施しの英雄   作:◯のような赤子
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今回カルナさん出ません(半ギレ)

もう少しで原作に入ります。それと前回グラサンアロハが言った数年を表現する為、数話くらいカルナさんの周辺の話を書いて行きます

あと…キャラ崩壊がついに始まったぞ…ッ!!(今更ですね)


前回の質問に皆様お答えいただきありがとうございます!

みんなどんだけインド神話詳しんスか…(汗

この作品は皆様の応援とインド神話の助力で成り立ってます




破壊神という名のトリックスター

「ただいま~、帰ったよ~」

 

 

インド神話、神々が座す最奥。そこにカルナの呪いを解き、帰ったシヴァが見た目にそぐわない疲れ切った声でまるで金曜日の夜のオッサンのように缶ビールを片手に戻って来た。

 

 

「シヴァよ!貴方様は、このインド神話を纏め上げる三柱の一角であると自覚は御有りか!?」

 

 

そこへやってきたのは、若き阿修羅神族の王子マハーバリ。インドの伝統衣装であるサリーを纏い、鍛え上げられた長身とその長い黒髪を揺らし、怒号と共にシヴァの下へとやって来た。

 

 

「うわぁ、メンドクサイのに見つかったなぁ…あ、一本どう?インドラからくすねて来たけどさぁ~、良いよね日本。お酒もご飯も美味しいし」

 

 

ホイっと子供の笑顔を浮かべつつ、その行動は完全にただのオヤジと化したシヴァに、マハーバリは身体を震わせながら吼える。

 

 

「またインドラの下へ…ッ!?あれほどまでに嫌っていたあの男の下へ何故ッ!!?あの男が、我が父を殺した事をお忘れか!?」

 

 

阿修羅神族の王、つまりマハーバリの父ヴィローチャナはまだ彼が幼い頃に、インドラ(帝釈天)との戦いで命を落としている。

それだけではない、他にもアスラ族の一派、ダーナヴァの名を持つ全ての者の母であるダヌ。更には己の友でもあったナムチをヴリトラ退治と同じ方法で殺害している。阿修羅神族そのものと、インドラ個人の間にある亀裂は凄まじく深い。

 

 

「あー、あったねそんなの。でもさ、ナムチに関しては自業自得だよ。だって先に裏切ったのはナムチじゃないか」

 

 

確かにそうだ。自ら友になろうと言いながら、インドラがトヴァシュトリ神の息子である三つ頭を持つ怪物ヴィシュバルーパを殺し衰弱した際、彼にスラー酒を飲ませ、その全ての力を奪ったのはナムチだ。そこはマハーバリでも擁護のしようがない。それでも…。

 

 

「ッ納得できるか!!私の…俺から最愛の父を奪った仇と貴方は酒を酌み交わすのか!?それは我等、阿修羅神族への侮じょk――ッ!?」

 

 

唾棄すべき仇の肩を持つような言い方に、いずれは神王とまで呼ばれることになる…だが今だ若い彼は、この世界(インド)を総べる三柱の一柱を糾弾しようとするが、それ以上言葉が出ない。シヴァがマハーバリを持ってしても見えぬ速さで、いつの間にかその手にはトリシューラ(三又の槍)を握り、喉元へ突きつけていたのだ。

 

 

「お前の納得なんか知らん。我等インド神群は、しばしの間須弥山と休戦協定を交わした。すでにブラフマーとヴィシュヌにも話は通してあるんだ。もうお前みたいなガキ(・・)の我儘は通らないんだよ」

 

 

冷や汗をかきながら、マハーバリは信じられないと目を見開く。身長差で見下ろしているはずの己が、遥か上空から見降ろされているような錯覚が彼を襲う。だがそれは錯覚ですらない。

 

“破壊神シヴァ”

遥か昔、人が文明を作り出した黎明より語り継がれる最古の神々の一柱。破壊と創造、つまり宇宙の理を司る権能を持った、絶対不変のブラフマン(大宇宙の根本原理の意)

 

若き彼が噛み付くには、その存在はあまりに大きく、絶対であった。

 

 

突きつけられたトリシューラが降ろされ、マハーバリは一人膝を着き、荒々しくも短い呼吸を繰り返す。その様子を、シヴァは見下ろしながらも語り掛ける。

 

 

「あんまり後ろばかり見てんじゃねぇよ。アイツの所にいる()はいいよ?全てを背負いながらも前をしかと見据えている」

 

 

()?今この破壊神は、インドラの下に誰かいると言ったのか…?

 

 

「ハッ、ハッ…ッ!それが…貴方がインドラと約定を交わし、幾度もあの地へ赴く理由なのか…?」

 

 

衝動がマハーバリの心を襲う。

 

知りたい。この神々の頂点がそこまで肩入れし、仮にも太古の神々の王であった、あのインドラが頭を下げてまでその存在を守ろうとした者の事を…。

 

 

息を整え、己が非礼をまずは詫び、その上で彼はシヴァへ問いを投げかける。

 

 

「名はなんと…」

 

「うーん…まぁ、いずれは表に出すだろうし構わないよね?あ、でも最低でもあと四年は動いちゃ駄目だよ?僕に恥を掻かせたら、今度こそ存在した歴史もろとも世界から破壊し尽くすからね?」

 

 

まるで子供のような言動(実際見た目は14、5の少年ではある)ではあるが、その内容はすさまじく恐ろしい。だができてしまうのが、目の前の破壊神だ。

 

ゴクリと自分でも気づかず唾を飲み込み、覚悟の意を表す。

 

 

「では、阿修羅神族が王子マハーバリ。君は僕達インドが誇る叙事詩、マハーバーラタに刻まれた太陽神スーリヤの子。不運に見舞われ続け、しかし己が信念を貫き通した施しの英雄――」

 

 

 

――カルナの事を、知っているかい?――

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

マハーバリを追い返し、シヴァはとある場所へと来ていた。もとよりカルナとの約束を終えた後、すぐさまインドに帰って来たのは、他に先約があったからだ。

 

 

そこはすでにインドですらない。己が権能を用い、次元の狭間に穴を空け、自らが創造した世界へと赴いた。

 

 

「遅かったですね、もう来ないものとばかり」

 

 

本来シヴァしか入れぬ場所には、すでにその先約がいた。

 

夜空の如く、多元宇宙が互いに絡まり星の輝きを形成し、その真下には水面が星々の光を反射しながら、波の音と共に揺らめく。そのような幻想的な光景を繰り広げる砂場に置かれたビーチチェアに座る男――現冥界の政権を担う魔王の一人、アジュカ・ベルゼブブが立ち上がろうとするのをシヴァは手で制し、己もその隣に置かれた椅子に腰かける。

 

 

「いやゴメンね?若い子はいいねぇ~、もう僕にはあぁいう無鉄砲さは無いよ」

 

「あはは、そのお姿でそのような事を言われては、俺も混乱しちゃいますよ」

 

 

シヴァとアジュカ。インド神話と聖書の陣営である彼等は以前より、関係を持っていた。

 

シヴァもまた、帝釈天やギリシャ神話における冥府の王ハーデスと同じく聖書の三大勢力を悉く毛嫌いしている。と言うよりかは聖書の神を嫌っているのだ。

 

三大勢力内の戦争。あの自分勝手な二匹のドラゴンの闘争に巻き込まれ、死んだ聖書の神はその死後、己の持てる力全てを持って“神器”を人間界へとばら撒いた。その“神器”の中には聖書とは何の関係も無い、各神話においても伝説と呼べる存在を閉じ込めて…無論その中には、邪龍としてインドラが討伐したヴリトラも含まれている。彼は戦士が会得した勝者の証を奪った罪人に過ぎない。

 

 

「愚かだよねぇ…使いきれない、制御すらできない炉心を与えて…プロメテウスでさえ、使い方とその危うさを教えたと言うのに」

 

「人に知恵と火を与えたギリシャの神ですか」

 

 

何よりシヴァが気に食わないのは、戦士ですら無い者が武器を手に取れる事にしたことだ。

 

確かに人は銃を作り、それを子供でも手に入れる環境を作り上げてしまった。だがそれは神々の介入の無い、いわば人の業であり積み上げた歴史そのものである。見守る事しか許されない神々において、“神器”という武器を与えた聖書の神は、プロメテウス以上の咎を持つと言えよう。

 

 

「あ、でもヴリトラに関してはどうでもいいよ?あれはインドラが倒した、インドラの誇りだからね。ジャンジャンあのクソ坊主に関わる“神器”を探し出して、ジャンジャン人界に災厄を振り撒いてくれたまえ!その方が、僕的には面白いからさ」

 

 

ケラケラと童のような笑いをするシヴァを、アジュカはじっと見つめる。

 

【インドラ】と自ら言ってくれた。ここに来た理由を問う環境が出来たとアジュカは改めて、シヴァへと向かう。

 

 

「…失礼ながらシヴァ。俺がここに来たのはそのインドラ…帝釈天。つまり須弥山とインド神話が手を組んでいるのではと、上層部で上がったからだ」

 

 

腹を押さえ笑っていたシヴァはその動きを止め、まるで三日月のように口を引き裂き嗤う。

 

 

「へぇ、面白い仮説だね。理由は?そもそもそういうのってさ、外交を担う魔王レヴィアタンの仕事じゃないの?」

 

 

そう、こういう事は本来外交官の肩書を持つ四大魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタンの仕事だ。

 

 

「彼女では、()貴方が放つその殺気に耐えられない。何より何かあれば、足止めすることさえ…ッ!?」

 

 

咄嗟にアジュカは、己を悪魔の超越者とする能力【覇軍の方程式(カンカラー・フォーミュラ)】を展開する。何故ならこの世界を覆う夜空が一斉に、彼の下へ落ちて来た(・・・・・・・・・)からだ。

 

何とか《落下》という現象を起こす隕石群を、その能力を持ってズラそうとするが――。

 

 

(この…ッ!?何て馬鹿げた容量だよッ!!これと同量のメモリなんて、世界そのものしか知らねぇぞ…!?)

 

「はいはーい、頑張って~。ほら、アジュカ君なら足止めできるんでしょ?この僕を。ほらほら、最近ちょっと昔を思い出して(・・・・・・・)るからさぁ…――楽しませろよ」

 

 

必死に歯を食い縛りながら耐えるアジュカとは対象に、シヴァは変わらずビーチチェアに腰かけ、傍に置いてあったジュースを飲んでいた。黒いガンジス川を思わせる髪が余波で靡き、顔にかかる。その様は見る者がいれば、危ういと感じる色気を放っていた。だがそれを見る余裕は、今のアジュカにはない。

 

 

 

ようやく星々の落下という現象が終わった時には、すでに悪魔が誇る絶対の超越者、アジュカは服をボロボロに、息を絶え絶えにしていた。だがその眼に恐れはない。もとよりこの破壊神に勝てる道理すらなく、足止めさえ自分やサーゼクスの二人で何とか10分持てば良い方だと思っていたのだ。

 

 

「おぉ!生きてたの?流石僕のお気に入り(・・・・・・・)。やっぱり君とアザゼルだけは欲しいなぁ」

 

 

それは暗に、堕天使の長とも繋がりがある事を意味している。だが今のアジュカに、それを問いただす元気はないし、何より同じ悪魔でありながら、冥界から人間界へと移り住んだ最古の悪魔。【灰色の魔術師(グラウ・ツァオベラー)】という魔法使い協会の創設者メフィスト・フェレスもまた、アザゼルと個人的な付き合いがあることも知っている。

 

 

「悪いが俺は、誰かを振り回すのは好きだが、振り回されるのは嫌いなんだ。…先程の失言を取り消す。すまない。だがその上で、俺の問いに答えていただきたい」

 

「いいよー。…なんだっけ?」

 

「ッ!!……貴方と帝釈天が手を組んだかどうかだ」

 

 

どこまでこちらを馬鹿にすればと声を大にして言いそうになったが、グっと堪える。古来より神々とは気まぐれであることは知っているし、この場をおいて、次の機会はないと感じたのだ。

 

 

「あぁ、それね。分かった、じゃあ教えるよ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

――シヴァとの会談を終えたアジュカは、己の能力を使い次元の狭間に穴を空け、人間界にある己が居城。【駒王町】という場所の近くにある街に作られたビルの一室で軋みを上げる椅子に座り、乱雑に机の上に足を放り出していた。

 

 

「あぁ…クソイテェ…セラの奴覚えてろ?何が『マジカル☆レヴィアたん』の撮影があるだ…」

 

 

そう、アジュカがシヴァに言った事は半分嘘で半分本当だ。それもそうだろう。まさかテレビ撮影で、己の使命を放り出す身内の恥など外部に漏らせば、その時点で政治家として終わりだ。

 

 

(でもまぁ正解だったな。セラやファルビーじゃ、あの場で魔王が一人死んでいたとこだ)

 

 

別に彼等が弱いわけではない。【魔王】の名は伊達ではないし、彼等もその席に座るに相応しい力を持っている。だがその魔王すら超える【超越者】でこの体だ。しかもシヴァは全く本気ではなく、終始遊んでいた…まるで羽虫の足を毟り取る子供のように……。

 

だが成果はあった。

 

 

「…手は組んでない…か」

 

 

【否だよ、アジュカ君。あんな奴と手を組む?気持ち悪いよ。まぁでも惜しいかな。確かに僕達インド神話が、君達聖書の陣営を追い出したのはインドラから頼まれたからだ。ちょっと僕達にも、他人事じゃない事が起きてね。さ、ヒントはあげたんだ。その優秀な頭脳で、答え合わせの無い答えを求めたまえよ。まぁ…】

 

 

 

【――あと数年後には、全て分かるだろうけどね――】

 

 

悪魔の絶滅という危機を“悪魔の駒”で救った…悪魔側から見れば、英雄である魔王アジュカは、シヴァが揶揄したそのアザゼルに匹敵する頭脳で持って、思考する。

 

 

(数年後…インド神話と帝釈天…いや、この場合はインドラ(・・・・)が正しいか…どれだ(・・・)…?)

 

 

まずシヴァが嘘を吐いたという考えは除外する。神々は確かに気まぐれだ。だが試練を乗り越えた者には、褒美を必ず与えるのもまた神々だ。

 

 

(【ゾロアスターの経典】。【リグ=ヴェーダ】に【プラーナ】…更には【ラーマヤーナ】と【マハーバーラタ】…)

 

「あぁクソッ!全然ヒントになってねぇぞシヴァ!」

 

 

インド神話を構築する世界は、数ある神話群の中でも更に広大だ。その中で、たったあれだけのヒントで探せというのは、この天才を持ってしても砂漠の中で、砂粒程の金を探せと言われたようなものだった。

 

 

「帝釈天は…駄目だ。今の須弥山はこちらに対し、戦闘状態だとこの前セラが言ってたな…」

 

 

それに鎖国状態に等しい須弥山に対し、何を思ったのか馬鹿な上級悪魔や貴族。それに大王派の者がこちらに何か牽制できる材料をと、子飼いの悪魔や転生悪魔を解き放っていた。更にそれらを駆逐する者の中に、あの斉天大聖までもがいたと報告が上がっていたのだ。

 

 

「ホントにどうなってんだ…いつからインドは昔のような魔境に戻ったってんだ…」

 

 

完全なお手上げだと、アジュカは頭を振り…そして考えることを放棄した。

 

 

「まぁ、どうにかなるだろ。シヴァも言ってたじゃねぇか。数年後(・・・)だと」

 

 

悪魔からすれば刹那に等しい年月。何より、本気をあのインドと須弥山に出されたら、仮に自分とサーゼクスが生き残ろうとも、悪魔という種族は今度こそ滅びる。…悪魔だけではない、聖書の陣営そのものが崩壊する恐れすらあるのだ。

 

 

(それに面白いモンも手に入ったしな。何だよ、「この世界いらないからあげる」って…)

 

 

 

【君ならこの世界を好きにイジれるだろう?次来た時にはもっと面白い世界にしておいてね?】

 

 

アザゼルとアジュカは研究者だ。だが決定的な違いがあり、それは『1を2にするか』『0から1を作り出すか』。アジュカは後者であり、すでにあるものを変えろというのは彼のプライドが本来許さない。しかしいくら悪魔の超越者と言っても、【創造】の域――つまり神の領域には到底追いついていない。

 

だが確かに面白い。すでに大本があるなら、それを参考に初めから創り直すだけだ。これでまだまだ飽きない創作が出来ると、生粋の技術屋気質を見せながら、アジュカは一人ほくそ笑む。

 

 

 

「取りあえずは報告書を纏めねぇと…あぁ、あとアザゼルにも連絡取るか。何か知ってるかもしれん」

 




シヴァ「うめぇ、酒うめぇ!」クチャクチャ←右手スルメ左手ビール&徒歩で帰った


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