はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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ミリアム編入前に色々と。
いつも誤字報告ありがとうございます。


フフフ、息子よ。久々の学院だな

「エマ、騎神に乗らないか?」

「突然何を言い出すんですか」

 

 懐かしきオカルト研究会の部室でティータイムを満喫していたリィンは、共に席を囲んでいたエマに話を投げる。

 ヴィータとの再会を果たしたことで、放課後の自主練も一端終えて無事こうした時間を確保出来たらしい。

 エマの傍でうつらうつらと船を漕いでいたセリーヌも、リィンの突拍子もない発言に目覚めて呆れ顔を向けている。

 部屋の主であるベリルは普段の薄ら笑いを変えずに、リィンの言葉を意訳する。ちなみにロジーヌはトリスタ教会でお手伝い中である。

 

「ウフフ、テロリストは騎神を持っていて、紫もいるから戦力を増やそうという魂胆かしら?」

「そう、それ」

「それなら目的語をちゃんと付けてください」

「悪い悪い、改めて説明するとだな……」

 

 そう言ってリィンは、テロリストが機甲兵を持っていた件についてミュゼと相談した時のことを語る。

 領邦軍が機甲兵を持っていることは暗黙の事実であり、テロリストがそれを所持していたということは両者は繋がりがあり、そのスポンサーであると彼女は語った。

 どうやら件のテロリストはギリアス・オズボーンへの個人的恨みで集った組織のようで、《貴族派》としても《革新派》の象徴たるギリアス・オズボーンの力を削ぐ一環として協力しているらしい。

 領邦軍には西風の旅団、つまり紫の騎神を所持している。テロリストと合わせて複数の騎神を所持する《貴族派》に対して、こちらはヴァリマール一体のみ。仮に一対一で対抗したとしても、現状でリィンはルトガーに確実に勝てるとは言えない。逆に一対ニになる可能性だってある。

 故にここで一つ騎神を確保し、数的に互角にする必要がある、という結論に至ったのだ。

 

「それで、騎神同士の連携を考えれば前衛後衛と分けたほうがわかりやすいかな、って」

「だから私に乗らないか、と」

「ああ。騎神レベルで優秀なアーツ使いが居るとなれば、色々やれることも多くなりそうだしな。テスタ=ロッサはエリンで呪いを消すまでは使えないだろうし」

 

 テスタ=ロッサは皇帝陛下の説得待ちのためまだ帝都の地下にあるのだが、リィンの中ではすでにエリンへ運ぶことが確定していた。

 ローゼリアも同じ気持ちであり、すでにニ人はこの次元でのテスタ=ロッサの場所を特定し、転移のための事前準備を整えていた。許可が出ればその日のうちにエリンへ運ばれることだろう。

 エマとセリーヌは一体いつの間に……と頭痛を堪えていた。ちなみに実行したのはオリヴァルト皇子と会合した当日の深夜である。

 トマスによって旧校舎から機材を運ばれたエリンで、魔女達に導力技術を教えるシュミットの準備もあるが、遅くとも夏至祭を終える頃にはエリンに移っているだろうとリィンは考えていた。

 リィンとしてはローゼリアと合流したさい、そのままマクバーン対策の話し合いもしたかったが、戦いのための地力が足りないと言われてしまった。

 鬼気解放とゼムリアストーンの太刀を手に入れたものの、まだ道のりは遠い。だがそれでも、リィンは自分がマクバーンに対して何が出来るのかを頭の片隅で考え続けている。

 

「でも、エマはアンタの……ヴァリマールの準起動者よ? 新しく別の騎神に乗るなんて出来るのかしら」

「出来ないのか?」

「そもそもロジーヌやあのポンコツ剣士もそうだけど、普通起動者がちゃんといるのに準起動者に操作を委ねるとかないんだからね?」

 

 本来の契約者はアンタなんだから、とセリーヌはため息をつく。

 ノーザンブリアとヘイムダルの特異点において、リィンはヴァリマールの操作をデュバリィとロジーヌに委ねたことがある。

 デュバリィは同じ程度に戦えたし、ロジーヌもあの巨人機を小破させたという報告を受けているので、操縦に関してはリィンでなくてもいいのでは、という考えがあった。

 

「そもそもヴァリマールはリィンさん以外が操縦して良いんですか?」

「我自身ハ常ニりぃんト共ニアルセイカ、アマリ本体ニ誰ガ乗ッテ居テモ構ワナクナッテイテナ」

(フフフ、伝説の騎神が機甲兵のような汎用性あるあり方だな)

「絶対それアンタが大半の原因でしょ……」

「まあまあいいじゃないか。それよりエマ、返事はどうだ? ベリルも乗ることは出来るだろうけど、連携って意味ではエマに乗ってもらったほうがやりやすいからな」

「……いえ、やはり私では難しいと思います。そもそも騎神にはヴァリマールのように独自の人格が宿っています。私が灰の準起動者である以上、彼らが素直に受け入れると思えないんですよね。テスタ=ロッサも、アルノール皇家しか乗れないと聞きますし」

「そのための試しだろうに。お前の仲間は選り好みするんだなあ、ヴァリマール」

「悲シイコトダ」

「いやいや、それが普通だから」

「ウフフ、ならリィン君。それならⅦ組の彼に尋ねてみれば?」

「え?」

 

 ベリルの思わぬ提案に、リィンは呆けた声を出す。

 

「そもそも、リィン君はカイエン公への抑止力として騎神を求めているのでしょう? なら、同じ四大名門で対抗馬になりえる人がいるじゃない。もっとも、立ち位置次第でしょうけど」

「ユーシスか!」

 

 言われて、リィンはかつて騎神の試しについてユーシスに語ったことを思い出す。

 

「前にベリルから教えてもらったけど、俺達とヴァリマールは正式な試しを受けていない状態で灰を手に入れた。だから試し自体が行われていない今、二体目の騎神の試しの場を召喚出来る可能性があるって」

「た、確かに試しの場というのはいくつか候補がありますが……」

(フフフ、私が手早くヴァリ君を引きずり出せたのは、彼が灰だからだ。他ではこうもいかん)

「無茶苦茶な理屈ですが、出来てしまいそうな気はするんですよね……」

「偶然ねエマ、私もそう思っちゃってるわ」

 

 適応してしまった哀愁を見せる魔女の眷属をよそに、リィンは残っていたコーヒーを飲み干して立ち上がる。

 

「そうと決まれば早速検証だな。エマ、セリーヌ。先に旧校舎に行っててくれ! 俺はユーシスを連れてくる!」

「今は部活中では?」

「なら約束を取り付けてくる。ベリル、ありがとう!」

 

 笑顔でベリルに礼を言って、オカルト研究部室を出ていくリィン。相変わらずの行動力に苦笑しながら、エマ達も席を立つ。

 

「紅茶ごちそうさまでした。ベリルさんはいかがされますか?」

「ウフフ、私はいいわ。存分に疲れてきてちょうだい」

「それ、送る側の言葉としてどうなの?」

「間違ってないでしょう?」

「まあ、そうだけど」

 

 解せぬ、と言いたげなセリーヌに苦笑しながら旧校舎へ向かうエマが退室する。

 扉が閉まる音を耳に残しながら、ベリルは目の前の水晶玉をじっと見つめる。

 

「…………少し、迂闊だったかしら」

 

 占いの素振りも見せず、まるで友人のように純粋な助言を行った自分の姿に、ベリルは心の中に浮かんだ波紋を打ち消すように、紅茶を口に含み感情を流していった。

 

 

 部活動中だったユーシスに事情を話したその日の夜。Ⅶ組の学生寮のリビングでリィンは早速ユーシスと共にラウラを捕まえる。

 《貴族派》でカイエン公の抑止力になるのはアルバレア家のユーシスであるが、子爵家でありながら《光の剣匠》の異名を持つヴィクターの名前は貴族界においても大きい。

 だがそんなリィンの行動を訝しんだマキアスの指摘に、リィンは特に隠すことなく事情を明かし――急遽他のクラスメイト達も集められ追加HRが始まった。

 

 サラも当然のように参加するそれに、リィンはⅦ組のクラスメイトに自分が行おうとしていること――《貴族派》への抑止力のため、騎神との契約を画策していることを明かす。

 先日の盗難事件の折、トールズに侵入したテロリストと《貴族派》……というよりカイエン公が繋がっていることも当然話した。

 詳しい事情を明かされてどよめきを見せるⅦ組と、結局リィンが内戦に関わってしまったサラや、実家が生み出したものがテロリストに渡っていると聞いたアリサは渋い顔だ。

 

 特にサラは学生の身で関わらせてるなど言語道断と考えているのだが、抑止力を用意するだけで直接戦うわけではない……という理由が彼女を押し止める。理解はしても感情に納得がいっていない。

 各々の気持ちはひとまず置き、リィンはオズぼんのアドバイスにより、まず二人の立ち位置を聞くことにした。

 

「それで、アルバレアとアルゼイドは《貴族派》とどこまで関わっているんだ?」

「詳しい事情は聞いていないが、おそらく父上……アルゼイドは中立を取ると思う。《貴族派》にも《革新派》にもどちらにも合力はしないだろう」

「アルバレア家は《貴族派》、と言わざるを得ない。ただ、俺も詳しいことは聞いていない。兄上ならあるいは」

「ルーファス卿か……」

「何か気になるのか?」

 

 リィンはそれを聞いて渋面を作る。

 ユーシスがその理由を尋ねると、リィンは少し躊躇した後に意を決したように話す。

 

「前にユーシスはルーファス卿の指示で俺……というか騎神を調べていたんだよな? あの時はあんまり気に留めなかったけど、《貴族派》がテロリストと繋がっているって知ってからはただの興味とは到底思えなくてな」

「……兄上がテロリストに関与している、と?」

「確証はない。でも、否定することも出来ない」

「何だと……」

 

 自然と目が険しくなるユーシス。

 リィンも自分が家族に疑いの目を向けられたら同じことをすると思うので、中々言いにくかったのだ。

 だが、塩の杭の残留物を盗んだ犯人が内部犯ということを踏まえると、ルーファス・アルバレアへ疑いの目を向けざるを得ない。

 

「落ち着けユーシス。リィンはあくまで可能性を提示しただけで、事実を言ったわけではない」

 

 ガイウスが間に入ることでユーシスの険が取れるが、それでも空気は若干悪くなる。

 そこへフィーが口を挟んだ。

 

「リィン。《貴族派》には団長も居るんだよね?」

「確証はないけど、西風の旅団が領邦軍に居る以上はそういうことだと思う。少なくとも、ゼノさんとレオニダスさんの二人はカイエン公の護衛をしているって聞いてる」

 

 これはミュゼからの情報だ。

 おそらくオーレリア経由なのだろうが、彼女は武勲のために《貴族派》にいるそうなので、《革新派》との仲介を頼むわけにはいかない。

 

「なら、その騎神の試し私が受けてもいい?」

「ユーシス次第だな。あくまで《貴族派》への抑止力のための騎神だから、フィーが乗るよりユーシスに乗ってもらったほうがいい、って考えてたんだけど、アルバレア家が《貴族派》ならみすみすに戦力を増やす結果になる」

「そっか……」

「ルトガーさんに対抗するため、ってことなら俺が手伝うよ。いっそフィーもヴァリマールに乗るか?」

「乗れるの?」

「多分な」

 

 だから扱いが軽いのよ、という声がどこからか聞こえた気がしたが流す。

 今はそれより聞きたいことがあるからだ。

 

「……なあユーシス。仮に内戦にまで発展した時、ユーシスはやっぱり《貴族派》につくのか?」

「っ」

 

 ユーシスの顔がこわばる。

 考えないようにしていたことをズバリ指摘されて、思わず目をそむけてしまう。

 続けようとするリィンを止めたのは、まさかのマキアスだった。

 

「待ちたまえリィン。その男は特にテロリストなどという存在を許せるような輩ではないはずだ」

「貴様……」

「ふん、別にお前を庇ったわけじゃない。ただ……《貴族の義務》とやらに反しているという事実を言っただけだ」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「全員でこっちを向くな!」

 

 視線を一気に向けられたマキアスが思わず動揺してしまう。

 一瞬で注目を集めるほどのことを言ったので仕方ないが、その姿にエリオットが笑い声を漏らす。

 

「あはは、でもマキアスがユーシスにそんなこと言うなんて思わなかったからさ。ごめんごめん」

「うん。まさかマキアスがユーシスをフォローするとは思わなかった」

 

 ラウラからも言われて顔を赤くしながらも違う違うと訂正するマキアス。

 頃合いを見計らってアリサが割り込み、改めてユーシスを見た。

 

「ユーシス、答えられそう?」

「……俺はアルバレアだ。その家柄は一生背負うものだし、逃げるつもりもない。もしアルバレア家が《貴族派》として戦うというのなら、それに準じるだろう」

「なら――」

「だが、俺個人としては内戦など起こしてはならないと思うし、テロリストなどもっての外。カイエン公が無辜の民を犠牲にするようなテロに与しているのなら、それを罰する必要がある」

 

 リィンの言葉を塞ぎ、ユーシスは己の意見を発する。

 確かな意志を込めた瞳は、確かな想いを告げていた。

 

「きっと、兄上もそう思っているはずだ。他ならぬ《貴族の義務》を教えてくれたあの人なのだから」

(フフフ、息子よ。ならば今度こそ騎神の試しを手土産に、ユーシス君と共に交渉に向かうがいい)

「なら、ルーファス卿に会いに行くか」

 

 突然の提案に目を丸くするユーシス。

 エマに目を向けてみるが、彼女にはオズぼんの声が聞こえているため、交渉材料に騎神を提案する人形になんとも言えない顔をしていた。

 ユーシスはそれをリィンの独断と判断し、問い詰める。

 

「何を考えているリィン」

「え、ルーファス卿に真偽を確かめるために会いに行こうかって。そもそもユーシスには以前騎神の試しについて話しただろ? あれ、結局ルーファス卿には話したのか?」

「いや……結局、共にトリスタを巡る口実にしてしまっただけで、それきりだ」

「え、そうなの?」

 

 アリサが意外という調子で声を上げる。

 ユーシスがルーファスを慕っていることを知っているクラスメイト達も似たような顔だ。

 

「あの時は憶測や推測でしかなかったからな」

「じゃあ確認に――」

「霊脈を呼び込むさい、少しリィンさんが頑張る必要がありますが、おそらく問題ないと思います」

「なら問題ないな。さすがエマ」

 

 さすえまー、とフィーが茶々を入れてくるが、エマは困った顔を返すことしか出来なかった。

 実際、オカルト研究部で話した放課後から夜の間に検証を行ったエマは称賛されて然るべきだった。

 

「リィン、ひょっとして騎神を交換材料にルーファス卿を《貴族派》から寝返らせようとしてるの?」

 

 商談、とは違うがそういった機微を読むのに長けたアリサがリィンの思惑を見抜く。

 その通り、と頷くリィンはサラに振り返る。

 

「ルーファス卿はトールズ士官学院の理事の一人……今回の盗難事件にカイエン公が支援するテロリストが関わっているのなら、そこを突ける部分があると思うんです」

「そういう気配り出来るなら、貴方が参加しないって選択肢はないわけ?」

「残念ながら。約束したので」

 

 ロジーヌ救出の対価に、リィンはミュゼに協力すると決めている。

 彼女は対価と思っていないかもしれないが、それくらいリィンはミュゼに感謝しているのだ。

 生徒だからと内戦から遠ざけるサラの気持ちはわかるが、譲る気はなかった。大人を信じることと、何もしないことはイコールではないのだ。

 

「ってわけでユーシス、ルーファス卿の予定ってわかるか?」

「待て、待て待て待て。交渉というのはそんな簡単にテーブルに……」

「弟であるユーシスから言うんだ、面倒は省ける時に省かないと」

「貴様な……」

 

 言葉だけ見れば刺々しいが、その声の裏には清々しいと言わんばかりの呆れがあった。

 いっそこの強引さが羨ましい、とユーシスは感じた。

 

「……とりあえず調べてみよう。おまえは本当に騎神が手に入るか、ちゃんと確認してくるがいい」

「そういう確認って取れるのかな?」

「うーんそればかりは実際にやってみないと……」

「というかエマ、リィンの口ぶりではそなたが鍵のようにも聞こえるが、シュミット教室というのは今期で解散したのではなかったか?」

「あー……」

 

 リィンはちらりとエマを見やり、念話を送るよう視線を投げる。

 

(どうかされました?)

(いい加減、魔女って教えていいんじゃないか?)

(……そう、ですね。どのみち皆さん騎神のことは知っているのですから、もう隠す必要はないのかもしれませんね)

(じゃあ言っちゃうか)

 

 あまりにも軽い、軽くなった秘密にエマはくすりと笑いながら、ラウラに言った。

 

「そうですね、折角ですから皆さんに教えておこうと思います」

「エマ、それは一体――」

 

 ガイウスのつぶやきが消える。いや、姿そのものが消えた。

 ガイウスだけでなく、寮にいるⅦ組全員はその姿を消し――その身を旧校舎へ転移していた。

 

「…………は? え?」

 

 エリオットがしきりに首を回す。

 彼だけでなく、リィンとエマ以外の面々が似たような動作を繰り返し、やがてエマに視線が固定された。

 

「実は私、騎神に乗るべき人を見極める役目を伴って士官学院へやってきた魔女なんですよ」

 

 雑談のように打ち明けられた秘密にⅦ組が口を揃えて驚く中、ユーシスが額に手を当てて天を仰ぐ。

 

「こいつらは人の葛藤をなんだと思っているのだ……」

 

 だが、それでもユーシスはルーファスへの交渉、という大事への不安が晴れていくような気がした。

 それはきっと気の所為ではないのだろうと思いながら、エマからリィンさんと一緒にしないでください、という反論に苦笑するユーシスだった。

 




黒が地精を持っていたように、魔女も独自に金の騎神を持っているんじゃないか、という予想してましたがそんなことありませんでしたね。
アーツというか、魔法主体の騎神が一体居ても良かったのではと今更に。
相克という仕様上、しのぎを削り合う戦士同士のほうがより闘争を高められる、ってことだったのでしょうかね…

今回出そうと思いましたが、意味なくぬっと出るのもなーと思い出番が見送られるシャロンさんごめんなさい。
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