施しの英雄    作:◯のような赤子

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久々に1月以内に投稿できた気がする…(汗
感想欄が眼で殺すで埋め尽くされましたが…悪いなノビタ、作者は天邪鬼なんだ。
(ちょっち針妙丸探して幻想郷に下克上してきます)


この状況の中、多くの方が外出自粛をされていると思います。
少しでも暇つぶしになればと思います。
作者?今じゃなきゃ当の昔に辞めてるレベルのブラックな会社で今日も元気に文句言ってるよ(震え



届かぬ太陽に手を伸ばす者達

――それは誰かが捨てたものか、はたまた風に煽られここまでたどり着いたのか。

 

『サーヴァントゲーム第二試合カルナVS悪魔500』と大きく見出しが載った新聞を足元に見つけ、男は笑う。

 

 

「おうおう、くせぇくせぇ。いくらあの阿呆共とてこれが悪手ってな事くれぇ簡単に分かるだろうに。オイラにゃこれが、どうにもキナ臭くてしょうがねぇンだが…そこンとこオメェさんどう思う?なぁルシファー(・・・・・)

 

「ゼェ、ゼェ…そんなこと…俺が知るか…っ!」

 

 

天を仰ぐように冥界の空を見上げ、荒い息のままヴァーリ・ルシファーは初代の問いかけを切って捨てる。

その傍には彼の仲間であり初代の子孫である美候。仙術を使う点では初代と同じながらも、その差は天と地ほどにかけ離れた黒歌。伝説のアーサー王の血を引き継ぎ、同じくペンドラゴンの名を受け継いだ妹ルフェイを庇うようにして兄のアーサーが…最上級悪魔数体であっても軽くあしらえる実力者達が倒れ伏していた。

 

これだけでも彼らを知る者が見れば惨々たる状況だが、周囲などは更に酷い。

 

冥界に存在していた森林の一角は大きく切り開かれ、辺りには巨大なクレーターやアーサーが放ったと見られる斬撃の跡が地面を切り裂き、黒歌や美候が初代と対抗したのか並の悪魔では呼吸すら難しい程の濃い氣がここには集中していた。

 

 

「呵呵!だよなぁ、オイラも正直どうだっていいのよ。別にボンクラ共が馬鹿やろうが、どうせ面白がった高みの見物連中がボケ共を煽ろうが。でもまぁ、感謝はしてやってもいい。カルナの事だ、きっとまた素敵なモンを見せてくれるだろうよ」

 

 

笹の葉を食べるパンダが描かれた安物の煙草を咥え、ヤジを飛ばす初代。それと比べ倒れ伏すヴァーリの表情は苦々しいものとなっていた。

 

ヴァーリ・ルシファー。彼はその名の通り、初代魔王の一角ルシファーの血を受け継ぐ半人半魔だ。更にその身には人の血が混じるが故に宿す事を可能とした神滅具『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』を所持するという、まさに奇跡のような可能性が生み出した存在だ。その仲間たちも、最低でも準魔王級という高い実力を兼ね備えている。

 

 

そんな彼らを初代は息の一つも乱さず、傷の一つも負わず、三日三晩面白半分でリンチにしていた(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「ゼェ…ザ…ケンなこのクソジジィ!!テメェ!最後に会った時はそこまで化け物じゃなかっただろうが!!」

 

「しかも邪気まで纏って…!卑怯ニャ!ズルイニャ!てか私ら二人がかりでこんな簡単に辺りの氣を掌握されるってどういうこと!?ニャー悔しい!お腹空いた!お風呂入りたい!白音ぇ…お姉ちゃんクサイとか言わないで~ニャア…」

 

「呵呵!いやぁ最近負け続きでよぅ、ちと自信とか色々失ってきてた頃に、鴨がネギどころか鍋背負(しょ)ってノコノコ現れたんだ。殺してねぇだけ感謝しろや」

 

 

ヴァーリ達は現在一応とはいえ『禍の団』に所属している所謂テロリストだ。その行動の殆どは自由気ままに行きたい所に行き探求心を満たすという、まるで冒険家のようなものだが…それでもテロ組織に加担しているという事に変わりはない。

 

 

「我々を捕まえる事が目的でないとするならば、何故ここまで追ってきたのですか」

 

 

彼らからすれば激闘の最中、気絶したルフェイをそっと地べたに横たわらせ自身の上着を置き、アーサーは気になった事を尋ねた。

 

 

「だから言ってンだろ?弱い者虐めだよ(・・・・・・・)、弱い者イジメ。オイラは英雄でも善神ってワケでもねぇし、ボスはあんなで一応善神らしいケド?5人もいて、大昔の古代兵器“ゴグマゴグ”まで持っていて?こんな老いぼれたサル一匹に負けました?じゃあテメェ等雑魚以外の何なんだよ」

 

「…耳が痛いな。返す言葉もない」

 

「返す言葉もないじゃねぇんだよヴァーリ、ボケが。テメェもアーサーも一人で先行しすぎだ。戦力差くれぇ見極められるようになれやタコ。確かにテメェの神器は攻撃が当たれば“半減”が働く。アーサーはそもそも武器が強ぇ。当たれば一撃必殺さ、当たればな(・・・・・)。フェイントの入れ方も下手くそなんだよ、遅ぇ。クソ砂利や黒歌の嬢ちゃん、そこの気絶してるパツキンの嬢ちゃんなんかのほうがまだ周りをしっかり見て、フォローに回ろうとしてたぞ?まぁ結局、堪え性がねぇから焦って大技連発し始めたンだけどな。何だったかヴァーリ、確か以前言ってたな?自分は強者の一角に入るとか。おう、はっきり言ってやる。テメェは雑魚だ、雑魚。オイラみてぇな底辺(・・・・・・・・・)にこんだけ良い様にされてンだぜ?だったらそれ以外の何があンだよ」

 

 

一見アドバイスのように聞こえる。実際ヴァーリやアーサーは歯を噛みしめながらもしっかりと耳を貸していた。しかし本質は違う。

 

 

これはただの八つ当たりだ。

それは初代が一番よく分かっている。

 

だが言わずにはいられない。

 

 

座っていた倒木から立ち上がり、初代は今もなお倒れ伏すヴァーリへと向かい歩き始める。その間、口元から煙草を一度も離さず、“ヂヂッ”と煙草が短く燃える音が連続して響く。

 

歩きながら、煙草の火が根元まで到達するとようやく口元から離し、手の中でぐしゃりと潰そうと肺に煙を溜めたまま、初代はヴァーリの目の前でしゃがみこむ。

 

 

「なぁ、最強目指してんだろ?“真なる白龍皇”目指してんだろ?昔は若いの一言で済ませちゃいたが、今オイラも同じなんだ。ずっとずっとずぅっと先で、アイツが約束を待ってくれてンだよ。ぶっちゃけお前らみたいな若いだけが取り柄の連中に構ってる暇なんざねぇんだ」

 

でもよ…。

 

「気に食わねぇよなぁ、口だけ最強目指してるなんざ。負けてばかりの今のオイラ(・・・・・)を見てるみたいでよぉ…あぁ気に食わねぇ!何で雑魚のクセに遠慮してンだよ、オイラが晒すこの火傷を見て、なに躊躇ってんだよ…っ、オイラがそれを望んだか!?殺す気で来いよ!!せめてこの火傷の上に、一つの傷でも残してみろよ!!」

 

 

胸倉をつかみ、無理やり顔を近づかせる初代を前に、ヴァーリは僅かばかりではあるが息をする事を忘れた。

サングラスに隠れたその先にあるのは、燃えるような闘志。若々しい萌木のようなものではなく、まさに命を燃やすような熱量がそこにはあった。

 

ヴァーリは知っている。法衣から隠す気のなく晒される痛々しい火傷が、一体に誰の手によりもたらされたものなのか…それでも聞かずにはいられない。

 

 

「…それが英雄か……曹操達のような目指す者ではない。真の頂に立つ男とは…カルナとは、貴方をそこまで奔らせるものなのか…っ!」

 

 

大英雄カルナが蘇ったことはあまりにも有名だ。だからこそヴァーリ達はどれほどのものなのか見に来たところを、初代に捕捉されていた。その為ヴァーリは、カルナの姿をまだ一度も見ていない。それでも彼は今この瞬間、カルナという男を僅かばかりではあるが理解した。

 

 

「初代、どうか俺に教えてほしい。カルナという男…一体どこまで挑戦させてくれる(・・・・・・・・・・・・)?」

 

どこまでもだ(・・・・・・)。届かぬ太陽に手を伸ばすようなモンだぜ、あれは。…でもな、意地があンだよ、男に生まれたからにはなぁ」

 

 

フゥっと最後に今まで溜めていた煙をヴァーリへと吹きかける。あまりの煙の量にヴァーリは思わず目を瞑り、ゲホゲホと咽てしまうが初代は気にせず立ち上がり、背中を向ける。

 

 

「オイラが先約だ、先ずはオイラに挑みに来い。抜け駆けはナシだ、男の約束だぜぃ?」

 

「ねぇ、私オンナなんだけど…にゃあ」

 

 

黒歌の呟きに、呵呵!と笑いながら今度こそ初代は消えていった。

そのまましばらく動けなかった彼らではあるが、誰よりも彼と長い時間を過ごした美候が盛大に溜息を吐き、大の字に寝転んだことにより、静止した時間が動き出す。

 

 

「プハァー!ンだありゃ…バケモンだバケモンだと比喩して揶揄っていたが、今じゃ修羅じゃねぇか…子孫で弟子でもある俺ッチに最後まで何も言わずに行きやがった…クソ」

 

「アンタの爺さん、あれで仏なんでしょ?どこがよ…」

 

「強いですね…いや本当に。東洋では私達のようなものを“井の中の蛙”というのでしたか…まだまだ私も精進が足りなかったのですね」

 

「う、うーん……あれ…さっきまで私、なんだかすごい良い笑顔で歯をむき出したお猿さんに追われていた気が…」

 

 

魘されながらもようやく起きたルフェイに安堵の表情を見せながらアーサーが笑いかければ、それ以上の笑い声が辺りに響き渡る。

 

 

「っく、はは!ははは!いや手も足も出なかったな。こんな完敗したのは、今まで多分ないだろうな。はは!」

 

「おやヴァーリ。言葉の割に、我々には貴方がすごく楽しそうに見えますが?」

 

 

アーサーの言う通りだ。額に手を置き天を仰いでいるが、ヴァーリは彼らが見たことが無い程満面の笑みを浮かべている。

 

 

「あぁ、楽しいさ。だってそうじゃないか。俺達はもっと強くなれる。どこまで行っても上には上がいて、どこまでも目指していけるんだ。生涯挑戦し続けても、そこに辿り着けるか分からないと教えてもらったんだ。これを知って面白くないなんて嘘だろ?」

 

 

同意を得るように見渡せば、美候もアーサーも同じように笑っている。(ただまぁ、女性陣だけは何が何だか分からないと首を傾げ、黒歌にいたってはうんざりだと肩を落としているが)

 

 

「けどまずは、ここから逃げよう。おそらくは冥界側もこの異変に気付いているはずだ」

 

「賛成にゃ。あのジジィ暴れるだけ暴れて…!しかも徐々に大勢の氣がこっちに向かってきてるし…」

 

「そうですね。流石に疲れましたし、あの方の後に警備程度の悪魔では、役者不足に感じますし、面倒ですし」

 

 

各々が好き勝手に言い立ち上がる。

ヴァーリもすでに立っており、その視線は森を超えた遥か先を見ていた。

 

 

「俺もいつか君に挑むよ、カルナ。でも先に二天龍の因縁を片付けてからだ。兵藤一誠、早くここまで来い。俺はまだまだ強くなる、強くなりたいんだ。だから早く来い。一緒に強くなろう――」

 

 

 

 

 

 

 

 

魔王の妹という立場に、今まで甘えた事など一度もない。

生まれは貴族と称される72柱の一つ、シトリー家。

 

幼馴染で同じ魔王の妹であるリアスとは違い、コツコツと小さな出来事を積み重ねてカチリとはまる戦術を組み立てる事が大好きだった……だからこそ分かる。

 

 

「このサーヴァントゲーム、現魔王政権の働きかけではありません。おそらくは大王側かレーティングゲーム運営陣…更に別の思惑も入り混じっている…神々の介入もあったとみるべきでしょうね」

 

 

人間界における城と言っても過言ではない、駒王学園生徒会室。そこで冥界から届けられた新聞に眉根を寄せ、ソーナ・シトリーは自身の考えを呟く。

 

 

「会長、それはどういう事ですか?そもそも何故、神々があのカルナとかいう男を追い込むような形を…おかしくないですか?」

 

「お姉さんにもしかして聞いたんですか?」

 

 

それは単なる独り言ではなかった。

その証拠に彼女の周りには眷属が集まりその中の一人、女王の駒(クイーン)であり副会長でもある真羅椿が皆を代表するように浮かんだ疑問をソーナへと聞き、戦車の駒の由良翼紗がそれに続く。

 

 

「いいえ、私は誰にも聞いていません。これは…そうですね、上手く表現することが難しいのですがあまりにも……短絡的すぎる…」

 

 

口元に手を当てるのは無意識なのだろう。更に鋭く新聞の一面へ目を通すソーナに、眷属達も疑問がもっと浮かんでしまったと表情を隠さない。

 

なのでソーナは、疑問点を一つ一つ上げていくことにした。

 

 

一つ。まだ第一試合が終わったばかりなのに、もう“サーヴァントゲーム”のルールが破綻している。

二つ。新聞には“500”と謳われているが、そもそもそれ程の数のレーティングゲームプレイヤーは冥界に存在しない。つまりそれだけの数の悪魔を用意できるほどの力が働いている。

三つ。おそらく急遽このような運びとなったのは、あまりにもカルナの力が予想を上回っており、悪魔としてのメンツを対外的に潰されたため。しかし現魔王政権は穏健な方ばかりであり、このような横暴をするとはとても思えない。

 

 

「……言われてみれば確かに…契約を重んじる悪魔としてはかなりおかしく感じます。ですが何故、そこに神々の名が挙がるのですか?」

 

「この“サーヴァントゲーム”を最も待ち望んでいたのが神々だからです。大英雄カルナ。彼が戦う姿を見る為だけに、あの破壊神シヴァと帝釈天が隣同士で座り解説をするなど…二柱の因縁を少しでも知っていれば絶対にありえませんでしたからね。今回は流石にアザゼル先生にも労いの言葉をかけたくなりました」

 

 

「帝釈天」の一言に、巡巴柄の後ろで静かに聞いていた匙の影が、僅かに揺らいだように見えた。だがソーナは「話が逸れました」と続ける。

 

 

「誰がどう見ても横暴であるこのルール変更を、しかし神々は現状異議を唱えていません。彼の生まれ故郷であるインド神話やパーティー会場に連れてきた須弥山からも…つまり初めから認めていた、もしくは分かっていたということです。おそらくは第一試合の後、このようなやり取りがあったはず…「見応えが無い、悪魔とは所詮この程度か」「この程度で我々に満足しろと言うのか」と。悪魔側はその言葉を聞き、頭に血が上りこのようになったのではと考えます。…とくに大王側は血の気と言うか、古くからの“悪魔こそ至高”という考えの方が多いですからね。その思想の発端となった初代バアルならきっと、この流れを止めようとしていたでしょうけど…数の暴力に勝てる者など、ほんの一握りでしょうから…」

 

 

自らの予想を語り終え、ソーナは僅かに下を俯く。

彼女自身としては、ほぼこれが正解だと思っている。

 

大王派や運営側の子飼いもしくは金に釣られた悪魔500人。その中にはきっと、レーティングゲーム上位陣を密かに紛れ込ませ、勝利を確実にしようとするだろう。何せこれだけの数を用意しておいて、たった一人に負けましたでは話にならないからだ。

 

 

『それでも負ける。お前達聖書の陣営は…あぁ、インドラが言った通り、何故なら真の英雄を知らないのだから』

 

 

それは匙の方から聴こえてきた。だが彼の声ではない。

匙の身に宿る神器、その中に存在する邪龍ヴリトラのものだ。

 

 

「お前っ、500だぞ!?確かにあの試合でカルナとかいう奴が見せた技は凄かったさ!でも何回も言うけど500人だぞ!?」

 

それがどうした(・・・・・・・)、我が半身よ。そもそも英雄とは人の臨界を超えた一種の破綻者だ。あの男、カルナが万軍相手でも負ける事はないというのは、そのままの意味だ。あの当時の我が故郷インドにおいても、すでにあの男は並居るクシャトリヤを抑え英雄と称されていたそうだ。…我がヴリトラハン(・・・・・・・・)が用意した男だ。負ける事など断じてならん(・・・・・・)

 

「おまっ、どっちの味方だよ!?その言い方だとただ単に、負けてほしくないだけじゃねーか!」

 

 

主の前で、主と共に自らが所属する悪魔側が負ければいいとも取れる相棒の物言いに流石に思うところがあったのだろう。匙は腕に出現した神器(ヴリトラ)に対し焦りだすが、ソーナの次の言葉に、眷属全員が驚く事となる。

 

 

私も同感です(・・・・・・)、ヴリトラ。おそらく悪魔陣営は今回、稀に見る大敗を喫する事になるでしょう。…何ですか、みんなして驚いた顔を…そんなに私の発言が意外でしたか?」

 

「意外も何もないでしょう会長!だって…っ!」

 

「由良、貴女の言いたいことは分かります。ですがマハーバーラタにおいてカルナは神々でさえ手を焼いた羅刹などを相手に、無敗を貫いてます。彼の敗北は唯一、鎧を帝釈天に奪われ半死半生でアルジュナの前に立った時のみ。その時でさえ、カルナはアルジュナをあと僅かなところまで追い詰めました…つまりカルナは鎧があるから強いのではなく、鎧がなくとも強い(・・・・・・・・)のです。それは先の試合で山を溶解し尽した時点で分かるはず…えぇ、確かに匙、イッセー君も倍加を使えば同じ事ができます。ですがあれだけ短時間に、しかも試合会場の壁に罅を入れる事など…魔王級の攻撃でも中々壊れない設計なんですよ?あれ」

 

 

淡々と語るその様は、きっと次の試合では理不尽な暴力を前に倒れ伏すカルナの姿を想像していた匙達に、真逆の光景を思い浮かばせるのに難しいことはなかった。

 

 

でも、それ以上に心配だった。

 

 

 

「会長…それでも参加するんですか?…“サーヴァントゲーム”に」

 

「はい。それでも私は“サーヴァントゲーム”に…カルナに挑戦したいと思っています」

 

 

三大勢力はこの“サーヴァントゲーム”を、新たに普及させようとしている。

それは悪魔のみならず堕天使や天使達から「自分達も試合に出たい」という要望が多かったのもあるし、神と戦いたいという声も前々から少なくなかったからだ。その為現在も“サーヴァントゲーム”は挑戦者を募集している。

 

 

「ですがこれだけはハッキリ言っておきます。私は一人よがりで、皆を危険な目に遭わせようとは思っていません。大英雄カルナ…彼はきっと、戦うと決心した相手には決して手を抜くような方ではないでしょうから。断る者を、むしろ私は誇らしく思います。間違いなくこれはただの負け試合(・・・・・・・・・・・・・・・)ですから。…その時は一人で出ます。いえ、出なくてはいけません」

 

 

大勢が、全世界からあの場には注目が集まっているのだ。そこで少しでも注目を集めればきっと…きっと私達の夢に賛同してくれる者が、応援してくれる誰かが見つかるかもしれない…。

 

 

(誰でもレーティングゲームに…チャンスを掴める足掛かりになるような学校を…そんな場所を……悪魔が尊い夢を見て、何が悪いのだろうか)

 

 

何より――。

 

 

「約束しましたからね。“貴方を必ず、帝釈天に会わせる”と」

 

 

柔らかい笑みをソーナが浮かべ、見やるのは匙ではない。ヴリトラだ。

 

 

『…すまない。我が半身の主よ』

 

 

ソーナは気付いていたのだ。

以前帝釈天がリアス達とサイラオーグのレーティングゲームが終わり、いざ自分達の番になった際、一切の興味もなく帰り、以来ヴリトラに元気がなかった事を。何故なのか話を聞き、この邪龍の矜持とも取れる思いに、彼女は感銘を受けたのだ。

 

 

「謝ることなんて何一つありませんよ。仲間(・・)が困っているのです。なら、どうにかしたいと思うのは当然じゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――後日、“サーヴァントゲーム”“第二試合はソーナの予想通り(・・・・・・・・)となる。それだけではない、彼女の予想はその悉くが実のところ当たっていた。

 

 

神々が物足りぬと大王派に所属していた悪魔を焚き付けた。まるでかつてのコロッセウムに集まったローマ市民のように…当たり前の光景(・・・・・・・)を見せられて、だから何だと言わんばかりに。

そこから悪魔としてのプライドが傷つけられたと大王派は彼らの長である初代バアルの言葉にさえ耳も貸さず、独断でレーティングゲーム運営側と接触。元より“サーヴァントゲーム”はレーティングゲームの亜種として捉えられており、アジュカやサーゼクス、アザゼルといった開発者達の元へ話が行く頃には、全ての根回しが終わっていたのだ。

 

 

第二試合当日。試合会場はその出場者の多さから、『ワンデイ・ロング・ウォー』が行われる超広大なフィールドが用意された。

 

実況は前回と変わらずドナウ・ガミジン。解説は前回と違いアザゼルただ一人。そのどちら共が不愉快さを隠さずにいた。それもそうだろう。

 

 

端から見ればこんなもの、ただのリンチか公開処刑にしか見えないのだから。

当然観客達の中にも同意見の者がいた。だがそのような声は何故か公に出る事もなく、ついにこの時を迎えてしまった。

 

 

試合が行われるフィールドにはすでに500の悪魔がその手に思い思いの武器を手に取り、その対面では武器も持たずカルナが自然体で立っている。

 

 

「…なぁ、本当にこれでいいのかよ、俺達」

 

 

槍兵(ランサー)のクラスが与えられた悪魔の一人が、その手に持つ槍を強く握り呟く。「本当にこれでいいのだろうか」と「何か間違っていないか」と。

 

 

「そんな事分かるかよ…」

 

「てかアイツ、今回のクラスなんだ?前回と違って槍さえも本当に持ってないぞ…」

 

従者(サーヴァント)のクラスだとよ、舐めてんのか?」

 

 

一人の呟きが辺りにいる者達に伝播する。

何かじゃない、全てがおかしい…そう感じる事こそが正しい。それでも彼らが武器を構える理由など一つしかない。

 

 

「ハッ、よく言うぜ。どうせお前達も金に釣られてやってきたんだろ?」

 

 

鼻で笑う声が聴こえた。それもまた正しい。

そもそもが冥界に戦える悪魔というのはかなり少ない。

冥界には軍が無い、戦士がいない。内戦を終え政権を握った現魔王達が再び悲劇を繰り返さない為に考えたのは少数精鋭、対外的アピールも含め現在のレーティングゲームが始まった。ではここに集まった悪魔達は、一体何なのか?

 

 

答えは“ただの一般悪魔”だ。

大王派が彼らの目前に吊るした、普通の生活では決して手に入らない大金に目が眩んだ愚者達…それが彼らの正体だ。

 

勿論、そこには所謂しょうがない理由もあるのだろう。

ある者は貧困に喘ぎ、またある者はどうしようもない理由を、苦悩も抱えたのだろう。

だがその全てに共通するのは、“それでも彼らは武器を手に取った”のだ。“たった一人を大勢で寄ってたかって嬲る”のだ。

 

 

「えぇそのとおりです。欲しいのでしょう?手に入れたいのでしょう?これは許された暴力(・・・・・・)なのです。あの人間も受け入れた。だから貴方がたはここにいる。もっと裕福になりたいのでしょう?ならば強請るな、勝ち取るのです」

 

 

これだけの数だ。当然、監視の名目で大王派所属の者が紛れていようと分かるはずもない。悪魔らしく、だが悪魔が悪魔を甘言で墜としていく。

 

 

「大丈夫ですよ。貴方がたはただ、“寄ってたかって虐めるフリ”をしていればいい。衆目からあの男をその人数で隠してもらえれば…あとは我々が上手くやりますので(・・・・・・・・・・・)

 

 

最後にそう言い残し、男は煙のように紛れて姿を消す。

監視さ(見ら)れている”――そんな話は聞いていない、一体これは何の冗談だ…そう思うも、どこに誰がいるか分からないこの状況で、それを口にする者はいない。

 

彼らに残された道はただ一つ…。

 

 

『ではサーヴァントゲーム第二試合……スタートです!!』

 

 

――前に進む事のみ。

 

 

 

武器を振りかざし、得も言えぬ恐怖に身が竦むことがないよう大声を上げ先頭集団が後ろに押されるように、土煙さえ上げながら突貫する悪魔達に対し、カルナが取った行動はただ一つ。

 

腕を天に掲げた。

 

 

「――――……は?」

 

 

その仕草に視線を合わせて、見上げた悪魔達は言葉を失う。

 

 

 

それは何時、出現させたのだろう。

上空にはあまりの高熱ゆえに中心部が白色を示し、その周囲が眩い赤色に照らされた魔力で生み出したと思われる槍の形状を模した巨大な炎塊が無数に浮かんでいた。

 

 

「ふむ…まずは小手調べといくか。頭上注意だ、悪く思え」

 

 

言葉と共に振り下ろされた腕に連動するように、炎塊は悪魔達の元へ殺到。宛ら絨毯爆撃を思わせるような爆音と破壊の規模が悪魔達を襲う。

観客達はモニターに映し出された光景に言葉を失い口元を覆うもただ一人、アザゼルだけは立ち上がってマイクを握りつぶさんばかりの勢いで叫ぶ。

 

 

『おい馬鹿止めろ!!殺すな!!それだけはルール違反だと言ったはずだぞ!!』

 

 

なりふり構わずといった体だが、それは前回のサーヴァントゲームに起因する。

初手でカルナが放った『梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)』――そのあまりの破壊力はギリギリ運営側の避難が間に合ったゼファードルを余波だけで意識不明、全身火傷に衝撃による内臓破裂…つまり人の形が残っていただけ御の字とさえ言えるほどの重体に陥らせていた。それを見たアザゼル達はこれから普及させる予定であるサーヴァントゲームで不幸な事故が起きないようにと、今後参加するプレイヤー達とカルナに“殺生禁止”のルールを明文化していたのだ。(当然悪魔側にもこれは通達されており、紛れていた大王派も殺すのではなく、甚振り恥をかかせる事こそが目的だった)

 

 

「お前は事を急ぎがちだ、よく見ろ」

 

 

大量の土煙が舞い、徐々に落ち着いていく。

 

 

「オレは誰にも当てていない。小手調べだと言ったはずだ」

 

 

そこに広がっていたのはカルナの言葉通り、先頭集団の目前に槍が落ちてできたであろう岩盤さえ抉り穿たれた巨大な穴の数々。

 

カルナに迫っていた悪魔達は、その突然すぎる…初手にしては、あまりにも殺傷力が高すぎた攻撃を前に動けず、手にはまだ武器が握られたままだ。

 

 

「そうか、アレを見てなお、武器を落とさぬその気概(・・・・・・・・・・・)…成程、ならば此方も、そのつもりで行かせてもらう」

 

 

一体コイツは何を言っているんだ…自分達はただ、落とし損ねただけだ――っ!

 

言葉の意味を徐々に理解し、それまで動かなかった身体が命欲しさに咄嗟に武器を捨てようとする。だが…もう遅い。

 

 

「行くぞ、真の英雄に武器など不要だと、オレは我が身をもって証明しよう」

 

 

右腕を眼前に掲げ、僅かに腰を落とす。瞬間――空気が文字通り変化した。

カルナの後ろでは陽炎が揺らめき、悪魔達はまるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。

 

この場にいる殆どの者が悟ったのだ。

 

 

“自分達はなんと、とんでもない存在に挑んでしまったのだろう”と――だが全てではない。

 

 

「えぇい、一体何を…先頭は何をしているのですか!動けこの馬鹿共が!!」

 

 

畏れで竦んだ身体を、恐怖が後ろから動かしてくる。もはやどうにもない、前に向かうしか選択肢など、何がどうあれ初めからなかったのだから。

 

 

喚き声、呻き声、叫び声…それらは聞くに堪えない雑音となって、まるで篝火に飛び込む蛾のように構えるカルナへと殺到する。

 

その場から動かぬカルナに第一陣の刃が迫り、彼の身体に触れた――瞬間。

 

 

「シィ――!」

 

 

歯の隙間から鋭く息を吐き出し、刃が先に到達していたにも拘わらず、後から動いたカルナが振り抜いた拳の方が先に相手に到着するという矛盾を意図も簡単に成し遂げる。身体の中心線、水月を打ち抜かれた悪魔は身体をくの字に曲げるがそれだけでは終わらない。

 

彼の身体を貫き、空気中へと圧縮された拳の圧は放たれ――爆発。

周囲にいた悪魔達はその衝撃に30人ほどが宙を舞う。

 

それはただの一度ではない。

拳を、掌底を、蹴りを放てばその度に爆発するような音が響き、悪魔達は木の葉のように吹き飛んでいく。その多くは血反吐を吐き、全身いたる箇所の骨が折れていた。

 

 

『な、な、なんということでしょうか!絶体絶命と思われたカルナ選手!だが我々が見ているモニターにはまるで無双ゲームのような光景が映し出されております!!』

 

 

己の本分を思い出し、茫然と見ていたドナウ・ガミジンがようやく実況を開始する。その間も地を覆う勢いであった悪魔の軍勢は、カルナが挙動を見せる度、空白地帯を生み出していく。

 

 

『は…はは、マジかよ…まさか今の時代にこれを見れるなんてな』

 

『何か知っているのですかアザゼル総督!?』

 

 

手に持っていたマイクを落とすが、どうやら音声はしっかりと拾っていたらしい。椅子に身を投げたアザゼルに構わず、少しでも情報が欲しいドナウ・ガミジンは迫るように話を振り、アザゼルは語り出す。

 

 

曰く、そのあまりの危険性ゆえ銃があっても安心できぬ(・・・・・・・・・・・)とイギリス人が滅ぼした武術。

曰く、古代インドにおいてあのシヴァが最強と謳われた聖仙パラシュラーマに武術を教え、それをパラシュラーマが完成させたモノ。

曰く、それはアジアに存在する全ての武術の源流である。

曰く、その名は――。

 

 

『“カラリパヤット”。今の時代じゃその殆どの技術が失われてるから俺でさえ全容を掴めちゃいなかった。正直、その逸話があまりにも眉唾なモンばかりだったから信じちゃいなかった。カルナがそのパラシュラーマから直に習っていると知っていても…な。嗚呼、帝釈天…確かに俺が…俺達が間違っていた。俺達は…真の英雄を知らなかったんだな』

 

 

アザゼルが謝罪を言葉にしようと、その間もカルナが止まる事はない。

 

咄嗟にレーティングゲームプレイヤーとおぼしき者が、周囲の悪魔を呼びよせ槍衾を形成する。だがカルナはそれに臆することなく侵入し、その悉くを拳の裏で折り、足で折り、全てを破壊し尽す。剣が迫れば同様に、弓の雨が降れば蛇の如く腕をしならせ迫る弓矢を片っ端から掴み、自身に当たるであろう矢に投擲。一瞬ではあるがカルナの周囲にだけ安全地帯が生まれ、同時に空を飛ぶ悪魔達が地に落ちていく。狂戦士(バーサーカー)が筋力に物言わせ腕を振り下ろそうものならば力の流れに逆らわず受け流し、暗殺者(アサシン)が背後から襲い掛かればまるで後ろに目があるかのように身体を屈め、反射で蹴り上げた足がその顎を打つ。その道中も彼の疾走が一度も止まる事はない。

 

 

「なっ、何なんだお前は…っ!一体お前は、何なんだぁああ!?」

 

 

高みの見物を決めようとしていた大王派の悪魔が、そのあまりの光景に思わず叫ぼうとも目の前に出現したカルナが手を止める事はない。

 

彼がようやく動きを止めたのは……全てが終わった時だった。

 

 

『っし、試合、終了ォオオオ!!何ということでしょうか!?カルナ選手!本当に無手のまま500を超える悪魔を倒し尽くしてしまったぞぉおお!!凄い!凄すぎる!!たとえこれから非難されようが構いません!!どうか皆様!彼に比類なき称賛を!凄いぞカルナ選手!!これが英雄だぁああ――!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その光景をテレビ越しではあるが、彼は見ていた。

 

 

場所は病室。すでにイッセーと戦った傷は癒えているものの、それでも彼がここにいるのは戒めだ。

 

勝者であるリアス達が当然の名声を得ている間、敗者である己が同じ場所に出るべきではない…だから彼は敗北を糧とする為にも“不死鳥の涙”を使い、傷を癒す事を断った。だから彼はパーティー会場に行かず、眷属達から“サーヴァントゲーム”なる新たな遊戯が始まったと聞いても、ただ愚直にもう一度自分を見つめ直していた。

 

己のような木っ端悪魔を、主と崇めてくれるレグルスがいくらなんでもやりすぎだと鍛錬を止めようとしても、彼…サイラオーグ・バアルは決して止めようとはしなかった。

 

次こそは勝つために…次こそは己に夢を見てくれた全ての者の思いに応える為に――。

 

 

「なのに…何故…何故だ…。何故…俺は今、こんなところ(・・・・・・)で眺めている…ッ!?」

 

 

いつものように握力を鍛える為、握っていたハンドグリップはすでにベッドの上に転がり、わななくように震える両手でサイラオーグは自らの顔を覆う。その傍らでは戦闘時、唯一振るう武器であり、その転生悪魔としてはあまりに異例であるが為、傍に置いていたレグルスが心配そうに見つめるがサイラオーグは構わず吼える。

 

 

「俺の武術は所詮我流、誰かに教えを受けたものではない…だが、これだけは分かる…否、分かってしまった。あれは…あれこそがっ!俺が目指していた場所だッ!!」

 

 

カルナの噂はサイラオーグの元にまで届いていた。

古代インドの英雄であり、人と神の間に生まれし選ばれた者(・・・・・)なのだと…彼はテレビに映るカルナを見るまでそう…考えていた。

 

 

「恥を知れサイラオーグ!!何が半神半人だからだ!何が選ばれた者だ!!キサマは、あの御仁を侮辱しただけだ!!」

 

 

画面には500の悪魔を下したばかりのカルナが映し出されている。どれほど観察しても、カルナが息一つ乱している様子はない。

 

完全に自身の力量とペースを見極め、どれほど無駄のない動き、体捌きをしていたのか…

武人としてまだ半人前にすら到達していない自分には、想像さえ許されない。

 

 

気が付けばベッドから立ち上がっていた。

気が付いてしまえばもう、いつまでもここで立ち止まってなどいられない――!

 

 

「おぉ、主よ…!」

 

 

レグルスはその姿に、歓喜の声を漏らす。

理解はしていた、納得はしていた。しかし何時までも一度の敗北を引きずる姿など、我が身を振るう主には相応しくない。

 

 

「済まないレグルス、無様を晒したな。謝罪と共に一つ聞きたい。かの御仁、カルナ殿はお前から見て、どれほどの頂に立つ御方だ?」

 

「直に見ていない故断定は出来ませぬが…おそらくは我が御敵大英雄ヘラクレスに比肩するかと…」

 

「そうか、大英雄の称号…その名はそれほど重いのか…っ!!」

 

 

暗に神器たる今の己ではない、ギリシャの神々ですら慄き“獅子神王”と称されたかつての自分ですら敵わないかもしれないと告げるも、サイラオーグは獰猛な笑みを覗かせ、その身体からは溢れんばかりの闘志が出ていた。レグルスはその姿に初めて会った時を思い出す。

 

 

嗚呼、それでこそだ…その姿に私は付き従おうと思った。確固たる信念を持ち、信ずる道をただひたすらに突き進む。その姿は諸人を魅了する力があり、私はその姿に……遥か懐かしき英雄(とも)の姿を見た――。

 

 

「後で我が眷属達にも伝えるが…先にお前に言っておこう。テレビ越しではあるが、俺ではあの御仁に勝つことはできない。レグルス、お前を纏い、我が眷属総出で挑もうと…かの頂には決して届かん。イカロスの如く、ただ燃え尽きるだけだ」

 

「はい。我が主の手前、言おうか悩みましたが話が早い。真のネメアの獅子(・・・・・・・・)であったかつての私なら瞬も掛からず食い殺せる貴方が、英雄に挑み負ける。それは当然の摂理です」

 

「そうだ。何一つ違いない。レグルス、俺はお前よりはるかに弱い(・・・・・・・・・・)。俺はヘラクレスのように、お前を殴り殺すことなどできないからな。俺がカルナ殿と戦えば、間違いなく負ける。それでも俺は、あの方に挑まねばならない」

 

 

拳を握り、サイラオーグは宣言する。だが突然、レグルスはそんな彼に冷ややかな視線を浴びせ、問いを投げかける。

 

 

「それは何故です?負けると分かってなお挑むのは愚者の証です」

 

学ぶ為だ(・・・・)。俺がカルナ殿に挑むのは名声でも、己の腕を試す為でもない。遥か彼方に在るそれ(・・)が、こうして目の前にいる。少しでもそこに近づけるよう…いや、俺は行かねばならないんだ」

 

 

この背中に、夢を持ってくれた者達がいる。

この姿に、憧れを抱いてくれた子供達がいる。

悲しませたくない、必ず今度こそ…その涙を、喜びの涙に変えたいと願う者がいる。

貴女が産んでくれた出来損ないの息子は、ここまで立派になったのだと、安心させたい最愛の母がいる。

 

 

言葉ではない。画面をひたむきに見る横顔がそのように語っていた。

 

 

「我が主よ、私はやはり間違っていなかった…あの日、あの瞬間感じたものは…何一つ間違っていなかった」

 

 

再び立ち上がった己が主に、ギリシャを恐怖に陥れた怪物はもう一度忠誠を誓う。

 

 

 

 

“サーヴァントゲーム”――サイラオーグ・バアル(背負う強さを持つ男)…ここに参戦決定――。

 




この作品を投稿始めたその日から書きたいと思ってたサイラオーグさんの話、ようやく辿り着いたよ…(汗

背中で語る男…かっこいいじゃない。
(まぁ戦うまではもう少しかかるんですけどね)
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