はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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フフフ、息子よ。Ⅶ組と再会しよう⑪

「やられた……!」

「知っているのか、フィー!?」

 

 最初に気づいたのはフィーだった。

 彼女は自分達を運んでいるものの正体を知っていた。

 揺れる車両に、各々が固定された座席にしがみつきながらフィーの言葉を待つ。

 

「《クーフリン号》……! まさかここで持ち出してくるなんて!」

 

 それは、西風の旅団が運用していた作戦揚陸艇の名称であり、ゼムリア大陸最高峰の猟兵団として名を上げた理由の一つだ。

 そのルーツは団の創設にまで遡る。

 塩の杭という災害を受ける前のノーザンブリアは海上貿易が盛んであり、海運は元より航空にも力を入れていた。

 

 七曜歴1175年には実用化されていた旅客飛行船など、一般にも普及され始めた頃、ルトガー・クラウゼルは当時ノーザンブリア大公国軍の大佐にして、サラの養父であるバレスタイン大佐との縁により、己の飛行艇を入手していた。

 猟兵として活動する中、壊れては修繕を繰り返したそれは、後に西風を象徴する船となるまで成長したのである。

 

 当然、西風メンバーだったフィーもその船で生活していた。

 故に駆動音からこの船が《クーフリン号》と理解したのだが、まさか自分達に牙を向くものとなるなんて思いも寄らなかった。

 

「揚陸艇って、今それに運ばれているの!?」

「うん……」

 

 アリサの絶叫に、フィーは己が持ち得る情報を話す。

 すぐにアルティナがサーチモードと称して周辺の状況を探ると、いわゆる釣りのように突き刺さったアンカーで運ばれている状況なのだと伝わる。

 それ以上に、今自分達を運んでいるのが《クーフリン号》であるならば、ルトガーもこの場に来ている可能性が高い。

 そう思い至った途端、フィーはすでに言葉を口にしていた。

 

「上には私が行く」

「で、今上空何アージュだよ。夜だから見えづらいが、少なくとも百はありそうだぜ。しかも上空の強風に煽られて足元崩したら、そっから真っ逆さまだぞ?」

「そんなヘマはしない」

「あんたが良くても俺達はどうなるっつー話だよ。案外、元家族ってんならそのまま向こうがあんただけ確保、ってことにならねえ保証はない」

「…………西風の猟兵をなめてる?」

「落ち着けフィー。アッシュも言葉を選べ。……アリサ、ノルドで行ったようなハッキングは出来ないのか?」

「ヴァリマールはおろか導力端末もない状況で無茶言わないでよ! そ、そうだアルティナ。貴女のクラウ=ソラスなら、落下するアイゼングラーフ号の一車両を受け止められる?」

「落下の衝撃を加算した状態で無茶を言わないでください」

(……ライサンダー卿へ連絡を入れて……いえ、介入のタイミングはここでない以上、おそらく頼れない……)

 

 話し合いに決着はなく、時間と高度だけが上積みされていく。

 そこにトワの静かな声が届く。

 

「……相手の狙いは私とアンちゃん。少なくとも、私達を無事にガレリア要塞へ届けるのが前提だから、落とされる心配はないと思う」

「トワ?」

「だから、フィーちゃんの言う上に行くってのは案外ありかもしれない」

「……まさか、そのまま《クーフリン号》を乗っ取るということ?」

 

 頷くトワ。

 なんとも大胆なと驚く面々。

 それに、とトワは続けた。

 

「ここで私達が暴れるのもきっと想定内。案外、このまま落ちても《誰か》が受け止めてくれるかもしれないよ?」

 

 怖いからしないけど、と冗談混じりに言うトワ。

 その誰かはきっと西風の旅団か貴族連合といったこの場における敵なのだろうが……各々の脳裏には満面の笑みを浮かべる黒髪の少年の姿が浮かんでいた。

 

「いや、流石に……」

「うん……でも……」

「なくは、ないかも」

「――不可解、です」

 

 各々同じ顔を浮かべたのだろう、Ⅶ組とアルティナが呻く。

 ロジーヌは困ったように苦笑しているが、否定もしなかった。

 

「――不確かな希望より、確実に出来ることを推奨するね。なにせ私のトワが提案した作戦だ」

「……そこの変態女はさておき、乗り込むってなら俺も賛成だ。少なくともここでじっとしてても何の進展もねえ」

 

 アンゼリカとアッシュも同意する。

 確かな助けが期待出来ない以上、それが最適解のようにも思えた。

 仮に《そう》であったとしても、ただ助けられるだけでは今までと同じ。

 鬼の力を失ったらしい《彼》を助けるのであれば、この窮地を自力で脱出するくらいはしてみせよう、とフィーは意気込んだ。

 

「わかった。じゃあまず私が道を確保してくるね」

 

 とフィーは窓を開けて猫のような軽やかな動きで車両の外――上空数百アージュの足場へ降り立った。

 ゴウッ、と強い風がフィーの軽い体を揺らすが、車両の出っ張りを掴み、上手く体のバランスを取って匍匐(ほふく)のスタイルを取る。

 先に見えるアンカーの上部には見慣れた揚陸艇が存在しており、約十アージュほど登れば到達できそうだ。

 

「まさか、ここでこれが役立つなんてね」

 

 言いながら、フィーは以前彼から受け取った《銀》のワイヤーを手に進む。

 かつてクロスベルで行われたチェイスバトルにて、彼によって切断されたワイヤーはシュミット博士が投げたガンドルフによって修復されている。

 伝説の凶手が使っていただけあって、細さに反して耐久性も抜群であり、長さも申し分ない。

 それを窓から垂らし、適当な座席に固定するよう指示して自身はアンカーに巻く。

 こうすることで命綱として機能させるというわけだ。

 しっかり固定されたことを確認し、フィーはそれを伝って窓へ顔を出す。

 

「ん、良い感じ。付いてきて」

「付いて来て、って軽く言うけどね……」

「アッシュ、俺達が先行するぞ。アンゼリカ先輩も一緒に」

「あん?」

「ふむ?」

 

 何故かユーシスが率先する。

 呼ばれたアッシュとアンゼリカは首を傾げたが、すぐにその理由を理解した。

 

「なるほど、貴族だから婦女子の扱いはお手の物というわけか」

「そもそも大人になってないガキの下着なんざ興味ねえっての」

 

 口を濁したというのに、アッシュには通用しなかったようだ。

 下着という言葉に反応してスカートを履いているトワとアリサがばっと手で抑える。

 フィーはショートパンツであり、ロジーヌは踝まで届くロングスカート、アルティナはそもそも履いていない。

 阿呆が、とユーシスは歯に衣着せぬ物言いのアッシュにため息をつく。

 

「おっとそれは聞き捨てならないねアッシュ君。そもそも――」

「いいからさっさと行くがいい」

 

 アンゼリカの危ない発言を遮るように、ユーシスは彼女の背中を押す。

 ああまだ語ってない、とゴネていたがコントしている状況でもないのですぐにワイヤーを伝って移動してくれた。

 アッシュとユーシスもそれに続くと、ロジーヌが振り返ってトワに言った。

 

「会長も来られるのですか? 無理に付いて来なくても、と思いますが……」

「言い出しっぺは私だしね。それに、ここで立ち止まってたらクロウ君に届かないよ」

「そういうことでしたら、私から言うことはないですね」

 

 トワの決意を尊重し、ロジーヌは殿をアルティナに頼む。

 クラウ=ソラスによる変化があれば、仮にワイヤーから手が離れてしまっても、何らかの形ですぐに救助することが出来るだろうから、とのことだ。

 アルティナもそれに異論はなかったので、トワ、ロジーヌ、アリサが登っていく様子を見ながら殿を務める。

 フィーが補助に入ってもアリサが特に大きな声で絶叫していたのが煩わしく、ふと顔を反らしてしまった。

 空を運ばれる車両から見える景色は豆粒のようにルーレ近辺の光景を映し出していたが……その中で、ひときわ輝く《白》を見たような気がした。

 

「アルティナ? どうかした?」」

「あ……いえ、なんでもありません」

 

 気の所為だろう、とアルティナは忘れることにした。

 今雇い主に与えられた要請は、自分が合流するまでユーシス達を助けることなのだから。

 

 

 《クーフリン号》の船内はアルセイユやカレイジャス、パンタグリュエルといった有名な飛行艇ほど大きなものではない。

 それでも生活空間や鍛錬のための空間など、各種施設が整った飛行艇である。

 しかし、アンカーを登った先……出撃口を進むフィー達を待っていたのは、そのどれかではなく、全員が登りきった先に閉じたシャッターであった。

 

「なっ、閉じ込められた!?」

「チッ……おい他の出入り口はねえのか?」

「…………」

「フィー?」

「皆さん、武器を構えてください」

 

 ロジーヌがつぶやくと同時に、彼女は法剣を振るった。

 何事、と驚く一同をよそにロジーヌが虚空へ振るった法剣が、別の()()によって弾かれる。

 ロジーヌは予想以上の衝撃に体を崩してしまうが、すぐに自分から転がって立ち上がった。

 

「ロジーヌ!?」

「フフ、腕を上げたようねロジーヌ。まだあれから半年も経ってないっていうのに、女の子の成長は早いわね。変化も早いかしら?」

 

 かつ、かつ、と。

 一歩一歩己の存在を誇示するように強調される足音と共に、彼女は現れた。

 

「スカーレット姉さん……」

「アンタは……!」

 

 ロジーヌは縁深い者として。

 アリサは己の故郷を危機に貶めた憎き相手として。

 それぞれの因縁を前にアッシュが言う。

 

「知り合いかよ、ボ……シスターの姉ちゃん」

「元、星杯騎士団の従騎士にして、帝国解放戦線の幹部《S》……」

「今は、貴族連合に雇われたただのスカーレットだけどね」

 

 言いながら、スカーレットはロジーヌに弾かれた法剣を元に戻す。

 そして見せびらかすように、彼女は左手に持ったカードを揺らす。

 

「先の扉を開けるためのキーさ……ようは私を倒さないと先に進めないってわけ」

 

 そう言ってスカーレットはカードキーを懐に収める。

 その佇まいにどこか不気味さを覚えながら、アンゼリカが拳を構えた。

 

「麗しい女性相手に振るう拳はない、と言いたいところだがおてんばが過ぎればそうと限らない……悪いが、貴女を倒して前に進ませてもらうよ」

「ああ、アンゼリカ・ログナーだっけ? アンタとトワ・ハーシェルって子は殺すつもりはないから安心していよ。クロウの親友なら、私にとっても必要だからね」

「ゼノとレオはどこ?」

 

 仮にもゼノとレオニダスを追い詰めたメンバーを前にしても、スカーレットの余裕は崩れない。

 フィーは胸の内から湧き出る嫌な予感を抑えつつ、双銃剣をスカーレットに向ける。

 

「あら、お兄ちゃん達に助けを求めてるの? かわいい子ね」

 

 返答は、一発の銃声。

 不意打ちとも言えるフィーの攻撃はしかし、スカーレットが振るった法剣によって両断される。

 

「なっ」

「銃弾を斬った……?」

 

 驚くユーシスとトワ。

 フィーから冷や汗が垂れ、先程感じた嫌な予感がとある確信を懐きつつあった。

 

「アリサ!」

「っ!」

 

 戦術リンクにより、フィーの意志を汲んだアリサの導力弓が放たれる。

 防御に回ったレオニダスでさえ吹き飛ばすパワーを得たアリサの導力弓はしかし、レーザーのようなそれに法剣が巻きつけば、圧殺されるように力を散らす。

 

「……おいおい、マジかよ」

「アッシュさん?」

 

 左目を抑えながら、アッシュはスカーレットの眼帯を凝視していた。

 鬼の力を秘めた彼の眼力は、スカーレットの眼帯の下から溢れる力を認識していた。

 

「アンタ、一体何を隠してやがる」

「あらあら、随分と目がいいのね」

 

 隠す必要もないと思ったのか、スカーレットは微笑を浮かべながら眼帯を解く。

 その先にあるモノに、周囲が息を呑む。

 

「義眼……?」

「いや、七曜石……?」

「ロジーヌ。貴女ならわかるんじゃないかしら。()()()()()()なんだから」

 

 質は違うけどね、とおどけるスカーレット。

 問われたロジーヌは、スカーレットの右目にはめ込まれた石の表面の模様に絶句していた。

 

「聖痕……」

「疑似、だけどね。それに聖なるなんてもんでもない」

 

 答えは言った、とばかりにスカーレットの右目から膨大な霊力が爆発するように爆ぜた。

 放出する威圧感をくぐり抜けた先、スカーレットの右目は見慣れた瞳……鬼眼に染まっていた。

 

「疑似聖痕の上から、クロウから供給される力……あの忌々しい坊やが使っていた鬼の力で上書き。まったく、あの博士はほんと突然変異の技術者だよねえ」

「シュミット博士か……!」

「クロウは自我をなくして、ヴァルカンも今や機甲兵の一部。私だけ何も失わない、なんて真似出来るわけないだろう?」

 

 そもそも、とスカーレットは続けた。

 

「ケチが付いたのは、私の甘えから。ロジーヌ、今度こそちゃんと、貴女を殺してあげるわ」

「姉さん……」

「あと――」

 

 法剣が分離する。

 隠しもしない鬼眼から伝う力を集めた刃は背後へ向かい――背後からステルスで姿を隠して急襲しようとしていたクラウ=ソラスを切り裂き、アルティナを吹き飛ばした。

 

「アルティナ!」

 

 追撃を放たれる前にフィー達が動く。

 アリサとトワの射撃は無情にも分離した刃の群れに打ち消されるが、もう刃はないと近接するアンゼリカと対峙するスカーレット。

 

「下手に近づかないほうがいいよ?」

 

 拳を振るうより早く、それは訪れた。

 アンゼリカの視界に赤い血しぶきが舞う。

 それはスカーレットではなく、己の血液なのだとアンゼリカは斬られてから気づいた。

 苦悶を浮かべる表情を作るより早く、スカーレットの拳がアンゼリカの腹に打ち込まれる。

 吹き飛ばされた肉体に反応はなく、視界はすでに闇に染まっていた。

 

「アンちゃん!」

「くっ、早く手当を――」

「近づかないで!」

 

 アンゼリカを助けようとユーシスをロジーヌが一喝して止める。

 心優しい彼女が放つには鋭く、悲壮感に満ちた叫びだった。

 

「シスターの姉ちゃんの言う通りだぜお貴族様。あの法剣って刃は分離してるだけじゃねえ……あの女の周囲を結界みたいになって回ってやがる」

 

 ロジーヌは同じ技術がもたらす感覚で。

 アッシュは鬼の力による霊視でスカーレットの斬撃の正体を見抜いていた。

 彼女の周囲には分離した法剣の刃が飛び回り、攻防一体の技として機能していた。

 霊力の糸とも呼べるそれが分離した刃と繋がっているのをアッシュの目は映しており、それが凄まじいまでの制御力による賜物なのだと見抜く。

 

「フフ、ご自慢の戦術リンクで攻め込んで来ないのかしら」

 

 ジリ……とスカーレットが一歩進むが、フィー達は逆に一歩下がってしまう。

 その様子がおかしいのか、いやらしい笑みを浮かべるスカーレット。

 フィーは残弾を撃ち尽くすが如き双銃を乱射するが、その尽くが両断されていく。

 

「アリサさん、これを!」

 

 その間に、ロジーヌは己が持つゼムリアストーンのボウガンをアリサに渡していた。

 同じ弓であるが、鬼の力を持つアリサならばゼムリアストーンの武装を最大限に活かしてくれるだろう、と判断してのことだ。

 

「こん……のぉ!」

 

 アリサはジャンルは同じでも不慣れな武器であるそれを前に嘆くことなく使ってみせる。

 彼女とて今が危機的状況であることに変わりないと理解していたからだ。

 放たれた、鬼の力がブーストされたボウガンは真っ直ぐスカーレットに向かい――再連結した法剣の一閃によって弾かれた。

 

「問題ないみたいだね。これならあのままでも良かったかしら」

「…………あ」

「いえ、刃を戻したということは――」

「近寄れる」

 

 機を逃すことなく、ロジーヌとフィーはスカーレットへ走る。

 戦術リンクでその意図を悟ったアリサは可能な限りボウガンによる連射を行い、法剣結界の構築を阻止する。

 二人は同時攻撃を仕掛けんとそれぞれ武器を振るい――

 

「気をつけろ、()()()()が動いてやがる!」

 

 アッシュの激で、己の武器を弾かんとする分離された法剣の刃が迫っていた。

 

「アイオロス……セイバアアアアァァァァァァァ!」

 

 だが、そこにユーシスが投擲する導力剣が二人の間に差し込まれ、その爆発によって制御が乱れたのか法剣の刃が一瞬だけ動きを止める。

 その隙を見逃す二人ではなく、フィーとロジーヌはすでに離脱していた。

 

「ふぅん。数が増えただけ、ってわけでもないようだね」

 

 そうつぶやくスカーレットの左手には、短剣サイズの法剣が握られていた。

 仮に法剣の結界を抜けても、もう一つの短い法剣を使った二刀流で確実に相手を仕留めるスカーレットの新しい戦術であった。

 

 離脱した足をアンゼリカまで進ませ、涙を滲ませながら治療するトワの横で治癒の法術を展開するロジーヌ。

 そしてフィーは投擲した新しいワイヤーをユーシスが投げた剣の柄にくくりつけ、引っこ抜いて彼に剣を返していた。

 

「助かったけど、安易に武器を投げるのは関心しない」

「フッ、減らず口を叩ける余力は残っているようだな」

「で、どーすんだ。突破口が見えてる……はずねえか」

 

 いっそ笑ってしまうほどに不利な状況だった。

 これなら大人しく車両に揺られたままで良かったのでは、と思ってしまうほどだ。

 それでも、それを否と決めたのは自分達だ。

 大人しく逃げ帰る真似は、誰一人としてしなかった。

 

「それなら、素直に一人ずつ減らしていけばいいだけね」

 

 スカーレットが照準を定めたのはアリサ。

 この中で明確にスカーレットの力に対抗しうる可能性を秘めたのは、彼女だけだ。

 故に狙うの必然でもあった。

 

「させ……ません!」

「練度が甘い」

 

 治療中のアンゼリカから手を離せないロジーヌが、法剣を分離してスカーレットへ飛ばす。

 だが巧みな操作技術を持つスカーレットの前ではひな鳥の如し。

 軽く振るった法剣によって一掃されてしまう。

 フィーも反応していたが、狙いがアリサであることに意識を取られ――反転して己を狙ってきたスカーレットへの対処が遅れてしまった。 

 

「えっ――」

「力があっても技術を伴わないあの子(アリサ)より、()()()()なアンタが一番仕留めやすそうだからね。まずはアンタだよ、妖精(シルフィード)!」

「――クラウ=ソラス!」

 

 突き出された法剣がフィーに刺さる寸前、幼くも気迫溢れた声が木霊する。

 スカーレットの横に出現したクラウ=ソラスは、己の身が法剣の刃に切り刻まれながらも振りかぶった拳の一撃をスカーレットに叩き込む。

 だが、反応速度はスカーレットも負けてはいない。

 即座にもう一つの法剣で直撃を避け、巧みにクラウ=ソラスの拳を受け止める。

 一度距離を離されたものの、傷一つ負うことなく受け身を取った。

 

 再度疾駆するスカーレットを止める手段を、フィー達は持っていなかった。

 だがしかし、すでに明暗は分けられている。

 メキ……という異音をスカーレットが、アリサが、フィーが、アッシュが。

 聴覚に優れた面々が捉えた。

 亀裂を生むようなそれは、徐々にその数を増やし、近づいてくる。

 

 クラウ=ソラスが、アルティナが己を削って稼いだ数秒。

 その先で、《クーフリン号》の機体が大きく揺れる。

 空に居るはずなのに、まるで地震が起きたかのように体を揺らすアリサ達。

 一体何事かと騒ぐ彼らの前に――それは足元を突き破って現れた。

 フィーとスカーレットの合間に生えたゼムリアストーンの装甲体、一部が剥がれたその頭部。

 見慣れた、見慣れてしまった展開を前にⅦ組とその友人は乾いた笑いを漏らす。

 

「ぐう、ちょっと勢い付けすぎた!」

「あははー! ()()()ってばもう!」

 

 突如として現れ、《クーフリン号》の出撃口に頭を生やした灰の騎神からは、聞き慣れた声が聞こえてきた――




赤い星座の強襲揚陸艇が《ベイオウルフ号》なので、オリジナルで西風の旅団にも揚陸艇搭載です。
なお初登場で穴を開けられた模様。

スカーレット
「あのっ、再登場で強くなったんです……けど……!」
ロジーヌ
(無言の肩ポン)
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