

 

 同時にレオニダスが通信端末を取り出し、叫ぶ。

 何をするのかと構えるⅦ組だったが、答えはすぐにやってきた。

 

「うわっ!」

「地面が……!」

 

 足元が揺れる。

 同時に襲いくる横への重力。

 窓から見える景色がだんだんとズレていき――アイゼングラーフ号が発車しているのだと気づいた。

 

「このままガレリア要塞まで直通させる気か!?」

「わからないけど……止めたほう――」

「!? 会長、先輩! 今すぐ窓から逃げて!」

 

 何かに気づいたようにフィーが叫ぶ。

 理由はわからないが、切羽詰まった様子のフィーに従おうとするトワ達だったが、一手遅かった。

 

「戦いっつーもんは、仕込み段階で始まってるもんやで」

「まさか……線路に――!」

「正解! ついでに、や!」

「ディザスター・アーム!」

 

 一瞬の早業だった。

 二つの扉に殺到した西風の旅団は、それぞれの攻撃で連結器を破壊する。

 フィー達がいる車両が切り離された理由は、すぐに訪れた。

 刹那、地面が大きく揺れる。

 ふわり、と浮き上がる体。

 フィーの脳裏に閃くのは、かつてクロスベルでリィンと組んでシャーリィと戦ったチェイスバトル。

 その時に《銀》によって仕掛けられた爆弾が導力車を吹き飛ばした光景を思い出していた。

 あの時と違うのはリィンがいないこと。そして――

 

「なっ、どんどん空へ上っていくぞ!」

「まさか……この車両ごと、運ばれているのか!?」

 

 その事実は、空の密室に彼らが閉じ込められたことを意味していた。

*1
121話参照

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