はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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あまり話が進みませんでした。次回にはきっとストーリーが進展するはず。
いつも誤字報告ありがとうございます。
初期の話にも誤字いっぱいだあ…


フフフ、息子よ。五月の特別実習だ

 ルグィン伯の使用人を名乗る少女、ミュゼの案内の元にリィン達Ⅶ組A班はジュノー海上要塞へ案内されていた。

 てっきりオルディスの宿酒場を拠点に要請活動をすると思っていた一同は、立ち並ぶ領邦軍兵士達を前に浮足立つことを止められなかった。

 それも無理はない。

 ラマール州の領邦軍と言えば正規軍に劣らぬ精鋭と誉れ高い、各地より選りすぐりされた兵士達の集まりだ。

 その象徴と名高いオーレリア・ルグィンが総司令を務めることでも有名な場所にいきなり通されるとは、いくら彼女がトールズの卒業生と言っても学生を案内することなど思っていなかったことだろう。

 だがリィンが見る限り、領邦軍の兵士は生徒を見る以上にミュゼという少女に注目しているような気がした。

 確かに軍隊にメイドが居るというのはおかしな話であるが、それだけではない気がする。

 

「あちらにオーレリア・ルグィン伯がお待ちです」

 

 案内された部屋では、先月会った時と変わらぬ覇気をまとった美麗の女将軍と、その側にそんな彼女にも劣らぬ威圧感を持った男が座っていた。

 

「あれは……」

 

 ガイウスが最初に反応する。

 男のことを肌の色からノルドの者だと気づいたようで、あちらもまた生徒の中に交じるガイウスに気づいて軽く息を漏らした。

 

「伯爵閣下、ご要望通りトールズ士官学院、Ⅶ組A班の皆様をご案内致しました」

「ご苦労」

 

 ミュゼが一礼し、オーレリアの側に佇む。

 ルグィン伯の使用人とのことだが、側仕えを任されるとなると年若いながら有能な少女なのかもしれない、と生徒達は思った。

 リィンはリィンで、側仕えならパルムにいなかったのはどうしてだろう、とミュゼという少女を推し量る。

 オーレリアはリィンに笑みを向け、隣の男ともども生徒達に自己紹介をする。

 

「久しいなシュバルツァー。傷も癒えたようで何よりだ」

「おかげさまで。ハイアームズ候や身内の見舞いで予定よりも長く養生できましたので、すっかり元気です」

「それは重畳。さて、見知らぬ者もいるので挨拶をしておこう。我が名はオーレリア・ルグィン。このジュノー海上要塞を預かる、ラマール州領邦軍の総司令を務めさせてもらっている」

「ウォレス・バルディアスだ。縁あってこちらに顔を出している。同郷の者もいるようだが、同じトールズの名を冠する先達として挨拶をさせてもらおう」

 

 逆立った黒髪に鍛えられた肉体から溢れる存在感。

 《黄金の羅刹》と称されるオーレリアに並ぶのに遜色ないとリィンは思った。

 

「サラ教官が言っていた現地の協力者とは、オーレリアさんのことでよろしいんでしょうか?」

「うむ。本来ならば直接オルディスへ向かってもらうところだったが、少し気になることがあったのでこちらへ寄ってもらった」

 

 リィンがそう言うと、何故かエマ達がざわめきだす。

 なぜそんな反応に、と怪訝な反応をするリィンだったが、ウォレスやミュゼもまた軽く目を開けて驚いている様子だった。

 

「リィンさん、随分と意気投合しておられるんですね」

「色々あった仲というか。たまに連絡を取ってたりするよ。それに、パルムでの出来事は聞いてるんだろう?」

「そうなんだけど、ラウラ達から聞くのと実際に見るまではやっぱり、ね。って、連絡を取り合う……?」

「リィン、この人とその……果たし合いをしたんだっけ」

「限りなく実戦形式に近い稽古、ってやつだな」

「こちらも閣下から聞いている。期待の若獅子の腕前、ぜひとも拝見したいところだが」

 

 ウォレスの双眸がリィンを射抜く。

 向けられているのはリィンだけだったが、その近くにいるA班も体にビリビリと痺れる圧迫感がのしかかる。

 エリオットは何もされていないはずなのに、空気が軋んでいるような錯覚を覚えた。早くなる心臓の動悸と冷や汗が止まらない。

 そんなエリオットの肩を叩き、ウォレスの視線を遮るように立ったリィンは、闘気を流しながらオーレリアへ目を向けた。

 

「こちらも機会があればぜひ。それで、気になることというのは?」

 

 うむ、とオーレリアがミュゼに目配せすると、彼女が何枚か書類を渡してくる。

 そこには本日の特別実習の要請の他に、ラクウェルにおける猟兵の存在という資料が書かれていた。

 

「猟兵……」

 

 リィンはふとフィーのことを思い出しながらも、続きを促すようにオーレリアへ顔を向ける。

 

「カジノでたびたび見かけることが多くなった。と言っても、猟兵がプライベートで遊ぶことに難癖をつけて追い出すような真似はしていない。本日の要請にもラクウェルでの活動は記載されていないが、もし因縁をつけられたらその場で対処するがいい。仮に火種が飛ぶようなら、トールズと私の名を出せば下手ないざこざは避けられるだろう」

「ま、まあラクウェルでの要請はないし、行かなければいい話だよね?」

「ええ、下手に藪蛇に突っ込むことはないわ」

 

 アリサとエリオットが揃って意見する。

 声こそ出さなかったが、エマとガイウスも同じ気持ちだった。

 ただ、リィンだけはオーレリアがわざわざ忠告する意味を聞いてみる。

 

「ですが、どうしてわざわざ教えてくれたのですか? 猟兵が街にいる、くらいなら忠告する必要もないと思いますが……」

「いやリィン、ありがたいことだよ? 下手に絡まれた時の対処を教えてくれたんだから」

「もしかしたら、ラクウェルからオルディスに来ることだってありますしね。前情報があるとなしでは、私達の対処も変わります」

「そこのお嬢さんの言う通り、万一の保険というやつだ。仮に揉め事を起こしても、君たちならば問題なく対処できよう」

 

 ウォレスは言外に、有角の獅子の存在を示して見せろ、と言っているように思えた。

 それに一番感化されたのは、意外にもガイウスだった。

 

「わかった、同胞のその言葉、しかと胸に刻ませてもらう」

「ほう……お前の名は?」

「ガイウス・ウォーゼル。この春に『外の世界』を知るべく、トールズ士官学院に籍を設けている」

「なるほど。ならばガイウス、この特別実習がどう舵を切るかはわからんが、お前に風と女神の加護を」

「ああ、風と女神の加護を」

 

 ガイウスとウォレスにだけ通じる、儀式めいたやり取り。

 リィンがそれを見ていると、アリサがこっそり耳打ちしてくれる。

 

「ガイウスの故郷に伝わる文句みたいなものみたい。ケルディックでもよく聞いたわ」

「ノルドの風習ってことか」

「ええ。こちらで言う、女神の加護を、って意味で通していいと思う」

 

 アリサに礼を言い、リィンは書類をしまいながら挨拶をして部屋を後にする。

 一緒に付いてきたセリーヌはミュゼに預けることとなった。

 が、セリーヌは全力でそれを否定した。

 

(待って待ってエマ! 私、このオーレリアって人に喋ったところ見られちゃったの! 変に追求されたら困るし、私も付いてくわ!)

(ええ、そうなの?)

(オーレリアさんなら無闇に広めることはないと思うけどな。だって、それを言ったら先月の段階で知られてたろ? そもそもなんでセリーヌはオーレリアさんに話しかけたんだ?)

(う、うう…………)

 

 リィンの尤もな指摘にセリーヌは答えない。

 羞恥の極まった彼女に、実はリィンを心配して自分から打ち明けた、などと言えるはずもなかった。

 本人は魔女の眷属の使い魔としての義務と言ってはばからないそれは、オーレリアからすれば親しい相手を気遣う少女のそれにしか見えず、喋る猫という存在を受け入れていたのだ。

 今も震えるセリーヌをニヤニヤと愉快そうに眺めており、それがまたセリーヌの不安を増長させている。

 そうして唸り声を上げるセリーヌを、ミュゼがひょいと抱えてしまい会話が中断される。

 さらにミュゼはセリーヌの毛並みをつついと撫で、彼女をただの黒猫へ戻す手腕を発揮した。

 

「ん、なあ……にゃあ~」

「わあ、セリーヌってば気持ち良さそうな声上げてるね」

「エリオット的には良い音色に聞こえるのか?」

「まさか。でも猫の声っていうのは、良いニュアンスになることもあるからね。ピアノとかでも、猫をモチーフにした曲も多いし」

(そんなこと言ってないで助け……ふにゃぁああ~)

 

 ただの猫になったので、リィンは改めてミュゼにセリーヌを預けることにした。

 

「じゃあミュゼ、セリーヌの世話をよろしく頼む。ミルクや魚が好きだから、その辺りを踏まえれば他に好き嫌いはないと思う」

「はい、畏まりました。報酬はこの毛並みを撫でること、ですね」

「任せた、よろしく頼む」

 

 退室する直前、オーレリアの楽しそうな声が届いた。

 

「シュバルツァー。兵士との練武は期待しておけ」

「今度はちゃんとした『稽古』ですか?」

「フフ、そこはその時のお楽しみとしておこう」

「わかりました。また改めて寄らせていただきます」

「今からでも構わぬが?」

「そうしたらきっと力を出し切って、その後の実習が難しくなりそうなので……では、トールズ士官学院Ⅶ組A班、これより特別実習を開始します」

 

 

 一礼して退出するⅦ組A班の後ろ姿を見送りながら、オーレリアは傍らのミュゼへ話しかける。

 

「しかし、意外ですね。ここに来るまで、思ったより真面目に仕事をこなしていたようで」

「フフ、ルグィン伯の使用人という身分ですからね。仕事を真面目にしないで、殿方へお声がけなんて将軍の名誉に関わりますわ。そういうのはプライベートな時間に、です」

「はは、閣下の使用人ならそれくらい自由でいても構わないと思いますがね」

 

 苦笑するウォレスに同意しながらも、ミュゼ――本名、ミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエンは十三歳と思えぬ蠱惑的な笑みを浮かべた。

 彼女はオルディスを統治するカイエン公の姪にして、聖アストライア女学院に通っているはず、本来この場にいないはずの少女である。

 オーレリアとも懇意の仲であり、リィンの妹エリゼも通う聖アストライア女学院に通う彼女が休日を利用してオルディスに訪れた理由はただ一つ。

 リィン・シュバルツァーという存在を見極めるため、である。

 ミュゼはその手並みでセリーヌの本能を刺激し、ただの黒猫に堕としながらその感触にまぶたを落とす。

 

「まだ何も事を起こしてはおりませんが、リィン・シュバルツァーの第一印象としてはどうでしたかな?」

「掴みかねている、というのが正直ですね。普通の学生のようでいて、二重三重に底がありそうな……そういう意味では、エマさんという方も同様に。他のお三方は、まだわかりやすい印象でしたが」

 

 オーレリアがサラに手紙を出した理由も、ここに関わっている。

 オーレリアから話を聞いたミュゼは、先月の段階でリィン・シュバルツァーという少年について独自に調査を行っていた。

 シュバルツァーという名字から予想していたが、敬愛するエリゼの義兄であることや、突き詰めていくうちにあの鉄血宰相の息子ということも見通している。

 元よりギリアス・オズボーンについてはよく調べている。

 そのツテをたどる中、彼の亡き妻であるカーシャ・オズボーンの写真も見たことがあり、彼女に似た顔立ちのリィンを見ればそこから連想するのは容易かった。

 どういった経緯でテオ・シュバルツァーの下に預けられたのかは不明だが、敵の多い人物でもあるため、政治の面も含んでいるのだろう。

 鉄血宰相の息子というのも興味はあるが、それ以上に彼に注目した理由は他にある。

 

「灰の騎神……機甲兵の原型、でしたか」

「残念ながら本体は見ることが叶いませんでしたが、灰のチカラなる騎神のエネルギー体とも申しましょうか。不可思議なアーツに似た魔法を行使し、妙な体質も持っている様子」

「将軍や男爵閣下が使われる、闘気とはまた違うものでしょうか?」

「武芸者であれば、自己を高める独自の戦技を持っておりますが、私見ながらあれは外部から力を供給されているイメージでした。それが騎神と関わっているかまでは見抜けませんが、雛鳥……いえ、若獅子の身ながら、数年も牙を研げば獅子を食いちぎる資質は溢れんばかりに持っています」

 

 言外に、そう遠くないうちにオーレリアすら打ち倒す可能性があると認めるものだった。

 それを聞いたミュゼは目を見開き、ウォレスは武芸者の性か獰猛な笑みを浮かべる。

 

「そうまで言いますか」

「個人の資質や環境もさることながら、やつは奇妙な縁に恵まれています。ミルディーヌ様がエマという娘に感じ取ったその感覚も、間違ってはおりませんよ」

「答えは教えてくださらないのですね?」

「東方には百聞は一見にしかず、ということわざもありますので。ウォレスは同胞が気になるか?」

「そうですね、あの体格や雰囲気、まさにノルドを体現する者でした。俺はもう帝国に身を寄せておりますが、この身に流れるものが純血の彼を誇らしく感じている」

 

 ウォレスがガイウスを見て、今は遠く離れたノルドへの望郷にかられた。

 まっすぐに、風と大地のゆりかごで育てられたガイウスは、ウォレスにとってある意味眩しい存在でもあった。

 

「武力という点では、まだ遠く及ばぬようだがな?」

「何、彼もまた様々を学ぶ身。閣下お気に入りのシュバルツァー同様に羽ばたく日もそう遠くはないでしょう」

「ふふ、では彼らの二日間の成果に期待するとしよう。ミルディーヌ様はいかがされますか?」

「道案内という名目で付いていくという手もありますが、ひとまず本日の成果次第ですね。とはいえ、夜にはリィンさんと少しお話をさせていただこうかと……」

「了解しました。こちらでの要請のさいに、上手く言いくるめるがよろしいでしょう」

「あら、ひどい言い方」

 

 くすくすと笑いながら、ミュゼは窓へ近づき、眼下に映る赤い制服の少年少女を目に収める。

 そこに宿る感情を知るのは、オーレリアとウォレスの二人だけ。

 無言のまま、ミュゼはリィン達が見えなくなるまでその背中を追いかけていた。

 ちなみに会話の間、ずっとミュゼに撫でられていたセリーヌはその後、食事を与えられるまで会話はおろか彼女の本名すら聞こえていない状態だったという。

 

 

「猟兵か……みんな、どうする?」

 

 ジュノー海上要塞からオルディスへ戻ったリィン達は、本日の拠点となる宿酒場にて今後の話し合いを行っていた。

 エリオットはリィンが切り出した話題に疑問を投げる。

 

「どうするって、どういう意味?」

「あのオーレリアさんが、わざわざラクウェルに猟兵が居るって教えてくれたんだ。絶対に何かあるって俺は思う」

「どうしてそう思うの? ルグィン伯はもしトラブルが起きたら、自分が責任を取るって言っただけで……」

「リィンは猟兵が揉め事を起こす理由がある、と感じているわけか?」

「その通り」

 

 リィンはガイウスの指摘に頷く。

 皆に説明するように、リィンは指を立てた。

 

「ここは仮にもオーレリア将軍が守護する場所だ。猟兵からしたら貴族は良い商売相手なのかもしれないけど、彼女が統括する領邦軍はなかなかに苛烈だ。何せ、魔獣飼育施設に関しても将軍自ら出張るくらいだからな。猟兵としては、あの人を敵に回す可能性がある仕事を受けるなんて割に合わないと思うんだ」

 

 リィンはフィーとの会話の中、猟兵は割に合わない仕事は引き受けないということをよく聞いていた。

 フィーの所属した西風の旅団は感情に従うことも多いようだが、基本的に報酬を第一に考えるのが猟兵だ。

 戦闘自体が目的であったり、また別のパターンもあるが、多くの猟兵は仕事へのリスクとリターンの天秤を図りながら動いているという。

 やくざ稼業の猟兵が、無駄に領邦軍と揉め事を起こすとは考えにくい。

 にも拘らずそのお膝元に足を運んでいるということは、こちらが知り得ぬ理由がきっと存在しているとリィンは言う。

 

「じゃあ、どうしてあの人は僕たちに猟兵のことを……」

「これも、特別実習の一貫なのかもしれません。皆さん、ケルディックでの出来事は覚えていますよね?」

「ええ。大市の騒動はよく覚えてる。あれも結局領邦軍……貴族が起こした問題ですもの」

「事件は起きていない。だが、猟兵がいる以上、何らかの事件が起こる、あるいは起きている、とエマは言うわけか」

 

 はい、と頷くエマ。

 エマはここでサラから言われたことを全員に伝えた。

 

「サラ教官はどうも、今の帝国で起きている何かを知るために実習地の変更を受け入れたそうです。ですから、このオルディスやラクウェルでそれらを掴むことも、特別実習の一貫なのでは、と私は思います」

「サラ教官が……あの人、単にエマにリィンを押し付けただけじゃなかったのね」

(フフフ、息子よ。お前がエマ嬢に押し付けられたらそれはそれで――)

(それ以上言ったら今日は口聞かん)

(りぃんヨ、一体ドウイウコトダ?)

(データに残す必要のないことだよ)

 

 親父のセンスで放たれるくだらない冗談の気配を感じたリィンが即座にオズぼんの口を封じる。

 ヴァリマールはどういうことか説明を求めたが、リィンは強い口調で否定した。

 その間にも話し合いは進む。

 

「僕としてはあまり気が進まないけど、あの大市みたいに誰かが悲しい思いをするなら、放っておくのは気が進まない、かな」

「ああ。俺もウォレス准将からノルドの意地を示すよう言われたからな。挑む前に臆するより、挑んでから後悔したほうがいいだろう」

「みんなやる気みたいね。ま、理不尽なことがあっても、こっちはそれを上回る理不尽が居るんだから、安心して挑みましょう?」

「アリサ、俺のことをなんだと思ってるんだ」

「それは……まあ、うん」

「ちゃんと言ってくれなきゃわからないぞ?」

 

 視線を合わせないアリサに詰め寄るリィン。その姿に三人は苦笑を漏らしながら、最終的にガイウスが間に入り、エマがリィンを引き剥がすことでストップをかけた。

 

「よし、それじゃあ領邦軍からの要請以外をこなしてからラクウェルに、だな」

「それじゃあまずは街の人の依頼と、手配魔獣の討伐だね」

「その通り、さっさと終わらせていこう」

 

 そう言ってリィンは旗を取り出す。

 あ、と誰かが声を出すよりも早くリィンは外に向かっていた。

 

「それじゃあみんな、まずはオルディスの探索といこう」

「ちょ、ちょっと待ちなさい! せめてそれを出すなら街の外でやって、お願い! 色んな意味で外歩けなくなるから! 待ってお願い、リィィィィィィィィィィン!」

 

 アリサの静止はリィンに届かず、彼はオルディスの街に旗を持って駆け巡る。

 未知の土地を走ることは、オズぼん曰くマッパーと呼ばれる伝説の地図職人の仕事に相応するという。

 パルムと違い、オルディスは人口が多く土地も広い街だ。

 なら仮に人混みに紛れて迷子になっても大丈夫なように、リィンはトールズの旗を掲げて回ることでA班の目印になるよう心がける。

 トールズ士官学院Ⅶ組A班は、街の情報を知らないツアーガイドのリィンを筆頭にオルディスの街を駆け巡り、ある意味で街を騒がせながら要請をこなしていくのであった。




午前中のA班。

リィン
街の住人と触れ合いながら旗を手にオルディスマラソン満喫中。
アリサ
(顔を手で覆って隠している)
エリオット
(顔を俯かせて赤面しながら体を震わせている)
ガイウス
(リィンの姿に草原で馬を駆り家族と戯れた幼少期のことを思い出している)
エマ
(オズぼんさんとヴァリマールが大人しいですねと思いながらアリサを誘導している)

ミュゼ
リィンが旗を持って海都を走り回っていると報告を受け、エリゼとオーレリアの人を見る目が心配になる。
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