さすが一番売れたDLCは違う、親父は凄いんだ!
また、誤字報告いつもありがとうございます。
アリアンロードは目の前に現れたリィンを目にしても、理解が頭に追いついていなかった。
蒼の起動者の執念が鉄血を上回る寸前、それに割り込んだ彼が代わりに報復の弾丸を受け、心臓を貫かれたことは知っている。
ならば父親や自分と同様、不死者となっていると思っていた。
「――ってわけで、煌魔城を探している時に魔女の話を思い出しまして! 煌魔城は核にする騎神次第で構造を変えるって――」
ならば、目の前の
不死の身の上といえ、生前よりも衰えるどころか鋭く磨かれた感覚は目の前の少年がアストラル体であると訴えていた。
かつて見た折に常に身につけられていた
まるで、話に聞く相克を制した存在のようにも見えた。
だが、それはおかしい。
巨イナル一の錬成は幾度となく行われたが、そのどれもが失敗している。
相克の舞台が未完成の今、それらはただ騎神同士が争い、決着するだけの争いでしかない。
いや、違う。
注目すべきはそんなことではない。
鬼の力――帝国の呪いの贄たる証明が消えていることも大いに気になるが、それよりも――
(どうして、どうして――何の衣服も身にまとっていないのですか!?)
だが魔術を知りえど、エマの母イソラが編み出した秘術の詳細を知らぬアリアンロードからしてみれば、目の前の存在全てが破廉恥にしか見えない。
奇しくミュゼと同様の反応を示したが、そこは二百年余年の経験値。
それに加えて数ヶ月前のレグラムでの
それらによって耐性を得ていなければ危なかった。
おそらく最初のときと同じく彼らの好き放題に流されるままであっただろう。
だがしかし、仮にも武の至境ともうたわれる身。
表面上の動揺は微塵も感じさせず全てその
「可怪しき者よ。この者、あまり反応を示しておらぬぞ?」
「む? 興味を覚えませんか?」
全身全霊で感情を抑えるアリアンロードの耳が、リィン以外の音を捉えた。
そこで今まで彼らが何かを話しており、自分はそれを聞き流していたことを自覚する。
アリアンロードは動揺をさとられぬよう兜面の中で顔と心を落ち着かせながら、過去最大級に研ぎ澄ませた感覚でその正体を探りながら、静かに口を開く。
「申し訳ありません。何故あなたから鬼の力が消え、同時に失われたはずの聖獣の気配が漂っているのかと疑念を抱きまして」
「ほう、さすがはかつて帝国を救世したとされる傑物だ。その因果といい、先に出会った小さき者達とは一線を画している。
見よ可怪しき者よ、この洗練な雰囲気を持ちながら鋼の如き厳格さを示す佇まい……あらゆる事象への揺さぶりにも動じない」
とんだ節穴である。
アルグレスの目はリィンを通したせいか、それともようやく真面目な雰囲気で話せる相手と出会えた、という喜びのせいか盛大に曇っていた。
その様子にどこかローゼリアに似た
「今のクロスベルは
ローゼリアにオズぼんやヴァリマール、何より彼女の怨敵という複数の例があったため、アリアンロードは他人の中に宿る人格というものを理解している。
ならば理屈はともかく、絶対おかしいと感じているがアルグレスがリィンの中にいるのはおかしくはない。
「ほう、この地に満ちる幻の気配はそういうことか。可怪しき者よ、どうやら協力者として非常に頼もしいようだな」
「親父が信用してる人ですからね、当然です」
三者三様のすれ違いを見せながらも、アリアンロードは改めてリィンがこの地へ訪れた理由を聞く。
内容はやはり突飛なものが多かったが、ユウナのように態度には出さない。
本当ならば出したいが、どこか尊敬の目で見てくるリィンの表情を崩したくない一心がアリアンロードにブレイク耐性を与え、支えていた。
だからこそ、何より自分のために今後のために言うべきことがあった。
「時に、私は女としての幸せを捨てた身ではありますが、あなたはまだ年相応の子供……少なくとも水場でもないのに異性へ肌を晒すのは、あまり良いこととは言えませんよ?」
「あー、そこは申し訳ないというかどうしようもないというか……隠そうにも隠せないので。視界に入らない、っていうのも失礼とは思いますが」
「婦女子にみだりに肌を見せるほうが失礼です」
「良かった……やっとこの可怪しき者とまともに話せる相手が……」
出会って一日も経っていないアルグレスにも、リィンのぶっ飛びぶりには思うところがあるようだ。
まるでかつての自分を見ているかのような幻視に一つ息をつき、アリアンロードは助言を与えることにする。
「アストラル体……魂の解放故に服を身につける、という概念はいささか難しいかもしれません。ですが、あなたならばすぐにその意識を切り替えることが可能でしょう」
「と、言うと?」
「貴方の中にいる大地の聖獣の姿を思い出すのです。我が盟友と同じく、魂の身でありながらも装身具を身につける姿を持っていたはずです。
本当に生身であるならば、今もノルドを駆ける馬のように肌を晒していたことでしょう」
何度も肌をさらすという己の発言に、アリアンロードは兜面の中で頬を赤らめていたが、誰もその顔を見ることはない。
故に自分が注意すべきは動揺による言葉の噛み具合だけだ。
「服、ということに意識を囚われてはなりません。生まれた赤子は何の衣服も身に着けないものですが、他者に服を着せてもらうことで体を温め、調子を整えるのです」
「つまり、アルグレスさんで俺を覆う感覚ってことですか? アルグレスさん、どうです?」
「ふむ……しばし待て」
アルグレスもリィンの全裸目視による
するとリィンの体を覆う光の模様が一瞬だけそれを強め、視界を埋め尽くす閃光が通り過ぎた後には、白金の鎧をまとうリィンの姿がそこにあった。
全身鎧というには軽装なそれは、奇しくも鉄機隊――アリアンロードがまとう鎧に類似していた。
「うわっ、なんか物語に出てくる騎士様って感じ」
「我が外殻は人には少し物々しいと判断し、聖女の鎧を参考にさせてもらった」
「…………なるふぉ、ど。見事です」
ん? とリィンがアリアンロードのどもった言葉に反応したが、すぐに気のせいと判断して己の姿を見返している。
アルグレスは自分の仕事に満足し、アリアンロードも大地の聖獣に盟友への感情を超えかねない称賛を送っていた。
(フフ……デュバリィ達が私を模した鎧を身に纏う姿も沸き立つものがありましたが、これは……)
アリアンロードが夢想する合間にも、リィンはアルグレスの意識と同調させ右手に黄金の一角を模した剣に、円環を模した盾を展開。
その姿は中世の騎士を想像させ、かつての獅子戦役に赴いた騎士達を想起する。
もし当時にリィンがいれば、鉄騎隊の副長であるシオン・アルゼイドとは別の意味で――そこまで思い至ったところで、アリアンロードの動かない心臓を強引に叩いて無理やり跳ねらせる破壊力となって襲いかかる。
「ふっ……ぐっ……アルグレオン!」
このままではまずい、と判断したアリアンロードは瞬時に己の相棒を召喚する。
白銀の騎神は、突然の呼び出しにも拘らず起動者の願いに応じて虚空より現出した。
「…………アリアンロード?」
星見の塔の頂上に降り立った銀の騎神は、周囲に敵の姿がいないことに疑問を抱く。
目の前にいるのは同じ起動者であり、アリアンロードが注目していた灰の少年。
ならば彼と戦うのか、と思っていたアルグレオンだが、いつまで経ってもアリアンロードは銀の騎神へ搭乗しない。
リィンもリィンで突然現れたアルグレオンに驚きながらも、その理由がわからずアリアンロードへ目を向けるのみ。
時間にして十秒も経っていないが、アリアンロードにとっては死線の中の永遠にも似たそれを克己し、己の相棒へ言葉を投げた。
「アルグレオン。彼は貴女の力を借りたがっているようです。私は
「アリアンロード、それは一体……?」
「言ったままです。彼は、私ではなく銀の騎神たる貴女を求めている」
そこでアリアンロードは、リィンがここを訪れた理由――煌魔城を独自に呼び出し、その核にアルグレオンを据えるということを教える。
珍しく絶句するアルグレオンに心の中で同意しつつ、アリアンロードはリィンへ首を向ける。
「かつてのマクバーンとの戦いのように私自身は合力することは叶いません。ですが、規模は下がれど貴方ならば我が愛馬を無碍に扱うこともないでしょう」
「……つまり、銀の騎神と交渉しろ、と?」
無言で頷くアリアンロード。
まさかの展開に驚きつつも、己が求めたのは銀の騎神であることに違いはない。
けれど、起動者のいない騎神を核にしても大丈夫なのか、という不安もあった。
「そも、今の私はクロスベルを離れぬ身。それは絶対です。『彼女』が言葉を翻すのであればその限りではありませんが、その時が訪れるまでは言を返すことはないでしょう」
「彼女……その時……?」
「言の葉を舞わすのはこれまで。アルグレオン、彼の提案に頷くも頷かないも、貴女が決めなさい。少なくとも今回の幻焔計画は深淵殿に一任されています故」
「……わかりました」
アルグレオンの声を聞いたリィンは、どこかアリアンロードに似ていると直感で思う。
その上で機械音声が重なっている感覚だ。
「アルグレオン。彼への協力の有無に拘らず、こちらに戻る必要はありません。今回のクロスベルにおいて、貴女の翼を使う機はありませんので」
「承りました。……さて、この場は直に舞台の幕開けとなります。ならば乱入者が居座るのは無粋というもの」
「……っと、すみません。じゃあアルグレオン……さん」
「この身は機械。敬称など不要ですが」
「協力者になるかもしれませんし、申し訳ありませんが今はさん付けのままでさせていただきます」
「中々に頑固、嫌いではありませんが。今はこの場を離れると致しましょう」
そう言って白銀の腕を伸ばすアルグレオン。
リィンがその掌の上に乗ると、アルグレオンはその銀翼を展開して空へ浮かぶ。
アルグレオンが何かつぶやくと、リィン達の周囲に円形の力場が展開した。
「これは……」
「振り落とされぬ処置です。飛びますよ」
「は――」
い、という言葉がリィンから漏れる前にアルグレオンは星見の塔から離脱。
一瞬後に残されるのは、アリアンロードとクロスベルに響き渡る鐘の音だけ。
「……っう……ふっ……あ、危うく夢想に追い詰められるところでした……」
アルグレオンの繋がりが十分に離れたことを確認したアリアンロードが、荒い息を吐きながら膝をつく。
結社《
*
翼による高速飛翔で誰の邪魔も出来ない上空へ舞い上がったリィン達は、改めてアルグレオンに自己紹介をする。
「初めまして、灰の
「……まさか騎神との対話をすることになるとはな。アルグレスだ」
「こちらも、まさか起動者を抜きに私自身への会話を持ちかけられるとは思いも寄りませんでした。アルグレオン、と申します」
互いに自己紹介をしたところで、リィンはガレリア要塞における戦術概要を語る。
まず騎神を核とした煌魔城を召喚。
魔女達による編曲により、自分達に都合の良い空間へガレリア要塞を作り変える。
そこからは協力者である
その間にアルノール姉弟による帝都奪還を進める、という形である。
概要を聞き及んだアルグレオンが注目したのは、煌魔城の立て直し――特にローエングリン城のような英雄の拠点へ作り変えるというものだ。
かつてローエングリン城はリアンヌ・サンドロットと出会い、契約を交わした霊場。
獅子戦役においてドライケルスが率いた英雄達の拠点として、聖女が駆け抜けた軌跡を直に見てきた過去が蘇る。
「アリアンロードさん……リアンヌさんはかつて、ドライケルス大帝と共に煌魔城へ乗り込み、その時に命を落としたと聞きます」
「ええ。彼女が十六歳の折、緋色の魔女の導きにより契約を交わし、その十年後に我が体と共に彼女は命を散らしました」
アルグレオンは、リィンの言葉を聞きながら彼が意趣返し、リベンジを促していると察する。
だが、その
今は
故にいくら自身へ懇願されようと、アルグレオンはアリアンロードから離れることは考えなかった。
「アリアンロードさんの目的は相克を勝ち抜くこと、と聞き及んでいます」
「起動者だけあって、すでに己の運命を自覚しているようですね。その通り、我々はいずれ相争う者同士。足並みを揃えるのは難しいでしょう」
「でも、それは真の意味での目的じゃない」
しかし、リィンの言葉は見逃せるものではなかった。
「アリアンロードさんの、貴女達の本当の目的は帝国に蔓延る呪いの除去……それに対する一つの切り札を、俺は所有しています」
ここでリィンは星辰内のアルグレスへ伝える。
自分の因果を見たことで劫炎の姿を認めたアルグレスに、神なる焔の外見を模した光をアルグレオンに見せつけることを。
「……その光は?」
「俺の親友であり、外の理よりの来訪者、マクバーンさんより譲り受けた焔です。そして、この星辰に刻まれた塩の杭……一切の不浄を清めるそれが合わさることで、呪いを打ち払う力になります。
俺が元々宿していた鬼の力はご存知でしょうか? それが消えているのは、これらのおかげなんです」
リィン・シュバルツァー。一世一代のハッタリである。
まだリィンは浄化の焔を習得しているわけではない。
鬼の力が消え去ったのは偶然、という可能性も捨てきれない。
だが、結局自分達が相克に関わる身である以上呪いの問題はどうあがいてもつきまとう問題だ。
どちらにせよリィンは内戦が終わればこの力の解明をしようと考えていた。
(可怪しき者よ。今のそなたはアストラル体……偽り、動揺は生身以上に相手に伝わる。そのうえで嘘を押し通す、ということだな?)
(嘘じゃないです。いずれは、が付きますけど)
その上でこの交渉の場で確定していない情報を使うのは一種の賭けであり、アルグレオンの目的を知るためでもあった。
アルグレオンはヴァリマールと同じ騎神だ。
起動者のためにその身を捧げるという言葉に偽りはないだろう。
だが、彼女達
呪いが鋼による影響であるのならば、その除去は巨イナル一の制御の一貫でもある、と考えられないだろうか?
「もし力を貸していただければ、対価としてこの内戦が終われば俺は貴女達にこの力を以て助力することを誓います」
ただし自分なりのやり方で、という言葉を付け加えながら、リィンはアルグレオンへ話を持ちかける。
「…………可能性、ですか」
アルグレオンがつぶやく。
騎神ではあるが、二百五十年以上も共に起動者と過ごしてきたアルグレオンは様々な人間を見てきた。
己の体を溶かす力を秘めた劫炎に友であることを認めさせた少年のことは大いに驚いたこともある。
かつてのリアンヌもまた、帝国の平定を目的にしながらも様々な苦難をドライケルスと共に乗り越えた。
今は歴史にその名を残す彼らとて、絶望が訪れなかったわけではない。
最後の戦いであった煌魔城の決戦をはじめ、各地の戦いも決して楽なものではなかった。
その中で果たして、どれだけの人間が帝国を救うことをブレずに考えることが出来たか。
諦めを知り、離れていった者もいる。
それが現実であり、無情な戦火に巻き込まれて消えた命も数多くあった。
(でも、彼らは諦めなかった)
戦火に苦しむ民への思いやりと、争いそのものを終わらせようという強い意志。
リアンヌとドライケルスに共通していた意志に似たそれを、アルグレオンはリィンに感じていた。
例え今はその力がなくとも、彼はいずれ帝国の闇を一閃するのだと魂が語っていた。
「リィン・シュバルツァー」
「はい」
「貴方は、何のために戦うのですか?」
「親父や父さん、ヴァリマール達と一緒に過ごしたり、友達と人生楽しく過ごすことです」
一切のブレなく、答えた。
浄化の焔の関連する言葉に引っかかっていた僅かな揺れすらない、鋼の如き意志をそこに感じ取る。
しかも、そこに騎神たる灰や大地の聖獣まで入れている。
それは、リアンヌやドライケルスを超える大馬鹿者であることを機械であるアルグレオンにすら理解させた。
「……わかりました。ならば、今回の戦いを以てリィン・シュバルツァーという存在を見極めさせていただきましょう」
それは、誤魔化しに隠れた了承の言葉。
その意図を感じ取ったリィンは笑みを浮かべ、アルグレオンの指の一つをぎゅっと握りしめる。
こうしてリィンはアルグレスとアルグレオンを引き連れ、長いマラソンを終えてエリンに戻っていった。
その後の星見の塔
ロイド
「くっ……思った以上に時間を取られたな」
ランディ
「可愛らしい雰囲気に反して、凄まじい強さだったぜ……」
リーシャ
「私を上回る速さに加えて、あの剣技……一対一ならば、確実に負けていました」
ノエル
「ですが、私達の勝利です!」
エリィ
「ティオちゃん、どうかしたの?」
ティオ
「いえ……強大な力が突然現れて消えた気がしたのですが、多分気のせいです」
ワジ
(……あいつ、今の帝国放置して聖女にちょっかいかけに来たのか?)
アリアンロード
「今のデュバリィを超えて来たのであれば、一筋の光明を見出したかもしれませんね。御子殿にはこの結果で納得してもらうとしましょう。(デュバリィ……本当にありがとうございます)」
強化デュバリィちゃんが頑張っていなければ、膝から崩れ落ちてる所を特務支援課に見られていたアリアンさんだったとさ。
翼を持っているのに空戦が得意なのは蒼、ってどういうことなの…
プロジェクト・ティルフィングで騎神の各特性の詳細が明かされると思いきやそんなこともなく。
灰と紫がスタンダードタイプ。
蒼と緋がスペシャリストタイプ。
総合力が高い金や銀、黒が因果律関係からのスペリオルタイプ、とかだったりしたのでしょうかね。
この辺下位四属性、上位三属性を模していそうですが。
元々持っていた7つの機能が分割されたことで各自の騎神の特徴として現れている、とかそういうのもあればなあと思わなくも。