多分次回はまたかなり時間が空くと思います(汗
それと以前、感想欄にも書かれていたのですが「英雄王は書かないの」との質問ですが……お察しください(汗
あのAUOカルナさん以上に難しいよ…。
感想返しも再開させていただきます。
ではどうぞ。
“サーヴァントゲーム”――それはレーティングゲームと似て非なる新たな遊戯。
チェスを模した主従関係は形を変え、
人間界の電光掲示版を模した巨大なモニターに今回、新しく創設された遊戯の説明を誰もが食い入るように見つめている。
その視線が下へと行く度、誰もが魅入られそして熱を帯びていく。
次第に熱は橋が架けられていくかのように伝播し、会場全体へと広がる。その熱の橋の端と端が一つに繫がりそうになった瞬間を、この悪魔は見逃さなかった。
『目に焼き付けたか!?ルール説明はもう不要だな!?ゲームを観戦する観客に求められるのは理解ではない!理屈でもないッ!魂を!震わせろ…ッ!!』
実況を担うドナウ・ガミジンによる、最高のタイミングでの最高の
『では選手の紹介をさせていただきたい!!…なに?まだ待たせるのか?いい加減にしろ?どうかご勘弁いただきたい!こんな
浮かされている、己もまたこの熱に。だがなんと心地良いのだろう。
夢にまで見た。夢の中でしか行われなかったような事が、実際に目の前で行われる…たとえこれが白昼夢であってもいい。ならば己が、己がこれまで培ってきた
『その男、凶暴につき。その男、何故ならば悪魔なりて!噂に違わぬ凶暴性を今日、果たして彼は我々に見せてくれるのだろうか!?サイラオーグ・バアルに折られた牙はこの日の為に人知れず研がれ続けていた!グラシャラボラス家次期当主候補、【黒の陣営】“凶児”ゼファードル・グラシャラボラスゥウウウ!!』
歓声が狂騒となって紹介と共に登場したゼファードルとその眷属達…否、
それぞれがクラスに応じた武器や服装の中、
「殺す…この俺を
その声は周囲の音の壁により、誰にも聞こえることはなかった。彼はそのまま不機嫌な様子を隠さず所定の位置につく。
それを確認したドナウ・ガミジンは一度、間を持たせるように唇を舐めた。
“選手を紹介する”――いつも行う当たり前なこの動作ですら、今この瞬間だけは緊張を隠せずにいたのだ。観客たちもそれを感じ取ったのだろう。
熱から始まった狂騒はついに、次の選手紹介の時には狂奏へと至った。
『“英雄”とは何か?昨今世間を騒がせる“英雄派”…なるほど、確かに神々にさえ喧嘩を売ろうとするその度胸は、その称号を名乗るに相応しいのでしょう。聖書の神が残した“神器”に選ばれ好き放題出来る権利はまさに、選ばれた人間と言っていいのでしょう。だが、しかし!私は今まで以上に声を大にして言わせてもらいたい!!
紹介が終わり、観客達が一斉に腕を振り上げ叫ぼうとしたのだろう。英雄の名を呼び、ただ感じるままに声を出そうとしたのだろう。
熱に浮かされ、思いのまま感情を走らせ騒ぎ、狂ったように叫びたかったのだろう。だがそれが叶うことはなかった。
カチャリと、会場の中を静かな金属音が不思議と響き渡る。まだ姿さえ現していないというのに、すでに会場はその存在感に呑まれていたのだ。
もう一度カチャリと金属同士が擦れる音が鳴る。その時、とある悪魔の膝の上にはヒヤリとした何かが落ちてきた感覚が訪れ、彼がそこを見ると水滴が一粒落ちていた。これは自分の頬から落ちてきた汗なのだと、その時悪魔は理解した。それほどまでに、ただ
三度目の金属音が鳴り響き、ついにカルナが姿を現した途端……感情は文字通り爆発した。
□□□□□□――――ッッッ!!!
『~~っな、なんということでしょうか!か、会場が絶叫で震えております!頑丈に作られているはずのドームがこれだけで壊れそうな勢いです!!熱狂が奔る奔る奔る!というか私の声これ聞こえてないでしょ絶対!?おぉっとカルナ選手、この異常事態と捉えてさえいい中、悠然とスタンバイ位置へ向かいます!』
視線は真っすぐ、その足取りもただ真正面へと向かわせていく。この異常な歓声ですらさも当然のように受け止めているその様子に、ゼファードルは更に苛立ちが募っていくのを感じていると突如、会場内を轟かす爆音が連続して炸裂した。これには流石の観客達も静まり返り、突然すぎる出来事にドナウ・ガミジンまでもが耳を押える。そのあまりの凄まじさに、ある種の恐怖すら幾つかの悪魔が抱いていると…声が聴こえてきた。
「当然、これは神々が打ち鳴らす
耳を押え、今も爆音がいたる所から轟いているというのに、不思議とその幼さを感じる声は頭の中に直接聞こえてくるようだった。それに続き、これまでで最大の神鳴りが落とされ、全ての音が消える。その様子はまるで、落とした張本人の不機嫌さを表わしているようだ。
「おい、いつまでこの俺様を待たせる気だ?てかYO、テメェ等マジウルセェ、一々はしゃぐガキかYO」
会場の実況席。そこには二柱の神が…絶対にあり得ない組み合わせがそこにあった。
『み、耳が………よし、治ってきました。おそらく観客の皆さまもそうだと信じ、この“サーヴァントゲーム”を私と共に実況してくださる方々のご紹介に移りたいと思います!すでにモニターにも映し出されていますが未だに私も、そして今回の試合を提案してくださった魔王様方も信じられません!まさかこの方々が隣同士で座っていようとは…!他神話の神々も唖然としているのが簡単に思い浮かびます!インド神話代表破壊神シヴァ様!そして須弥山代表帝釈天様でございます!ついでに我らが三大勢力代表アザゼル総督ぅ!』
「やぁ、シヴァだよ。よろしく。だってカルナはインド神話由来の英雄だし、スーリヤはウチの所属だからね。それに息子の友達が活躍するんだ。当然見に来るさ」
「おう、帝釈天様だ。俺様の神鳴りを聞いたNA?ありがたく金を払いやがれ。全財産の半分で許してやる、優しいだろ?とりあえずこのクソ餓鬼より後に俺様を紹介したテメェは後で裏に来いや、NA?」
「……タスケテっ!てか何で俺だけこんな色々な意味でアブネェ場所にいるんだよ!?見ろ!さっきから互いにメンチ切りまくってんだよ!サーゼクスとアジュカぁ!テメェ等今すぐこっち来い!!じゃねぇと俺死ぬ!マジで死ぬぅ!!」
『御三方ありがとうございます!それとアザゼル総督へ、サーゼクス様とアジュカ様から「頑張って」と声をいただいております!私も帝釈天様からの一言で膝が震えております!互いに頑張りましょう!!』
「ふざけるなぁ!!」という二人のやりとりに、会場も徐々に元の雰囲気に戻っていく。もしこれがドナウ・ガミジン流の前説ならば、彼は今後各神話中の宴の場に引っ張りだこになるだろう。(それまで生きているかどうかは帝釈天のみぞ知る事ではあるが…)
その間も中央ではカルナとゼファードルが互いを見合い、開始前から火花を散らしている――いや、ゼファードルが一方的に向け、カルナはやはり一切気にしていない様子だった。
『再び説明に戻るのですが、ご了承ください!アザゼル総督、ゼファードル選手が従者を連れての登場ですが、一方カルナ選手はたった一人。更にその手に持つランサーの証である槍は、自前のものではなく三大勢力が貸し出した物と聞いています。これにはどのような理由があるのでしょうか?』
「お前こいつ等が今にも戦争おっぱじめそうな雰囲気出してるのに進めるのか!?スゲェなオイ!?あー、まぁあれだ、カルナが競い合いなら一人で良いって言ったんだよ。どれだけの数が来ようと、オレは負けないってな」
頭をガリガリ掻きながら顔を青くしながらも、律儀に答えるアザゼル。彼としてはもう少し良い言い方で伝えたかったが、あの場で直に聞いた立場としてはどうやってもそうとしか言えなかった。
「だからカルナだけは
「それは彼が基本、誰かに仕える立場だったからね。アンガの王という地位についてはいたけど、それは
「槍に関しては当然だNA。
アザゼルは第三者として、そしてシヴァと帝釈天はよくカルナを知る視点から意見を述べていき、むしろ敵から武器を渡されたというデメリットを肯定していく。
『当然とは…一体どういうことなのでしょうか帝釈天様?いくら大英雄であるカルナ選手でも、悪魔を7人…いや、
ドナウ・ガミジンの疑問はもっとも。これは三大勢力全体のほぼ総意でもあった。実際目の前でカルナを見たアザゼルやサーゼクスでさえ、そう思っているほどなのだ。
それを感じ取ったのか、シヴァと帝釈天は噴き出すように突然笑い出し、帝釈天は目の前のマイクを掴み口元に近づけ…一言。
「
その気迫…とくに最後の言葉に乗せられた力は、会場を再び沈黙へと戻す。
困惑も当然あった。“神が…
「まぁさ、とりあえず早く始めようよ。そうすればこのクソ坊主が言った意味が分かるからさ」
『そ、そうですね。では両陣営、準備は良いですか!?』
シヴァの言葉に何とかモチベーションを取り戻したドナウ・ガミジンが、両者に最後の確認をしていく。
「あ゛ぁ゛!?どうでもいい、さっさと始めろクソが」
「敵が目の前にいる。ならばオレは、成すべき事を成すだけだ」
『両者バチバチに火花を散らし合っています!では“サーヴァントゲーム”
試合開始の宣言が成された瞬間――両陣営が
この会場は謂わば
試合とテロ。そんな二つの緊張感がせめぎ合う中、モニターを見つめていると。
「さて、もう終わったし、僕は帰らせてもらうよ」
シヴァがそんな事を言いながら立ち上がった。ついでに帝釈天もだ。
「俺様も帰らせてもらうZE。せめて魔王の眷属でも出てくんのかと思っていたが期待外れだ。途中で引き返したサルが正解だZE」
「あぁ、そういえば来てたみたいだね。今気づいたけど、いつもの天部は今日来てないの?」
「アイツがどうしてもって言うから天部置いて連れてきたんだがなぁ…カルナの相手を知ると唾吐いて、逃げ出した弟子が近くにいるからそっちの様子を見に行くとYO」
その姿は完全に、試合に関する興味を失っていた。するとたまらずアザゼルが二柱を止めにかかる。
「おいおい待てよ!試合はまだ始まってすらねぇんだぞ。いくらアンタらとはいえ、流石にあまり好き勝手されちゃ……」
『ゼファードル選手!今すぐ逃げてください!!』
「困る」――そう続くはずだった言葉尻は、突如逃げろとドナウ・ガミジンが叫んだことにより遮られた。そのあまりの剣幕、必死さに一体どうしたと素早くアザゼルがスクリーンの方へ首を向ける。その画面に映し出されていたのは…全てが白に塗りつぶされた世界。
茫然と誰もがその光景を見つめている中、シヴァは微笑みながら呟く。
「だから言ったのに。
◇
ゼファードル・グラシャラボラス――彼は本来次期当主、その候補にすらなれない
そんな最高の日々が終わりを告げたのは、10年ほど前の事だ。
気に入らない、目があった。俺を誰だと思ってやがる、どこの誰がテメェ等の生活を守ってやがる。いつものようにいちゃもんをつけ、いつものようにそれが当主の耳に入り、説教の為に呼び出されたと、その時ゼファードルは思っていた。けど違った。
“次期当主になるはずだったお前の兄が、インドで消息を絶った。だからこれからは、お前が当主候補となる――”
何を言われたのか全く分からなかった。目の前で当主が目を真っ赤にしていた、きっと涙が涸れ果てるまで泣いた後なのだろう。だがそんな事、どうでもよかった。
責任ある立場を押し付けられる…目の前の当主の言葉は絶対だ。つまりこれから己が何をしようが、今告げられた言葉はもう、覆らない…。
沸々と、苛立ちが沸いてきた。
誰だ…誰がこの俺から、自由を奪いやがった…?俺が理不尽なのは当然のことだ、それが俺なのだ。だが…俺に理不尽を押し付けることだけは、神であっても許しておけねぇ…!!
それからは今まで以上に責任から逃げるようになった。
毎日仲間と遊び惚け、適当な悪魔に喧嘩を売り、立場でもって理不尽を振りまいた。そうすれば見放され、候補から落ち妹にその話が行くと思ったから。だが当主はその全てを黙認し、決してゼファードルを見捨てようとせず、あまつさえ“凶児”という名でゼファードルはそのようなものだと冥界中に認知させていった。当然、ゼファードルの品性は悪化していった。だからだろう。
誰よりも責任から逃げ続けてきた男が、誰よりも責任から逃げず向き合って来た若手最強悪魔に敵うはずがなかった。
ただひたすらにムカついた。恵まれ続けてきた己が何故、誰よりも恵まれないあんなクソに負けるのかと。
現実逃避の癖は更に悪化し、ついにゼファードルはサイラオーグとのレーティングゲーム以来、家から出る事もなくなった。…そんなある日の事。
ゼファードルは久方ぶりに当主に呼び出された。久しぶりにあった当主は以前よりも遥かに弱弱しく、今にも倒れそうであったがどうでもよかった。
「何だ、ついにこの俺を追い出す決心がついたのか?」――あらん限りの皮肉を込め、そう吐き出した。もういい加減にしてくれと。すると当主はそんなゼファードルの言葉を全て無視して、ただ一言。
“お前の兄の仇が見つかった。今度魔王が開催するサーヴァントゲームという試合がある。それに出ろ”と。
サーゼクスはあの日、あのパーティー会場でカルナに「グラシャラボラスという悪魔が以前インドで消息を絶った。知らないか」と聞いていたのだ。
彼は悪魔にしては善人だ。冥界を思う気持ちは本物であり、当然世界中で時折消息を絶つ仲間を探す事も苦に思わない。インドで消えたのなら、インド生まれの者に聞き、少しでも情報が手に入れば恩の字だ。おそらく彼は、その程度に思っていたのだろう。だが聞き出せた情報は、そんなサーゼクスの思いを遥かに上回っていた。カルナは答えた。
“その悪魔なら、オレが殺した”と――詳しく問い詰めれば、グラシャラボラス家の次期当主であった上級悪魔は、新たな眷属をインドで探し、カルナを見つけたという。奇抜にして凄まじく整った容姿を持つカルナを、彼は一目で欲しがり、断ったカルナの家族を人質に交渉しようとし、仕方なく殺したのだそうだ。
初めサーゼクスは、この話をグラシャラボラス家に持っていくか悩んだ。聞けば明らかに悪いのはその次期当主であったが、殺害という行き過ぎた行動を起こしたのはカルナだ。結果サーゼクスはグラシャラボラス家にこの話を告げ、ゼファードルの耳へと届けられる事となった。そんな成り行きを聞かされ、ゼファードルの心に宿ったのは怒りだった。
“そうか…お前か…ッ!お前のせいで!俺はこんな惨めな立場に追いやられたのか…ッ!!”
明らかな押し付けである。ゼファードルがサイラオーグに負けたのは彼のせい。ゼファードルが次期当主候補に持ち上げられたのは目の前の当主、そしてインド神話が直々にインドに足を踏み入れるなと忠告をしていたにも拘わらず、それを聞き入れなかった彼の兄のせいだというのに。ゼファードルが初対面であるにも拘わらず、カルナに殺気を放っていたのはこのような経緯があった為だ。
「ぶっ殺すぶっ殺すぶっ殺す!!この俺をこんな不愉快にさせやがって…!生きて帰れると思うなよ!?」
所定の位置につき、試合会場へとワープしつつ、ゼファードルは一人ごちる。幸い、このサーヴァントゲームのルールに“殺し合い禁止”などは乗っていなかった。恐らくはそれを想定していなかった、あのお優しい魔王様の不慮なのだろう。ならば殺しても何ら罪はない。だから絶対に殺す。
そんな事を思っていると、ワープ特有の浮遊感が消え、目の前には広大なフィールドが広がっており、その中央にはこれまた巨大な山々が、フィールドを分断するように配置されていた。恐らくはレーティングゲームの一つ『スクランブルフラッグ』に使われる場所の一つなのだろう。見覚えがあった。更に言えば木々に囲まれた山ならば“
「…ッチ、気に食わねぇ。これだけお膳立てされねぇと、勝てないとでも思ってんのか?」
相手の情報は色々聞いている。太陽神の子だか何だか知らないが、半分は人らしい。更にあの黄金の鎧は決して破壊不可能だとか言うではないか。で、だからどうした?一々壊すこともない。やり方なら幾らでもある。が、今はまず
『ゼファードル選手!今すぐ逃げてください!!』
視界が真っ白に染まり、以後……ゼファードルが公に姿を現すことは二度となかった。
◇
カルナが聖書の悪魔と戦うのはこれが初めてではない、二度目だ。
一度目はまだカルナがインドラに引き取られる以前、養父母の元で彼らの愛情を一身に受け、土と向き合い家事の手伝いをしていた頃。
突如現れた悪魔は、カルナに告げた。
“陶磁器のように美しい肌、更に容姿も整い美しい…我が手を取れ、永久の命をキサマに与えてやろう。悪魔になれ”
カルナはすぐに断りを入れた。「人として生まれた、ならば人として死ぬ」と。それが気に食わなかったのだろう、悪魔はならばお前の両親を殺すぞと脅し、『貧者の見識』はその言葉が本心であることを見抜いた。
何事かと家を飛び出し、目の前の悪魔に恐怖しつつも、カルナを少しでも隠そうと抱きしめていた母の腕からカルナは抜け出し、見上げながらこのように警告した。
“父と母に手を出すというならば、オレはお前を殺さねばならない。できればそのような事はしたくない。今すぐ帰ってほしい”
悪魔は激怒した。人間風情が誰に命令していると。そこからは以前、シヴァが帝釈天に語った通りだ。
家族を守るため、カルナは全力の『
ゼファードルがカルナの情報を知っていたように、カルナもまたゼファードルについて話を聞いていた。曰く今回の相手は、あの悪魔の身内なのだとか。ならば覚えのない殺気を向けられた事も、納得がいく。
家族の仇だ、きっと憎んでいるのだろう。同じように父と母を殺し、オレに後悔させたい事だろう。
息子を殺された憎しみから、
不思議な浮遊感から解放され、目を開けた先には広大な大地が広がっていた。遥か遠くには山があり、集中すればその向こう側から、この冥界で何度も感じた悪魔特有の魔力を感じる。
だからカルナは、三大勢力から与えられた槍を逆手に掲げた。放とうとしているのは、裏京都という小さいながらも一つの世界を崩壊せしめた最大奥義。
ルールには「殺し合いを禁ず」という一文が無かったことは、
「身勝手だとは、理解している。だが済まない。オレはまだ、両親に恩を返していない」
あの地には父スーリヤとシヴァ神、そしてインドラの加護が彼らを守っているなど委細承知している。だが復讐に走るかもしれない者がここにはいる。万が一…いや、億が一の可能性が父と母を危険に晒すかもしれない…
右足を大きく後ろに下げ、掲げた槍を極炎が包む。途端に耐え切れず、槍は崩壊し始めた。だがそんな事、この槍を握った瞬間から分かっていたカルナは構わず大きく振りかぶり、奥義を解き放つ。
「『
荒野が広がる大地を大きく削りながら、カルナが放った奥義はその間にあった山すらも蒸発させ、なおも速度を増しながらゼファードルへと飛翔する。途中、審判兼実況のドナウ・ガミジンが何かを叫んだが、『
本来であればカルナが放った『
技が敵を打ち取った感覚がなかった。更に言えば、先程まで感じていたゼファードルとその従者達の気配もまた消えていたのである。
どういうことだと初の経験に佇んでいると、足元が光に包まれ出し、気づけばカルナは試合会場ではなく、観客の為に用意されていた会場へと戻っていた。そんな彼を迎え入れたのは、目の前に置かれている巨大モニター。そこには『winnerカルナ』と出ていた。
「そうか、勝ったのだな、オレは」
ゼファードルは運営により、強制退場。よってカルナはこの場における勝者となった。しかし彼に、登場の時のような歓声が上がることはなかった。
『…………………』
痛い程の静寂が、恐怖が、恐れがカルナに向けられ、会場全体を包み込む。
「だから言っただろうが。これが英雄だってNA」
そんな中、アザゼルでさえ黙り込んだ実況席からマイクを通し、声が聴こえた。帝釈天だ。その横では彼に続くように、シヴァが微笑みながらパチパチと拍手を送り始める。帝釈天もまた大振りな拍手を始め、貴賓室からは再び“神鳴り”が響きだす。
こうして初の試み。第一回サーヴァントゲームは幕を閉じた。
ある者は英雄に対する恐怖をその身に刻み、またある者は真の英雄と戦える事に歓喜しながら…。
次の日、冥界の新聞には、このような見出しが載る事となる。
『あれは断じて試合ではない、一方的な暴力である!』
『サーヴァントゲーム第2試合、カルナvs悪魔500柱決定!!』
『“施しの英雄”カルナ《武器の使用禁止》を言い渡され了承!』
いかがだったでしょうか?
感想でも「そもそも戦闘シーンいらなくね?」とありましたが、そもそもまともな戦闘描写は書く気がなかったので、長々と説明ばかりであとは省略しました(笑)
久々に書いたので自分の中で違和感がありますが、楽しんでいただけたのなら幸いです。
実況が某神vs英雄の漫画みたいと感想にありましたがまさにそうです。なので隠さず意識させていただきました。
この作品の中ではゼファードルは現段階で25歳程度と考えています。
若手悪魔といってもアガレスやサイラオーグはどう考えても高校3年生であるリアスより年上でしょうし、まぁ痛いあんちゃんみたいな感じで。(一応死んではいません)
グラシャラボラス家の次期当主もそうですね。原作では兄とも何も書かれていませんでしたがこのように。
次回のカルナさんは武器禁止を言い渡されちゃいましたね。どうしよう…勝てるイメージが全然湧かないや(棒読み)