はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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いつも誤字報告ありがとうございます。
ちょっと短めですが、今月の特別実習決定回です。


フフフ、息子よ。今回の特別実習は楽しみだな

「リィン君もクロスベルに?」

「はい、オリヴァルト殿下とセドリック殿下の護衛として急遽。それはともかく、その辺りに関して会長にお願いがありまして」

 

 ジョルジュからの要請による導力バイクの調整を終えたリィンは、上級生四人組が揃う技術部で、クロスベル通商会議に参加するトワにあることを持ちかけていた。

 彼女は直にアルフィンを護り、避難民の誘導も行った成果と生徒会長という身分から随行団の一員に選ばれているのだ。

 

「お願いって?」

「都市を事前に見ておきたいので、エリィさんに連絡を入れてもらってクロスベルに詳しい人を紹介してもらえないかな、って」

 

 クロスベルはヘイムダルより人口が少ないそうだが、ゼムリアで一番賑わう経済都市であることに違いはない。

 一日でマラソンすることは出来ないが、通商会議までの時間を有効に使わないのも勿体ないだろう。

 

「真面目なこって。護衛なら、皇族の傍に居ればいいだろう」

「それは他の護衛、特にヴァンダールの守護職の仕事ですからね」

「それに、リィン君に求められる護衛はそういうものではないんじゃないかな?」

「あはは……」

 

 何を想像しているのか、トワは言葉に出すことなく苦笑とも呆れとも取れる表情で流している。

 先月の特別実習で、リィン・シュバルツァーという少年を直に見ることになった少女の正しい反応とも言える。

 

「でも、セドリック殿下まで参加するなんてね……」

 

 ふと、アンゼリカが疑問をつぶやく。

 まだ社交界デビューを果たしていない年齢でありながら、オリヴァルトが主といえ彼が国際会議に参加することに驚いているようだ。

 

「やっぱり、《帝国解放戦線》の影響じゃないかな。直接襲われたことに加えて、自分の住んでいる場所での宣言だから他人事じゃいられないだろうし」

「帝国の主役は鉄血宰相殿だろうから、経験を積むって意味合いも強いんだろうけど」

「随分と豪華な社会見学なこって」

 

 ともすれば不敬とも言えるクロウの言葉だが、今回のセドリックの参加が異例なことに違いはない。

 セドリックの決意を知るリィンとしては、あまり良い空気ではないので早めに話題を変えようとするが、そんなリィンの表情から察したのかトワが努めて笑顔で手を叩く。

 

「でもリィン君、確か通商会議の前は特別実習でしょう? 日程は大丈夫なの?」

「特別実習の帰りにそのままクロスベル入りですね。確かに詰まってますが、知らない場所をマラソン出来るので割と楽しみなんですよ」

「本当に走るの好きだよなあオマエ」

 

 帝都でもリィンに付き合わされて、かなり走ることになったクロウが顔を歪める。

 塩の杭の残留物盗難事件である程度知っておらず、初見であったならもっと走ることになっていただろう。

 

「クロウは一安心だね。帝都での功績で、ある程度免除してもらえたんだから」

「まー、その辺は感謝してるよ。あれがなかったら、俺もⅦ組入りしていたみたいだからな」

「そうなんですか?」

 

 クロウの発言にリィンは目を丸くする。

 留年の危機とは聞いていたが、一年生の教室で授業を受ける可能性があったとは想像していなかった。

 

「前からサボり癖があったけど、五月以降はちょっと大人しくなったしね」

「まー……出かけた先でやることがなくなったけだよ」

「うんうん、真面目なのは良いことだよ。クロウ君だけ卒業が遅れる、なんて許さないんだから!」

「トワに付きまとってもらえるなら、私も留年するのはやぶさかでは」

「やぶさかだよ!」

 

 いつもの掛け合いを終え、トワが改めてリィンに向き直る。

 

「と、ともかくわかったよリィン君。こっちからエリィさんに連絡しておくから、都合がつき次第連絡するね」

「わかりました。最悪、自力で回るので無理せずに、とお伝えください」

「うん、了解!」

「ところでトワ、エリィさんってのは園遊会で会った美人で大きい子だよな? ちょっと話が……」

「おっとクロウ。そういうのは私を通してもらおうか」

「二人とも、エリィさんに迷惑かける気満々じゃない!」

 

 今のうちに、とジョルジュが手を振って去るようリィンに伝える。

 苦笑しながらジョルジュに従い、リィンはその場を離れていった。

 

 

「それじゃ、今月も実技テストの時間よ~」

「あれ、今回は傀儡を使わないんですか?」

「今のアンタ達はしっかり戦術リンクを使いこなしている。傀儡じゃもう役者不足よ」

「となると……」

「とりあえず、みんなで一度戦いましょう」

 

 四ヶ月目に突入した実技テストは、まずおさらいとして、トリオを組んでのバトルロイヤルとなる。

 なぜトリオかと言えば、リィンは単独で相手をするからだ。

 仲間はずれにしている、というわけではなく、リィンに合わせられないわけでもない。

 むしろ早い段階でリィンは全員との連携を問題なくこなし、戦術リンクがなくとも行えるだけのフォロー力を持つ。

 

「それとリィン、アンタは分け身禁止ね」

「元々する気ないですよ?」

「それでも自分同士で戦術リンクを組むとか、ルール以前の問題だっての」

 

 つまり単純明快、実力差に尽きる。 

 すでに鬼の力を抜きにした素の段階でサラに四割の勝率を持つリィンは、生徒達と組ませればリィンが居るほうが勝つ、となってしまう。

 サラの台詞通り、彼が分け身を使えば自分同士で戦術リンクを組む、といった手段など戦術が多岐に渡り、すでにソロで戦わせる意味がない。

 彼の誕生日以降、定期的に行われているリィンVSⅦ組+αの模擬戦で見ていたにも拘わらず、稽古で披露された時は戦闘中にも拘わらずサラは絶句した。

 

「こう、言葉にされると悔しいものがあるな」

「ん。なら、パルムでユーシスとマキアスが勝った時みたいに、追い込んでルール勝ちを狙う」

「勝率が高いとすれば、エマ君と組んだ班か」

「それでも、攻撃を当てる難しさもありますが」

 

 実力の伸びという意味ではエマも急上昇しているが、それでも一人で複数を相手取るには厳しいものがある。

 元よりアーツ使いに加えて、サポーターと言える後衛なので仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 

「ミリアム。前のようにアガートラムを無造作に突っ込ませるなよ。利用されてカウンター、ならまだしも連携を崩される恐れがある」

「やー、あれはびっくりしたよね」

 

 さらに、個人対集団というのは、逆に言えば個人(リィン)側からすれば利用出来るものが増えることを意味する。

 ユーシスが言ったのは、以前の稽古でアガートラムの攻撃を受け流し、その勢いを利用されたことだ。

 その時に戦術リンクを結んでいたのが身軽なフィーだったため、なんとか直撃は免れた。

 しかし、強引な回避の隙を利用されて本命であるはずのリィンの攻撃を前に床に叩きつけられていた。

 

「一番確実なのは遠距離攻撃やアーツなんだけど……」

「サラ教官との稽古のおかげか、一段と足が早くなったからな」

「トヴァルさん並の駆動の速さじゃないと、すぐ範囲外に逃げられちゃうよ」

 

 紫電の異名を持つサラは、スピードを主体とした戦い方だ。

 リィンは当初、八葉一刀流の伍の型である居合い、残月によるカウンター主体で攻めていたが、最近はその速度に付いていくようになっている。

 一定の差があると、全ての攻撃に対処されてしまう。リィンとの戦いは、より確実で優れた連携をした者達にこそ勝機があった。

 

「さて、それじゃあ早速行くわよー。まずリィン対――」

 

 結果としては、リィンの全勝であったことを告げておく。

 それでも余裕の勝利ではなく、辛勝といったところか。

 五月の頃に比べて強さと連携の向上が見て取れるので、リィンも相応に追い詰められている。

 現に、三組目との対決を終えたら地面に大の字になったほどだ。

 せめてあと一人、四人での組み合わせならば……とⅦ組の生徒達は今回の実技テストに確かな実感を覚えていた。

 全員のバトルロイヤルを終えれば、次はサラとの戦いに切り替わる。

 三回戦をこなしたリィンは流石に息が乱れているものの、疲れた時の体の動かし方を学ぶという上では良い授業だったと語る。

 疲労の影響もあり、今度はサラが全勝をかざった。

 流石にリィン同様に息を乱しているが、それでもリィンよりは息継ぎが浅いのは教官の貫禄か。

 

「サラはずるい。先にリィンと私達をぶつける、漁夫の利を狙った」

「サラ教官、そういうやり方は大人としてどうかと思いますよ」

「そんなの狙ってないっての! 疲弊した状況での戦いを学ばせただけだから!」

「なら、教官とリィンの戦う順番反対にしても良かったんじゃ」

「いやでもさー、リィンとの戦いはどうしても本腰入れることになるから、まだこの後の授業考えるとあんまり全力出すのも……」

「やっぱりズルしてるじゃん!」

「うるさいうるさいうるさい、それより今月の特別実習の発表よ!」

 

 生徒達のブーイングに吠え返しながら、サラは今月の特別実習が記されたプリントを配った。

 プリントにはこう書かれている。

 

 A班:リィン、ユーシス、マキアス、ラウラ、エマ。実習地はレグラム。

 B班:アリサ、フィー、ミリアム、エリオット、ガイウス。実習地はジュライ。

 

「レグラムってラウラの実家だっけ」

「うん、私も久しぶりの帰省になる」

「久しぶりにリィンさんとの実習ですね……」

「だ、大丈夫だエマ君! 僕達も出来る限りサポートする! ミスティさんに誓って!」

(気づいてないようだが、最近のエマも割と……)

 

 エマを励ますマキアスと、それを見るユーシスをよそに、リィンは先日のラウラとの会話を思い返す。

 帝国最強の剣士は、彼女の父であるヴィクター・S・アルゼイドである、と。

 帝国に名高い《光の剣匠》が関わる特別実習ならば、要請の中に稽古が含まれている可能性も高い。

 ウォレスからの指南によって磨いている鬼気解放の部分操作、早く試してみたいものだと剣士として胸がわくわくするのを感じる。

 

「帝都の特別実習も面白かったし、こういう形でジュライに行くのも楽しみだなー!」

「ん、確かに仕事以外で行くのは新鮮」

「リィンよりはマシといえ、あの子達も結構わんぱくだしね……私達もしっかりしなきゃ」

「ああ、特にミリアムがアガートラムを出す時には注意しないとな」

「見落としがちだけど、フィーも結構気まぐれな猫みたいな行動力だからね」

 

 B班もB班で、ジュライでの特別実習を楽しみにしている様子。

 リィンのみ、特別実習を終えたその後、すぐにクロスベル入りというハードスケジュールではあるが、今はただレグラムでの特別実習に想いを馳せるのだった。




メンバーが少し異なりますが、原作通りの実習地へ。
クロウもこの作品ではⅦ組(リィン)のせいで色々動けないので、真面目に授業に出た結果、編入を免れています。

本編では特別実習後はすぐガレリア要塞へ向かいましたが、この作品では少し早い段階で特別実習が開始されることになります。
中間テストなどもカットしてますので、ご都合主義として了承してもらえたらと思います。
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