はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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フフフ、息子よ。異次元マラソンの締めだ

 里のモニュメント前で肉体のリィンを前に佇んでいたローゼリアへ、リィンはアルグレオンがいるため普通に転移門から帰還して背中から呼びかける。

 戦術リンクの命綱から反応が消失したリィンが背後にいることもだが、失われた盟友(アルグレス)の気配とアルグレオンの姿に仰天した彼女は慌てすぎて川へ落ちてしまい、すぐに生身へ戻って彼女を引き上げたリィンは帰還の報告を前に妖精の湯で一汗流すことにした。

 アストラル体での行動であった以上、肉体が汗をかくことはないのだが、精神的な疲れを癒やすにはこれと釣りが一番なのだとリィンは思っていた。

 

 川に落ちてずぶぬれになってしまったローゼリアも、合わせて妖精の湯に浸かることになり、リィンは今回の成果を先に報告しようとしていた。

 が、それはローゼリアに止められる。

 

「のう、百万歩譲って背後から現れたのはわかる。じゃがな、何故にアルグレスをその身に宿してアルグレオンがここにおり――温泉に浸からせようとしておるのじゃ!」

「実家でもやりましたし、のけものにするのは寂しいですよ?」

「騎神を温泉に入れる時点でおかしいであろうに!」

 

 正確にはヴァリマールでなくオズぼんなのだが、灰の騎神をユミルの温泉に入れたことに違いはなく。

 待たせるのもアレですし、と言ってアルグレオンを妖精の湯に誘ったリィンは頭がおかしいと何度目かの再確認を行っていた。

 件のアルグレオンは流石に全身を湯船に沈められるわけではないので、足湯のように浸かっているが……異様な光景であることに違いはなかった。

 

「それよりもローゼリア。我よりも騎神の足湯のほうが大事なのか?」

「あ、いや、すまぬ。その……なんかこういう憑依って慣れてしまったというか、驚きのジャンルが違うから新鮮味というか」

「フフフ、ローゼリアさん……今の俺はアルグレスさんを宿した存在。盟友の格としては十分では?」

「」

 

 言葉を失うローゼリア。

 以前の発言は、リィンは孫の友人なのだから自分とは関係ないと思っていたことに加え、夜這いでの混乱による迂闊なものであった。

 だがしかし、どうして何故にアルグレスを取り込むことで同格に至るなど思い至るのか。

 

「ほ、ほれ……ほれ……お、お主が大地の聖獣になる、というのであればそうじゃが、いずれ、そら、別離して元に戻るんじゃ、ろ? そうなんじゃろ? だからまだ保留ということで……」

「うーん残念」

 

 本気なのか冗談なのかわからないリィンの言葉にびくびくするローゼリア。

 魔女の長と焔の聖獣の威厳は妖精の湯の中に消えたらしい。

 

「でもさすがは妖精の湯ですね。実家の温泉はヴァリマールを入れる広さはなくてお湯が溢れちゃいましたが、アルグレオンさんの足湯だけなら何も問題ない。内戦が終わったら改築頑張ってみようかな……」

「懸念すべき感想はそこか?」

「ローゼリア……その、なんだ。可怪しき者は我々をただの残滓や道具でなく、一つの存在として認めているということなのだ。共感は出来るが、言うだけ無駄というものではないか?」

「そうですね。正直何を言っているのでしょう、と思わなくもありませんが、尊重しているというのであれば礼を返さねば無作法というものです」

「この堅物ポンコツどもめぇ!」

 

 自己紹介かな? という言葉は飲み込む一同だった。

 

「一体、なんで、何がどうしてこうなる」

「ですから――」

 

 何度目かの説明に、すでに慣れを感じるリィンの言葉はローゼリアの耳に届いたが、頭には残らなかった。

 一つ一つ発される単語の羅列は、煌魔城を発見以外に脳が理解を拒否していた。

 

「そうじゃ……今妾はうっかりうたた寝しておるんじゃな。気づいたらダリエ辺りがベッドに寝かせてくれて冷えたデザートを……」

「アルグレスさんも何かデザート用意します?」

「現実逃避くらい静かにさせぬか!」

「現実逃避とわかっているのなら、時間の無駄ですローゼリア。子供になったことで精神まで幼くなったのなら、長の代替も検討したほうがいいのでは?」

 

 辛辣なアルグレオン。

 元はローゼリアがリアンヌを導き案内した騎神のため、二百年以上の馴れ初めはアリアンロードとは別の気安さを感じさせた。

 

「うぶぶぶぶぶぶぶ」

 

 湯船に口を沈め、文句を垂れるローゼリア。

 言葉は全て泡となって湯船の上に消えていくので聞こえないが、ぶーたれた顔は文句を垂れ流しているのだとわかる。

 

「そう言えば、みんなの姿はともかく魔女の皆さん、子供達まで姿が見えないようですが……」

 

 恨めしげにリィンを見ていたローゼリアが、その言葉に反応する。

 やがてひとしきり文句が泡に消えた後、ゆっくりとローゼリアは立ち上がってリィン達を見下ろす。

 

「さて、色々色々色々文句はあるがとりあえず――こちらもお主がいない間に起きたことを報告しておこう」

 

 湯着を着ているといえ、温度の体感差で風邪引かないか心配になったが、聖獣の体は頑健だろうと流す。

 豊かな金髪や肌を伝う水滴が湯に垂れる音を残しながら、ローゼリアは静かにエリンの現状を説明した。

 

「まず、魔女達はエリオット達の編曲作業を手伝っておる。じゃが、少々難儀していると聞く。

仮にも禁呪として指定したものじゃからな、資料が何分少ない。それ以上に、エリオット達が言うには楽器に類した音があれば、と言っておった」

「楽器、ですか」

「おそらく、召喚術式が楽譜であるなら核となる騎神がそれに類似するものと思われます」

 

 そこを指摘したのはアルグレオンだった。

 ローゼリアは目を丸くしながら、足湯に浸かる銀の騎神を見やる。

 

「なんぞ、お主芸術に一家言あったのか?」

「歴史が進んでも音楽は普遍的な娯楽でしたからね。悠久の寂しさを紛らわす一助としてアリアンロードへ進言したこともあります」

「わっ、なんかすごいお嬢様な騎神」

「お嬢な騎神とか妾の価値観壊れるんじゃが?」

「今更であろう。この可怪しき者ともう随分長い付き合いなのだろう?」

「まだ七ヶ月ほどしか……ああいや、こやつと七ヶ月か……」

 

 八百年を生きるローゼリアからすれば、四月の出会いから今に至る期間は僅かなものだが、一日の質がこれでもかと凝縮された濃密な時間であるなら、長いと感じてしまう焔の聖獣であった。

 

「話し方もアリアンロードさんに似てますし、起動者にならなかったリアンヌ・サンドロットがアルグレオンさんの人格の基盤なんでしょうか?」

「さて。そこまで意識したことはありませんが、二百年以上の付き合いとなれば似てしまうのは自然というものかもしれませんね。

 話を戻しましょう。編曲作業が停滞しているというのであれば、私が何か手伝えることもあるやもしれません」

「なあアルグレオン、本当にそなたリィンと出会ったのはさっきぶりなのよな?」

「そうですが、何がおかしいのです」

「呪歌の編曲というものを一瞬で受け入れた上にアドバイスまで出来るとか、リィンと少しでも連れ添ってなければ出ない案と思うてな」

「彼は私を一つの存在として対話を申し出て来ました。ならば、私もそれに習っているだけですが?」

「真面目な人格のはずなのに馴染んでいるだと……?」

 

 真面目が一周回ってどこか噛み合っているのかもしれない、と聖獣コンビは思った。

 

「そもそも、帝国を蝕む千年の妄執――至宝の呪いを祓うなどと豪語しているのです。驚きはそこで最大値を記録しています。ならば、それ以下の提案に驚く理由などないのでは?」

(ああ、リアンヌって真面目さが時折空回りしておったことあるし、そういうことか)

 

 リアンヌ・サンドロットを起動者と見初め、導いた魔女であり盟友のローゼリアはアリアンロードでなくリアンヌ・サンドロットとの付き合いは最も長い。

 獅子戦役終結直前、彼女の散華までの十余年の間に見てきた少女の人格は紛れもなくアルグレオンに受け継がれているのだとローゼリアは確信する。

 

「まあ、良い。最も大事であった編曲作業はそうとして、サラは先んじて動いておる。助っ人、というより交渉の下準備のためにな」

「俺達が仮にガレリア要塞で父さん達を足止め出来ても、その間に動ける殿下達と連携出来なきゃ意味ないですしね……」

「うむ、その通り。そして最後に灰とラインフォルトの娘が戻っておる」

「親父とアリサが?」

「灰……親父……?」

「灰とは、ヴァリマールのことと伺いますが、彼を父と呼んでいるのですか?」

「ああいえ、ヴァリマールは元々人格を俺の心臓に宿していたんですが、塩の弾丸に貫かれたショックでその機能を停止させてしまいまして。

 それを補填するために、親父が意識を移して灰の騎神として活動しています」

「……?………??…………???」

 

 沈黙するアルグレス。

 リィンという破天荒が生まれた原因であるオズぼんのことは未だに聞かされていない盟友に、ローゼリアは沈痛な面持ちでリィンの肩に手を置いた。

 

「強く生きよ」

「え?」

「いやすまん、リィンでなくアルグレスに言った」

「ローゼリア、恐怖の予言はやめるのだ」

「そう言えば親父のことは説明してませんね。俺の左腕にある人形のことです」

「ざっくばらんすぎる。ええいリィンはしばし黙っておれ、えっと……お主達にもわかりやすく説明するとじゃな――」

 

 ローゼリアが説明すると、リィンの中から困惑の雰囲気が生まれる。

 当然リィンでなくアルグレスの気配であろう。

 だがアルグレオンはと言えば、別の意味で沈黙していた。

 

「意識を他者に……まるで黒のようですね」

「黒? そう言えば、騎神の中でも黒はまだ見たことないですね」

「……我々は一時的な協力関係、この程度の情報ならば構わないでしょう。本来ならばアリアンロードが自ら語るべきことかもしれませんが、私は代行を任されている身。

 ならば、彼女に代わり()()()()()で明かしましょう。

 黒の騎神、その名をイシュメルガ。――巨イナル一を制御するために生まれた同胞であり、相克によって生まれた悪意であり、犠牲者とも言える全ての元凶です」

 

 帝国が呪いに蝕まれた理由――それらをアルグレオンは語る。

 今までどこか漠然と災害のように思えていた呪いの詳細が明かされることで、点と点が繋がっていくような感覚を覚える。

 

「じゃあ父さんが心臓をなくしても動いていられるのは、黒の起動者だったから……いや、考えれば当然か。もう全ての騎神は明かされたんだし、起動者もわかってる。なら、父さんが黒の起動者であることに違いはない、か。……なら………」

 

 ぶつぶつと、言葉の羅列だけを繰り返すリィン。

 彼の脳内で高速でやるべきことがパズルのように組み立てられていく様子を見やり、話が逸れに逸れていることに気づいたローゼリアがその頭を軽く小突く。

 

「これ、考えるのは良いが今は目の前のことに対処せよ。ここまでお主の計画に乗って動いてるのに、アドリブで再構築するにしても情報を共有せんか」

「おお……秘密主義で何かと行動を起こされた後に動くことしか出来なかったローゼリアがなんとまともな……」

「アールーグーレースー?」

「そう言われるだけの不始末が多すぎるのです、貴女は。人の世に干渉しない、などと言いながら獅子戦役でも盟友達のため――」

「あーあーきこえぬぞー」

 

 両耳を抑えて頭を振るローゼリアの姿に苦笑しながら、リィンはオズぼんが戻って来たならすぐに会いに行こうと立ち上がる。

 

「ええい待たぬか。まだ他のⅦ組の面々のことなども伝えておらぬ」

「あ」

 

 言われて、大人しく湯船に座るリィンを見やりため息をつくローゼリア。

 改めて彼女は、現在のⅦ組は共にサングラール迷宮へ赴いていると言う。

 サングラール迷宮とは、《魔女の眷属(ヘクセンブリード)》が旅立ちの前に一人前の証を立てる試練の場所らしく、魔女の里の練武場といった認識らしい。

 

「何やらラインフォルトの娘が新たなる力を持ち込んだそうでな。色々調整を行っているとかなんとか」

「新たなる力……」

「おそらく、鬼の力に目覚めた影響を受けているのじゃろうが……いや、それは直接確かめることにせぬか?」

「直接……?」

「うむ。エリオットは別として、他のⅦ組にはサングラールの最奥へ赴くよう告げておる。お主も、ラインフォルトの娘が持ち込んだ()()()、気になるであろう?」

「まあ、そうですね」

「試練の最後には()()が待ち受けるものじゃ」

 

 首を傾げるリィンに、ローゼリアは八重歯を見せつけて笑う。

 その意味に気づき、リィンもまたニヤリと笑い返すのであった。

 

 

 

「ふう、中々に手強い試練だったが……」

「アリサ君が持ち込んだアレのおかげでなんとかなったな」

「ええ。特別実習の成果、すごく実感出来るでしょう?」

 

 リィンとエリオットにエマとサラ、そしてミリアムを除いたⅦ組にアッシュ、アルティナの二人を加えた混合パーティはサングラール迷宮を進んでいた。

 朝起きればリィンが何やら提案してローゼリアと何かしており、エリオットもそれに合わせて動いているということを聞いた面々はそれぞれ自分達に出来ること――ひとまず各自のレベルアップを目的に動き始める。

 

 特にアルティナは、助けになりたいと直接言ったにも拘らずのけものにされたと、一見気にしていないようで凄まじく不満を内に溜め込んでいた。

 眠り続けるリィンの傍を離れなかったアルティナだが、彼らの説得や不満解消の提案も合わせてⅦ組に同行。

 そのため、クラウ=ソラスを率いてサングラール迷宮の魔獣達をなぎ倒す様は少女の成長をⅦ組とアッシュに教えていた。

 

「まあまあ、落ち着きなよアルティナ。ローゼリアさんも言ってたけど、アストラル体……だっけ? 幽体離脱なんてマネしようにも無理だし、結局歯噛みしていたことに代わりないよ」

「フツーに幽体離脱なんてオカルト聞いて平然としてるアンタらに驚きだよ」

「リィンと知り合うということは、そういうことだアッシュ」

「アンタは最初から平然としていたって聞くけどな」

「ノルドには精霊信仰とか不思議なことには縁が多いって聞くし……」

 

 そんな雑談を交わせる程度の余裕が、今のⅦ組にはある。

 その理由はマキアスが告げるアレ――アリサが持ち込んだチカラが関わっていた。

 

「アッシュ。オカルトオカルトと言うが、私からすれば導力も結構オカルトだと思うが」

「そりゃあアンタが機械オンチなだけだ」

「やめてやれ、人には向き不向きというものがあるのだ」

「フォローしてるようで追い打ちしてるわよ、ユーシス」

「皆さん、どうやら目的地に着いたようです」

 

 ずーん、と項垂れるラウラを慰めるフィーをよそに、先行していたアルティナがサングラール迷宮・第一相の最奥への到着を報告する。

 

「ここが最奥……でも、何もないぞ?」

「確かローゼリアさんが言うには試練の証があるってことだったけど」

「アリサ、アッシュ。そなた達も何か感じることはないか?」

「ううん、残念だけど」

「今のところ何も――」

 

 と、言いかけたところで転移の気配を察して二人が黙る。

 二人の様子から即座に武器を構えるⅦ組の前に、ローゼリアとリィンが彼らの前に現れた。

 

「ふむ、よくぞここまでたどり着いたな」

「みん――」

 

 ローゼリアの後に発言しようとしたリィンよりも早く、ラウラが大剣を構えて殺到する。

 突然の不意打ちに慌ててリィンが抜刀、レオニダスに折られた代用の太刀でそれを受け止めた。

 チッ、という舌打ちはラウラでなくその背後のⅦ組から聞こえた気がした。

 

「何するんだよ、ラウラ」

「いや何、皆を代表して」

 

 どうやら舌打ちは気のせいではなかったらしい。

 誰がしたのか気になるところだが、ラウラが素直に剣を下げたことで追求するタイミングを失う。

 

「それに、幽体離脱をしたと聞いたのでな。肉体の調子を確かめるには手っ取り早いであろう? 私ごときの不意打ちを対処出来ないのであれば、本調子にはほど遠いということだ」

「……いや、結構手が痺れてるんですけど」

「うん、私もそれなりに調子が良いようだ」

「剣で語り合う場面、初めて拝見しました」

「あれはマネしちゃ駄目な部類だろう……」

 

 教育に悪い、とマキアスが言う傍らでローゼリアがかかかと笑う。

 

「妾が提案せずとも今回の締めを理解しておるようじゃの」

「締め?」

「ラインフォルトの娘よ。そなたが持ち込んだチカラ、もっとより強い相手に試してみたほうが効果のほどがわかるであろう? そして――」

 

 パチン、とローゼリアが指を鳴らせば、呼応するようにアルグレオンがその場に転移される。

 今まで見たことのない、新たな騎神の登場にさしものⅦ組も驚きをあらわにした。

 

「そこの三人。お主らがこそこそ画策していたのは知っておる。ならば、試しに相応しい相手を用意させてもらった。何、()()()()()は妾が代用する故案ずるが良い」

 

 ローゼリアが視線を向けた先にいるのは、ユーシスとガイウス、そしてアリサ。

 三人はその視線の意味を理解し、一歩前に出た。

 

「どうやら、俺達をご指名のようだな」

「持ち込んだチカラを試す機会。騎神が相手ならば、確かにこの上ない機会だ」

「それはそうなんだけど、あの白銀の騎神は一体何なの?」

「我が名はアルグレオン。七つの騎神のうち、銀の名を拝命しております。リィン・シュバルツァーの要請により、しばしの間同盟者として貴女達の陣営に加わることになりました。お見知りおきを」

「アッシュ、あれにオカルトって言わないの?」

「あー? 灰があんなのだし、騎神ってそういうモンじゃねえのかよ」

「……誤った常識を最初に入れると、ツッコミをツッコミと思わなくなるのね……」

 

 最初に出会った喋る騎神がオズぼんだったことは、アッシュにとって良いことだったのか悪いことだったのか。

 

「さて、すでに薄々理解はしておるようじゃが改めて宣言しておこう。Ⅶ組よ、リィンと銀の騎神アルグレオンを前に、その力見事に示してみせるがいい!」

 

 ローゼリアの宣言により、アリサとユーシス、ガイウスの三人とアルグレオンが別の場所に転移される。

 改めて太刀を構えるリィンと相対するのは、ラウラとフィー、アッシュにアルティナ、そしてマキアスの五人。

 

「アルティナ。先程は初手を強引に奪ってしまったが、次は譲ろう」

「ラウラ・アルゼイド?」

「そなたが抱えている不満、直接リィンにぶつけてやれ」

「…………ですが、私はリィンさんの――」

「言葉で言っても聞かないのだ。ならば、他の手段を試すしかあるまい?」

 

 その言葉に、無言でクラウ=ソラスを呼び出すアルティナ。

 すでに意は決したようだ。

 

「なあ、ラウラ君ってアルティナ君の教育に悪いんじゃないか? 僕は暴力よりも言葉での解決を提示したいんだが」

「……ノーコメント」

「ま、わかりやすいのは良いことじゃねえか? 大なり小なり、シュバルツァーへの文句は全員あるだろ」

 

 そこは誰も否定しなかった。

 リィンは少し悲しくなった。

 

「――リィンさん」

「えっと、アルティナ? 確かに何も言わなかったのは悪いと思ったけど、今回はサポート出来る範囲を超えて――」

「ぐーです」

 

 え? というリィンの言葉は、クラウ=ソラスの拳の風圧によりかき消される。

 異次元マラソンの締め、その最後の戦いは少女が初めて覚えた八つ当たりから始まった。




にんげんじょうちょいちねんせいあるてぃなちゃん、はじめてのぐー。
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