いつも誤字報告ありがとうございます。
先手はリィン。
緋空斬を交差させた緋空連斬による飛ぶ斬撃と同時に、自身もバルクホルンに疾駆する。
止めても避けてもリィン自身が迫る二段構えの攻撃に対し、バルクホルンが選んだ選択は自らも接近することだった。
全身に金色の闘気を溢れさせながら、バルクホルンは十字槍を旋回させて緋空連斬を弾き、リィンの迎撃のために穂先を突き出した。
リィンはスピードを下げることなく身をひねって避け、その螺旋の動きを用いて螺旋撃に切り返す。
バルクホルンは頭を下げて斬撃をやり過ごし、反転させた槍の石突でリィンの頭を叩く。
背後より迫るそれを、リィンは腰に帯びた鞘を鬼の力で強化しながら叩き軌道上に紛れ込ませた。
鞘との激突により、一瞬だけ石突の勢いが弱まる。リィンにはそれで十分、体をずらし時間を稼いだことで石突はリィンでなく地面を砕く。
足場の崩れた不安定の中、それを見越したようにバルクホルンが十字槍を引く。穂先の異なる双子の刃が空気を裂いた頃、すでにリィンはその場から離れていた。
鬼の瞳でバルクホルンを睨みつけたまま、リィンは老神父の十字槍の引きの速さに渋面を作る。
自身が知る槍使いの中で、もっとも強いと思っていたウォレス以上の技量を感じた。
槍という長柄の武器にも拘らず、引きの速さが尋常ではない。間合いによるリーチの有利不利という考えを破棄する。
いかに太刀や拳の間合いに入って超接近戦を仕掛けたとしても、バルクホルンは一瞬でその差を広げ己の間合いを取り戻すだろう。
それだけの技があると、リィンは目の前の老神父が積んだ研鑽に称賛を送りたい気分だった。
そしてそれは、バルクホルンも同じことだった。
二十歳にも満たない少年が持つにしては、優秀という言葉では片付けられない剣技と身のこなし。
少年の身で己の槍をワンセット凌いで怪我はおろか一撃も当てることが叶わないなど、年甲斐もなく血が滾るのを感じる。
しかしそれも一瞬で沈静化させる。
己の任務を考えれば、彼を早く鎮圧して誤解を解かねばならない。
故にバルクホルンはそれを開帳した。
「我が深淵にて煌めく金色の刻印よ……」
「!?」
バルクホルンの背後に金色の紋章が顕現し、その煌きが十字槍に光を灯す。
瞬間、リィンは危機感に駆られるように動いた。
「裏疾風!」
八葉最速の剣がバルクホルンに襲いかかる。
絶対にあれを発動させてはいけないと感じた直感は実に正しく、しかしその脅威の前にリィンは自分が動かされたと気づいた。
放出した力の規模に反して、金色の槍は最短の軌跡を描いてリィンの胸に突き刺さる。
無拍子。
一切の無駄を省き事前の動作を不要とした、武術においての一つの到達点。
最初からあの紋章と力は見せ札で、狙いは確実な一刺。
穂先が抜かれる。リィンは力なく倒れ――中身を構成していた鬼気が霧散した。
「むっ!」
「――鬼疾風」
鬼気により実体と遜色ない精度に昇華させた分け身を囮に、リィンは本命の一撃をバルクホルンの背中へ走らせる。
取った、と思ったのは間違いではない――その黒刃が、長柄から分離した石突によって防がれるまでは。
(法剣――いや、その仕掛けがある槍!?)
振り返らぬまま、分離した石突は瞬時に軌道を伸ばし、鞭のようなしなりを見せながらリィンに絡もうとする。その刃片は巨大な尾を持った魔獣のような威圧感を秘めていた。
即座に太刀を手放すことでリィンが拘束されることはなかったが、それは愛刀を失うことを意味していた。
法剣ならぬ法槍のギミックを元に戻し、太刀を左手でキャッチしたバルクホルンは愉快そうに笑みを浮かべていた。
「どちらも初見で対処するとは。加えてその鬼気に汚染されるどころか、分け身へ練り込むほどに使いこなしている。見たところそのペンダントの恩恵と言ったところか。が、そう長くは保つまい」
バルクホルンの言葉を証明するように、リィンの瞳が灼眼へと戻っていく。
同時に鬼の力をまとわせた太刀も黒から元の銀へと色を戻していく。
神気合一により、リィンは鬼の力を長時間維持出来るが、鬼気解放状態の攻撃をしのぎきったバルクホルン相手にそれは心もとない。
せめて太刀があればやりようもあるが、捌の型だけで達人……加えて未知の紋章の力を持った老神父を相手にするのは不可能だった。
それでもリィンは諦めることはしなかった。
先走った正騎士達にその罪を問うこともせず、何の関係もなかったロジーヌに責任を負わせた組織の人物に、簡単に降伏という選択を取りたくなかった。
だが、その感情ではリィンの望む答えには決して届かない。
(フフフ、息子よ。彼の槍捌き、何か見覚えはないか?)
そんな時、今まで沈黙していたオズぼんが口を開く。
バルクホルンが軽く身じろぎしていたが、オズぼんの言葉に意識を割いていたリィンはそれに気づかない。
(槍捌き?)
(そうだ。彼はお前を害する気はないようだからな。一合でいい、他の槍使いの動きを浮かべながら攻めてみよ)
(そんな悠長なこと……!)
(どの道、太刀を奪い返さねば勝機はないぞ?)
もっともなオズぼんの言葉に舌打ちを残しながら、リィンは無手でバルクホルンに相対する。
彼は興味深そうに十字槍、いや法槍を片手で構える。太刀は相変わらず左手に握ったままで、片手でリィンの捌の型に対処するようだ。
舐められているが、それを行えるだけの差が二人の間にはあった。
「徒手・孤影斬っ!」
リィンは分け身を三体生成し、バルクホルンからある程度の距離を維持しながらその手に鬼の力を上乗せした手刀で孤影斬を放つ。
本来は太刀から放つ飛ぶ斬撃だが、鬼の力を使った手刀は実際に切断力を付与する。
四方からの孤影斬に対し、バルクホルンは跳躍して十字斬撃をさばく。
高く飛び上がったバルクホルンは高角度から体勢を変え、地上に向けて落下してくる。
謎の紋章の加護は見られないようだが、導力魔法によって発生させた風が竜巻となり、槍に絡みつくさまはリィンもよく知る彼の動きだった。
「これは、ガイウスの……!?」
「カラミティホーク!」
急降下するバルクホルンに対し、リィンが選んだのは迎撃。
八葉一刀流の極意とも言える明鏡止水には至らずとも、伍の型、残月を応用したクロスカウンターで太刀を奪い取ろうと画策する。
法槍のギミックに対処できるよう、分け身も落下点に合わせて距離を詰めた。
一瞬後に訪れる交錯に二人の男は互いの視線を合わせ――意識の外から乱入した一発の銃声がバルクホルンに割り込んだ。
「リィン君!」
乱入するクレアの声。
声と共に連射された銃弾が続けざまに発砲され、一度目を目標を変えた法槍によって弾かれたものの、二発目のそれは太刀へと着弾、三発目以降も不規則に叩いていく。
その精密射撃でバルクホルンから太刀を離れたのを見計らい、彼女は銃を持ち替える。
発射されたものは銃弾でなく、ワイヤーだった。
ワイヤーアンカー銃と言えるそれは、法槍で奪い取られた意趣返しをされるように、バルクホルンから太刀を奪い、クレアの手に渡った。
クレアの乱入によりバルクホルンの攻撃は不発に終わる。
それは、リィンがカウンターから攻撃へ意識を変えたことを意味していた。
「破甲拳!」
捌の型による無手の一撃がバルクホルンの頬を打ち抜く――その刹那、バルクホルンはリィンの拳を取り、突き出された勢いを利用して逆にリィンの体勢を崩して空へと放った。
だが出来たのはそこまでだ。
突っ込んできた分け身達に、法槍での追撃はその対処に追われる。
しかし、リィンが空中で体勢を整える頃には分け身全てが法槍に穿たれていた。
一瞬の間に分け身を片付けた動きは、先ほどと比べても速い。やはり手加減されていたようだ。
だが太刀は戻った。まだ、戦える。
「助かりました、クレアさ――」
「リィン君。私は話を聞いてくださいと言いましたが、戦ってくださいとは言っていませんよ」
リィンはクレアが太刀を奪い返してくれたことに喜んだが、冷静に指摘されて太刀に伸びていた手が止まる。
クレアも太刀を隠すように背中へ下げ、リィンの目を半眼で見つめた。
「個人的な知り合いかどうかはわかりません。ですが、彼はトールズ士官学院の盗難事件の犯人なのですか?」
「い、いえ。あいつはその関係者だと思――」
「本当ですか? そう思い込んでいるわけではなく」
「だ、だってあいつは星杯騎士で……」
予想外のクレアの意見に、先程までたぎらせていたリィンの戦意がしぼんでいく。
バルクホルンは面白そうに二人を見ているだけで、追撃をしてこない。
それを幸いと言わんばかりに、クレアはリィンから情報を吐き出させる。
曰く、盗まれたものは星杯騎士すら駆り出されるアーティファクトのようなものらしい。
先走った一部の星杯騎士がトリスタに訪れるも全員が消息を絶った。
犯人が行方不明という現状に帝国からの追及を避けるため、戦力の低下を避けるため法国は仮初の犯人として身分を隠していた星杯騎士団所属の友人に罪を被せたのだと、遅まきながらにクレアはリィンがバルクホルンに向ける怒りの理由を知る。
加えてリィンの友人は、真犯人によって襲われ今は手出しの出来ない場所に拘束されているらしい。
クレアは何か言いたげなリィンの口を塞ぎ、バルクホルンに意見を求めた。
「…………そちらの話は本当なのですか?」
「だらしない身内を肯定したくはないが、本当だ。偽りであっても容疑者として提示しておけば、数日の間は帝国からの余計な介入は入らないからな。その間に目的の品を探す、というのは無茶を言ってくれると思うが」
「法国の不祥事自体は否定されないのですね?」
「これ以上は政治の分類になるが、あくまで未然にはなる。彼女も容疑者として帝国からの調査が入るだろうが、身柄を捉えられない以上は帝国からの介入の時間稼ぎになる。そのリミットがあと三日だが、見つからなければロジーヌは表を歩くことが出来なくなるだろう。彼女は法剣という、星杯騎士の得物を証拠品として残したが故に利用されてしまったのだ。せめてあれがなければ……」
(法剣を残した……なら、それを手に入れて特訓するようになった理由を考えると……俺……そんなわけあるか!)
淡々とした言葉と、浮かんだ不安を払うようにリィンの手が動こうとするが、それをクレアが未然に止める。
膂力では確実に抑えきれないと判断したクレアは己の身をバルクホルンとの間に割り込ませることで、リィンの手を防いだ。
「クレアさん、なんで……」
「犯人はこの方ではありません。賛成できる行為ではありませんが、彼と戦って利を得るのは真犯人に他ならない……冷静に考えれば、リィン君もわかるでしょう?」
「でも……!」
「ですので、お互いに情報交換と参りませんか?」
「私は異論ないが、彼はいいのか?」
(フフフ、息子よ。ミュゼ嬢へ言った言葉を反故にする気か?)
(反故……)
(ロジーヌ嬢を泣かせる手段は取らない、というものだ。彼女は果たして、無関係の身内と戦う今のお前を見て悲しまないと言えるか?)
クレアとオズぼんの言葉がぐるぐると頭に回る。
だが、最終的にリィンは神気合一を解いて鬼の力を戻した。
エリンのペンダントを握りながら思うのは、ロジーヌの悲しむ姿を想像してしまったからだ。
ただでさえ今も不安になっているだろうに、後追いの傷を増やすわけにはいかない……と理性は告げるが、リィンの根本を成す感情は納得してくれない。
悩んだ末にリィンが出した答えは――己の顔を破甲拳で殴りつけることだった。
「リ、リィン君!?」
「……痛い」
「当たり前です!」
慌ててハンカチを取り出し、ティアの薬でリィンの鼻から流れ出る血を止めるクレア。
別の意味で頭をくらくらさせながらも、上がっていた血を無理やり流すことで強引に頭を冷やす。
応急処置というには荒っぽい手段を取るそれは、痛みを伴ったものの確かな効果を与えた。
「すみませんでした」
リィンはバルクホルンの下へ歩き、頭を下げる。
しでかしたことを考えれば、土下座はおろか一回だけなら刺されても文句を言わない覚悟であったが、バルクホルンは苦笑と共に言った。
「顔を上げなさい。若者が思い悩むのを受け止めるのは大人の仕事だ。やんちゃだったことに変わりはないが、私も君もそう大した怪我は負っていない。ならそれでいい。それに、君の怒りは正当なものだからな」
「正当な怒り……」
クレアはその言葉に、リィンの血で湿ったハンカチを握る。
粘着性のある鉄の臭いが鼻孔をくすぐり、クレアの脳裏に瞬時に浮かぶものがあった。
燃えた金属の香り。体の節々に走る痛み。笑顔を浮かべていたはずの家族の姿が、壊れた導力車の中で二度と物言わぬ――
喉を引きつかせ、歪みそうになる顔を元に戻したのは他ならぬリィンだった。
「クレアさん、大丈夫ですか? 顔色が悪いようですが……って、すみません。俺の血が付いてますね。今度洗って返しますのでお借りしますね」
そう言って強引にハンカチを取られ、彼のハンカチで指に付着した血を拭われる。
「さっきはありがとうございました。クレアさんのお蔭で冷静になれたので」
「い、いえ。私は別に……」
リィンと目を合わせられず、顔を反らしてうつむく。
彼は首を傾げていたが、その疑問を強引に晴らすようにクレアはリィンのハンカチを手にとった。
「で、ではこれは私が洗って返します。今度、お互いに交換ということで」
「ですが、一方的に悪かったのは俺で……」
「大丈夫です、大丈夫……」
「わ、わかりました。ではお願いします」
妙な迫力に思わず頷くリィン。
そのやり取りを見ているバルクホルンに息を一つつき、リィンは改めて目の前の老神父に自己紹介をした。
「では改めて……トールズ士官学院・特科クラスⅦ組所属のリィン・シュバルツァーです。先程は見苦しい姿を申し訳ありません、バルクホルンさん」
「ふふ、やはり名前には意味があったな。さっきも言ったが気にしないで欲しい。彼女の窮地は私も不本意なのでね」
「……鉄道憲兵隊大尉、クレア・リーヴェルトです。先程、貴方も真犯人を探しているとのことですが」
「おそらくだが、情報量は君たちと大差はない……というより、私が君たちの動きに便乗させてもらった。リィン、君がもたらした霊脈への刺激によりこちらも特異点を見つけることが出来たのでね」
「あのゆらぎの大小は、貴方がここへ侵入したものだったのですね……」
自分を納得させるように頷くクレア。
どういった手段を用いたかわからないが、クレアの発言からバルクホルンもこの特異点に真犯人が居るのではないかと踏み込んだらしい。
「確実ではありませんが、ギデオンと名乗るテロリストが目下真犯人候補です。そいつはノルド高原でも何やら画策していたようで」
「私も聞いている。ノルド高原は私にとっても縁ある地だからね」
「ということは……ガイウスは貴方の弟子、なのでしょうか? 槍捌きに見覚えがありましたが」
「やはり気づいたか。ノルドで日曜学校の真似事をする傍ら、槍術を教えた。彼をトールズ士官学院へ推薦するよう、ゼクス中将へ渡りをつけたのも私なんだよ」
「そうだったんですか……ガイウスの師父と知らず、改めて申し訳ありません」
「いいや、ガイウスも良い風の導きがあったようだ」
ノルドの言い回しに苦笑するリィン。
少しだけ空気が和らぐが、すぐにリィンは気を引き締め直す。
「では、目的が同じなら一緒に行動してもらえませんか? バルクホルンさんほどの腕前の持ち主なら頼りになりますし」
「いいのかね? 私は君が嫌悪する星杯騎士その人だが」
「まあ、完全に納得したわけではないですが……それも全部ロジーヌを、友達を助けてから考えます」
「…………なるほど、その怒りや力の大きさに呑まれぬ器はあるようだ」
若者の成長に喜ぶ大人の顔を見せるバルクホルン。
その様子を見たクレアが口を開く。
「仮に貴方の意にそわぬ結果であったなら、やはりリィン君は排除されていたのでしょうか」
「排除、とまではいかんが気絶させて君に押し付けようとは思っていたよ。君自身、リィンを放置して特異点の捜索をするとは思えないしね」
「…………対象が見えない限り、一度引いていたでしょうね」
クレアはそう言うが、リィンが目覚めない限りこの特異点の侵入が叶わないことを承知で脱出を選択していただろうと自嘲する。
任務を優先するのなら、彼をどこかに寝かせて先に進むのが正しいのかもしれないが、先程の幻獣が徘徊するこの地にリィンを一人残していけるほど、クレアはその異名ほど冷たくない。
「しかし、ここはどういう場所なんでしょう? 俺がノーザンブリアで遭遇した特異点でも、過去を再現したようなものでしたが……」
「さて、それは先に進んでみればわかることだろう。しかし、その土地の記憶を再現する特異点、か。……まさかな」
「バルクホルンさん?」
「ただの推測だよ。……だが、覚悟はしておいたほうがいい。ひょっとしたら、我々は伝説と戦うかもしれないのでね」
「伝説、ですか」
「かつて帝都を死の都へと変えた《暗黒竜》ゾロ=アグルーガ。過去の記憶を再現しているというのなら、相見える可能性もあると思っただけさ」
息を呑むリィン。
だがクレアはその事実に冷静な意見をぶつける。
「ですが、ここへ来るまでのヴァンクール大通りは現代のままです。最低でも近代の礎を築いたドライケルス大帝時代のもの……ではないでしょうか。そうであるのなら、ゾロ=アグルーガはすでに滅んでいます」
「そう願いたいものだ」
「どちらにしろ、幻獣を含めて強敵が居るかもしれないから油断するな、ってことですよね」
「その通りだ」
(バルフレイム宮の地下で感じた力の塊……そう、なのか?)
リィンは捜査の中で感じた力の正体がかの暗黒竜なのかと疑問を覚える。
だが、全ては予想でしかない。
実際に憶測でバルクホルンに迷惑をかけてしまった身としては、まずは自分の目で確かめてから物事を決めなければと判断する。
「ではリィン君、改めてこれを」
「あ、ありがとうございますクレアさん」
ハンカチを交換する前にやるべきでした、と反省するクレアから太刀を受け取る。
導力銃で弾かれた太刀に傷らしい傷はない。
そのことを不思議に思っていると、クレアは一度目は従来のもので、二度目以降は太刀を奪い返すために見た目より威力の低いもの選別して撃ってくれたそうだ。
改めて礼を言いながら、鞘の中に納刀する。
鼻血も完全に止まり、鬼気解放という手を切ってしまったがそれ以上に頼もしいバルクホルンの協力を得た。それを思えば余りある成果だ。
「そうだリィン。ロジーヌのことだが……」
「手出し出来ない場所に拘束されている――それは聞いてます。逆に言えば、無事であることに違いはない」
その言葉にバルクホルンは目を軽く開く。
ほんのわずかながら、この老神父から一本取った気分だった。
「それでも不安でいっぱいだと思うので、俺が真犯人を見つけてぶん殴ってぶった斬ってふん縛って、ロジーヌの前に突き出して謝罪させてやります」
「リィン君。それ犯人が無事じゃありません。下手をすれば死んでしまいます」
「かげんはします」
「棒読みですよ!」
目を合わせようとしないリィンに詰めよるクレア。その様子を見て、バルクホルンは苦笑する。
「じゃれ合うのはそこまでにしておきなさい」
「じゃ、じゃれ合いだなんて……」
「そうですね、それじゃあ行きましょう」
なんだか納得いかない、という面持ちのクレアの様子に気づくことはなく、リィンは先陣を切って裏バルフレイム宮へ向かっていった。
もう少しストーリーを進めようと思いましたが、区切りが良いのでここまでに。
巻いていこうと書いた矢先にこれである。
しかしハガレンの大総統やワートリのヴィザ翁といい、強いおじいちゃんというのはどうしてこうも心惹かれるものがあるのか…