はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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フフフ、息子よ。七月の特別実習だ⑨

 時間は、リィンがヴィータから痴漢の冤罪を受け、憲兵に拘束されている頃に戻る。

 一人夜の帝都へ出向いていた男は、舌打ちを残しながら通話を切る。

 連絡していたのは己の仲間。いや、同志(・・)と言える男。

 先日、リィンが特異点において遭遇し巨大な機甲兵、ゴライアスを駆った《V》と名乗っていたテロリストの一人――ヴァルカンからの連絡を思い返す。

 

「帝都に残っていた連中はもうダメだ。全員、捕まったと見ていい。

 ご丁寧に、俺のところにも手紙が届いたよ。アルンガルム時代の資料付きでな……

 誰が送ったか知らないが、誘い待ちってところだろう。誘いに乗る気はないが、少なくとも明日の予定は諦めざるを得ない。

《S》も地下に潜ったが、今もどこかで見張られている可能性だってある。お前も十分に気をつけろよ《C》」

 

 そう言い残してヴァルカンとは連絡を終えたが、男――彼らの間では《C》という通称で呼ばれる彼は苛立ちを消し去ることが出来なかった。

 本来であればこの時間には仕込みを終えて、明日の予定時間まで待つだけで良かった。

 それが蓋を開けてみれば帝都に潜んだ同志はみな捕縛され、自身の打つ手が丁寧に一つ一つ潰されている。

 さらに同志《G》、ギデオンまでもが捕まってしまった。

 捕まえた少年曰く、診療所に送ったそうだが――男の協力者である魔女曰く、彼女の故郷であるエリンへ運ばれた可能性が高いそうだ。

 すぐにでも奪還に行きたいが、魔女はこれを拒否。その作戦を実行すれば、魔女の故郷が戦場となるためだ。

 己の身勝手により出奔したといえ、故郷への愛着は魔女にもあるらしい。

 元よりあの魔女の思惑を利用する上での協力関係だ、断られたところで何の不思議でもない。

 

「くそ、一体何が起きてやがる?」

 

 だが、吐き捨てるような言葉は止まらない。

 そもそも、今日この日も本来は自由に時間が使えるはずだった。

 だと言うのに、気づけば偽りの身分である立場に縛られたまま身動きが取れないでいる。

 強引に時間を作ろうとしても、同行者でありギデオンを捕縛した少年に先回りをされて何の手も打てていない。

 今もこうして抜け出したというのに、魔女の元には件の少年が足を運んでいたという。

 

 思えば、件の少年が関わったことから全ての計画が狂っている。

 特別実習と呼ばれる、去年も自身が体験したカリキュラム。

 それを一つこなすたびに、《貴族派》が築き上げたものを崩されていっている現状に、本来は明日その存在のお披露目を上げようとしていた行動すら封殺されている。

 スポンサーを頼ろうにも、彼らは正規軍や遊撃士に機甲兵の出処を迫られ、その対処に追われている。

 まだ十分な数が揃っていないというのに、隠蔽工作に手を回さねばならず、生産を縮小するに至っている。

 秘密裏に進めていた工作が暴かれつつある現状、打開の一手を打つことなくこのままでいなければならないのか。

 顔を歪める《C》に、苛立ちを助長させるような声が割り込んだ。

 

「やあ、良い月の夜だね」

「てめえか……」

 

 彼はその声の持ち主に振り向く。

 顔に入れ墨を施した、少年にも少女にも見える風貌の若者。

 《道化師》の異名を持つ、カンパネルラと呼ばれていた者だ。

 先日、とある件で面識を持ったのだが……

 

「計画は封殺、味方は壊滅、逃げ回ることしか出来ない現状。反抗手段は浮かんだりしているのかな?」

 

 人を煽るような物言いに、言動の胡散臭さからまるで信用出来ない相手だ。

 ただ、腹立たしいことに魔女にも秘密にしている《武器》を入手するさい世話になっている手前、無視は出来なかった。

 

「ねえよ……だが、こいつを奴に撃ち込むまで諦めるつもりはない」

 

 取り出すのは、塩の杭の残留物から生み出した、カンパネルラいわく絞りカスの銃弾。

 特異点からの力の抽出、弾頭の中への注入などを施したのは目の前の存在が所属する結社の技術だ。

 魔女は塩の杭の力が消失したことを確認し、抜け殻を星杯騎士団に回収されたことを見届けたが、その微細な誤魔化しはカンパネルラの手によるものだった。

 あの魔女の技量ならば力の残滓をたどるなどたやすいことだが、誤魔化すのは僕も得意なんだ、とは本人の言。

 

「ま、だろうね。僕としては手伝った手前、せめて《城》が出るまで頑張って欲しいけど……そんな君に朗報だよ」

「朗報?」

「うん、単純明快なことさ。――執行者になればいい」

「ああ?」

「《深淵》から誘いは受けたんでしょ? 前は断ったそうだけど、今引き受ければ、なんと結社から戦力の補充をプレゼントキャンペーン中!」

 

 《C》の額に青筋が浮かぶ。

 人間を数にしか数えていない物言いは、《C》が狙うあの男のことを思い出すのだ。

 

「人形兵器に強化猟兵、っていうのは聞いたことないかな? 少なくとも今回捕まった面々に比べれば、ずっと頼りになると思うけど?」

「なんで、そこまで言う」

「《深淵》が主導といえ、《幻焔計画》はちゃんと遂行されて欲しいからね。そのためには、君の動きは必要不可欠なんだ。

 より正確には《蒼》が、だけどね。それで、どうだい? 今ならエージェントの称号や二つ名ももらえちゃうよ?」

「誘う気ねえだろ、てめえ」

「心外だなあ、すごく本気なのに」

 

 やれやれ、と手を振って肩をすくめるカンパネルラ。

 その言動と雰囲気から本気さが微塵も感じない、そういうところが信頼出来ない所以だ。だが、《道化師》を名乗る以上、そういった生態なのかもしれない。

 

「なら、このまま指を加えて全滅するのを待つ気かい?

 帝国解放戦線、だなんて大仰な名前を付けたのに、このままじゃ君たちが寿命から解放されちゃうよ?」

 

 舌打ちする《C》。

 下品だなあ、とのたまるカンパネルラにもう一度舌打ちを残したい気分だったが、掌の上で踊らせれるような気がしたので黙った。

 実際、カンパネルラの誘いは魅力的なものだ。

 結社に所属、という面でなく戦力の補充という点と胡散臭くも確かな技術を持っているからだ。

 遊びがすぎる、とは魔女の談だが、本気で動いたのならば明日行おうとしていた計画も滞りなく遂行出来るだろう。

 それでも《C》が躊躇するのは、わざわざ魔女が不在のときに話しかけてくるカンパネルラへの不信に他ならない。

 なぜならカンパネルラが言った戦力は、魔女に用意してもらうことも可能だからだ。

 

「ひどいなあ、そこまで嫌わなくてもいいのに。

 けど、それなら体験版はどうかな? 明日、お試しで僕が代わりに――」

「やめろ」

 

 つぶやかれた一言は、底冷えする殺気が込められていた。

 一般人であれば、受けただけで気絶するような強烈な敵意。

 カンパネルラはそれを涼やかに流しながら、困ったように眉をひそめる。

 

「今の、怒るところ?」

 

 《C》は答えない。

 ただでさえ、呪いなどという眉唾もので起こした行動だと思われていることに怒りを覚えているのに、他人の手で遂行されるなどたまったものではない。

 そんな《C》の気持ちなど知らず、ワガママだなあ、とのたまるカンパネルラ。

 実際、カンパネルラから見ればそうなのだろう。

 集めた戦力は鉄道憲兵隊によって捕縛され、補充すべきアテもなく、計画を実行するために必要なものを提供するという提案を押しのけて代案は何も浮かんでいない。

 

 子供のワガママ。

 今の《C》をカンパネルラはそう捉えていた。

 初志貫徹、憎い相手が居るなら手段にこだわる必要などないのに、と。

 故に(・・)執行者の誘いをかけたとも言うが。

 

「別に即答しなくていいさ。その気があるなら《深淵》に伝えればいいし。

 ただ、僕もこれから忙しくなる。しばらく会えないから、戦力まで約束出来なくなるけど。もしその気なら、連絡ちょうだい」

 

 そう言って《道化師》は夜の闇に消えようとする。

 

「――待て」

 

 そこに《C》がつぶやく。

 感情を押し殺した声は、カンパネルラにとっては《蒼の歌姫》が紡ぐ以上の美声に聞こえた。

 

「それを聞きたかった」

 

 道化師の口元が帝国の夜を照らす月のように曲がる。

 

「それじゃあ、悪巧みをはじめようか、《C》……それともクロウって呼んだほうがいいかな?」

「《C》でいい」

「ふふ、了解」

 

 カンパネルラの笑みを極力見ないようにしながら、《C》――クロウ・アームブラストは道化師が発動させた転移陣に乗って、夜闇に消えていった。

 

 

「もう、リィン君ってば! リィン君ってばさー!」

「すみません」

 

 エリオットとマキアスによる怨嗟の言葉を聞きながらハーシェル雑貨店へ戻ったリィンを待っていたのは、我らが生徒会長からのお怒りの言葉だった。

 二人とはすでに途中で別れたが、どうやら事の詳細は連絡済みらしい。

 

「クロウ君も夜中に出歩いたのはダメだけどちゃんと戻ったんだよ? なのにリィン君は……」

「しかも、かのヴィータ・クロチルダに遭遇したそうじゃないか」

「あの有名人から疑惑をかけられて、一晩で解放されるなんて逆にすごいよ。クレア大尉に感謝しないとね」

 

 ジョルジュのセリフから、トワ達へ連絡したのはクレアのようだ。

 その手際の良さを褒めるべきか、黙ってて欲しかったと思うのはリィンのワガママか。

 

(フフフ、息子よ。黙っていたら黙っていたで、もっと面倒なことになるぞ?)

(わかってるって……)

 

 オズぼんの言葉に肩を落とすリィンだったが、ふとクロウの様子が昨日と違うことに気づいた。

 苛立ちこそ収まっていないようだが、少し機嫌がもとに戻ったと言えばいいか。

 その表情から憂いが少し晴れているような気がした。

 

「クロウ先輩、良い気分転換でも出来たんですか?」

「まあな、そんな感じだ。夜中に出歩くっていうのは結構良いもんだ」

「もう、二人共。これは特別実習っていう、学校の授業なんだからね? 勝手に動いちゃダメだってば」

「はーい」

「悪い悪い、気をつけるよ」

「今日で終わりだから、気をつけるも何もないんだけどね」

「それは言わないお約束、ってね。さて、今日の活動はどんなものかな?」

 

 アンゼリカがハーシェル雑貨店の郵便受けに届けられた封筒から中身を取り出す。

 そこには従来の依頼の他に、C班にしか出来ない要請が記載されていた。

 

「午後から園遊会の護衛……?」

「これ、アンちゃん宛じゃない? 昨日、殿下が参加するって言ってたし」

「確かに、アンは性格以外はログナー家の長女だしなあ」

「性格もログナー家だよ、クロウ」

 

 今日の園遊会には周辺国家からも参加者が集っているらしい。

 そのため、アルフィンといった皇族を筆頭に貴族の子女も数多く参加しているとのことだ。

 エリゼはアルフィンの付き人として参加し、ミュゼもミルディーヌとして誘われていると聞いた。

 

「でも、アンゼリカ先輩への要請なら護衛でなく参加の要請じゃないんですか?」

「えーっと……護衛と言っても所定の位置で待機するものでなく、参加者に紛れたものとするってあるね」

「つまり、遠まわしな参加強制。加えて必須だから断れないな……」

「俺を睨むなよ」

「そもそも、君のためにトワが骨を折ってるんだ。そうでなければ、今日からの夏至祭をトワと渡り歩けたというのに。それも導力バイクでツーリングのおまけ付き! その機会を奪われているというのに……!」

「あはは……でも、元からリィン君達の実習を手伝ってたし、似たようなことにはなっていたんじゃないかな」

 

 苦笑するトワ。

 聞けば、理事長からサラへの連絡回しや細かい手続きに書類作成といった、見えないところでお世話になっていたらしい。

 四月から始まった特別実習においても、トワの助力があった事実にリィンは改めてこの小さな生徒会長の好人物ぶりを確認した。

 

「サボりがちなサラ教官に変わって、各方面への連絡も行っていたそうだよ。まったく、夏至祭くらいはトワを労いたかったのに」

「ですが、園遊会にはアルフィン殿下を筆頭に、エリゼやミュゼも参加するそうですよ?」

「何だって、それは本当かい?」

 

 リィンがそう言うと、アンゼリカの目が輝く。

 

「なんということだ……そこにフィー君も居れば、最強15s(フィフティーンズ)の出来上がりじゃないか!

 特別実習があるし、トワと一緒にいられるからと断ったがまさかの巡り合いだ!

 だ、だが麗人たる私がドレスなんて……いや、タキシードを着ていこう!」

「アンちゃん、どうどう。一応要請なんだから、そのままで行こうね?」

 

 いつもの暴走を抑える二人を眺めながら、リィンはクロウに近づく。

 少し警戒するクロウだったが、構わず要件を告げた。

 

「ところでクロウ先輩、ストレス発散なら競馬場へ行きませんか?」

「あん? なんだ、お前も乗る口か?」

「いえ、単にクロウ先輩のストレス発散するだけですよ。俺の分け身に、先輩の変装させれば競馬場へ行った気分になれますし」

「俺が直接行かなきゃ意味ねーだろ!?」

「大丈夫です、俺の分け身は情報共有も出来ますから、どの馬が勝ったとかすぐわかります」

「お前マジふざけんなよ!」

 

 怒られた。

 

「クロウ、どうどう」

 

 トワとジョルジュがそれぞれ同性の友人をなだめる中、とりあえずリィンはミュゼの伝言を伝えようとする。

 しかし、トワからダメ! というシンプルなお叱りを受けて断念となった。

 ミュゼの伝言は無駄になってしまったが、目を離さないという内容だけは守るとしよう。

 

「さて、それじゃあ特別実習最後の一日、張り切っていこ!」

『おー!』

 

 トワの号令の下、リィン達は要請をこなすべく行動する。

 そうして午前中の要請を終えたリィン達は、昼食もそこそこにマーテル公園のクリスタルガーデンへと足を運ぶ。

 その途中、リィンはパトリックの姿を認めて声をかけた。

 

「パトリック。そっちも呼ばれたのか?」

「なっ、シュバルツァー!?」

「やあ、坊っちゃん。君も参加していたんだね」

「アンゼリカさんに生徒会長まで……」

 

 俺らは無視かよ、とクロウが口を尖らせる。

 単に知らないだけじゃないかな、とジョルジュがフォローするが、そう言えばパトリックは平民差別していた奴だったな、と思い返した。

 

「だが、なぜ君たちまで招待を……」

「アンゼリカ先輩のおかげじゃないか? あの人、ログナー侯爵家なんだし」

「そんなことは知っている! だが、呼ぶなら普通は彼女一人だけだろう」

 

 それはリィン達も疑問に思っていたが、単純にアンゼリカが特別実習に参加しているおまけなのだろう、と言う。

 そう教えると、パトリックはフフンとご機嫌な笑みを浮かべた。

 

「まあ君達ならそうなるだろう。だが僕はちゃんと招待された身で、皇女殿下に拝謁を賜るつもりで……」

「アルフィン殿下なら昨日一緒に夕食をいただいたぞ」

「えっ」

「セドリック殿下と、オリヴァルト殿下もいたね」

「なっ」

「皇族の三兄姉弟と一緒に食った飯は美味かったよなあ、お前ら」

「クロウ君全然食べてなかったのに……でも、アルフィン殿下とおしゃべりは出来たのは楽しかったなあ。割と気さくな方で、とても可愛らしかったよね~」

「」

 

 昨日の夕食の時間を思い思いに語るトワ達。

 パトリックは見ていて面白いくらいに表情を変えた。

 

「こいつ、割と面白いな」

「クロウ、後輩と言っても彼は四大名門なんだから……」

「つまり私と同格というわけだ。クロウからすれば遠慮する立場ではないだろう」

 

 ぶるぶると震えるパトリック。

 好き勝手に言うクロウ達をトワが嗜めているが、参加出来なかった事実に変わりはなく、怒りだけが募る結果でしかなかった。

 

「落ち着けよパトリック。今日挨拶するなら、それに越したことはないだろ?」

「気安く話しかけるなシュバルツァー! くっ、どうせ護衛という名の雑用なのだろう? せいぜい僕達のために奔走するのだな! 失礼するっ!」

 

 一見、顔は笑顔であるが青筋が浮かびそうなほど感情をこらえているのは丸わかりだった。

 言葉の表面だけ受け取れば貴族を怒らせたと勘違いしそうだが、あれは悔しさが先行しているだけで言うほど怒っていない。

 ユーシスもそうだが、貴族らしい物言いをする生徒は生徒会の手伝いの中でも多く触れ合ったため、そう察せるのは貴族生徒の機微にはある程度慣れたおかげだ。

 おそらく、埋め合わせをするためにアルフィンに積極的に話しかけるであろうパトリックには心の中で応援を送っておく。

 そんな風にパトリックを話題に談笑していると、ふと気になる声が聞こえた。

 

「帝国というのは未だに貴族制がまかり通っていると聞いたけど、学生の場合はその限りでもないのかしら」

「いや、生徒だからこそそういった教育は怠っていないはずだ。単純に、彼らだけが身分を超えた友好を結んでいるのだろう」

 

 それは五アージュ以上離れていたが、周りに人が少なかったことと、その会話を行った人物達が目立っていたために意識して聞いてしまった。

 つい目を向けれると、そこに佇んでいたのは白いスーツを着た老人と、長い銀髪にリボンをつけた女性だった。

 散歩というには豪華すぎる装いは、おそらく園遊会に呼ばれたのだろう。

 

「うおっ、なんだあの美人。つかデカ」

 

 リィンが二人を見ていることに気づいたクロウが、同じく視線を向けて驚きと興奮の声を上げる。

 女性しか見ていないが、紫のドレスに身を包んだ女性は常人離れしたスタイルと美しさを持っているため、その気持もわからなくもない。

 ぺたぺたと、自分の胸に手を当てるトワは見てみぬフリをした。

 ただ、リィンにはその女性を見ていると別の人物が浮かびそうで浮かばない。

 

「リィン君はあんまり驚いてないね……」

「ああ、俺は……」

「こいつ、エマやロジーヌみたいなスタイル良い子と仲良いからな。見慣れてるってやつだろ。ったくこのドスケベハーレム野郎、言ってて羨ましいじゃねえか!」

「八つ当たりやめてくださいよ!」

 

 リィンの首に手を回し、頭を拳でぐりぐりとえぐってくるクロウ。割と痛い。

 だがこうして絡んでくる以上、機嫌はすっかり治っているようだ。

 酒は百薬の長、とユン老師から聞いたことがあったが、クロウにとっては美女が百薬の長らしい。

 そんなリィン達の様子に気づいた二人が、仲の良い様子と思ったのか苦笑して見つめている。

 

「あ、すみません。騒がしくしてしまって……」

「いやいや、元気の良い若者で何よりだ。どうやら学生のようだが……おっと、アンゼリカ嬢。貴女もいらっしゃったのですね」

「お久しぶりです、マクダエルさん」

「え、マクダエルって言うと……」

「お二人とも、ご存知なんですか?」

 

 リィンが尋ねると、その場の全員が呆れるように苦笑する。

 何かおかしいことでも言ったか、と思ったがすぐにトワが教えてくれた。

 

「この方はクロスベルの元市長のヘンリー・マクダエルさんだよ、リィン君。確か今は、クロスベル自治州議長になっておられるとお聞きしていますが……」

「ほう、外国の事情にも詳しいようだね」

「彼女はトワ・ハーシェル。政治学にも明るい、私の自慢の親友です」

「なるほど、では改めて自己紹介をさせていただこう。私はヘンリー・マクダエル。このたび、帝都への園遊会に招待を受け参上させていただいた。こちらが……」

「孫のエリィ・マクダエルよ。短い間だけど、よろしくお願いするわね?」

 

 全員に挨拶しているようで、その目はリィンを見ている。

 政治に疎いといえ、真っ向から知らないと言われて少し思うところがあったのかもしれない。

 少なくとも自分が悪いことに異論はないので、リィンも素直に謝る。

 まさかの出会いに驚きながらも、C班は二人のマクダエルと共にクリスタルガーデンの中へ入っていった。




計画の見届け人、ということでクロスベルへ出張の前にカンパネルラ登場、特務支援課が一時期解散中のエリィと議長も添えて。
エリィの格好は当然競売回イベントのドレスです。
初のクロスベル人出演はこの二人。
許せ、ユウナ……また今度だ。

ゲーム内でそういう会話があったかは忘れましたが、クロウは実際、執行者として誘われていると思うんですよね。
少なくともシャーリィよりは理由あると思います。まあシャーリィはセドリック加入の仲介って感じで使われてる気がしますが…
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