施しの英雄   作:◯のような赤子

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ただし『原作組』がですが

待たせたわりに、カルナさん出ません(本当にゴメンなさい)
結局伏線回になってしまいました…(汗
(分かりにくいうえに、次回もまた伏線回という…)

その分、カルナさんが出た際は盛り上げる気マンマンなので、どうかご容赦を。



英雄派との邂逅

「ここが“裏京都”なのね」

 

 

呟かれたイリナの言葉に、俺達は釣られるように辺りを見渡す。そこは異界とも呼べるような場所だった。

 

江戸時代の街並みのセットの如く、古い家屋が立ち並び、薄暗い光源を家の中から覗かせながら、一つ目の大きな顔の妖怪、頭に皿を置いた河童など、御伽噺でしか見た事のないような妖怪という種族が、通りを歩く俺達を、好奇の視線で見ていた。

 

何故こうなったかと言うと、俺達は清水寺を見終えた後、予定通り桐生達と銀閣寺や金閣寺を見て回った。途中、あの綺麗な外人さんが団子を食べていたのを思い出し、時間も丁度良いと休憩所に。そこで桐生達が突如気を失い、俺達は初日の伏見稲荷の時のように、妖狐の皆さんに囲まれた。何事かと思いきや、そこにロスヴァイセ先生がやって来て、何でも昨日の誤解が解け、あの時俺達に襲い掛かって来た九尾の娘さんが、俺達に謝りたいから来てくれという事らしく、こうして“裏京都”に入って来たワケだが…。

 

 

「悪魔か、珍しいなや」

 

「人間じゃねぇのか?この前連れて来られてたしよぉ」

 

「いんや、人の匂いがしねぇ。弥々がどこかへ連れて行ったが…食うのか?」

 

「阿呆、あれは須弥山の使いぞ。天帝の怒りなんぞ、儂は喰らいたくないわい」

 

「龍だ、龍の気配もあるぞ。悪魔と龍…」

 

 

薄暗い灯火の中、俺達は進む。すると悪魔や“神器使い”が珍しいのか、かなり歳食ったと見える妖怪達の、話し声が聞こえて来る。でも向こうは別に、こちらに聞かせる気が無いのか――小さな呟きは、少し離れた場所にある木々のさざめく音に掻き消され、良く聴こえない。

 

そのまま前を歩く狐のお姉さんに先導され、小さな川を挟んで先程の林へと入る。そこを更に進むと巨大な鳥居が出現し、その先にはこれまた大きなお屋敷が、威厳と古さを醸し出しながら静かに佇んでいた。

 

 

「お、来たか」

 

「やっほー、皆☆」

 

 

鳥居の先には、アザゼル先生と着物姿のレヴィアタン様がいた。二人共、妖怪の世界に来ても相変わらずなようで。

 

そんな二人の間には、小さな金髪の少女が立っていた。あの時の女の子だ、この子が九尾の娘さんで良いんだよね?

 

 

「九重様、悪魔の皆様をお連れしました」

 

 

そんな俺の疑問に答えてくれるように、狐のお姉さんが明らかに目上と話すような態度で、その少女――九重に報告し、ドロンと消えてしまった。…あれか、狐火ってやつ?

 

すると僅かに九尾のお姫様は頷き、こちらへと一歩出て来て口を開く。

 

 

「私はこの京都に住まう、全ての妖怪を束ねる御大将八坂の娘、九重と申す。…先日は事情も知らず、襲い掛かってしまった。どうか、許してほしい」

 

 

ペコリと可愛らしく頭を下げられ、俺は困り顔で頬を掻いた。それは他のみんなも同じらしく、気にしていないと声を出すが、どうやらこの子はあの時のことを思った以上に気にしていたらしく、中々頭を上げてくれない。

なので本当に気にしなくていいんだよと伝えるため、近づいて目線を合わせようと膝をつこうとすると――。

 

 

「姫様。儂は確かに自らの咎を認められよと申し上げましたが、物乞いのようにいつまでも頭を下げなされとは、一言も申しておりませぬぞ」

 

 

シャランと金属と金属がぶつかり合う音が辺りに鳴り響き、それと同時にまるで長い時の中、大地に根付いた巨木を思わせるような声が聞こえ、そちらの方に顔を向けると。

 

 

「大天狗殿、部屋で待つって言ってたじゃねぇか」

 

 

アザゼル先生の言う通り、そこには物語に出てくるような鴉の羽を生やし、真っ赤な顔に長い鼻と、手に錫杖を持つ天狗がそこにはいた。

 

 

「じいじ!し、しかし…悪いのはこちらじゃし…」

 

「確かに手前勝手な行動でしたな。出て行かれたとあの日聞き、我等がどれほど心配したと思うておるのですか」

 

 

先程以上にしどろもどろな態度で、九重がその天狗を前におどおどしだす。でも天狗の方は、そんな仕草を見ても眉間の皺を解こうとせず、むしろ睨みつけるような眼光を向けるばかりだ。…少し厳しすぎやしないか?だってこの子、母親が心配であんな事したんだろ?だったらしょうがないじゃないか。

 

 

「何ぞ小童、言いたい事があるなら儂の前で言ってみせろ」

 

 

うぉ、今度はこちらを睨んできやがった!てか超怖ェェエエ!!?何あの眼力!?睨まれただけで殺されそうなんだけど!?

 

他のみんなも、その眼光にたじたじだ。そういや天狗って、確か昔は神様みたいに信仰されてたとか聞いたな…もしかしたら、俺達みたいな悪魔にはかなりの天敵なのかも知れない。

 

しばらくこちらを睨むように見ていたと思いきや、すぐに視線を九重へと、その天狗の爺さんは戻し。

 

 

「姫様。それで、どういたす」

 

 

―?何のことだと思っていると、九重がどこか、悩むような素振りを始めた。

 

 

「その…じいじ、私はどうすればいいのじゃ?その…私なんかが、それを決めて良いのじゃろうか?」

 

 

本当に何のことかとアザゼル先生に視線を向けるも、先生もロスヴァイセさんも何も聞かされていないらしく、ただ首を傾げて成り行きを見守っていた。

しかし…今なら元浜のような、ロリコン紳士の気持ちが少し分かる。もじもじと悩む少女の画、これは確かに萌えるッ!!

 

 

「貴女様が決めなされ、九重様。八坂様が行方不明な今、儂が一時の総大将を務めておりますが、御身は将来、我等の旗頭となられる存在。酷とは思いますが、京の都を背負う覚悟のもと、貴女様の決定を、我等京都の意志として、しかとお伝えなされよ」

 

 

突き放すような…しかしどこか、思いやりを込めているような声音で天狗の爺さんは、静かにお姫様を見つめていた。

するとお姫様は、しばらく考えるような素振りを見せた後。

 

 

「…咎がある身でどうかとも思うのじゃが…どうか、どうか!母上を助ける力を貸してほしい!」

 

 

覚悟の篭った眼で、こちらを見据えて来た。

 

 

 

 

俺達はそのまま屋敷の中に通され、今は数ある座敷の一つに集まり、情報を交換し合っていた。

 

この京都を取り仕切る大将、八坂姫は須弥山の帝釈天から遣わされた使者と会談を行う場所を再確認する為、この屋敷を出たという。ところが帰って来るはずの時間に戻らず、しかもそれを伝える為の狐の一匹も戻って来なかった為、不審に思った妖怪サイドが調査したところ、瀕死の重傷を負った鴉天狗を保護したという話だそうだ。で、京都にいる怪しい輩を徹底的に探していたと、そういうことか。

 

その後先生とレヴィアタン様が、この九重の右前で腕を組んで目を閉じている大柄な天狗の爺さん…後から聞いたんだけど、何とこの爺さん、あの源 義経が幼少、つまり牛若丸だった頃に世話した、あの鞍馬天狗なんだって!スゲー!!

 

っと、話が逸れたな。兎に角、大将を代わりに務めているこの鞍馬天狗さんと交渉し、冥界側の関与は無いことを告げ、手口から今回の首謀者が、【禍の団】の可能性が高いとの情報を提示した。

 

 

「しかし…インドラか。大天狗殿、何故京都は須弥山なんぞと会談を行おうと?あちらの噂は聞いているだろうに」

 

 

ん、『インドラ』?誰のことだ?それに何か、先生の顔つきが強張っているようにも見えるし…。

 

 

『相棒。インドラとは、先程出た帝釈天の別名だ。正確には昔の名と言うべきだが…アザゼルのように、仏門に帰依する以前からあの神々の王を知る存在は、今だそちらの名で呼ぶのさ』

 

 

左腕。正確には、“神器”の中から厳かで、強者の風格漂う声が響く。ドライグの声だ。

 

 

「それを聞いて何とする、総督殿。…先の声はブリテンの守護龍か、ということはお主が今代の赤龍帝であったか。何ぞ、最近の(わっぱ)は天帝の名すら知らんのか」

 

 

…何かこの爺さん、ちょくちょくこちらを馬鹿にしているような気がするけど…我慢だ我慢。そう、俺はキレやすい、現代の若者じゃないからな。

 

先程の天狗の爺さんの言葉に付け足すように、ロスヴァイセ先生とアザゼル先生も、そのインドラだか帝釈天だかの事を教えてくれた。

 

 

「インドラ…帝釈天様は、かなり古い起源を持つ神です。かつてはゾロアスターの悪神とされ、しかし月の兎の自己犠牲に涙し善神となる誓いをなされた後、インド神話では、そのあまりの強さと格の高さに、神々の王として敬われました」

 

「だがそれも少しの間だけさ。破壊神シヴァに信仰を奪われ、阿修羅神族との終わりなき戦いの日々を繰り広げ、それは今も続いている。何よりも戦いと血を好み、己こそが最強でないと我慢ならない自己中心的な武と戦の頂点に座す神…それがインドラだ」

 

 

な、何か話だけ聞いていると、滅茶苦茶ヤバイ神様ってことだけは分かった。ロキの時も思ったけど、神様ってのは色々いるもんだな。

 

 

「っと、そう言えばインドラと言えば、匙が一番身近な存在だぞ?何しろアイツに宿るヴリトラは、インドラの手で殺されたんだからな」

 

 

ッ!しぶとさと生命力なら、邪龍の中でも一際ヤバイと言われるあのヴリトラを!?

 

 

【それだけあの神々の王が、凄まじく強いというわけさ。ちなみに言っておくと、生前のヴリトラは俺達二天龍と、競う程の強さを誇っていたぞ?】

 

 

神々でさえ恐れた二天龍クラスを、一人で倒したってのか!?うわ、絶対に会いたくねぇ!そんな神様!!

 

怖っ!と最近、何かと神様と関係がある気がする俺は、どうか会う事などありませんように!と、死んだ聖書の神様に祈りを捧げていると、横から突かれるような感触を受け、何かと振り向くと。

 

 

「ねぇ、イッセー君。もしかして、昼間会ったあの外人さん。あの人が、その須弥山からの使者だったんじゃないの?」

 

 

っ!確かにそうかもしれない。その証拠に、横にいたドエロイお姉さん。九重達、妖狐の皆さんと同じ金髪だった。

 

どういうことだとアザゼル先生がこちらに問い詰めて来て、三年坂で出会った綺麗な男の人の話をしていると、こちらの話を興味深そうに静かに聞いていた九重が、「おぉ!」という声と共に、ポンっと小さな拳を手の平に振り下げ。

 

 

「そういえば、私は会わせてもらえなんだが、弥々がその人間を迎えに行き、今は世話をしておると、じいじから聞いたぞ!」

 

 

途端に先程まで、静かにこちらの話を聞いていた、周りにいる妖怪の重鎮と見られる方々が、『姫っ!!』と声を上げ、九重を咎めるような視線を向ける。天狗の爺さんもだ。それはいかんと言わんばかりに、首を横に振っていた。

 

 

「…九重様。八坂様が見つかれば、まずはお尻ペンペン100回をお願いするのでお覚悟を」

 

 

その言葉に、途端に顔を青褪める九重…分かるぜ、あれ、結構痛いもんな。しかも部長、“滅びの魔力”まで上乗せしてたし…。

 

 

「ま、兎に角だ。俺達聖書の陣営は、是非そちらと協力関係をと思っている。今回のように、最近何かとテロリスト共が動き回っているからな。各勢力、手を取り合った方が良いに決まっている」

 

 

確かにそうだ。それに仲間は多いに越した事はないだろうしな。

でも、妖怪のお偉いさん達はどこか、悩むような素振りを見せる。どうしてだろ?

 

 

「総督殿、それは脅しか?提携を結ばねば、我等が八坂様の捜索を手伝わぬと?」

 

 

なッ!?この天狗のジジィ、ンなワケねぇだろ!?こっちは心配して言ってるのに!?

 

あまりに失礼な物言いに、匙じゃないけど俺は思わず立ち上がり、抗議の声を上げそうになる。だがそれを、アザゼル先生は座ったまま手で制し、こちらを見向きもせず天狗の爺さんを見据え。

 

 

「そんなつもりは無い。これは純粋な好意だ。この京都は俺も気に入ってる。隣に座る魔王少女さまもだ」

 

「はーい!出来ることなら何でも手伝うわよ☆」

 

「てなわけだ。…そちらの気持ちも理解している。様子を見るに、須弥山側との話もまだ、済んですらいないんだろ?」

 

 

先生のその言葉に、更に悩まし気な雰囲気が部屋を包む。…それだけその須弥山との会談が、この京都にとって大切なんだろうな。

でも…なんだろこの感じ。「早まったか」とか、「やはりあれは」とか「牢屋」がどうのこうのと、何やら物騒な呟きがボソボソと聴こえるんだけど…。

 

天狗の爺さんも更に眉間に皺を寄せて、さっきの人を殺せそうな眼光を、部屋の隅にいる狐のお姉さん達に向けている。

 

 

「じいじ、先程から皆が呻いておるが、何かあったのか?」

 

「…少し、使者殿と手違いがありましてな。その際、もうしばし待ってほしいと告げ、今は九重様も知るように、弥々殿に予定通り、この京都を案内させているのです」

 

 

やっぱりあの人が、その須弥山側からの使者だったんだ。そうだよな、じゃなきゃあんな凄く高そうなスーツ着た外人さんなんか、そうそうお目にかかれないもんな。

他のみんなも、どうやら同じ考えに至ったらしい。するとアザゼル先生が、こちらに近づいて来た。

 

 

「なぁイッセー、そいつはどんな感じだった?俺の予想だと、あのインドラの謂わば名代だ。名のある仏神か、もしくは凄まじい“神器”使いだと思うんだが…そんな気配はあったか?」

 

 

どうだっただろうか?思い出しても、印象は兎に角、綺麗だったとしか言えないや。でも雰囲気だけは、確かに表の人間の感じではなかったと言うと。

 

 

「いや、あれはただの人間じゃ。そこな小僧や、お主らのような人外の雰囲気の無い、ただのな」

 

 

天狗の爺さんが代わりに答えてくれた。

すると先生は、口元を隠すように、何か思案するような仕草の後、俺達の方を真剣な表情で見てきた。

 

 

「そいつ、思った以上にヤベェかもな」

 

「え、何でですか?」

 

「あの武神が、ただの人間なんざ寄こすワケねぇだろ。“神器”の気配も無い、もしくはそれこそが、そいつの“神器”の能力かもしれんが…何かある(・・・・)。これが終わったら、少し探してみる。その間、もし見つけたとしても、迂闊に近づくな」

 

 

それだけ言うと、パンっと座ったまま、注目を集めるように膝を叩いて先生は再び、京都側との話を進め始める。

 

 

「兎に角だ。申し訳ないが、恐らく時間が無い。テロリスト共が八坂姫を攫ったのは間違いなくこの京都で何かを起こす為だ。アイツ等はこちらの事なんざ関係ない。攫われた八坂姫も、何をされているか分からんからな。協力体制については、彼女を無事保護してからで充分だ。だからどうか、俺達を信じて助力させてほしい」

 

 

その言葉に、九重の心配の気配が強まったのを感じた。

そのまま周りを見渡し、最後にすぐ右隣の座る天狗の爺さんを見上げる。

 

 

「じいじ…っ!」

 

「…もとよりこれは、儂が決めることではありませんでしたな。申し訳ありませぬ九重様。御身は先程、彼等に協力をと懇願したばかりであるというのに…歳をとると、どうしても疑い深くなるのは悪い癖ですな」

 

 

おぉ、ということは!

 

 

「今一度、私から、この京都の意志を口にさせてもらうのじゃ。どうか母上を助けることを、協力してほしい」

 

 

九重の言葉に、一斉にその場にいた妖怪達が、頭をこちらに下げて来た。勿論、答えなんか決まってる!

 

 

「当たり前だぜ!なぁみんな!」

 

「えぇ!勿論困った人…まぁ今回は妖怪だけど、そんな者を助ける事こそがミカエル様のエースである、私の使命なんだから!」

 

「はいっ!九重ちゃんのお母さんを助けましょう!」

 

「まぁ、テロリストに良い顔させたくないしね。協力させてもらおうじゃないか」

 

 

へへ、流石オカ研メンバーだ!

俺達の啖呵に、九重は顔をパァっと明るくさせ、天狗の爺さんが、これが八坂姫だと肖像画を持ってこさせた。って、まじか!おっぱい超デカイじゃん!!こ、こんなデカ乳の狐姫を攫ってテロリスト共は何を…ひ、卑猥な事をしていたら、俺が許さん!!

 

そこからアザゼル先生が、八坂姫はまだこの京都にいると、俺達に言ってきた。理由を聞くと、何でも九尾とは、この巨大な力場である京都に流れる気を統括し、バランスを取る役目にあるのだとか。異変が起きた様子もないし、それこそが彼女がこの地を離れていない証拠なんだと。

 

レヴィアタン様も、早期に手を打って、京都に詳しいスタッフに動いてもらっているらしい。普段はそんな雰囲気も見せないが、流石は魔王様だと思った。

 

先生も、もう一度こちらの覚悟を問いかけて来て、旅行を楽しみながらも決して気を抜くなとの言葉をいただいた。

 

そんな中、再び九重が手をつき頭を下げて、どうか母を助けてほしいと重ねてきた。他の妖怪もそうだ。

 

こんな小さな子供が頭を下げ、声を涙に震わせている。任せろ九重!絶対に母ちゃんは助け出してやるからな!

 

それに…もしかしたら、助けた八坂姫が何か、ご褒美くれるかもしれないし!ヤベ、あのおっぱいを好きにしていいかもと妄想すると、鼻血が出てしまった。

 

 

「…イッセーさん、エッチなこと考えてませんか?」

 

 

アーシアから、ジト目で睨まれ俺は頭を振り妄想を止める。いかんいかん、幼い狐のお姫様の懇願なんだぞ!

 

気持ちを新たに決意して、旅行中の戦闘を覚悟し、俺達はそのままこの“裏京都”を出た。

 

 

 

 

 

イッセー達が出た後、大天狗は九重の前で隠さず溜息を吐いた。

 

 

「…姫様、本当に明日、彼等を案内するつもりで?」

 

 

彼等が出て行く直前、九重はそれを約束した。やはりまだ、多少の負い目があったのではと大天狗は思う。

 

 

「それもある。じゃが他にも理由はあるのじゃぞ?私はまだ、その須弥山の使者と会っておらぬ。歩いておれば、一目会えるかもしれないではないか」

 

 

それはあまりにも子供らしい理由だった。『知らない、だから見たい』――。

しかし今の状況では、それはかなり難しい。テロリストが八坂だけを狙っていたとは思えない。その娘である九重すらも、標的にされているのは間違いないのだ。ならばこの“裏京都”に籠っていてもらったほうが、遥かに守りやすいのだが…止める間もなく、すでに彼女はイッセー達と約束した。

例え口約束でも、堕天使総督や魔王。北欧のヴァルキリーと思える大物ばかりが集まっていたあの場では、もはやそれを覆すことは難しい。

 

腕の利く護衛を大天狗が、その頭の中で選別していると、九重が使者はどんな感じであったを聞きだした。

九重にとって、弥々は今よりも更に幼い頃から世話になった、謂わば姉のような存在だ。その力量も、守護者に名を連ねるに相応しいと理解しており、そんな彼女が付きっ切りで世話をする使者――カルナに興味を引くなというのは無理がある話だ。

 

思い出すように、先程アザゼル達と話していた時とは打って変わり、髭を撫でながら遠くを見るようなその眼は、ある種別の緊張を含み一言。

 

 

武士(もののふ)…それが一番ふさわしい印象でしょうな」

 

 

全てはこちらの不手際。今ならはっきり認めることができる。しかし彼は、それに対し一言も不満を漏らさず、牢に閉じ込め様子を見に行った者が言うには、一夜明けてもその様子はまるで研ぎ澄まされた刃のようであったと聞く。それは己と直面し、殺気を軽やかに受け流した時もそうだ。

 

 

(それに比べ、今代の赤龍帝…あれは酷い)

 

 

それが大天狗の素直な感想だ。

試しに気配を消し近づこうと、こちらの接近に一切気づいた様子はなく、殺気すら込めていない、警告の意で放った気程度で、彼等は狼狽えていた。動きもまた、とても戦士とは思えぬ体捌き、かろうじて筋肉がついているようだが…もとより人外は、その身に宿した魔力や気で、筋力の差などいかようにもできる。

 

彼等と話している間も不安しか感じられなかった。それと同時に何度、あの使者への無礼を悔やんだことか…それは途中、この場であの時いた者達も感じたことだろう。

 

大妖怪ですら、たじろぐ大天狗の殺気。カルナはそれに、見事に応えてみせたのだから。

 

 

だが九重はどうやら違うようで――。

 

 

「私は良いと思ったぞ?優しいのじゃ!」

 

 

『甘さから来る優しさ』――まだ悪意を知らない、晒されていない幼い姫君は、それを好意的に受け取ったらしい。

もっと世間を見せるべきであったかと、大天狗は内心苦笑いを隠しきれなくなりそうだが…これもまた、この幼き将来の旗頭が成長する為に必要なこと。ならば我等は、影から支えるのみと、この場に揃う幹部に目線を送る。全力で守護せよと。

 

出来れば自身で影から警護したいところだが…この大天狗第三位に連なる【鞍馬山僧正坊】は今、その神通力を持って、何やら安定しない、八坂の気を必死にフォローしている最中なのだ。迂闊に動けば、必ずこの京都は崩壊してしまう。ゆえに彼は動けない。それは他の京都守護もそうだ。

四方に別れ、陣を敷いて必死にバランス調整をしている。唯一フリーとなっているのは弥々のみだが…彼女を戻すわけになどいかない。

 

 

「さ、慣れぬ事をさせて申し訳ありませぬ。今日はもうお休みなされよ。明日は彼等を案内するのでしょう?万全をもってして、我等の京都を紹介なされよ」

 

「そうじゃなぁ、じいじの言う通りにするのじゃ!じいじもあまり、無理をするでないぞ?」

 

「ほっほ、無論ですじゃ」

 

 

 

 

次の日。九重は約束通り、天竜寺の境内にて、イッセー達と合流し、嵐山方面へと案内を務めた。途中、桐生が彼女の抱き着いた際、境内の雀達が何かを感じ、一斉に飛び立ったが…それをイッセー達が気付く事はなく、様々な場所を案内しながら、観光名所巡りは渡月橋へと辿り付き…――そこでぬるり(・・・)と、突如彼等を生暖かい空気が包み込み……その先で、彼等はついに出会う。

 

 

 

 

 

「――初めまして、アザゼル総督、そして赤龍帝」

 

 

 




???「来たぜ、ぬるりと」

ふと、「これカルナさんじゃなくても、大天狗(鞍馬)出たら終わりじゃね?」と思い、急遽出れない理由を付けたすというこの浅はかさよ(汗


大天狗の眼光は鋭いようですが…とある大英雄は、眼力だけで本当に殺すらしい(そんなワケないよネ!)


次回はとうとうみんな大好きな、あの人達が出るよ!是非(意味深)もないよネ!(ノッブ感)

Q・それで、次回の投稿はいつだ?
A・千年後(明日)でどうだ?

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