はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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ユーシスwithアリサ、家族に苦労させられる組の話です。


フフフ、息子よ。ツーリングでもするか

「リィン、話がある」

「リィン、ちょっといい?」

 

 授業を終えた放課後、リィンはいつものように生徒会の要請のヘルプを行おうと席を立ったその時だった。

 ユーシスとアリサが同時にリィンに話しかけ、思わず目を丸くしてしまう。

 話しかけた二人や、部活のためにⅦ組を出ていこうとしたクラスメイト達も思わぬハモり具合に目を向けた。

 突然八対十六の視線にさらされた二人は、居心地の悪そうにもじもじと体を揺らす。

 一瞬の空白を埋めるような沈黙が生まれてしまい、妙な間が教室を支配した。

 

「ま、待て貴様ら。どうして黙る」

「そ、そうよ! なんでいきなり静かになるわけ!?」

「いや、その……」

「妙なタイミングで全員の呼吸が合ってしまったというか」

「ニシシ、ARCUSいらずでリンクを結んじゃった感じだね」

 

 リィンもその流れに苦笑しながら、しかめっ面の二人に何のようだと聞き返す。

 

「アリサ、お前からするといい。俺の用事は時間がかかる」

「え、ユーシスも? 私も似たようなものなんだけど……」

「なら、とりあえずユーシスのほうが早かったからそっちから言ってくれ。アリサの要件もその後に聞くから」

 

 その提案に同意した二人が頷き、ユーシスが口を開く。

 

「リィン、お前が宰相閣下に言ったあれは……今、どうなっている?」

「あれ?」

「《革新派》に入るのか、ミリアムのように《鉄血の子供達》になるのか、どちらなのかと聞いている」

「いや、どっちもその気はないぞ?」

 

 リィンがオズボーンに求めるのは息子と認知してもらうことであり、政治に関わる気も部下になる気もない。

 面と向かって断られたことで、ミリアムからの追及もなく沈静化したものと思っていたが、ユーシスは何やら気にしていたようだ。

 

(フフフ、息子よ。お前がリィン・オズボーンであることはまだ黙っておくといい。言えば言うだけ、ユーシス君を悩ませるだけであるからな)

(わかってるわかってる)

 

 なあミリアム、と傍に寄って聞き耳を立てていた彼女に確認を取る。

 そうだねー残念、と腕を組んで頷くミリアムを見ても、ユーシスの顔は優れない。

 一旦置いておくしかないだろう、と黙ってしまったユーシスからアリサへ向き直る。

 

「それで、アリサはなんだ?」

「えっと、今日の要請にジョルジュ先輩からのものってない?」

「あるよ。導力バイクの試運転のはずだけど……」

「それ。実は私も導力バイクの制作に絡ませてもらってて。それについて聞きたかったのよ」

 

 聞けば、本格的に導力バイクを広めるためにアリサはゼネラルマネージャー、簡単に言えば開発の指示役としての手腕を発揮しているらしい。

 開発自体はジョルジュなのだが、アンゼリカ用から量産型にデチューンされた導力バイクを提示し、販売ラインへ乗せるための計画を色々練っているそうだ。

 

「でもアリサがどうして? 開発には口を出さないんだろう?」

「……母様への挑戦状よ」

 

 苦虫を噛み潰したような顔を作るアリサ。

 女の子がしていい顔ではないと思うが、そうしないとやってられない、といったアリサの葛藤が現れているようだ。

 

「もちろん技術面への口出し、なんてことはしないわ。ただ、コース指定をさせて欲しくて……」

 

 トリスタの周りを走らせるだけだったが、今回は耐久テストを兼ねて欲しいそうだ。

 それも技術畑方面では、と思ったがアンゼリカが導力バイクによるゼムリア一周旅行を企ており、量産型の導力バイクでもそれが可能なのかを調べたいとのこと。

 加えて、人目につく場所で走って欲しいそうだ。いわゆる宣伝のためである。

 

「やっぱり小型で乗り回す人も欲しいと思うのよね。

 帝国では乗馬が盛んだけど、導力車の普及に従ってそっちの需要も増えると思う」

 

 商売人の視点、というやつなのだろうか。

 そう言えばエマが言っていた。

 四月の特別実習、ケルディックの大市において物を売る要請があったさい、アリサが完璧に依頼人の要請に答えていた、と。

 商売人の娘だけあって、そちらへの嗅覚が高いということなのだろう。

 

「わかった。で、どこまで走ればいいんだ?」

「万一、途中で導力切れになった時にも回収出来ることを考えてヘイムダルかしら」

「んー……せっかくならケルディックはどうだ?」

「あら、どうして? 今は大市もやってないと思うんだけど」

 

 首を傾げるアリサ。

 最近帝都に行き慣れたので、別の場所のほうが新鮮味もあるというリィンのわがままだ。

 ただ、それを素直に言って受け入れられるかはわからない。

 なので、リィンはユーシスの腕を叩いた。

 

「ユーシス、せっかくなら後ろに乗ってケルディックまで行こうぜ」

「待て、いきなり何の話だ」

「なんか暗いからな、故郷の近くまで行けばその顔も晴れるだろ?」

 

 誰のせいだ、と言いたげにユーシスはリィンを睨む。

 俺のせいじゃないだろ、と言えばアリサ以上に渋面を作ってそっぽを向いてしまう。

 

「……そもそも、導力バイクというものはよくわからん。それなら、シュトラールに乗ったほうがマシだ」

「なら並走して行けばいいさ。アリサ、導力バイクの耐久テストってことなら、別に最高速を競うわけじゃないだろ?

 旅行目的の走りなら、徐行運転でどこまでやれるかってのも良いテストになると思うんだが」

「そもそもユーシスの馬がいくら名馬だからと言っても、並走するのってすごく難しいと思うんだけど」

 

 アリサの言うことはもっともだ。

 導力バイクと馬ではそもそも馬力の根底からして違う。

 普通は人間が走るより導力車や列車のほうが早いように、生物である限りの限界というものは確実に存在する。

 

「ほう、俺のシュトラールが導力バイクに負けると?」

 

 ユーシスの瞳に炎が宿る。

 馬の魅力を語るというのであれば、一種のバディ感だろうか。

 今まさにユーシスが俺のシュトラールと言ったように、互いに呼吸を合わせて初めて騎乗というものを成立させる馬上では一体感が段違いのはずだ。

 

「ユーシス。貴方の愛馬を馬鹿にするわけじゃないけど、そもそも比べることがズレてるっていうか……」

「鷹狩りみたいなもので、風習や伝統に近くなりそうだからな」

 

 リィンとアリサは決して馬をないがしろにしているわけではない。

 そこに食ってかかるユーシスに余裕がないだけの話だ。

 普段であればいの一番にその変化に気づきそうなユーシスがこの状態であることから、相当に追い詰められているようだ。

 

「……リィン、今回の話はやっぱりなしにしてもらっていいかしら。そのかわり、リィンの後ろに乗せてもらっていい?」

「ん?」

「三人でツーリングと行きましょう」

 

 それは、遠まわしにユーシスのメンタルケアをしよう、という提案だった。

 六月のノルドの実習からアリサの雰囲気が柔らかくなった覚えがあるが、入学当初を思えば他人を気遣う余裕が彼女に生まれている。

 

(私一人じゃ厳しそうだからね。後ろといえ、実際に乗ってみることでデータを調べることにするわ。それじゃ、私は馬術部に行ってユーシスを借りる交渉してくるから、またあとでね)

 

 よろしく、とアリサは金髪を翻して教室を出ていく。

 その背中は出来る女というイメージを連想させる。

 

「えー、三人だけー? ボクも付いていきたい!」

「調理部はいいのか?」

「あ。……今日はマルガリータの創作料理に付き合う予定なんだった……」

「なら、そっちを優先して来いよ。ツーリングの機会ならいつだってあるさ」

「そうだね。その時はガーちゃんに乗って走らせるよ!」

 

 ばいばーい、とミリアムもまた調理部へと駆けていく。

 廊下は走るなよー、と普段トールズマラソンで校内を走っているリィンの説得力皆無の言葉を受けながら消えるミリアムをよそに、リィンはユーシスの首に腕を回して立ち上がる。

 

「よし、それじゃあ今日は三人で風になろうぜ」

「待て、俺は共に行くなど一言も……」

「ごーごー」

 

 逃げられないように強引に連れ出されるユーシスの姿に、残っていたⅦ組の生徒達は苦笑と合掌で見送るのだった。

 

 

 風を切り裂く感触が頬を撫でる。

 文句を言いながらも連れ出されたユーシスは、街道でシュトラールを誘導して待ち構えていたアリサに悪態をつきながらも、己の愛馬にまたがり少し前を走る二人の背中を見やる。

 アリサ一人分の体重が加わったといえ、導力バイクはその足を鈍らせることはない。

 その姿が、導力技術の結晶が、古くからの風習を打ち砕かんとする鉄の馬車の足音に聞こえて仕方ない。

 それは奇しくも《貴族派》と《革新派》の関係のようで――

 

「おーいユーシス、シュトラールは大丈夫そうか?」

「フン、他ならともかく俺の愛馬はこの程度ではへこたれん」

「ノルドの血統だったかしら? ランベルト先輩のマッハ号もだけど、馬だって導力バイクに負けないくらい十分にすごいわよね」

 

 アリサの言葉に、ユーシスは己の所属する部の長と愛馬の姿を思い出す。

 美しい漆黒のたてがみ、威風堂々とした立ち姿。

 優美で細身な体躯のシュトラールと対をなすようなマッハ号は、素直な尊敬をユーシスに抱かせる。

 初心者であるポーラもまた、最近は目覚ましい上達を見せている。

 ユーシスの指導もある、とは言われたが基本的には本人の資質というものだろう。

 

「なあユーシス」

 

 ふと、リィンの顔が横にあった。

 導力バイクの速度を緩めて並走したようだ。

 

「最近また入学当初みたいな顔が多くなってるけど、何があったんだ?」

「リィンが《革新派》に入ったらユーシスが困る、って話じゃないの?」

「うーんそうなんだろうけど……」

 

 ふと、リィンがこういう時に鋭い意見を発する前振りなのだと最近ユーシスは気づいた。

 パルムでの実習や、その後の生活をする上で他人を振り回す行動力の化身とは別の顔をリィンは持っている。

 

「前までは支柱があって保っていた精神が、今は揺らいでる気がしてな」

 

 その言葉に、ぐっと手綱を握る力がこもる。

 本当に目の前の少年は自分と同年代なのかと、ユーシスは歯噛みする。

 それが八葉一刀流の観の目というものなのか、別の要因なのかはわからない。

 だが、隔絶した器の差というものを感じざるを得ないのは確かだった。

 

「ルーファスさんが忙しいことと関係あるのか?」

「お前には、関係ない」

「いや、忙しくさせたの俺だから」

「お前には関係ない!」

 

 思わず、ユーシスはシュトラールを動かして体当たりするように迫る。

 リィンの背後に座るアリサはひゃあっ、と軽く悲鳴を上げて慌てて謝罪した。

 

「すまん、アリサ。今はお前も乗っていたな」

「ううん、構わないわ。……お兄さんと何かあったの?」

 

 アリサからも心を伺われて、自分で思うほど上手く隠れていなかったのだと自嘲する。

 彼女の事情はノルドの夜に聞いている。

 リィンの家族関係とは別に、親と上手く行っていないという境遇へ親近感を覚えたことに軽く自分に苛立っていた。

 

「……最近の兄上が、わからないんだ」

「わからない?」

「俺はあの人を目標に、あの人に教えられた《貴族の義務》を心の支えにして生きてきた。

 だが、最近の兄上は…‥まるで、貴族も平民も同一に見ているような気がするんだ」

「それは、良いことじゃないの? リィンの実家だって、領民に沿って過ごしているそうだし」

「シュバルツァー卿とは違う。なんと言えばいいか、兄上が提唱していたはず(・・)の《貴族の義務》は、貴族の特権を持たぬ彼らに代わる矛であり盾だった」

 

 しかし、今のルーファスはそれを遵守しているように見えない。

 テロリスト――《帝国解放戦線》を追い込むために、部下は当然として領民すらも巻き込んでその捜査網を広げている。

 もちろん、領民とて領地を脅かす相手に対して情報提供をするのはおかしくない。

 だがルーファスは、情報に対する精度に応じた報奨を、部下だけでなく領民にも告知することで、まるで競わせるように誰も彼も巻き込んでいる。

 《帝国解放戦線》の背後にいるであろう、結社と呼ばれる犯罪組織に関する情報を得るためだ。

 そこに優雅さは見えず、情報に対しても報奨の差を生むことで一種の対立すら生んでいる状況だ。

 もちろん、危険な真似はさせていないはずだが……一部の商人が暴走して深くのめり込んだ結果、怪我を負ったという情報もある。

 

「それは決して《貴族の義務》ではない……一体何があったのか、わからないんだ」

「それだけ金の騎神が欲しいんじゃないか? あれがあれば、今の四大名門のパワーバランスだって優先的に握れるだろうし」

「だとしても、それは血に染まったものである必要はないはずだ」

「《貴族の義務》に則るなら、騎神が報酬になくても《帝国解放戦線》の逮捕なり殲滅に力を入れるもんな」

「……まさか、父上が絡んでいるのか?」

 

 どこからか金の騎神の情報を入手した父ヘルムートが、ルーファスに望まぬ指示を与えている……

 ユーシスは、それが嫌になるほどしっくり(・・・・)来た自分に嫌気が差した。

 

「ユーシスも親で苦労してるんだな」

 

 リィンの呑気そうな言葉。

 頭に登りかけた血を自制できたのは、続く台詞があったからだ。

 

「俺も本当の父さんが居るって言ったろ? まだ正式に認めてもらってないからな」

「…………え?」

 

 茫然自失とならなかったのは、シュトラールが崩れかけた体を支えてくれたおかげか。

 見れば、アリサも驚いた表情だ。

 

「俺を捨てた事情は知ってるし、その上で父さんって呼ぼうとしたんだけど、立場がそれを許してくれないらしくてな。まー後々認めさせるつもりだけど」

 

 そう語るリィンの声に苦々しさや重苦しさは微塵もない。

 拾われた先で、暖かな家族に迎えられたから、なのだろうか?

 

「お前には……シュバルツァー家があるからだろうさ」

 

 たとえ本当の父親に認めてもらえなくても、家族として迎えられ、大事にされているのならそこまで気にしていないのだ、とユーシスは自分をそう納得させる。

 でなければ、己が惨めになる気がした。

 

「ユーシスだってルーファスさんって家族がいるだろ? まあ、さっきのを聞く限り、一面しか見てなかったからじゃないか?」

「一面……?」

「あ、それなら私もわかる。母様に対して、一面しか見てなかったけど、最近別の顔が見れるようになったのよね。

 まあ、分かり辛くてやっぱりあの人面倒、っていう結論になったんだけど」

 

 苦笑するアリサ。

 先月にシャロンに用意してもらった時間を作って母親のイリーナと対面したことだろう。

 

「え、そうなのか?」

「リィンは六月の特別実習の後、物凄く忙しそうにしてたもんね」

 

 六月の特別実習の後、あの時の絆を胸に改めて母親との話し合いを行ったアリサ。

 結論だけ言えば、イリーナの仮面を完全に取ることはできなかったそうだが、導力バイクの一件を任せてもらえた(・・・・・・・)程度に関係が進展したと聞く。

 

「だって、五月の特別実習に比べたら精神的に余裕だったもの」

 

 つまり、リィンと行った特別実習にして、機甲兵や西風の旅団との遭遇。

 一介の学生が行うには理不尽すぎる経験は、少女を否応なしに成長させたそうだ。

 

「それでね、今まで自分が見ていた顔は表情でしかなかったの。ルーファスさんに関しても、そうじゃないの?

 私の場合、母様は父様の研究、父様を感じられるものをとにかく形にしておきたかったそうよ。まったくはた迷惑な話よね。おかげで内戦なんてものに発展しそうなんだもの」

「なんだ、シュミット博士の同類なんだな。あの人も弟子の遺作を世に送り出すために機甲兵の設計を担当したんだし」

「つまり、とっても自分本位(・・・・)だったの。ユーシスに《貴族の義務》を教えたのも、当然ルーファスさんの顔なんだろうけど、自分を律することが出来ないほどに譲れないものが今回に現れている、ってことじゃないかしら」

 

 それはつまり、ルーファスにとっての《帝国解放戦線》の殲滅……その報酬である金の騎神は、それほどまでにして望んでいるもの、ということか?

 一体、なぜ?

 

「それを知るために、ユーシスも今のルーファスさんを受け入れて、知っていくしかないんじゃないか? 

 ユーシスが想像するルーファスさんじゃなくて、実際に色々やってるルーファスさんを、さ」

 

 相変わらず、心を見抜いてくるようなリィンの物言いに反論することなく、ユーシスは胸の内に問う。

 知勇に優れ、《貴族の義務》を体現する帝国の貴公子。

 しかし、ここでユーシスの胸中に浮かぶのはミリアムの言葉だった。

 

 ――んー……どちらかと言えば、どうでもいい(・・・・・・)

 

(どうでも……いい……《貴族の義務》は、貴族に生まれたからしているだけで、本当にしたいことが騎神の獲得に関係している……なら、したいことというのは……)

 

 深く没頭するユーシス。

 リィンやアリサが何か言っていたが、それに返事をすることが出来ない。

 

「しかし、アリサのところも大変だな。実家がでかすぎて、ラインフォルトが帝国の縮図になってるなんて」

「正直、頭の痛い話だわ。母様ですら把握出来ない開発部もあるし……大きすぎる企業の弊害よ」

(帝国の縮図……内戦……戦争を欲している?)

 

 それはまるで、内に潜む暴力性を《貴族の義務》という理性で抑え込んでいる、ということだろうか?

 浮かんだ考えを、頭を振って散らす。

 

「機甲兵だって、実際に使われない限り土木作業用とかいくらでも言い訳されてしまうし……」

「いっそノーザンブリアの環境再生用の労働力、って言い切ってくれればいいのにな」

「母様なら、その投資に応じる具体的なメリットの提示を出さないとゴーサイン出さないわ」

「娘から言っても?」

「愛情と仕事の成果は別なのよね、残念ながら」

「……別……」

 

 幼少期、母を失ったユーシスにとって唯一とも言える家族の愛情。

 その象徴がルーファスだ。

 故に、その裏にあるものがそうであると信じたくなかった。

 本当にそんなものを抱えているのなら、自分を救ってくれる理由がないはずだから。

 それでも一度浮かんだ考えは頭の片隅にこびりつき、トールズに戻ってくるまで離れることはなかった。

 

 

 導力バイクと乗馬のツーリングを終えて、三人で第三学生寮に戻っていく。

 立ち並ぶ三人の影を作る夕焼けはすっかり落ちかけて、やがて完全な闇に染まっていくことだろう。

 結局上の空を続けるユーシスは、二人の会話に割り込むこともなく帰路についてしまう。

 

「ユーシス。話し合いって大事よ? ユーシスの考えは、あくまでユーシスが想像するルーファスさんの言葉でしかないから……

 真実がどれだけ受け入れたくなくても、本人の口から聞くのが一番だと思うわ。大事なのは、その上でユーシスがどう思うか、よ」

「ああでも、嘘を言う可能性もあるから、追い詰めて本当の言葉を吐き出させるってことも大事だぞ?

 立場で真実が言えない、特にユーシス達公爵家なんて、外に出す言葉と内に隠す言葉が一致しないなんてよくあることだしな。

 案外、ユーシスが金の騎神に迫れば迫っただけ、焦って本音を出してくれるんじゃないか? 準起動者だから、ユーシスにも乗る権利はあるし」

 

 かろうじて、二人の最後の言葉だけを聞き取る。

 

(あの兄上に本当の言葉を吐き出させる……いや――)

 

 ――ユーシス。友というものは、そこまで価値のあるものなのかな? それこそ、あらゆる思惑を吹き飛ばし、騎神にまるで興味を抱かないほどに。

 

 少なくとも、騎神への執着をあの言葉から察することが出来た。

 ならば、その理由を知らなければきっとユーシスは本当の意味でルーファスの本当の声を聞くことは出来ないだろう。

 だが、今のルーファスに素直に聞いて答えてくれるとは思えないし、兄以上に《帝国解放戦線》に対する手腕をユーシスが発揮出来るとは思えない。

 

(なら、俺に出来ることは――今でなく、かつての兄上を知ること、か)

 

 騎神、巨いなる力を欲するその背景。

 ルーファスがユーシスと同年代であったころ、あるいはそれ以前。

 何か変わったことはなかったのか、色々やるべきことはある。

 今までならば、変わらぬ才覚を発揮していただろう、という言葉だけで片付けていた。

 それでも、ルーファスの全てを知りたくなったユーシスは動くことを決意する。

 自分の想像と同じであることを願いながら、執事や叔父といった昔からの兄を知る者達への筆を認めるために、ユーシスは自室に戻るなり机に向かっていった。




アリサのイリーナとの対面はさくっとカット。
いえ、仮に一緒に話を聞けたとしても、ルーレまで遠いので…
その分、ルーレでの特別実習(予定)ではちゃんと会話シーンを割こうと思います。

本当はリィンを介さず、アリサとユーシスで話を済ませてⅦ組の横の繋がりを強調…ってのも考えましたが、主人公がいないのもどうかと思い、結局リィンも絡んじゃってますがご了承ください。

リィンのBADEDに隠れてますが、ユーシスもほんとひどい目に合ってますよね。
もうちょいルーファスとの関係に尺欲しかったです。そうすれば兄上のキャラももっと立っただろうし…
あとイリーナさんはほんともっとわかりやすく愛情示してください…
いえそうしないからこそのイリーナさんなんでしょうが。
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