はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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四月の特別実習、Ⅶ組B班との個別の話し合い。ラウラ編。
いつも誤字報告ありがとうございます。


フフフ、息子よ。夜のデート(物理)か

 ラウラはⅦ組に与えられた学生寮の自室で、一人悩んでいた。

 椅子に座って机に向かうラウラの前には、筆記用具と便箋が置かれている。

 白い紙には最初の挨拶が書かれているが、それ以降には何も続いていない。

 つまり、ラウラは手紙の内容に悩んでいた。

 

「剣の内容ばかりではいけない、とアリサに言われたものの……それを外したら、一体何を書けば良いのだ?」

 

 Ⅶ組の教室でパルムで知り合った文通相手――クルトに手紙を書いていたところ、それを見たアリサから色々とアドバイスを受けて実践中なのだが、なかなかどうして、難しい。

 凛とした顔に眉根を寄せるラウラは、引き出しにしまったもう一枚の手紙を取り出す。

 それは、アリサに指摘される前に送ろうとしていた内容が途中まで書かれた手紙だ。

 読み直せば読み直すほど、こっちのほうがいいのではないかという気持ちが湧いてくる。

 しかしそんなアリサとの会話に割って入ったエマから、

 

「手紙というのは何の変哲もないものでも、相手が自分を想って書いてくれた……それが伝われば、十分嬉しいんです」

 

 と、真剣に迫った声で言われてしまえば考え直すというものだ。

 クルトを思って書くことなど、考えれば考えるほど剣のことしかないラウラにとって、そのテーマはとても難しいものだった。

 

「クルトのためになる、と言っても私は双剣を使ったことがないからな……」

 

 生真面目な少年剣士の姿を思いながら、考えるたびに深みにハマっていくラウラ。

 気分転換でもしよう、とラウラは愛剣を持って外に出ようとすると、ちょうどリィンが階段から降りて来るところを発見する。

 

「リィン、そなたも外へ行くのか?」

「夜のマラソンってやつだな。こういう時間にも街には色々変化があるものなんだ」

「変化…………」

「そういうラウラは素振りか?」

「うむ。少し手紙に何を書くかで悩んでいてな。……そうだリィン。良ければ、私もそのマラソンとやらに付いていって構わぬか?」

「別に構わないけど、珍しいな」

「元々気分転換のつもりだったのだ。普段と違うことをすれば、また異なるものも見えて来よう」

「わかった、それじゃあ夜のトリスタマラソンと行こう」

 

 リィンは嬉しそうに笑い、ラウラもその横に並んで二人は夜のトリスタへと赴いていった。

 

 

(フフフ、息子よ。夜のデートとは隅におけないな)

(そーですね)

(りぃんヨ。えすこーとハシッカリセヨ)

(そーですね)

「どうしたリィン、何か顔をしかめているようだが」

「いや、なんでもない」

 

 ラウラと行く夜のトリスタを前に、オズぼんとヴァリマールの茶々に辟易していたリィンはなんでもないように手を振るう。

 同行者が居ると言っても、リィンがすることに代わりはない。

 色んな店や人を訪れては、話を聞いて回る。

 その中で何か困ったことがあれば解決し、奔走するさまはラウラから見て勤勉な学生という枠を超えている気がした。

 最初は入学式の件で言いつけられた奉仕作業とのことだったが、時間外労働をさも当然としているリィンを見ていると本当にあのサボりは何だったのかと疑ってしまう。

 その質問を特に控えるわけでもなく、ラウラは素直に尋ねた。

 

「リィン。そなた、入学式の件は本当にセリーヌを追いかけただけなのか?」

「そうだけど? 今更な話題だな」

「いや、入学式の翌日から数日行方不明になった理由は、先月のパルムのことで納得した。だが、一体どこからリィンはその情報を見つけた」

「偶然だよ、偶然。本当にたまたまなんだ」

 

 リィンの言葉に嘘はない。だが真実も言っていないとラウラは感じる。

 目の前の少年が何か物事を隠す理由とすると――

 

「エマのことか?」

「…………さてな」

「そなたは嘘を好まん。口数が少なくなるのは、事実に触れている、と私は思っているのだが? 候補は他にもベリルのことなどがあったのだが、一度目で当てたのは我ながら自画自賛だな」

 

 リィンは答えない。

 当時のあれはオズぼんの悪ふざけが多分に含まれていたが、それでもエマが魔女であることを隠していたことに変わりはない。

 A班で多少治療魔術を使ったと聞いたが、まだ魔女ということ自体は明かしていないと聞いている。

 ならリィンの口から勝手にエマの事情を明かすわけにはいかない。

 

「まあ、正直に言ってそこはどうでもいいのだ。そなたが何を思ってあの行動を取ったかはわからないが、それでそなたの現状が変わるわけでもないしな」

「なら、何が言いたかったんだ」

「うん、誤解させたのならすまないが、私は別に秘密を探るという真似をしたいわけじゃない。ただ、あの時はどうして……と気になっただけだ」

(フフフ、息子よ。気軽な雑談のつもりが過剰に反応されては、身構えるということだ。一本取られたな)

 

 オズぼんの言葉に、リィンは自分が変に反応してしまったことを反省する。

 軽くと言いながらラウラが踏み込んで来たので、対応を間違えてしまった。

 

「悪かった、俺もちょっと意識しすぎてたみたいだ。それより、気分転換ってことは勉強でもしてたのか?」

 

 羞恥心を隠すようにリィンは話題を変える。

 うん、とラウラはすぐに乗ってくれた。

 

「クルトに手紙を書いていたのだが、アリサから剣のこと以外も書いたほうがいい、と言われてな。エマも相手のことを思っていれば内容はなんでもいい、とのことだが、なかなかどうして難しい」

「なるほど、そういうことか」

「リィンは手紙を書く時はどうしている?」

「家族や妹のことになるから、どうしても近況報告になるな。と言っても、パルムでの一件で大怪我してハイアームズ侯の世話になった時、実はシュバルツァー家のみんながお見舞いに来てくれたりしてた」

 

 これにはリィンも驚いたが、テオやルシア、エリゼは領地や学業のことを放って見舞いに来てくれたのだ。

 その頃には鬼の力や灰のチカラも合わせた回復によって体も完全に癒えて、セレスタンに軽く稽古を付き合ってもらったのだが、それを見たエリゼにベッドに押し込められて付きっきりで側に居たのは記憶に新しい。

 シュバルツァー夫妻はハイアームズ侯からの礼に動揺を隠しきれず、エリゼともども説明を求められた。

 隠さず言ったことで逆に怒られたりもしたが、その言動の全てに心配や気遣いの気持ちに満ち溢れ、改めてリィンは家族からの愛情を確認した。

 無茶をしない、心配させないという約束をしてくれと言われたが、確約は出来なかった。今後を考えると無茶しかしないと思うからだ。

 当然納得がいっていない家族だったが、その後に近況報告に書いた異性の友人、エマやベリル、ロジーヌについて詳しく教えて欲しいと言ったエリゼの様子がおかしかったのが気になる。

 そう言ってみたが、同性であるラウラもまたエリゼがおかしい理由がわからないとのことだったので、今度会った時にでも聞こうと気持ちを改める。

 

「パルムでの事はすでに伝えてしまったな。ルグィン伯とも会話をしてみたかったが、今の私ではきっと気圧されて話にならんだろう」

「んーそれなら……ラウラは水泳部だったよな。そこの出来事なんかはどうだ?」

「む、言われてみれば部活動のことは頭になかったな。と言っても、あちらでやっていることは……」

「確か、水泳部に運動が得意じゃない子がいたよな」

「モニカのことだな。知っていたのか」

「学院マラソンの時に話したことがある。ラウラのことを聞いたから印象深かったんだよ。その子のことでいいんじゃないか?」

「うん? モニカが何か言っていたか」

「最近はトゲが取れてナーバスが消えたようで嬉しい、って。この辺はマキアスやユーシスもだけど、周りの人は案外自分のことを見ているものさ」

「それはリィンにも言えることだが、そなたは何があろうと揺るがないからな……」

「俺も色々あったからな」

 

 オズぼんとの鬼の力の特訓がなければ、きっと今のリィンは学院に来ても力に怯える日々を過ごしていた可能性が高い。

 ラウラは本気を出さないフィーとも一時こじれていたし、似たようなことで絡まれただろうと今はない未来を思う。

 

「そんな風に、周りに聞いてみたら、案外ラウラも気づいていない自分のことがわかるかもしれないぞ? さっきのモニカもだけど、悩んでいたラウラに激励を受けたみたいに部活を頑張っているそうだし」

「言われてみれば、最近のモニカの上達具合は目を見張るものがあったな。そうか、私に……」

 

 ラウラは考え込んでいるのか、黙ってしまう。

 リィンも口を出す無粋なことはせず、少しマラソンを中断してトリスタ公園へ寄った。

 ベンチに二人で座りながら、夜の風と空を感じる。

 しばらくそうしていると、ラウラが立ち上がってリィンの正面に立った。

 

「リィン。もし良ければ、今から立ち会いをしてもらえないか?」

「うん?」

「考えてみたのだが、やはり私は剣の道というものから離れる気がないらしい。色々と気持ちを整理して初めて浮かんだのが、そなたとの立ち会いだった。トールズに来た最初の気持ち、初心に少し戻りたい」

「…………わかった。でもアリサには悪いことをするな」

「いいや、剣以外のこと……部活のことや他に書くことも浮かんだ。剣を入れるな、とは言われてないのだから問題ない」

「へえ、そういう屁理屈が上手くなったんだな」

「ならば、きっとそなたのせいなのだろう」

 

 何かしたっけな、と思いながらリィンは太刀を構える。

 導力灯に照らされているといえ、昼間よりも視界は見えにくい。

 だが暗闘の中の稽古というのはユン老師から手ほどきを受けているし、ラウラもきっと苦もなくこなすことだろう。

 ――開幕は静かな立ち会いから始まる。

 ラウラが持つアルゼイドの剛剣はあまり発揮されず、軽く感触を確かめるように振るわれるそれに合わせて、リィンも応じていく。

 本格的な稽古開始のきっかけは、ラウラが跳躍してからだった。

 くるりと宙で一回転した、体重や加速を乗せた剣が公園を揺らす。

 

「ラウラ、ここ道場じゃないからほどほどにな!」

「わかっている……わかっているが、昂りが抑えられん!」

 

 難儀な奴だ、と思いながらリィンはラウラの剛剣に対してもう一つの武器――鞘を左手に取り、簡易二刀流の構えを見せた。

 瞠目するラウラ。その瞳は少なからず怒気が感じられた。

 舐めている、というわけではない。

 稽古とは本来、実戦での動きのイメージを定着させる行為だ。

 稽古通りにならないのが実戦といえ、まず攻め込むなり防ぐなりの自分なりのイメージを身につける必要がある。

 リィンがオーレリアにまともに攻撃を当てたいというのなら、ロア・ヴァリマールと連携した分け身以外にも技を身につける必要がある。

 とはいえラウラとオーレリアでは実力に開きがある。

 それでもアルゼイド流の中伝を持つラウラならば、皆伝のオーレリアに至らずとも動きのイメージを取り込むことが出来るとリィンは考えたのだ。

 鞘での二刀流は、単純にクルトのことを思い出したからだ。

 ダメなら他の方法も考える。

 そんな風にいろいろ試せるのが、稽古の良いところなのだ。

 

「せいっ!」

 

 ラウラの剣が迫る。 

 リィンはそれをまず鞘で剣の腹を叩き、軌道を阻害しながら太刀のほうで受け流す。

 最初に両手で構えた太刀よりも力を流しにくいが、ラウラの剣の威力はそれなりに減衰して片手の太刀でも問題なく受けきれたかもしれない。

 実戦なら鞘の代わりにロア・ヴァリマールで阻害することも考えたが、上半身だけでも五アージュに迫る巨体の腕を一撃で両断せしめたオーレリアの剣を果たして邪魔することが出来るのか、という懸念もある。

 それでも模索することは止めず、まず動きを完璧に行えることを考える。

 

「はあああああ………洸円………!」

 

 ラウラがクラフトを使おうとするが、リィンが震脚を一つ地面に打ち込んで吸引を阻害する。

 その出鱈目さを前に、しかしラウラはひるまない。

 あるいはリィンならば何をしてきても不思議ではない、と腹をくくっているのだ。

 先日ならば、己の無様さに腹を立てて怒りのままに刃を振るっていただろう。

 だが、ラウラもまたリィンとオーレリアの戦いを間近で見たことで心境の変化を迎えていた。

 リィンが鞘を使った二刀流をしているのも、ラウラを通してオーレリアを見ていることにも気づいている。

 自分に本気でぶつかってきてくれない悔しさもあるが、それ以上に――追いかけがいがある。

 リィンを己の父のような、隔絶した強者であると認めるのは悔しい。

 けれど、それのせいで足を止めるのはもっと嫌だった。

 

(私も――あの頂へ!)

 

 澄んだ剣閃がうなる。

 リィンは鞘で受け止めようとした、やめた。

 即座に回避行動を取る。

 ラウラが注意深くリィンを観察すると、彼は一息ついて己の剣を見ていた。

 先程の剣は自分でも良いイメージで振れたと思う。

 あれをリィンが受け流しも受け止めもしなかったということはつまり、弾かれると予感したからではなかろうか。

 で、あるならば。

 

「好機!」

 

 ラウラは剣に闘気をまとわせ、洸気を刃に満たす。

 振るうはアルゼイドの奥義の一端。

 洸凰には未だ届かず、しかしてその羽ばたきに一切の乱れもない剣が放たれる。

 

「奥義――洸刃乱舞!」

「―――――――っ!」

 

 リィンは逃げずに踏み込んでくる。

 ラウラの剣は受け流そうとした鞘ごとリィンを吹き飛ばし、追撃の一手を押し込む。

 体を旋回させた、回転の力が加わったそれが鞘を弾かれたリィンに迫り――瞬間、ラウラは己の首に添えられた刃の冷たい感触に手を止めた。

 

「弐の型、疾風」

「――――――――ははっ、その気になれば一瞬だったわけか」

「まさか、今のはラウラの油断だ。鞘を弾いたことで俺に剣を届かせることが出来たかも、って急いてしまったのが原因だな。俺もオーレリアさんに似たようなことしたから、強く言えないけど」

「ふふ、否定はできんな。普段の私ならば鞘を弾いたとしても、いつものリィンに戻っただけだと機を伺ったはずだ」

「とはいえ、簡易双剣術じゃやっぱり厳しいか。オーレリアさんの剣を防ぐのは、まだ遠そうだ」

「そなた、その前に言うことがあるのではないか?」

「え? うん、良い稽古だった」

「違う」

 

 びしっ、と軽く頭に手刀を落とされる。

 痛みなど微塵もないが、そっぽを向きながらどこか頬を膨らませているように見えるラウラがいつになく子供っぽく見えた。

 

「私の剣を鞘で防ぐなど、驕ってくれるなリィン。ルグィン伯との差はいかんともしがたいが、それでもアルゼイドの剣は付け焼き刃に劣るほど、薄いものではないのだから」

「稽古なんだから色々試したって……」

「………………」

「ごめんなさい」

「うん、それでいい。だが、今後私との稽古で鞘は使って構わないぞ。その都度、弾いてくれよう」

 

 胸に手を当てて、どこか誇らしげに、得意げにドヤ顔を披露するラウラ。

 今までの印象を覆すその笑みに、リィンは思わず笑ってしまった。

 

「な、何を笑っている。失礼ではないかっ」

「はは、悪い悪い。今のラウラ、すごく良かったから」

「よ、良かった?」

「年相応に可愛かったぞ」

「か、からかうな!」

「本当なのになー」

 

 こら、と少し涙目になって睨んでくるラウラ。

 そんな行動が逐一男に刺さる仕草なのだが、ここでそれを指摘すれば火に油を注ぐことにほかならないのでリィンは黙った。

 しばらくこれを独り占め、というのも悪くないと思ってしまったからだ。

 

(フフフ、息子よ。エマ嬢達のことはいいのか?)

(なんでここでエマ達のことが出るかわからないけど……あ、確かに転移について色々相談しておいたほうがいいな。ありがとう親父、ちゃんとしておくよ)

(フム、おずボンヨ。コレハ所謂、鈍感トイウヤツカ?)

(こんな息子で本当に申し訳ない)

「さて、そろそろ退散するとしようか。結構騒いだし、通報されたら大変だ」

「う、む。話を逸らされた気がするが……」

「逸らしたからな。でも、気分転換にはなったか?」

「……………そうだな、手紙に書くことが増えた。ありがとうリィン、そなたに感謝を」

「どういたしまして」

 

 リィンはオズぼん達の会話をスルーしながら、弾かれた鞘を回収する。

 拾った鞘には少し亀裂が生じていた。

 確かに、この剛剣を前にしては付け焼き刃と言われても仕方ない、とリィンは自省する。

 ラウラはその鞘を見やり、少し慌てた様子でリィンに詰めよった。

 

「すまない。どうやら少し壊してしまったようだ」

「いや、これは俺の落ち度だから気にしないでくれ。ラウラはそれだけの一撃が放てた、ってむしろ自信を持つところだぞ?」

「む、ん」

「修繕するとしても、その間に使う鞘ってミヒュトさんのところにあるかな」

「分厚い布で巻く手段もあるが、それは最後だな。どれ、私も見繕ってやる」

「助かる。この時間にジョルジュ先輩を頼るわけにはいかないしな」

 

 あるいはシュミットならば今も旧校舎か教室などにいるかもしれないが、実験外で壊した鞘くらい自分で処置しろと言われるのがオチだ。

 彼に頼ることが出来れば、壊れにくい鞘も設計してくれると思うので、今度聞いてみようとリィンは決める。

 二人は質屋へ赴き、せっかくだからとラウラに見繕ってもらった鞘を素材と交換した。

 しばし感触を確かめた後、リィンとラウラは雑談を交わしながら揃って学生寮へと戻っていく。

 後日公園の土が荒れているので整地して欲しいという旨の依頼が生徒会に届き、リィンは水泳部に直接乗り込んで連れ去ったラウラと共に公園掃除をしたのは余談である。

 そのさい、出張園芸部による花の植え込みなどが行われ、そこで何故かフィーとコンビを組んだラウラと再び一戦交えることになるリィンだった。

 

 

 風呂に入って稽古の汗を流したラウラは、自室に戻って手紙の続きを執筆していた。

 その内容は、水泳部のことやリィンとの稽古のことだ。

 後半にリィンとの稽古で、鞘を使った双剣術や、その付け焼き刃よりもクルトの剣のほうが鋭かったなどの賛辞に溢れながら、それでもリィンとの差を痛感しているといった近況を綴っていく。

 最後はリィンに負けたといえ、彼の思惑に打ち勝ったという歓喜から剣の楽しさを再確認したと締める。

 リィンはもちろん、フィーといった同性にも強い相手がいる。

 身近に目指すべき目標があり、切磋琢磨する相手に恵まれる環境の充実さに、ラウラは改めてこのトールズ士官学院に入って良かったと感じていた。

 

「そうだ、この気持ちを忘れないうちに、父上にも一緒に伝えておくとしよう」

 

 ラウラは再び一筆をあらためる。

 そうして届けられたアルゼイドとヴァンダールの実家にて、八葉の剣士とヴァンダールの剣士の間で揺れるアルゼイドの少女、という誤解とすれ違いが生まれて、後に緊張を生むこととなる。

 そんなこととはつゆ知らず、ラウラは楽しそうに父親への手紙に筆を走らせるのであった。




これにてB班の面々との個別回は終了となります。
次回はついに5月の特別実習編の準備回に入るかと。
先月は人間関係での波乱があった分、今月は穏やかに進むかも?
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