はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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いつも誤字報告ありがとうございます。


フフフ、息子よ。七月の特別実習だ⑤

「ローゼリアさーん! 急患でーす!」

「お主、エリンを病院か何かと勘違いしとらんか?」

 

 エリンへ転移したリィンはヴァリマールを広場へ置いて、ローゼリアの家にギデオンを運んでいた。

 割と頻繁に里から出かけるローゼリアはタイミング良く居てくれたので一安心、とリィンはここへ来た理由を説明する。

 ローゼリアはギデオンから漏れる黒いモヤを見やり、一つ頷いた。

 

「確かにこの男、瘴気の影響を受けておる。じゃがこの程度なら……」

 

 そう言ってローゼリアは、ベッドに寝かせたギデオンの額に札のようなものを貼った。

 びくん、と札が着いた途端にギデオンの体は跳ね上がったが、すぐに大人しくなる。

 ついでとばかりに、ローゼリアは治癒の魔術を施すと青白くなっていたギデオンの体に若干赤みが差した。

 リィンも導力魔法で応急処置をしていたが、やはり技量が違えば回復の速さも段違いのようだ。

 

「しばらくすれば抜けているじゃろう。それまで安静じゃな」

「それなら良かったです」

「じゃがヴィータが支援するテロリストがこの有様となれば、やつが導いた起動者も呪いに該当する可能性は大いにあるのう」

「帝都にいるテロリストは一斉捜査が行われて捕縛されているはずです。

 ローゼリアさんがそちらに赴いて、全員の呪いを剥がしていけば見つかるんじゃないですか?」

「そんなの水漏れした水道を手で塞ぐようなものじゃ。元を絶たねば意味はない」

「でも暗黒竜は退治されてましたし、今回遺骨を利用した蘇った奴も俺たちがやっつけましたよ?」

「それこそ一時的なものじゃろう。帝都に瘴気が満ちれば、また復活する。……シュミット、シュミットはおるか!」

「たわけ、いちいち甲高い声で呼ぶな」

 

 ローゼリアが声を上げると、別の部屋の扉が開きシュミットがのっそりと現れる。

 相変わらずの仏頂面だが、シュミット教室で見慣れた表情にどこか疲れを見せているように見えた。

 

「博士、お久しぶりです! お疲れですか?」

「フン、少し徹夜していただけだ。しかしなぜここにいるシュバルツァー」

 

 この先何年会っていなくても態度が変わることがないであろうシュミットの様子に苦笑しながら、リィンはエリンへ来た理由を語る。

 

「暗黒竜の呪い、眉唾ものだが何らかのエネルギーが働いていることに違いはないようだな」

「んあ? そもそも呪い対策に協力を呼びかけていたというのに、信じておらんかったのか?」

「え、それじゃあテスタ=ロッサの呪い除去作業はまだ出来ないんですか?」

「馬鹿を言うな、すでに設計は出来ている。尤も、想定内か予想を超えるかまだはわからんがな。

 灰が侵された呪いは再現された劣化版。本物を前に、同じことが出来るとは思わないほうがいいだろう」

「さすが、頼もしい!」

「頼んだ妾が言うのもあれじゃが、本当に突然変異じゃな」

 

 リィンはギデオンを預けるという用事を済ませたため、特別実習の途中ということもあり帝都へ戻ろうとするが、その前にローゼリアに尋ねた。

 

「もう七月も終わりに近づいてますが、結局テスタ=ロッサはエリンに持って来ないんですか?」

「許可自体は出ておる。問題は、ただ移しただけでは意味がない。

 単に封印場所を帝都からエリンへ変えるだけじゃからな。シュミット、そこはどうなっておる?」

「設計は出来ていると言っただろう。だが、現状では予想を超える可能性が高い。

 故に万全を期すなら、もう少し調整が必要といったところだが……」

「でも、エリンは大丈夫なんですか?

 呪いがここに溢れたら、将来の住居がなくなりそうで嫌なのですが」

「さらりとここに住むことを当然と思っておるなこやつ」

(フフフ、すまんなロゼ嬢。一年も過ごせば大人しくユミルに引っ込むはずだが、逆に言えばそうしなければ一生言われるぞ)

「ううむ、難儀なものよ」

 

 こんな風にオズぼんと自然に会話をする光景をリィンに見せているため、エリンへの引っ越しを強く願われているのだと気づいていないローゼリアだった。

 

「そう言えば呪いってどうやって抑えるんですか?」

「基本的にはお前が身につけているペンダントの拡大版だな。

 隔離された異次元をその機能に特化させ、呪いの影響を最小限に抑えながらゆっくりと取り出していくようなものだ」

「大胆な血抜き作業みたいなものですね」

「より正確には、精霊窟を封印特化に改良する。

 封印構築は妾達魔女でサポートするが、かつての地精が行った作業を単独で行おうとするとかほんとこやつ……」

 

 精霊窟は、ゼムリアストーン生成のために生み出された特別な場所と聞いた。

 シュミットは魔女の知識を得ることで、七曜のエネルギーを生成ではなく抑制のために使う手段は編み出したそうだ。

 

「騎神はゼムリアストーンで出来ている。ならば、それ自体が封印のエネルギー媒介となり得るのも当然だ」

「ゼムリアストーン生成のために調整したエネルギーの流れを改ざんとか、それを当然と言い切れるのはお主くらいじゃろうなあ」

「ようは少し大きいオーブメントを作るようなものだ。データさえ揃っていれば何も難しいことはない」

「世の中の天才と言われている者達が聞いても、ぶったまげると思うぞ」

 

 流石にシュミットでも、一から精霊窟を作るには圧倒的に時間が足りない。

 年単位の時間があれば可能であろうが、ここへ連れて来てまだ一ヶ月も経っておらず、その間は魔女達に導力技術を教授していた。

 普通に考えればまだ準備段階なのだが、そこはローゼリア・ミルスティンとG・シュミット。

 エリンの一部に魔法陣を敷き、改良した精霊窟と同期。

 その効果を魔法陣の中に召喚し続けるという荒業を共同開発したようだ。

 まだ検証を行っていないようだが、そこは時間が解決してくれることだろう。

 

(二百五十年前は当時の地精の長と協力しての封印だったそうだが、現代の地精とも言えるシュミット博士との再びの共同作業だ。ロゼ嬢も気合が入るというものよ)

「別にそういうわけではないんじゃが、まあよい」

「俺にも手伝えることはないんですか?」

 

 久しぶりにシュミットと出会ったことで、教室での記憶が刺激されるリィン。

 作業の延長上のような気軽さでそう言うと、ローゼリアが頭痛を堪えるように頭に手をやった。

 

「シュバルツァー、一応これは帝国の未来を……」

「構わんだろう。そもそも、呪いとやらとシュバルツァーの鬼の力は同一らしいではないか。

 端的に言えば、緋を蝕む呪いを制御し受け入れることが出来れば、細々とした作業を必要とせずとも問題は解決する。

 今抱えている調整を待たずとも、今すぐ緋を回収出来るだろう」

「そうなんですか? なら今から帝都へ……」

「馬鹿者。それはシュバルツァーを贄に捧げるようなものじゃ。一人に犠牲を強いるのはタブーである」

「ローゼリアさん……」

「え……ああいや、こほんごほん。どのみちお主はテスタ=ロッサを封印から剥ぎ取るさいに、ヴァリマールを動かしてもらうこととなる。

 その時に影響を受ける可能性はなくもないのじゃから、そこに備えておけばよい」

 

 気恥ずかしいのか、瞳を閉じてわざとらしく咳き込むローゼリア。

 その気持ちは嬉しかったが、リィンとしてはテロリストが暗黒竜の呪いに侵されているメンバーで構成されているのなら、早く解決したいという気持ちがあった。

 何故なら、それはエリゼを筆頭に帝都に住む人々がその影響を絶対に受けない、とも限らない。

 それにシュミットならちゃんと成果を出してくれる、怪我をしてもローゼリアなら治してくれるという信頼の上での行動だった。

 

「それは出来ません。今までは封印されているなら大丈夫、って思ってましたが、ギデオンみたいに漏れた呪いが影響を与えるなら、一刻も早く解決すべきです。

 俺が手伝うことでそれが叶うならそれこそ、ですよローゼリアさん。博士、俺を思う存分使ってください」

「ええい待たぬか、お主だけで盛り上がるでない!」

 

 シュミットに近づくリィンを引き剥がすローゼリア。

 しかし身長の関係上、子供が背中に抱きついているようなものにしか見えず、振り向いたリィンはつい優しい瞳をローゼリアに向けてしまう。

 その視線に気づかないローゼリアは、リィンを引き止めたまま言う。

 

「第一、緋ですら受け止めきれなかったものを人間であるお主が受け入れられるわけあるまいて。

 灰も同じこと。鬼気解放の行き着く先は暴走しかない。とにかく、テスタ=ロッサについては妾達に任せよ」

「ううむ……」

「そもそも、お主は学院の授業中なのじゃろう? このギデオンという男が目覚めた時や、テスタ=ロッサを回収する時には必ず呼ぶ。今は戻るがいい」

「むう」

(りぃんヨ。さらノヨウニ大人ヲ信ジルベキデハナイカ?)

「うん、よう言ったよう言ったぞヴァリマール!」

 

 いまいち納得がいかないが、ヴァリマールからもそう言われてしまえば頷く他ない。

 加えてローゼリアは大人扱いしてもらったことが嬉しいのか、背後からリィンの心臓を撫でるように叩いてくる。

 彼女にしてみればヴァリマールを撫でている感覚なのだろうが、実際に触れているのはリィンなのでくすぐったい。

 

「では二人とも俺はこれで。何かあればARCUSで連絡くださいね」

「もう操作も完璧じゃからな。その時を楽しみにしているが良いぞ」

 

 ヴァリマールの言葉でご機嫌な状態が続いているのか、ローゼリアは笑顔のままだ。

 普段魔女の里で敬っているはずなのに、そんなに嬉しいものかとリィンは思ったが、オズぼんには察しがついていた。

 

 最近のローゼリアは基本的にシュミットと共に行動しており、当然魔女の長だからと敬われることもなく、加えて導力技術の物覚えも他の魔女に比べて落ちていた。

 一時期はニーナの弟であるアルビレオやシギュンと同一にされたこともあり、完全な子供扱い。

 ダリエといった他の魔女達から導力技術の教えを請わねばならない姿は彼女のプライドを激しく傷つけていた。

 

 今回訪れたリィンに対して、やけに大人としての立場で振る舞っていたのもその一環だろう。

 その努力が実った彼女は、その表情通りの心境というわけだ。

 もっとも、リィンが去った後は同じことの繰り返しであるが、せめて今日一日は笑顔であることを祈ろうとするオズぼんをよそに、リィンはエリンから去っていった。

 

 

 帝都に戻ったリィンは事の次第をサラに報告すると、途中で抜け出したことによる軽い説教こそあったが、その流れで一度Ⅶ組が集合することとなった。

 合流場所は聖アストライア女学院。

 人気のいない場所へ転移したリィンは、騎神にエリンへ戻るよう伝えてトワへ連絡を入れた後、近場のトラムからサンクト地区に向かう。

 すでに先んじて待っていたA班とB班は、また何かしてたんだなという視線を送っていたがいつものことと思ったのか口にはしない。

 

「おやリィン君。今日は大所帯ね」

「今日は学院の授業の一環で訪れました。どうもここが合流場所のようで」

 

 正門にいる女性の警備員に気軽に挨拶を交わす。

 クラスメイト達にも、義妹に会いに来る過程で顔見知りになったと言いながら紹介する。

 

「こんにちは、もうこんばんはかな。お勤めご苦労様です、お姉様方。しかしリィン君の義妹がここの女学院とはね。挨拶くらいは構わないだろう?」

 

 アンゼリカが声をかけると、少し上ずった声で挨拶を返す女性達。

 仮にもヴァンダールの剣士だというのに声をかけただけでこの有様、魔性とはこういうことを言うんだな、と全員はアンゼリカに戦慄する。

 

「いいですけど、ニアージュは距離取って声かけてくださいね」

 

 同時に、いつでもアンゼリカを止められるよう隣に並ぶ。

 心外だな、と大げさに頭を振るアンゼリカを前にリィンは油断しない。

 正門前で待機しながら雑談していると、五時を告げる鐘の音が鳴った。

 すると正門が開き、義妹のエリゼが顔を出す。

 エリゼを知らない生徒達は、正門から現れた黒髪の美少女に揃って感嘆の声を上げていた。

 

「あら、兄さ……」

「初めまして、私は――」

「フンッ!」

 

 泰斗流の高速歩行による接近も、リィンの先読みの前にあえなくブロックされるアンゼリカ。

 リィンを見た瞬間、突然視界が兄の背中に切り替わったエリゼは驚きの声を上げた。

 

「に、兄様!?」

「大丈夫だエリゼ、お前は俺が守る」

 

 わけもわからず困惑するエリゼ。

 その間にもクロウとジョルジュが強引にアンゼリカを引き剥がし、トワがペコペコとエリゼに頭を下げることでますます混乱する。

 やがて比較的に落ち着いた状態になったアンゼリカを見定めたリィンは、ようやくエリゼにクラスメイト達を紹介した。

 

「みんなに紹介するよ。この子はエリゼ・シュバルツァー。俺の義妹だ。

 エリゼ、ここにいるみんなが俺のクラスメイト。

 今、羽交い締めされてる女の人と後ろの男子二人、頭を下げてるち……女性が上級生の先輩だよ」

「リィン君、ち……の後に何を言おうとしたのか気になるんだけど」

「気のせいです」

 

 木の精だね、とぼそりとつぶやくフィーにそう見えなくもないと思ったリィンだった。

 そして他の班員は、リィンの義妹という言葉に過剰な警戒を抱く。

 この見た目で、一体どんな被害を女学院に与えているのかと疑った。

 だがアンゼリカに驚いていた様子やトワの謝罪の対応も合わせて、常識人の反応だと気づき安堵の息を漏らした。

 特にエマは本当に良かった……と体を震わせており、アリサとラウラに優しく肩と背中を叩かれている。

 

「それでは、兄様達が五時過ぎにいらっしゃるという、十四名のお客様……」

「みたいだな。何をするかまでは聞いてないんだけど」

「なるほど……全く、悪戯好きなんだから……」

「どうした?」

「ゴホン、何でもありません。それでは改めまして、トールズ士官学院Ⅶ組および上級生の皆様。

 ようこそ、聖アストライア女学院へ。

 不詳、エリゼ・シュバルツァーが皆様の案内を努めさせていただきます」

 

 そう言ってスカートをつまみ、優雅に一礼するエリゼは、家族の贔屓目抜きに可愛らしい動作だった。

 そうしてリィン達は女学院の中に入っていく。

 エリゼを先頭に進んでいく中、生徒達の好奇の視線が否応なしに突き刺さる。

 Ⅶ組と上級生含む十四人という人数も目を引く要素であるが、エリオットやマキアスといった萎縮する男子達に容赦なく生徒達の声が届くのだ。

 

「お、男の人があんなに……」

「エリゼさんの後ろにいるのは、最近見るようになった彼女のお兄様だわ」

「ああ、ミルディーヌ様とのお噂がある……」

「同じ制服を着ているということは、トールズ士官学院の皆様ね」

「ラウラ様、ラウラ様よ!」

「あの金髪の殿方はまさかユーシス様!? でも緑髪の子とやけに親しいご様子……ああでも、活発なご様子は釣られて笑ってしまう」

「アンゼリカお姉様もおられるわ!」

 

 やはりというか、エリゼの身内であるリィンに四大名門であるユーシスとアンゼリカ、子爵家であるラウラに注がれる視線は多い。

 ラウラは黄色い声に慣れているのか、力強い足取りを崩さず凛とした姿を見せているがそれがいっそう女生徒達の琴線に刺さる。

 ユーシスはむすりと黙っているが、隣を歩くミリアムにモテモテだね~とちょっかいを出されてその表情を崩してしまう。

 アンゼリカは隊列の殿にいるが、女学院の中にも知り合いは多いのか笑顔を向けながら挨拶を交わしている。

 背後に続々と声が集まっているのを見ると、ちょっとしたアイドルや劇団のスターのような扱いだ。

 

「リ、リィン。よく普通に歩けるね……」

「初めてじゃないからな。エリオットにマキアスも、もっと背中を張って歩いたほうがいいぞ。縮こまってると、逆に目立つ」

「そ、そうは言われてもな……」

 

 先日の事件以降、気軽に行けるようになったため、リィンはあれから何度か女学院を訪れていた。

 オリヴァルトの計らいで通行許可証を得たので、エリゼを寂しがらせることなくお茶に誘うことが出来るようになったのだ。

 とはいえ当初に女学院を訪れた行動のせいで、エリゼ達には様々な噂がつきまとってしまったため、平日に来るということは中々難しい。

 休日を狙い、変装して外出してようやくお茶を楽しめるようになったとのことなので、ロジーヌのためだったといえ反省する限りである。

 

「小柄で紅茶色の方はなんとも可愛らしいというか……」

「あの銀髪の娘さんも愛らしい。なんだか実家の猫を思い出します」

「それを言えば、茶髪のお子さんもです。見ていて和む雰囲気を感じますわ」

 

 男として小柄ながら、ハニーフェイスのエリオット。

 年齢的には同年代でありながら、どこか保護欲を抱かせる子猫のようなフィー。

 トワはもはや説明不要の愛らしさで女生徒の視線を集めていく。

 

「異国の方かしら、なんて大きい……それにワイルド」

「頭部にバンダナを巻いた方、なんだかにじみ出る悪っぽさに魅力を感じるわ……」

「金髪の女性はどこかの貴族なのかしら」

「眼鏡の女性は……その……とても羨ましいスタイルですね」

 

 ガイウスやクロウは男としての魅力が出ているのか、黄色い声がアンゼリカに次いで大きい。

 アリサは貴族ではないものの、ラインフォルトという下手な貴族も裸足で逃げ出す大企業の令嬢。

 礼儀作法も問題なく、どこかの貴族のように噂されている。

 女性的な部分がとても育つエマは、平民や貴族という枠を超えて女としての憧憬を抱かれていた。

 

「ジョルジュ、大丈夫だ。君のような体格でも、ちゃんとジョルジュを見てくれる相手はきっといるよ」

「別に気にしてないし、アン達が居るから平気だよ」

「マキアス、これは自分達の居場所に普段と違うものがあるという一過性の視線だ。だから」

「僕に話を振らないでくれ、なんだか惨めになる!」

「あの程度、さえずりのようなものだ。いちいち気にするな」

 

 本当に気にしていないジョルジュに、ガイウスの言葉に絶叫するマキアス。

 二人だけは特に噂をされることはなかったが、アンゼリカと絡む、ユーシスがフォローを入れることで一体何者なのかと二人への好奇も生まれていた。

 もっとも、それは嫉妬や説明してはいけない類のものであったが。

 

「アンゼリカさんはともかく、ラウラもやっぱり人気みたいね。同性に好かれるのはどこでも変わらないみたい」

「慕ってくれるのは光栄なのだがな……」

 

 喉に詰まったような物言いのラウラに苦笑するアリサ。

 好意は嬉しいが過剰なのはちょっと疲れる、ということを自身のメイドとの触れ合いでよく知るアリサはその気持ちがよくわかる。

 

「申し訳ありません、普段は外部の者と接するということはあまりないもので……最近はそうでもないですが」

「悪かったって、でも迷惑になったならすぐ言ってくれよ、俺が話をつけにいくから」

「余計噂がややこしくなるからおやめください!」

「怒るなよ。ほらセリーヌ撫でるか?」

(アタシを巻き込むんじゃないっての!)

 

 そしてシュバルツァー兄妹の仲の良いやり取りもまた、生徒達の噂話を助長させるツマミとなって盛り上がる。

 頬を朱に染めてリィンを見やる女生徒の姿に、エリゼの目尻がほんの少し下がった。

 

「噂……? エリゼさん、リィンさんがここで何かしでかしたのですか?」

「あ、はい……ええっとエマさん、でしたか?」

「はい、リィンさんのクラスメイトのエマ・ミルスティンです。何やらリィンさんがご迷惑をかけておられるようですみません……」

「いえ……家族ですし、大丈夫です。身内の問題ですからエマさんはお気になさらず」

「え? はあ……」

「あっ……こちらこそ申し訳ありません。純粋に心配していただいたのに……」

 

 女学院の問題にも拘らず謝るエマの行動は、学院で騒動を起こすリィンの条件付けのように習慣となってしまった。

 それがエリゼになんとも言えない感情を抱かせ、少し尖った物言いをしてしまったことを言ってから気づいて謝罪する。

 リィンからの手紙によく書かれる女性、その一人が目の前にいることでエリゼの心に少し動揺が生まれているのだ。

 なんとか気持ちを落ち着かせながら、エリゼは薔薇園に到着することでリィンへの案内を務める。

 そして案内された先に待っていた人物()を前に、リィンは声を失った。

 

「初めまして、皆様」

「このたびは私達のわがままにお付き合いくださり、ありがとうございます」

 

 Ⅶ組の前に並ぶのは、金髪の女生徒と彼女に似た顔立ちの少年。

 リィンは知っている。

 目の前の二人が、この帝国における尊き人物――アルフィン・ライゼ・アルノールとセドリック・ライゼ・アルノールの双子の姉弟ということを。

 加えてそれぞれの背後にミント色の髪の女生徒、蒼灰髪の少年――ミュゼとクルトも佇み、ダメ押しとばかりに背後から現れた金髪の男――オリヴァルト・ライゼ・アルノール。

 皇族の三兄姉弟を交えた二十人という大所帯の会談が、ここに開催されるのだった。




ギデオンとの絡みを予想されていた方はすみません。その辺はまたいずれ…
リィンと違って、回復力は一般人並なのです。

女学院での噂イベントは個人的にもっとやって欲しかったなあとも。
Ⅲでも正門前でやり取りは一応ありましたが、ユーシスの絆イベントやらでしか見れない灰色の騎士として見られる一面をもっと見たかったなあとも。
変装差し込んだり、ちょこちょこあると言えばありますが、テレビみたいに顔見せた瞬間人混みに囲まれて動けない、みたいなのはゲーム的にアレだったんでしょうかね。
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