倒れるレオニダスを見やり、リィンはロジーヌから借りた法剣を彼に向ける。
フィーがその姿に思わず声を荒げようとするが、リィンが振り下ろした法剣はレオニダスの体でなくマシンガントレットを
おあいこだ、と法剣をロジーヌへ渡しながら太刀の敵を取ったリィンはアリサへ首を向ける。
「アリサ、今のうちに騎神に乗ってくれないか? 親父が言うには、ヴァリマールの調子を戻すにはアリサの力が必要らしいんだ」
「そうなの? でも私、そんなこと……」
「そこは多分親父がなんとかしてくれると思う。頼んだ」
唐突なリィンの発言には慣れたものの、自分も理解していない内容を噛みしめるにはアリサの経験が足りない。
それでも切羽詰まっている事に変わりはないため、アリサは自分を納得させてロジーヌにボウガンを返しながらヴァリマールの中へ乗り込んでいく。
「さて……とりあえず会長にアンゼリカ先輩、お久しぶりです。アンゼリカ先輩は……服が血まみれですけど、大丈夫ですか?」
「トワの献身のおかげでね。でも心配してくれてるのに、背中に拳を打ち込むなんて真似したのかい?」
「でも衝撃とかないですよね?」
「ないから少しグチりたくなるのさ。剣術だけでなく、体術までここまで仕上げているなんて。プライドをひどく揺さぶられるよ」
泰斗流の拳士として、リィンが使った破甲拳・幻葉に思うところがあるアンゼリカ。
剣士と思っていた相手が自分の領域でも己の届かぬ力を発揮するのであれば、悔しさも相応のようだ。
「ま、それはひとまずおいておいて、礼を言うよリィン君、ありがとう。そして無事で良かった」
「はは、心臓撃たれてしばらく寝てましたけどね」
「普通永眠だよ!」
苦笑するリィンに、会話を見守っていたトワが叫ぶ。
詰め寄ってくる小さな年上にどうどう、と抑えながらも今は回復したので大丈夫ですと告げる。
「ううん……いっぱい言いたいことはあるけど、私からもお礼。ありがとね、リィン君」
「いえ、お二人の礼はきちんと逃げてからでいいですよ。親父、二人をエリンへ転移してもらえるか?」
そう言ってヴァリマールの頭部へ話しかけるリィン。
しかし、返ってきたのは性能低下につき転移が難しいという返答だった。
ただでさえ隻腕な上にザクセン鉄鋼山にてドラッケンに袋叩きされたことで、本当に騎神としての外見を保つのが精一杯な現状らしい。
アガートラムの援護があったといえ、中型飛行艇一つを押し返すにはいささか以上に無理があった。
「なら、今のうちにこの人を縛っておくか。フィー、《銀》さんのワイヤーまだ持ってるか?」
「《クーフリン号》に釣られてる車両は見たよね? そこから登ってくるのに使ったからないよ」
「なら俺の武器を使え」
「いいのか、アッシュ」
「……心底ムカつくが、あっても意味ねえからな」
不機嫌そうに舌打ちをしながら、アッシュが仕込み戦斧のギミックを使ってレオニダスを縛っていく。
リィンとしては、レオニダスを倒す最後の一押しに活躍してくれたのだからそこまで気負うことはないと思ったが、スカーレットとの連戦から何一つ自分の力が通じなかったことはアッシュの自負をひどく刺激したようだ。
それでもレオニダスが意識を取り戻したら、黒いウォークライと合わせて引きちぎる可能性はあるとフィーは言う。
「不安はもっともですが、今はスカーレット姉さんを追いませんか? 七月のことを思えば、あの人もまた機甲兵を持っているはずです」
「……そう言えば」
「ボク達が突っ込んできたと同時に消えたから、多分今頃この船に乗せた機甲兵のところに走ってるんじゃないかな?」
「わかっているなら、何をのんきなことを言ってるのですか」
「機甲兵がここに来るとなれば……」
ロジーヌが提案するも、レオニダスとの戦いに時間を取られた以上、すでに機甲兵がこの場に来ることは確定したと考えたほうがいい。
ミリアムの指摘にアルティナが文句を垂れるが、フィーはその間にやるべき行動を頭に描いていた。
「リィン、ヴァリマールは本調子じゃないそうだけど、下に居たドラッケン達を振り切ってきたなら動くことは出来るんだよね?」
「動くだけなら、な。武器を使うにはガーちゃんの助けが必要だ」
「リィンさん。性能ならクラウ=ソラスのほうがより最新鋭――」
「いや、見た様子アルティナもクラウ=ソラスも結構傷ついてるだろ? アルティナは会長とアンゼリカ先輩を抱えてノワールシェイドで隠れててくれ」
「――――――了解しました」
アルティナは言おうとした言葉を飲み込み、了承の意を示す。
その姿にトワが駆け寄り、アンゼリカはリィンに一言告げようとするがそれをフィーが遮る。
「なら、リィンとミリアム以外は私に付いてきて」
「フィー、何を」
「それにあのおっさん放っておくのかよ。せっかくふん縛ったってのに」
「機甲兵が来るなら意味ない。いいから早く」
そう言って説明もせず駆け出すフィー。
その後ろ姿を呆然と見送るも、ユーシス達は何か考えがあるのだとフィーを信じてその後を追う。
「……ノワールシェイド、起動。お二人とも、こちらへ」
「アルティナ、ちゃん……ううん、アンちゃんだけお願い。私はフィーちゃん達を追うから」
「……わかった。トワ、無理はしないでくれよ? 私がアルティナちゃんに目移りしてしまう前に、私の元へ戻って来てくれ」
「ですが――」
「アルティナ、アンゼリカ先輩だけ頼む。会長、フィー達をよろしくお願いします」
「うん、任せて!」
最後にトワがフィー達を追いかけると、その行動を待っていたかのように、デッキの出撃口が開く。
さらに《クーフリン号》が傾き、その勢いでリィンとミリアムは夜空へと放り出されてしまう。
「リィンさん!」
「ミリアム君!」
手を伸ばすアルティナとアンゼリカをよそに上空百アージュ以上の天空に身を投げだした二人だったが、咄嗟にオズぼんが回収していた導力バイクが宙に現れる。
リィンは空中でナイトハルト仕込みの泳ぎを披露してなんとかハンドルを握ることに成功、その間にミリアムはアガートラムを呼び出し、再び導力バイクとの融合を果たす。
「みんなは!?」
「上……あっ、ヴァリマール落ちた」
ミリアムの声に上を見上げてみれば、艦尾に突き刺さっていたヴァリマールが重力に従って落下している。
だが途中で機体を旋回させ、その身を安定させた。
「親父、アリサ! 大丈夫か?」
「はー、はー、な、なんとか……生きた心地しな……って、浮いてるー!?」
アリサは初見である導力ホバーバイクを見て絶叫している。
「ガーちゃんと導力バイクが合体したおかげなんだ」
「すごい、何一つ意味がわからない」
「それより、機体はどうだ?」
「あ、えっと一応戦闘は可能……なのかしら」
「アリサ嬢の鬼の力を拝借し、壊れかけた体を無理やりオーバーロードさせているだけに過ぎん。どれだけ水を入れても、器に穴が空いていてはすぐにガス欠だ」
「……逃げの一手しかないか。でも落とされたのは不幸中の幸いだ。騎神はともかく、機甲兵は空を飛ぶことが出来ないからな。アルティナ、すぐこっちに来て――」
通話モードへ切り替えたARCUSでアルティナへ連絡しようとしたその時、リィンは途方もない殺気を感じてハンドルを回した。
一瞬前までそこに占めいていた空間を、上空より飛来した刃が通り過ぎていく。
どっ、と吹き出た汗が一瞬で冷気を帯びる。
上空での行動は想像以上の寒気で、凍結するほどではないが体の硬直が強い。
その意図を察したアガートラムが熱気を帯びることで多少はマシになるが、問題は今しがたリィンを襲った刃――スカーレットの駆るケストレルが姿を現したことだった。
「チッ、流石にそう簡単には行かないか」
機体越しに聞こえる舌打ち。
だがそれ以上に、リィンは機甲兵が空を飛ぶことに驚愕していた。
「機甲兵が空に浮かんでる……?」
「リィン、違うわ! 足元をよく見て!」
アリサの指摘に、リィンは目を凝らしてケストレルの足元へ視線を投げる。
すると、ケストレルの足場には分離した法剣の刃のパーツが浮遊していた。
「空に足場を作ってる、のか」
「おや、もうバレたのかい。夜だってのに目ざといもんだ。でも……見抜いたからって、意味ないよ!」
ケストレルがバーニアを吹かす。
本来ならば地上戦でも三次元軌道を駆使した高速戦闘を得意とするケストレルは、空においてもその動きに陰りはない。
魔改造された導力ホバーバイクならばそのスピードで振り切る、と考えたのも一瞬。
伸縮する法剣が道行きを塞ぎ、足場以外に使われる分離した刃はリィン達が逃げる自由を封じていく。
嫌らしいのは、分離した刃の一つを常にリィンの周りに張り付かせていることか。
それが一つあるだけでリィンの初動を封じ、その僅かな時間の間に法剣による包囲網が完成してしまう。
直線スピードならばともかく、空中戦における曲線運動においての性能差は圧倒的にリィン達が不利だった。
「くっ……リィン達ばかり狙ってるんじゃないわよ!」
機甲兵に乗っているにもかかわらず、リィン狙いを徹底するスカーレットにアリサが割り込む。
彼女が放つロードフレアは十分な熱量と威力を以て放たれたが、高速戦を得意とするケストレルはそれを悠々と避ける。
さらに法剣による反撃のおまけ付き。
騎神に搭乗するのは何度かあるといえ、本格的な戦闘は初めてなアリサはオズぼんの指示でなんとか被弾を避けるのに手一杯だった。
狙いがリィンであり、手すきの一撃であることがアリサが避けられる理由でもあるが、状況は何の進展もない。
やがて、徐々に追い込まれた先で法剣の刃が導力ホバーバイクの一部をかすめる。
かすっただけといえ、機甲兵のパワーが合わさった一撃は導力ホバーバイクを大きく揺らした。
「うわあああああああ!」
「ううう~~~~~っ!」
ハンドルを離さないようにするのが精一杯のリィンと、歯を食いしばってその背中にしがみつくミリアム。
彼らに出来るのはそれだけで、ついに致命の一撃がアガートラムもろともリィン達を両断――する直前、横合いから放たれた衝撃がリィン達を即死から救う。
「何だい!?」
あと一歩のところで獲物を逃したスカーレットは怒りの瞳で犯人を見やる。
同じくリィン達も目を向ければ、そこに向かってきたのは二機のガンシップであった。
「おまたせ」
「フィー!? ユーシス達も!?」
一人用のガンシップに乗っていたのは、落ちる前に先に別れたはずのフィー達であった。
彼女は《クーフリン号》に搭載された強襲用ガンシップを拝借し、この場に駆けつけてくれたのだ。
まだ彼女が西風の旅団に居た頃は乗ることはなかったのだが、いつでも乗り込めるようマニュアルだけは読み込んで予習していたのがこの場で発揮されたのだ。
「お貴族様よ、しっかり掴まってろよ!」
「ぐっ……!」
もう一機に乗っているのはアッシュ、そしてユーシスだった。
操縦しているのはアッシュのようだが、ユーシスは《クーフリン号》に残るわけにはいかなかったのか座席に無理やり入っているらしい。
マニュアルを読み込む時間などなかったはずだが、アッシュはその天才的な勘と器用さ、何より戦術リンクによる矯正でフィーの動作を真似て無理やり操作しているようだ。なんとも頼れる年下である。
そして複数乗りはフィーのほうも同じこと。
よく見ればフィーの横にはロジーヌとトワが映っており、彼女は三人乗りで駆けつけてくれたようだ。
女性故に体格がユーシスやアッシュより細く、フィーもトワも標準よりも小柄なのが詰め込んで入れた要因らしい。
トワと言えばシスター服越しにもわかるロジーヌの巨イナル部分に後頭部を埋める形になっており、どこか絶望して瞳孔を開くような目つきなのが気になるが。
「オズぼんさん!」
「うむ」
そんなトワの状況を知らないロジーヌが、転移の光に包まれる。
次の瞬間、光の球体に包まれたロジーヌがヴァリマールの中へ入っていった。
「ロ、ロジーヌ?」
「アリサさん、代わります」
ロジーヌが乗り込むと、ヴァリマールの動きから素人臭さが抜け出し、一端の戦士としての動きを取り戻す。
「ロジーヌゥ…………!」
その一連の動きを見せられたスカーレットから、怨嗟の言葉が漏れた。
「姉さん……貴女は私が、止めます」
「待てロジーヌ、今のヴァリマールじゃ無理だ! くそっ、今ガーちゃんが離れたら俺達が落ちるし、クラウ=ソラスも呼べない……どうすれば」
「フフフ、息子よ。安心せよ。補填は今済んだ」
オズぼんの言葉が響き渡ると同時に、ヴァリマールを起点に戦術リンクの光が夜空を塗りつぶす。
ひときわ強く輝く戦術リンクがヴァリマールへ集ったと思えば、失った左腕に無形の霊力が集い、霊子の腕が形成されていく。
健在な右腕にはゼムリアストーンの法剣を。
陽炎のような揺らめきを残す左腕に、霊力で編まれたボウガンが握られる。
ロジーヌの戦闘スタイルが、騎神でも発揮された瞬間だった。
「サウザントスパロー」
ロジーヌの持つ法剣が分離し、ケストレルの足場に加えてリィン達を妨害する刃とぶつかり合う。
本来ならば技量の差によって成し得ないことだが、今はフィー達の援護によるスカーレットの妨害がそれを成立させていた。
今ならば脱出も可能だが……輝く戦術リンクの光は、リィンにその行動をさせなかった。
「ロジーヌ、メインを頼む。俺達が援護する……!」
「
「やってやんよ!」
「会長、俺達はアーツで援護を!」
「う、うん!」
もはや当然と言わんばかりにトワにも準起動者の恩恵が輝く中、アリサがぽつりと漏らした。
「リィンとミリアム、バイクで機甲兵と戦うの……?」
返答はなく、つぶやきは戦場の中に無情にも散った。
「邪魔ばかりするんじゃないよ!」
「こっちのセリフだ!」
怒りのままに振るうスカーレットの法剣。
だがフィーとアッシュの援護射撃によって不利な体勢で繰り出されたそれは、ロジーヌでも十分に対処可能なほどに精度が落ちていた。
機銃による十字砲火、ユーシスとトワのアーツによる☓の字が加わった全方位攻撃を前に、法剣で機体を包むことで防ごうとするケストレル。
そこへわずかに開けられた隙を狙い、ロジーヌの霊力の矢が狙撃される。
それでもケストレルから漏れる鬼の力は健在で、強引な動きでその波状攻撃を防ぐ。
十字砲火やアーツの爆撃をかいくぐった先で、法剣同士の鍔迫り合いが空気を震わせる。
「弾幕を張れ! 少しでも意識を散らすんだ!」
ユーシスは短期間ながらルーファスの元で学んだ指揮を繰り出し、鉄火と魔法による攻撃でケストレルの本気の動きを封じていく。
それが成功しているのは、機体と技量の差を埋める鍔迫り合いが証明していた。
そんな中、さらなるその隙を縫うリィンの攻撃まではさしものスカーレットも対処出来なかった。
「八葉空輪……龍炎撃!」
流星のように上から下へ落ちながら、焔をまとった空力タイヤがケストレルを襲う。
当然、機体の重量差からぶつけにいったリィンが弾かれてしまうが、アガートラムの装甲がその衝撃から二人を守る。
アガートラムだけが負担の厳しい攻撃であるが、その無謀な突撃はスカーレットから冷静さを奪うことに成功する。
すぐさまリィンへ狙いを戻したケストレルだが、そこへフィーのガンシップの機銃が走る。
わずかに被弾。
ほんの少しだけ動きが鈍った箇所を、戦術リンクの連携が追い込んだ。
「シバリールーン!」
準起動者による恩恵によって強化されたアーツが放たれ、ケストレルを中心に降り注ぐ光の剣が機体を貫く。
スカーレットは疑似聖痕による力ずくでそれらを打ち砕き、反撃しようとするが動作を制限されたことでリィンから見ても余裕で対処出来る。
それらは戦術リンクによる擬似心眼として機能し、ヴァリマールもガンシップもケストレルの振るう法剣から逃れていく。
「私を……帝国解放戦線を舐めるな!」
スカーレットが吠える。
法剣に焔をまとわせたフレイムスラッシュがアッシュのガンシップを狙う。
灼眼による霊視は咄嗟の回避を許したが、スカーレットの執念はガンシップの装甲を融解させた。
「ッ、ぐう……!」
ローターこそ無事だが、融解した炎は中にいるユーシス達を容赦なく襲う。
ユーシスは咄嗟に回復のアーツで応急処置を施すが、ふらふらと浮遊が怪しくなってしまう。
その均衡の崩れは、全員が包囲してようやく封じ込めていたケストレルの本気を出させてしまうこととなる。
ケストレルの追撃が続く。
いや、追撃というより両手に持った法剣を縦横無尽に振り回すだけの力技だった。
しかし、暴れまわる炎刃はロジーヌの狙撃やフィーが放つ機銃の全てを切り落とし、ケストレルに近づくことを許さない。
フィーが必死で回避行動を取るが、攻撃が出来ずその旋回行動はトワからアーツを撃つ余裕を奪う。
それは、ケストレルとヴァリマールの間に障害が消えたことを示していた。
「――――――ロジーヌ、来るぞ!」
達人クラスの技量を持つリィンだからこそ、この場で唯一スカーレットの行動に気づいた。
彼女は両手の武器を振り回してがむしゃらになったと見せかけて、渾身の一手を準備していたのだ。
暴れまわる刃は左腕に持った短剣用の法剣であり、右腕の法剣は水平に構えられ、冷静に、無慈悲にヴァリマールを狙っている。
「リィンさん!」
ケストレルが繰り出す突きを前に、ロジーヌの声が走る。
彼女は霊子の矢をケストレルでなく、リィンへと放った。
致命の一撃を前に防御するのでなく、リィンへ、だ。
リィンははっとして自らその矢の中へ導力ホバーバイクを踊らせる。
目を見開く仲間達だったが、アリサとアッシュの目は霊力で編まれた矢がリィン達にまとわり付き、加護となっていく様子を認めた。
「会長!」
「え!?」
そしてトワへ伝えられる意図。
戦術リンクにより内容は理解出来たが、どうしてそれをするのかがわからず戸惑いの声を上げるトワ。
しかし本気の声やリィンの行動ということを加味されたそれは、フィーの必死の操作でトワにアーツを放つ猶予を作り、行動を後押しする。
戦術リンクが導く霊力と導力の力がリィンへ注がれる。
車体からこぼれ落ちる輝きは彗星の如き。
ロジーヌの霊力、トワのアーツ、ミリアムのアシストを受けたリィンは星属性の力を全身に宿し導力ホバーバイクを走らせた。
「八葉連輪……星光輪・箒星!」
龍炎撃よりも遥かな力強さを秘めたそれはケストレルの法剣へ突進し、ヴァリマールへと放たれたダークフェンサーを強引に弾くことを成し遂げた。
当然リィン達は跳ね飛ばされるように空中へと身を投げ出される。
「無茶苦茶すぎんだろ!」
「あれが通常運転だから」
バイクだけにね、とつぶやくフィーと驚く仲間達をよそに、ロジーヌは冷静に霊子の左腕で法剣の柄を握り、それを顔の右側へ寄せる。
右腕は法剣の柄へ添えられ、深く腰を沈めた。
ダークフェンサーを弾いたリィンとミリアムに呆然としていたスカーレットは、ようやくロジーヌが己に向けて法剣の切っ先を伸ばしていることに気づいた。
「――参ります」
一瞬のブレ。
ヴァリマールが揺れたと思えば、
武器を弾かれたケストレルにそれを防ぐ手段はない――しかし、鬼の力とそれを宿した執念がそれを凌駕した。
マリオネットの如き霊子の糸が強引にケストレルを動かし、法剣による防御を割り込ませる。
ああっ、と悲鳴じみたユーシス達の声がスカーレットの耳に心地よいと思ったのは一瞬のこと、すぐにその違和感に気づいた。
(何この攻撃……
「姉さん」
その言葉は、怒りに支配されているはずのスカーレットの耳によく届いた。
「私
「――ロストオブエデン」
シルバーソーン、シバリールーンを遥かに上回る魔力と威力を秘めた光の剣がケストレルに突き刺さる。
空中に投影される魔法陣。
身動きを封じられたケストレルは、今のロジーヌの突進に威力がない理由を悟った。
(この魔法のための、布石――)
そう、最後の攻撃の前にロジーヌはヴァリマールを動かす霊力の大半をアリサに預けていた。
本命は自分の一撃ではなく、アリサが紡ぐロストアーツ《聖》属性の力を隠すために。
自分の力が届かないのは十分承知。
だから仲間の力を借りて倒す、そんなシンプルな理由。
己を貫く一撃もリィンなら防いでくれるという信頼が、この一撃を導いたのだ。
「ロジ――」
刹那の叫びは、ロストオブエデンが紡ぐ七色の閃光によりかき消され、空を染める白夜の中へ消えていった。
創の軌跡一言感想:ELSクアンタだこれー!
あとクラフトの声とか、全体的にⅣより落ち着いたというか弱くなった気が。
Ⅳのほうが迫力あった気がしますね。まああっちは黄昏中だし追い込まれてる度合いが違うのかもですが…
まだ完全クリアはしていませんが、今の時点では危惧していたネタかぶりはなさそうで安心です。
今回のスカーレット戦、ゲームで例えればアリサパートナーなロジーヌとトワ・ユーシスパートナーなガンシップ二機が実際に動けるやつで、リィン達は操作不能ですが、ATボーナスばりに頻繁に自動追撃が入る感じです。
騎神はせっかく飛べるのですし、一度くらい空中戦あっても良かったんじゃないか、ということで今回の騎神戦でした。
まともな空中戦はヴァリマールが復活してからですかね…
あと飛行艇の中に都合よくガンシップがあって動かせるのはタグのご都合主義が働いたと思っていただければ。
まあ西風の旅団なら、こういうのも持ってただろうということで一つ。
次回、ようやくルーレ編リザルトです。