はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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前回の話を投稿したさい、ミリアムの髪の色を誤字報告してくださったのですが、原作では初対面の時に緑髪の少女となっていたのでそれに倣って描写させていただきました。
ですので変えずにいきますのでご留意ください。
また、以前ルトガーを旅団長と明記した時に似たような報告があったのですが、こちらもⅢでの初対面の時に旅団長と言っていたので、合わせて納得していただけたらと思います。

いつも誤字報告ありがとうございます。


フフフ、息子よ。捜査開始だ

 アルフィンへの挨拶をすませた二人は、朝の帝都へと繰り出す。

 クレアが同行することになってもリィンがやることに変わりはない。

 ヴァンクール大通りは早い時間であってもHMPが忙しなく動いているが、そこにトールズ士官学院の赤い制服を着たリィンの姿はなかなかに目立っている。

 そんなリィンに声をかけてきた憲兵に対し、クレアが説明をすることで彼らは納得して自らの仕事に戻っていく。

 さっそく感謝、とつぶやきながらリィンはクレアに向き直った。

 

「クレアさん、サポートとのことでしたがアルフィン殿下からは俺のことも含めてどう説明されているのでしょうか?」

「リィン君がかのシュミット博士の教えを受けるメンバーで、そこで起きた盗難事件の調査、及びその犯人に仕立てあげられた友人の冤罪を晴らすため、と伺っております。また巷のテロリストに関して、有効な手がかりを持っている、と。我々の手をことごとく避けているのは頭の痛いところですが」

「では、まずは情報共有ですね」

 

 リィンはまず幽霊騒ぎ……テロリスト達の移動手段が異空間であることを説明する。

 シュミット教室でのデータは鉄道憲兵隊にまでは届いていないようだった。

 

「幻獣に、異空間……にわかには信じがたいものですが……」

「そうなんですか? TMPは帝国の精鋭とお聞きしたので、そういった方面にも詳しいものとばかり」

(フフフ、息子よ。基本的にシュミット教室のデータはARCUS同様に軍事機密のようなものだぞ? まあARCUSはラインフォルト社が開発したものであるが)

(俺ミュゼに思い切り説明しちゃったんだけど)

(りぃん、我ナラバ問題ナイノデハナイカ?)

 

 ヴァリマールは旧校舎に封印されていた騎神であり、確かにシュミット教室と関係があるようでない。

 なら実際に見せられるのはヴァリマールくらいか? と思い至ったリィンの決断は早かった。

 

「じゃあクレアさん、手っ取り早く説明するのでちょっとこっちへ来てください」

「え? はあ……」

 

 リィンは怪訝そうなクレアを連れて、気配察知を駆使して人気のない場所へと走っていく。

 突然走り出したリィンの背を追うクレア。その足は現役軍人であるクレアの足であってもなかなか速いペースだった。

 彼女にとってリィンは学生であり、アルフィンから頼まれたゲストのように思っていただけにその運動能力の高さには目を見張るものがあった。

 だが、真にクレアが驚愕するのはこの後のことだった。

 

「この辺かな……ヴァリマール、クレアさんも一緒に頼む(・・・・・・・・・・・)

「応」

「え?」

 

 周辺に人のいない場所でリィンが手を掲げると、彼の背に立ち位置を確保していたクレアの視界が一瞬空白に染まり――次の瞬間、彼女はヴァリマールのコクピットの中へ転移した。

 

「!?!?!?!?!?!?」

 

 即座に導力銃を抜き放ち周囲を警戒するクレアだったが、彼女の横からのんきな声が聞こえてくる。

 

「クレアさん、警戒しなくても大丈夫ですよ。危険はないので」

 

 クレアが目を向けると、操縦席のような場所に座るリィンが目の前の機械類をいじっている。

 同時に目の前に光が灯り、視界一面に帝都を一望出来る景色――空からの光景が映し出された。

 

「え? え? え? と、飛んで……飛んで?」

 

 目を丸くするクレア。

 《氷の乙女》と称される女性軍人の顔はそこになく、素のクレア・リーヴェルトとしての顔を覗かせていた。

 

「改めてご紹介しますね。こいつはヴァリマール。トールズ士官学院の旧校舎に封印されていた、帝国の伝承にある《巨いなる騎士》の一体、灰の騎士ヴァリマールです」

「くれあ、ヨロシク頼ム」

「こ、声が……」

 

 呆然とするクレア。

 初見はみんな似たような反応だな、と思いながらも危ない相手でないことをアピールする。

 

「人格があるんですよ、いいヤツなのでそう怖がらなくて大丈夫です」

「とりあえずリィン君は自分と他人の意識差を考えてくださいね……」

 

 頭痛を堪えるように額に手を当てるクレア。

 その後クレアが落ち着いた頃を見計らい、自分がトールズ士官学院でこの騎神を見つけたのがシュミット教室が生まれたきっかけであると教える。

 しかし返ってきたのは冷静で冷徹な事実だった。

 

「事情をちゃんと説明してくれないと、これは単なる拉致、誘拐です。次にしたら逮捕しちゃいますからね?」

「すみません三日後なら留置所でもどこでも行くので、今は勘弁してください……」

 

 国家権力を前に、リィンはひたすら謝罪した。

 腕を組んで半眼となり、ぷんすかと怒りそうなクレアだったが、すぐに話題を元に戻す。

 どうやら怒りはポーズだったようで、心優しい性根が伺えた。

 

「どうしてこの騎神を私に教えてくれたのでしょう? 秘密、なんですよね?」

「クレアさんが居れば、これから行うことが簡単になるのでまずこの存在を知ってもらうのが先かなー、と」

「これから行うこと?」

「はい、テロリスト達の潜伏している場所を燻り出します」

 

 リィンはローゼリアから教えられた、鬼の力で霊脈を刺激して、特異点にゆらぎを与えると言う。

 事前知識のないクレアにもわかるように、塩の杭の残留物を除いた幻獣の説明などを行うと、なんとか理解を示してくれる。

 

「なるほど、霊脈版のソナーのようなもの、と」

「あるいは導力ネットワークにおけるスキャン、ですね。特異点というのは霊脈が乱れた場所に生まれるので、帝都中を飛び回りながら刺激していけばいずれその場所が判明出来ると思うんです。ただ、当然帝都は広いので……」

「私達の人海戦術で、それを見つけ出すということですね?」

「はい。当然俺達が見つけられるならそれに越したことはないですが」

「見つけたとしても、私達にお任せいただければ……」

「友達の危機を前に、何もせずにいるわけには行きませんよ。せめて遊軍扱いとして入れてください」

 

 加えて塩の杭の残留物という帝国史上に残りそうな爆弾案件なのだが、それは黙る他ない。

 うずうずと体を動かすリィンに、言葉では止まらないと判断したクレアはため息を一つつきながら頷いた。

 おそらくクレアが止めたとしても、この調子ではリィン個人で勝手に動いてしまうことだろう。なら、目の届く範囲に居てもらったほうがいい。

 

(機甲兵の情報をもたらしたのが士官学院の生徒だとは伺っていましたが、こんなものを個人で所有している少年を放置するわけには行きませんね。彼、どうも自分の感情を優先させる組織には向いてない部類みたいですし……個人的には好ましいのですが)

 

 クレアの軍人としての部分がそう判断する。

 了解を得られたことでリィンはヴァリマールを発進させるが、帝都の空を飛ぶ光景に驚きつつそれ以上の衝撃がクレアにもたらされていた。

 眼下には朝でありながらも、帝都の人口を考えれば決して少なくない人々が見える。

 当然HMPやTMPも数多く巡回する中、彼らはヴァリマールに一切に注視を払っていない。

 テロリスト対策により神経を尖らせているはずの彼らが、だ。

 

「リィン君、この機体……ひょっとして見えていないのですか?」

「ええ。シュミット博士の協力で、光学迷彩装置みたいなのが試験用に組み込まれてるんですよ」

 

 何気ないリィンの発言で、クレアはさらに目の前の少年を放っておくわけにはいかないと強く思う。

 高速で空を飛ぶ巨大な騎士人形、それが見えずに隠密行動が可能……という事実は件のテロリスト以上の危険を伴うからだ。

 オリヴァルト皇子が認識している以上敵対することはないはずだが、機密情報を雑談のように暴露していくリィンの危機感のなさは、クレアの責任感を大いに刺激した。

 アルフィンの仲介という面で信頼しているのかもしれないが、それでも一線は弁えて欲しいとクレアは切に願う。

 

「リィン君。とりあえず情報は気になったら私が聞くので、それまで言わずとも大丈夫ですから」

「そうですか? 情報共有って大事だと思うんですけど」

「否定はしませんが、回す情報は私で止めさせてください……」

 

 言いながら、クレアは通信機を手にTMPやHMPとの連絡準備を行う。

 幻獣や霊脈のことを少ない時間で説明は出来ないため、クレアが行うのは各地に配属された同僚達から異常の確認がないかのチェックに過ぎない。

 とはいえ現在帝都に散らばる憲兵達からの情報をクレアだけで処理するのだから、その負担は大変なものになる。

 が、クレアは必要な情報を集める、という点に関しては特異な才能を秘めていた。

 だから心配ありません、と語るクレアを信じてリィンは鬼の力を発現させた。

 

「リィン君!?」

「ちょっと姿変わってるだけで、ちゃんと意思疎通出来るので安心してください」

「え、ええ……」

 

 とはいえクレアは横にいる黒髪の少年が突然灰髪灼眼といった変貌を遂げたことで驚きを隠せない。

 騎神といい、この力といいまだ何か隠していそうな気はするが……それでも危険視する、という思いは浮かばない。

 それはひとえに、リィンの言動に表裏がないからだろう、とクレアは感じていた。

 人間の表裏に多く触れるクレアにとって、彼の表裏のない行動による破天荒ぶりはある種の清々しさすら覚えた。

 

「それじゃあいないと思いますが、まずはヴァンクール大通りから――」

 

 そうして、リィン達は空の上から探索を開始していく。

 ひょっとしたらロジーヌを襲った犯人が特異点にいるかもしれない、と思えばリィンの灼眼が漆黒に染まりかけ、エリンのペンダントが再び軋むほどの鬼気を溢れさせてしまう。

 その姿、怒りをクレアが恐れるような、懐かしむような、苦々しい瞳で見ていることにリィンは気づかない。

 それでも言葉は冷静なリィンと、事態の解決を優先するクレアは感情を呑み込んでサポートに従事する。

 一つの地区に対して霊脈への刺激を行っていき、揺らぎが発生するかの確認を行って行く中、ガルニエ地区にてリィンは霊子の揺らぎを発見した。

 

「クレアさん、ガルニエ地区に反応があります。憲兵の皆さんから何か異常の報告はありませんでしたか?」

 

 ヴァリマールを飛ばしながらリィンは横で身を屈めるクレアに確認する。

 クレアは連絡を回して確認してくれたが、ガルニエ地区、加えてリィンの言う箇所の捜索にも手を回してもらったが発見には至らない。

 リィンも直接確認しに行ったが、すでにゆらぎは消えており何も見つけることは叶わなかった。

 気を取り直して捜査を進める中、リィン達はゆらぎ自体が複数あることを発見する。

 ヘイムダル港やサンクト地区、先程のガルニエ地区に加え今しがた確認してみればヴァンクール大通りにもゆらぎが見えた。

 

「一体どうなってるんだ。特異点が四つも発生してるのか……?」

「………リィン君。モニターに帝都のマップと、ゆらぎのポイントを表示出来ますか?」

「やったことないですけど……ヴァリマール、出来るか?」

「問題ナイ」

 

 クレアの指示に従ったヴァリマールがメインモニターに帝都の地図を表示させ、そこにゆらぎの観測ポイントを表示していく。

 確認したことがなかったが、ヴァリマールは観測機能も持ち合わせているようだ。

 そのポイントをじっと見据え、取り出したメモに高速で何かを羅列していくクレア。

 横目で眺めれば、リィンから受け取った情報を含んだ様々が書き込まれていた。

 マップとメモを交互に確認するクレア。

 そのあまりに真剣な表情にリィンは声をかけることが出来ず、じっとクレアの行動を見守る。

 

(クレアさん、何をしているんだ……?)

(フフフ、息子よ。クレア嬢は今、己の共感覚を発揮して情報の取捨選択を執り行っているのだろう。邪魔をしないほうがいい)

(共感覚……? 声や音に色がついて見えるっていう?)

 

 エリオットも似たようなものを持っていた気がする。

 そこまで露骨なものではなかったが、独自の重なる感覚を持っていたように思える。

 

「リィン君」

「あ、はい」

「もう少し情報を精査したいので、私の言う場所でサーチを行ってもらっていいでしょうか?」

「わかりました!」

 

 妙な迫力に頼もしさを感じながら、リィンはクレアの指示に従い鬼気を解放させて霊脈を刺激していく。

 だがクレアの指示とは別に、リィンは皇城方面に何らかの力を察知する。

 

(……心臓がなんか疼く……この感覚、鬼の力が反応してる、のか? それともヴァリマールと?)

 

 ゆらぎではなく、楔……深い地下に固定された力の塊がある……気がした。

 気になってヴァリマールをバルフレイム宮へ向けようとするリィンを、クレアが止めた。

 

「リィン君。おそらく、ですが……貴方が感知したゆらぎというのは、特異点のほころびではないでしょうか?」

「ほころび?」

「ええ。おそらく彼らも特異点というものを制御出来ていないのでしょう。リィン君が外部から刺激したことで、その存在を維持出来なくなり、隠蔽が意味をなさなくなりつつある……つまりリィン君はサーチのつもりで拠点に爆撃をしかけていたようなものですね」

「えっと……そうなると、どうなるんですか?」

「規模によりますが、隠されていた特異点が帝都上空に姿を現すことに……流石に封鎖するには範囲が広すぎます。このままでは……」

(フフフ、息子よ。私に良い考えがある)

(本当か? 頼んだ!)

(と言ってもなんとかするのはヴァリ君だがな)

(聞コウ、おずボン)

 

 オズぼんの案を全面採用したリィンは、ヴァリマールと共にその作戦を聞く。

 クレアはリィンが思案にふけっていると思っているのか、口出しはしないで見守ってくれた。

 案を聞き終え、作戦開始と動こうとするリィンをオズぼんが止める。

 

(だが息子よ。この方法を使うと騎神本体を特異点に持ち込むことは不可能になる)

(どうして?)

(騎神をこの次元と特異点の境界とするからだ。つまり特異点を崩して帝都に出現させないための楔とする。逆に言えば、特異点をその場に固定させることが出来る)

(どこから来るかわからない、ってのが強みならまずそれを封じるってことか)

(フフフ、これもお前が引き寄せた偶然というやつだろう)

 

 偵察でなく威力偵察となっていたサーチが偶然役立っただけに、リィンはなんとも言えない顔だ。

 それでもやるべきことが決まったリィンは、クレアにその内容を伝える。

 

「というわけで、俺はこれから特異点の中に侵入しようと思います。クレアさんは――」

「いえ、私も付いていきます。姫様からの要請は貴方のサポートですからね」

「ですが……」

「それに、危なっかしい後輩を放ってはおけませんよ」

「後輩?」

「ふふ、私もトールズ士官学院の卒業生なんですよ。216期入学生なので、リィン君とは五年ほど先輩になります」

「そうだったんですか……」

「かつての学び舎での窃盗犯というのなら、協力する理由は十分にあります。それに、もともとテロリストの捜査と鎮圧は任務のうちですしね」

「わかりました。ではお願いしますね、先輩」

 

 頷くクレアだが、少し気になることがあるようだった。

 理由を聞いてみると、モニターのマップに再び指をさす。

 

「ゆらぎの大きさが異なるのが少し気になりますね」

「大きさ?」

「リィン君のサーチは出力が一定でした。にも拘らず、ゆらぎに大小が発生している。……ただの偶然ならいいのですが」

「直接見るまでわかりませんし、今は気にしないでおきましょう」

「そう、ですね。不安なことを言ってすみません」

「いえ、頼りにしています」

「はい、頼りにされました」

 

 改めて準備が整ったことで、リィンは近くにあったヴァンクール大通りのゆらぎへ近づいていく。

 ヴァリマールを見えない位置に待機させたリィンは、そのゆらぎへ向けて手を伸ばした。

 

「来い、灰のチカラ――ロア・ヴァリマール!」

 

 召喚されるのは巨いなる白き影。

 クレアはさらなる隠し玉を持っていたリィンに、さもありなんという表情だった。

 

「ヴァリマール、頼んだ」

「応!」

 

 リィンの呼びかけに応え、ロア・ヴァリマールは自身の体を崩し特異点への架け橋となって道を作る。

 精霊の道と呼ばれる転移方法らしいが、ロア・ヴァリマールは自分自身を媒介にすることで特異点とこの次元の中継点となったのだ。

 だがそれは、特異点の中で騎神も灰のチカラも使えないということになる。

 それでもリィンはクレアという協力者と共に、この特異点の中に潜むテロリストを捕まえてロジーヌの冤罪を晴らしてやると意気込んだ。

 

「クレアさん、行きましょう!」

「ええ、突入はお任せしますね」

 

 リィンとクレアの体が光に包まれ、騎神の中から特異点へと転移していく。

 精霊の道を通って特異点の中に入った二人は、入って早々に予想外の光景を目の当たりにする。

 まず、特異点の中はヴァンクール大通りに瓜二つだった。

 周囲の景色は元より、建物に至る細部までそっくりだ。

 だが決定的な違いは人が皆無であり、どこか薄気味悪い瘴気のようなものが漂っている。

 リィンとクレアは丹田に力を込めて、裏帝都とも呼ぶべき場所を進んでいく。

 やがてバルフレイム宮に位置する場所までやってくると、そこではさらなる驚きの光景が待ち受けていた。

 それは、数多くの魔獣……いや、幻獣と見られる生物達が屍をさらし、この次元より退散していく光景だった。

 それを引き起こしたと見られる相手。

 あごひげを蓄えた老人が、消え去る幻獣達の中央に佇んでいる。

 身の丈を超える十字槍を構えた老人の服装は、神父のような装いに見えた。

 彼はこちらに気づくことなく、裏皇城を一瞥したと思えばそちらへ向けて進んでいく。

 

「まさか、星杯騎士――それも、あの顔は情報局のファイルで見た――」

 

 クレアが何か言った。

 だが、リィンは目の前の老神父が星杯騎士であるという事実を聞いた途端、彼に向けて疾走していった。

 

「リィン君!?」

「星杯騎士っていうなら、あの老人が犯人の手がかりを持っているかもしれません!」

 

 その言葉に慌ててリィンを追いかけようとするクレアだったが、周囲に再び現れた幻獣によって移動を妨害されてしまう。

 即座に導力銃を抜き放ち、乱射するが幻獣はそれだけでは消えはしない。

 

「クレアさん!」

 

 リィンはクレアの下へ幻獣が集っているのを見やり、足を止めようとするが他ならぬクレアに止められる。

 

「こちらは平気です! 手がかりがあるというのであれば、追いかけて話を聞いてください!」

「……わかりました、お任せします!」

 

 少し時間がかかる、と判断したクレアの後押しを受けたリィンは、鬼の力を解放し老神父の下へたどり着く。

 これみよがしに力を噴出させるリィンの存在に、老神父の足を止める。

 振り返った老神父を見て、リィンは直感で理解した。

 この相手は己より強い、と。

 オーレリアのような技量の達人であり、マクバーンのような異能の怪異……得物の違いこそあれど、どちらも併せ持ったリィンの上位互換。

 騎神やロア・ヴァリマールのない今のリィンはその強さを前に普段以上に慎重になる。しかし、次の老神父の言葉に頭が真っ白になった。

 

「その服はトールズ士官学院の……ロジーヌは元気かね?」

「――――――――――――てめっ」

 

 気づけば、リィンは鞘から抜刀した太刀を老神父に叩きつけていた。 

 鬼の力はさらなる深奥を開き、灼眼は闇に侵食され刀身は鬼気により漆黒へと染まっている。

 鬼の太刀は老神父が構えた十字槍によって受け止められ、彼の地面が蜘蛛の巣のように亀裂が入った。

 それでもなお、老神父の動きに淀みはない。

 老神父の瞳が、何らかの力によって輝く。

 

「血気盛んな若者だ。何をそこまで怒る?」

「あいつを冤罪に仕立てておいて何を……!」

「うん?……ああ、なるほど。トマスめ、しっかり説明しておらんのか」

 

 十字槍を振るい、リィンとの距離を開ける老神父。

 鬼気解放で感情の枷が外れかかっているが、相手との強さを前にリィンは迂闊な攻めを見せない。

 

「どうやら誤解があるようだが、今は素直に聞く様子ではないな。今の君の前ではあまり意味をなさないかもしれないが、それでも名前には意味があると信じて言っておこう」

 

 老神父は怒りの焔に身を焦がしているようで戦闘での冷静さを残すリィンの様子に感心を覚えながら、ここで始めて十字槍を向けた。

 

「七耀教会・星杯騎士団(グラールリッター)所属守護騎士(ドミニオン)第八位、《吼天獅子》バルクホルン。――その力と合わせて見極めさせてもらおうか、少年」




迷走極まる帝都編にさらなるオリジナルをぶっこんでいくスタイル。
そんなわけで教会勢力として、バルクホルン神父登場です。
ウォレスとガイウスの師に加え、この時期は守護騎士現役なのでウォレス以上の技量とガイウスに与えた聖痕持ちとかいうチートおじいちゃん。
ユン老師と互角なのかと思いますが、それはそれでヴィクターと同列だと思うので、強者がぽこじゃか湧き出るゼムリアの魔境ぶりが伺えますね…

クレアさんとの掛け合いがやや控えめかなとちょっと思ったので、エマやデュバリィちゃんばりに期待されていた方は申し訳ありません。
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