強化人間物語 -Boosted Man Story- 作:雑草弁士
この中隊、「オニマル・クニツナ」隊を乗せた第42独立戦隊は、サイド5暗礁宙域を航行していた。ミノフスキー粒子をばら撒きながら、そのミノフスキー粒子の領域をうっかり飛び出さない様に、ほどほどのスピードで、だ。舷側灯も消し、徹底的な隠密行動である。
当然ながら、発見されたときいつでも出撃できる様に、中隊のパイロットたちは小隊ごとのローテーションで、スクランブルに備えた戦闘待機についている。今はちょうど俺たち第1小隊の順番が終わったところで、第2小隊と交代したところだ。俺たちは右舷デッキにいるので、左舷デッキにいるユウに直接回線で引き継ぎの連絡を行う。
「それじゃあ後は頼む。万一発見されたなら、俺たちもすぐ出るが、仕留めてしまっても一向にかまわないからな。」
『……。』
「ははは、そんな事まで心配していられんし、お前ら第2小隊なら大丈夫だろ。」
『……。』
「ああ、それじゃ頼んだ。では頼んだぞ。」
次いで俺は、ブリッジに報告を入れる。
「ブリッジ、こちらMS隊1-0、ゼロ少佐。」
『こちらブリッジ、0-0です少佐。』
返答を返したのは、地上では戦闘指揮車に乗って俺たちに戦術情報を提供していた、マリー曹長だ。こちらでは改ペガサス級強襲揚陸艦ブランリヴァルのブリッジに詰めて、俺たち専属のオペレーターになっている。
「今、ユウたちと戦闘待機を交代した。これから休憩に入る。」
『了解です。あ、少佐。ブライト艦長が、お話があるそうです。休憩前に、ブリッジに上がっていただきたいのですが。』
「む?了解だ。ではレイラとブリッジに上がると伝えてくれ。以上だ。」
いったい何の用事だろうか。俺はアレックス3の機体を降りると、レイラ機の方へと移動していった。
ブリッジに上がると大型のメインモニターに、周辺宙域の宙図が映し出されているのに気づく。ブライト艦長は艦長席から立ちあがり、そのモニターを前に何か考え込んでいた。
「ブライト提督。呼び出しに応じ、出頭した。」
「ああ、ご苦労だった。だが、提督は慣れんな。艦長で頼む、ゼロ少佐。あるいは階級か。」
「わかった、艦長。ははは。」
軽い冗談を交わし、だが直後ブライト艦長は顔を引き締める。
「意見を聞きたい、ゼロ少佐。MSパイロットとしては、どう思う?これが今まで調査した宙域。ここは敵が根拠地を作る可能性としては、2番目だった場所だった。」
「俺としては、本来ここを押したかったんだがな。いざ場所がばれて戦闘になったときに、防衛戦を行うのにもっとも良い場所だ。
MS乗りとしては正直嫌な選択なんだが、少数の味方……MSを主体とした部隊を足止めに置いて、時間稼ぎさせるのに最も適している。残存兵力を脱出させるためにな。」
「ふむ……。と言う事は、奴らはその選択肢を選ばなかった、と言う事だな。ミーラ、次を頼む。」
ブライト艦長は、オペレーターに命じて次の宙図を表示させる。それは未だ未調査の領域であった。
「今まで調査した領域をAとする。で、次に俺はこちらのB領域の調査を押したいと思うんだ。」
「む……。それは……。あ、いや、確率としてはC領域よりも高いのは認める。B領域は、まず地球や月、ソロモン……じゃなかったコンペイトウだ、それとア・バオア・クーから発見されない事を主眼とした場合、最も適した場所だ。代わりに出撃や逃亡が難しくなるが。
しかしそこを先に調査した場合、もしもC領域に敵本拠地があって、俺たちが発見されてしまった場合、まずい事になる。」
「なるほど……。そうなった場合、調査結果を味方に通信する事もできずに、多勢に無勢で袋小路に追い詰められてしまうか。
先にC領域を調査、その次にB領域を調査すれば危険は減るな……。敵の根拠地を発見した後であれば、見つかっても全力で逃げてしまえば良いわけだ。しかし時間がかかるか……。」
「俺もC領域は無いとは思うんだが……。こちらは、連邦軍に見つかった時の事など考えずに戦力を放出するには良い環境なんだが……。」
簡単に言えばB領域は、デブリがごちゃごちゃ浮いていてヤバい宙域。掃除しないとあぶなくて航宙できたもんじゃない。やつらが『茨の園』作ってるなら、通り道は掃除してるだろうけどな。
で、C領域は可能性としては3番目だった場所、デブリが薄い宙域だ。ここは無い、と思う。だが裏をかいて、とかあるかも……。無いとは思うんだが。
「……時間がかかっても、堅実な方針を取るか、当たる確率は高いが、危険も見込まれる方を選択するか。いや、だが……。」
「……。」
「いや、時間がかかればそれだけ、こちらも敵に発見される可能性が高くなる。B宙域の調査を行いたい。どうか?」
俺はにやりと笑みを浮かべ、首肯する。
「最初に言ったろう?そちらの指示には従うと。そう言う時は、きちんと命令してくれ。示しがつかん。」
「くくく、済まんなゼロ少佐。では……。我々は、これよりB宙域の調査を行う!」
「了解!」
徐にブライト艦長は、艦長席に着く。そしてマイクを握ると声を張り上げた。
「観測班!デブリに注意せよ!全艦、艦がデブリ回避のため、急激な機動を行う可能性が高い!各員突発的なGに注意せよ!
更に敵に遭遇する可能性が、これまで以上に強くなる!各砲座要員は自分の持ち場でスタンバっておけ!」
おお、名言。なんか感動だな、「スタンバっておけ!」を目の前で聞けるとは。
「わざわざ来てもらって済まなかった。参考になったよ。ではゆっくり休んでくれ。」
「ああ。パイロットは休む事も仕事のうち、だからな。行こうレイラ。」
「はい、ゼロ少佐。では失礼します。」
しかし「スタンバっておけ!」はいいんだが、「なにやってんの!」はあまり聞きたくないな。聞く機会が無いといいんだが……。
私室へ戻る途中、レイラが唸る。
「うーん、やっぱり駄目ね、わたしだと。敵集団、敵本拠地の気配を感じようとやってみたんだけれど……。」
「ちょ。」
俺は慌てる。
「まてまてまて!それはやめてくれ!」
「え、どうして?」
「あ、いかん。マリオンにも言うの忘れてた!いや、ニュータイプ能力者同士だと、「見られてる」事を感知したりする場合があるんだ。事実、アムロ・レイ士官候補生は、曹長時代にララァ・スンの意識を感知してたりする。
万が一、やつらの中にニュータイプ能力者やその素質を持った者がいた場合……。気付かれる恐れがある。」
「ご、ごめんなさい!」
「いや、言わなかった俺が悪い。済まない……。」
実は俺は、できるだけ無意識に感知しようとしない様に、出来る限り意識して「精神の手」を四方に伸ばさない様に努力していたりする。少なくとも、感知範囲を意図して狭める事には成功しているんだが……。
しかし、他のニュータイプ能力者に、それを警告するのをスカッと忘れていた。俺は、うっかり八兵衛か。まったく……。
で、マリオンに連絡を取ったところ、彼女の方はソレを理解していて出来るだけ感覚を絞っていたらしい。一安心。だけどレイラがまたしょんぼりしてしまった。なんとか慰めないと……。
それと、まず心配はいらないと思うが……。ニュータイプ能力に目覚め始めたと思しきウェンディ伍長とブリジット伍長……。あいつらにこんな注意すると、余計に能力に集中させてしまって、うっかりをやらかすかも知れんしなあ。今は奴らのニュータイプ能力については、触れんでおこうと思う。
で、とりあえず私室で休憩。身体をベッドに括り付けて、0Gで宙に浮かばない様にして、休む。ときどき、と言うか、しょっちゅう艦がグラリと揺れて、とんでもない方向にGがかかる。細かくデブリを回避してるんだな。
そんでもって、今なんだが……。頭が割れる様に痛い。いや、短時間なら痛みを精神から切り離す技術は身に着けたんだよ?だけどさ、短時間だからね。いざ戦闘と言う時に、ハイ時間切れ、じゃあ困る。痛みのせいで、隙ができて撃墜されました、じゃあ物凄く困るんです。だから普通の時には、黙って痛みに耐えてますよ。
レイラには黙ってたんだけど、怒られた。つらい時は頼ってくれと。で、今なんだが、俺の額にのっけた保冷剤が温くなったんで、取り換えてくれてる。んー、頭は割れる様に痛いが、なんかいいなあ、こういうの……。
「!!」
「!?」
誰だ!?見ている!
「ゼロ、今の感覚って!」
「誰かが見ていた!くっ……。」
俺は痛みを精神から無理矢理切り離し、端末に飛びついた。そしてブリッジに連絡を入れる。
「ブリッジ!こちらゼロ少佐だ!ブライト艦長に伝えるんだ!待機中の第2小隊に出撃命令を出す様にって!それと第1、第3、第4も順次出撃する!」
『こちらブリッジ、0-0です!了解しましたが、第2に関しては既に発艦中です!ユウ中尉が出撃許可を求めてきました!マリオン軍曹が、なんか見られたって……。ブライト艦長は今……。』
『こちらブライトだ。ゼロ少佐、敵だな?最速で発艦してくれ。ただし、ノーマルスーツは着るんだぞ?どこかの誰かみたいに、制服のまま乗らんでくれ。』
「ゼロ少佐、了解!」
急ぎ頭の保冷材を剥がし、磁力靴になっているブーツを履く。俺は叫んだ。
「レイラ、行こう!」
「ええ!!」
俺たちは、大急ぎで右舷のデッキへと向かった。
アレックス3は、右舷デッキのカタパルトで宇宙空間へ射出された。凄まじいGで、身体がシートに押し付けられる。ユウの第2小隊は、既に敵を発見し、戦闘中だ。ブランリヴァルは全力でミノフスキー粒子をばら撒き、全力で通信妨害を行い、敵が本部に報告するのを妨げている。
ちろっと後方を見遣ると、レイラ機、ィユハン曹長機が俺に続き出撃して来る。更にキプロスⅡ、グレーデンⅡの2隻のサラミス改からは、第3、第4小隊のMSが次々に発進した。
「ユウ!報告しろ!」
『ザッザッ……!!……ザザザッ!』
「了解!なら俺たちは、敵艦を沈める!第3は第2の支援、第4はついてこい!」
ミノフスキー粒子の影響で、ひどく通信にノイズが混ざる。俺はスラスター全開で、アレックス3を飛翔させた。いた……。チベ、いやティベだ。ティベ級重巡1隻に、ムサイ後期型3隻。MSは全て発艦させている模様だ。
「俺とレイラでティベを!残り任せた!」
『了かザザザッ!!』
『了解!!ザッ……。』
『ザザッう解ですっ!!』
レイラをティベの船底部に回らせ、俺は上側から攻撃を開始した。ビームライフルの着弾が、一撃、二撃、三撃……。そのとき、俺の心に声が響いて来た。
(うわああぁぁっ!!や、やめろおおぉぉ!!)
(貴様かっ!俺たちを見ていたのは!何故、なぜデラーズに力を貸している!)
(だ、誰だ!?俺の頭が変になったのか!?確かになんか、女が男を看病してたり、パイロット用ノーマルスーツの男女が笑いあってるのが見えたり……。で、デラーズ閣下?)
ち、まさか目覚めたばかりで、無意識にこっちを見ていたのか?しかしそれなら、上に報告していない可能性が高いな。
(デラーズ閣下はえらい人だ!あのひとに、あの方に、従っていれば間違いは無い!きっとギレン閣下の理想を、スペースノイドの自治独立を成し遂げてくれるさ!)
(きさま、切れたぞ俺は。自国民の数倍はいたスペースノイドを虐殺しておいて、スペースノイドの代表の様な顔をするな!スペースノイドの裏切り者のくせに!)
(お、お前、まさかこの声は!?連邦軍の!?うわ、ぎゃ、ぎゃあああぁぁぁ!!)
俺は思念の来る方向に向け、ビームライフルを撃った。断末魔の絶叫が聞こえ、敵艦のブリッジは吹き飛ぶ。そしてレイラが動力を破壊した様だ。俺とレイラが離脱した直後、ティベ級重巡は爆発を起こし、火球になった。
『ゼロ少ザザッ今のは……。』
「ギレン信者で、デラーズの部下だったよ。まず間違いない、ここサイド5暗礁宙域にいるのはデラーズだ。デラーズ・フリートだ。」
見ると、ムサイ艦も次々と爆炎を上げて沈んでいく。ィユハン曹長も、第4小隊の連中も、ちゃんと万が一の脱出艇になりそうなコムサイ破壊してるな。……あとは残されたMS隊だ。万が一にも逃がしてはならない。
アレックス3は、第2、第3小隊が相手をしている、残った敵MSに向けて飛んだ。レイラ機が後を追って来る。既に残っているのはMS-21Cドラッツェが2個小隊6機だ。アレックス3のビームライフルが、レイラ機のビームランチャーが、それぞれ1機ずつのドラッツェを爆散させる。パイロットたちの断末魔が聞こえた……。
ブライト艦長に、聞こえた物を報告した。無論、ニュータイプ能力による感覚、ニュータイプ能力による会話内容など、そんな超能力じみたものは何の証拠にもなりはしない。なりはしないが、ブライト艦長なら参考ぐらいにはするだろう。
「うむ……。アムロと同等の力を持っているのか……。凄いな。」
「いや、アムロ候補生の方が、素質的には高いと思うぞ。」
「で、だ。デラーズの名前が出たんだな?」
「ああ。」
黙考するブライト艦長を見遣りつつ、俺も考え込む。なんとかデラーズの名前を、音声データか何かで手に入れる方法は無いものか。と、徐にブライト艦長は大モニターに映し出された宙域図を見上げ、艦長席へ戻ると手元の入力装置で何か描き始めた。
やがて彼は顔を上げる。そして徐に頷いた。
「MSの記録装置が故障していた事でいいさ。なんなら今から壊す。敵が死に際にデラーズの名を叫んだとでも報告するさ。」
「うわ。本気か艦長?」
「本気だ。俺はアムロを間近で見て来たんだ。信じるさ。それと、その情報はかならず持って帰りたい。調査を早く終わらせるため、いちかばちかやってみたい事ができた。
……MS隊の、「オニマル・クニツナ」隊の力を貸してくれ。いや、こういう時は命令するんだったな。力を貸せ。ゼロ少佐にはキツいかも知れんが、な。」
その口調に、俺は飲まれた。一瞬だけ戸惑い、そして力強く頷く。
「ああ、自由に使ってくれ。」
俺はその言葉を、後からちょっとだけ後悔する事になる。
と言うわけで、ちょっとだけ後悔した。
「この任務、ゼロ少佐は駄目だ。もし万一の際、少佐にはMS隊の指揮を執ってもらいたい。同じ理由で、副官のレイラ少尉も駄目だ。彼女がいなければ、ゼロ少佐の手足がもがれたも同然だと言うのは、ここしばらくで理解できている。」
「……ぐうの音も出ないな、艦長。」
「できれば、各小隊長も避けてもらいたい。その他の一般部隊員から1人、適格者を選んでほしい。」
「……推進剤の増槽を付けたMSで、単独偵察か。俺が行きたかったな。いや、駄目なのは理解している。」
この任務、ニュータイプ能力を持つパイロットも避けたいな。敵にニュータイプ能力者がいるとは限らんが、いた場合に感知されるかも知れん。マリオン、ウェンディ伍長、ブリジット伍長が外れる。残るはィユハン曹長、コーリー軍曹、アンドルー軍曹、ダミアン曹長だ。
……ダミアン曹長は駄目だ。殺気を隠すのが、まだ上手くない。ニュータイプ能力者に感知される確率は、ニュータイプ能力者に次いで高い。残るは3人……。誰がいい?操縦能力にも、戦闘能力にも、状況判断にも優れる者……。
「マリー曹長。……コーリー軍曹を呼んでくれ。」
「了解です、少佐。」
しばし待って、コーリー軍曹がブリッジに現れる。彼女は敬礼をしてきたので、俺たちも答礼を行う。
「コーリー軍曹、この宙域図を見てくれ。」
「はっ!」
「ブライト艦長、作戦の説明をお願いします。」
「ああ。この宙域図でちょうどこの赤丸で囲まれたあたり、このあたりに敵が……。エギーユ・デラーズ率いるジオン残党の大規模拠点があると考えられる。お前には増槽をつけたMSで、単独でここに潜入し、独力で証拠写真を撮影し、自力で気付かれずに脱出してきてもらう。」
吹いた。吹き出したよこの娘。いや気持ちはわかる。俺はブライト艦長の言葉を捕捉した。
「見つかる可能性は、ごく低いと見ている。敵拠点がここにあると言う根拠は、周辺のミノフスキー粒子濃度だ。周辺を哨戒している艦隊がばら撒いたにしては、濃すぎる。
逆に言えば、MS程度ならばこっそり近寄って、ひっそり写真を取って、ちょろちょろと逃げ出すぐらいはできると見た。あまりにミノフスキー粒子が濃いからな。」
「は、は、はあ……。で、ですがわたし程度の技量では!」
「お前の技量は確かだ。まわりの隊員が、俺を含め化け物だらけなだけでな。……お前をこの作戦に推したのは、俺だ。俺が保証してやる。お前ならできる。
と言うか、お前以外適任がいない。命令する、やれ。」
俺の言葉に、コーリー軍曹は唾を飲み込んだ。ああ、恨むなら恨んでくれていい。だが、志願の強制みたいなマネはしたくない。アレは駄目だ。なんか良い気持ちがしない。責任の所在は、上官に無きゃいけない。
「……了解です!」
「……。」
済まん、と言いかけて思いとどまった。
「そのかわり、戻って来たらアーヴィン君とお友達になれる様に、協力してください!」
「……。」
馬鹿野郎、と言いかけて思いとどまった。思いとどまらなくても、良かったかも知れない。
今の時代、電磁妨害に強いフィルム式のカメラは貴重なのだが、それを持たせてやった。そして、帰ってくるのをひたすら待ち続けた。……つらい。自分で行く方が、何倍もマシだ。やれやれ、この世界に来て最初は、あれだけ死んだり傷付いたりがイヤだったのにな。いや、今でも死にたくはないが。死んだらレイラが泣くし。
執務室で書類仕事をしていたが、一向に進まない。悶々として、その気持ちが鬱々になりかけたところで、右手が柔らかい物に包まれた。レイラの手だった。……少しだけ、心が軽くなった気がした。
「……こんな事なら、アイザックの補給をなんとしても成功させるんだったなあ。」
「アイザック?」
「ルナ2に、試作機があったはずなんだ。ハイザックをベースにした、早期警戒機だよ。ジオンのザク強行偵察型や、ザク・フリッパーにも採用された、カメラガンの最新改良型を装備してる。その上、レドームを背負っててセンサー性能は抜群だ。おまけにミノフスキー粒子を独力で広域散布可能なんだよ。
アレをこの隊に、一時的にでもいいから配備できてれば……。いや、ザク・フリッパーの鹵獲機、いやザク強行偵察型の鹵獲機でもいい。一時的でいいから配備できてればな。コーリー軍曹を、それに乗せてやったのに。そうすれば、安全率は桁外れに高まった。」
レイラはそっと、俺の頭を抱きしめる。後頭部に、小ぶりな2つの山が、その、当たってるんですが。
「大丈夫、ちゃんと戻って来てくれるわ。今は彼女を信じて、待ちましょう。」
「あ、はぃ……。じゃない、ああ、了解だ。」
俺の顔はたぶん今、真っ赤だろうな。そう思ったその時、端末から呼び出し音が響いた。
結論から言って、コーリー軍曹は無事に戻って来た。とんでもない情報を手に入れて。
やはり『茨の園』……もう、『茨の園』と言ってしまうが、それは想定した宙域にあった。しかし、核パルスエンジン付き。構造がもろいから、全部は無理だと思うが……。中枢部は、場所を移動できるのか、アレ!?
いや、大事なのはそこじゃなかった。一番大事な情報、それは……。『茨の園』の宇宙港から、小艦隊が出港する写真だった。……マゼラン改1隻、サラミス改2隻、コロンブス改2隻の計5隻。
鹵獲艦じゃない。新品の新造艦だった。
『茨の園』を探してたら、とんでもない物を見つけてしまったー、どうしようー。
はたして、なんであんな物が敵拠点から出て来たんでしょうねー。
いやはや、はてさて。この情報、どうなることやら。