強化人間物語 -Boosted Man Story-   作:雑草弁士

28 / 54
帰還と、そして……

 第42独立戦隊は、既に旧サイド5暗礁空域を脱していた。しかしまだ、帰還の途にはついていなかったのだが。改ペガサス級強襲揚陸艦1隻、サラミス改級巡洋艦2隻、ネルソン級MS軽空母1隻からなるこの小艦隊が何をしていたかと言うと、ある別の小艦隊を追跡していたのだ。

 その小艦隊は、マゼラン改級戦艦1隻、サラミス改級巡洋艦2隻、コロンブス改級輸送/補給艦2隻の計5隻と言う構成。どう見ても連邦軍の艦艇なのだが、これがジオン残党の拠点、暫定名称『茨の園』の宇宙港から堂々と出て来たのだ。

 その事を含めた、『茨の園』関連の情報は既に全て、レーザー通信でルナ2司令、ヴォルフガング・ワッケイン中佐に送ってある。ワッケイン司令はすぐに、これらをレビル将軍に転送してくれると言っていた。これもコーリー軍曹が、頑張って撮影してきてくれたおかげだな。

 

「しかし、良くやってくれた、コーリー軍曹。」

「はっ!ありがとうございます部隊長。」

「だけどアーヴィンと友達になるのを協力するのは、アーヴィンにお前と仲良くしてやってくれって頼む程度ならいいけど、デートのセッティングとかはしないからな。」

「えぇー……。」

 

 この娘は……。アーヴィンが絡むと、何故ぽんこつになるのだろうか。いや、ジオンへの復讐心で歪んだ心根を持たれるよりかは、ずっと良いけれど。

 今俺、レイラ、コーリー軍曹の3人は、第42独立戦隊旗艦ブランリヴァルのブリッジにいる。いちおう今すぐにでも出撃できる様に、パイロット用ノーマルスーツは着ている。だがおそらく、MS隊である「オニマル・クニツナ」隊出撃の必要は無いと予想されるため、俺たち3人はアドバイザーとしてブリッジに詰めているのだ。

 俺はMS隊部隊長として。レイラは俺の副官として。そしてコーリー軍曹は、『茨の園』近傍に単独潜入し、その位置情報や構造に関する情報、そして何よりあの怪しさ大爆発している小艦隊の第1発見者として。

 

「歯痒いな。これ以上速度を上げると、ミノフスキー粒子散布域から飛び出してしまう。」

「何、向こうもミノフスキー粒子をばら撒きながら航宙している。離される事はまず無いさ。」

「だが、超望遠での肉眼やカメラでの監視域、ぎりぎりだ。幸い、改ペガサス級の望遠レンズはマゼラン改、サラミス改、コロンブス改のそれらを大きく性能面で突き放しているから、見つからずに見張っていられるが……。」

 

 苛立つブライト艦長を宥めつつも、実は俺も内心では不安と言うか無念さがつのっているのだが。おそらくレビル将軍は、『茨の園』の位置情報がつかめ次第、可能な限り早く『茨の園』攻略作戦を発動するつもりだったはずだ。だが、あれが内通者の艦であった場合……その可能性は極めて高いのだが、作戦は延期か、場合によっては中止せざるを得ない。

 いっその事、あれが何処からか横流しされたか鹵獲されたか、あるいは設計図を盗まれて建造された艦艇であればいいと思う。いや、その場合でも内通者のいる疑いは残るんだが。だけど、あの艦がそう言った類であって、連邦軍を装ってなんらかの悪事を働こう、と言う策であるならば、奴らがそれを行う直前に撃破してしまえばいいのだ。

 俺は内心の落胆を押し殺しつつ、ブライト艦長に聞いてみる。

 

「……艦長、なんでそこまで焦っている?」

「いや、な。もし俺の予想が当たっていれば……。」

「ブライト艦長!観測班より、この宙域に集結しつつある他の小艦隊を複数発見したと!」

「やはりか!」

 

 なるほど、そう言う事か!俺は舌打ちを、ぎりぎりで堪える。コーリー軍曹が、慌てた。

 

「部隊長!MSデッキに急……がないんですか?ふ、副官?レイラ少尉?」

「敵艦だったらね。だけど違うのよ。あれらは味方艦よ。」

 

 レイラの言う通りだ。あれらは味方の哨戒艦隊だ、くそったれ!

 

「観測班より報告!集結しつつある小艦隊は、連邦宇宙軍の哨戒艦隊です!……目標の小艦隊も、それらに合流しました!……望遠レンズおよびパッシヴセンサーでは、これ以上個々の艦を識別不能です。艦長、アクティブセンサーの使用許可は……。」

「アクティブセンサー、レーダー、どれも許可できるものか!」

「くそ、この宙域って事は、ア・バオア・クーか?それとも月面グラナダ基地の哨戒艦隊か?」

「おそらくア・バオア・クーです、少佐。こっちのミノフスキー粒子散布が濃すぎて、向こうが発信してるであろう識別信号は受信できませんが、艦隊の進行方向から見て……。」

 

 オペレーターが、説明してくれる。ア・バオア・クーか……。あちこちの派閥がぐちゃぐちゃに入り乱れてるところだな。ウチのレビル将軍派閥からも入ってる。教導隊で小隊長やってるロン・コウ中尉なんかは、かつてレビル将軍直卒部隊での、俺の同僚だ。

 コーリー軍曹は、まだよく理解できていない様子だ。レイラがそのコーリー軍曹に、説明している。

 

「あの小艦隊のほとんどは、今回の件にまったく関係ないのよ。あちらこちらの方面に送り込まれてパトロールしてるだけの、ただの哨戒艦隊。そのうちの1個艦隊が、本来の任務を外れて敵と通じていた……。」

「付け加えて言えば、ア・バオア・クーはあちこちの派閥、大から小まで色々なところがしのぎ削ってる場所だ。さっきの小艦隊が、どこの派閥に属している、どこの誰かを特定するのは、今手に入ってるデータからじゃ判別が難しいな……。」

「そんな!なんでそんな、味方の足を引っ張る様な事を!」

 

 コーリー軍曹が、悲痛な声を上げる。彼女にとって、連邦軍は正義の味方であって欲しいのだろう。いや、そうあって欲しかったのだろう、と言い直そう。それからしても、彼女が目の当たりにしたマゼラン改以下の艦艇の姿は、彼女にショックを与えていたはずだ。それでもきちんと写真を撮ってきて帰って来てくれた。

 俺は、吐き捨てる様な口調で言う。

 

「文字通り、足を引っ張りたいのさ。残党相手に、連邦の勝利は動かないと甘く見てるんだろう。だったら自分の派閥のために、相手の足を引っ張るために、敵にすら協力する。

 ……何考えてやがる。敵の勝利条件と、こっちの勝利条件は違うかもしれんのに。相手が先に勝利条件を満たしたら……。それに、仮にこっちが最終的に勝利するとして、それまでに出る被害を、死者を、増やしてどうするんだ!」

「……ルナ2に帰還する。」

 

 ブライト艦長が、怒りを押し殺した平板な声で、命令を下す。第42独立戦隊は、「オニマル・クニツナ」隊は、任務を100%以上、120……いや、150%ぐらいは達成して帰還する。だがこの場にいる誰も、達成感を感じる事はできなかった。

 おそらく『茨の園』攻略作戦は、延期か中止になる。俺たちの小さな勝利によって、より大きな戦略的敗北を喫している事が判明してしまったのだ。……判明せずに無理攻めして、大失敗するよりかは何倍もいい、と思うしかないな。

 俺たちは、ブリッジを退出して右舷デッキへ戻る。コーリー軍曹は、第2小隊だから左舷デッキだ。別れ道に来る途中で、彼女は今にも死ぬんじゃないかと言うような顔で、悄然としていた。俺のニュータイプ感覚でも、彼女が落ち込んでいるのははっきりと分かった。くっそ、頭痛ぇ。いや、物理的に。レイラが慰めようと声をかける。

 

「コー……。」

「アーヴィン君……。ぐすっ。」

 

 おい、コーリー軍曹。今眺めてるロケットの中に入ってるアーヴィンの写真、いつ撮った。

 

 

 

 ジャブローとつながったレーザー通信で、俺とブライト艦長はレビル将軍と話をしていた。通信室は薄暗い。その薄暗さが、俺たち3人の気持ちを表している様で、なんとなく嫌だった。

 映像の中のレビル将軍は、呟くように言う。

 

『先に送られてきた報告は読んだ。やはり、「旧サイド5暗礁空域におけるジオン残党ゲリラ殲滅作戦」は……。秘匿コード、「『茨の園』攻略作戦」は延期、いや……。いったん中止するしかあるまい。

 もし万一、作戦内容がデラーズ側に漏れていた場合……。作戦が失敗すれば、他の派閥……我々以外の最大派閥である、コリニー中将たちは、そこを突いて来る事間違いない。いや、それ以前に将兵の命を、作戦が漏れているのに強行し、すり減らす事などあってはならないのだ。そして調査に時間が経てば、周囲の戦略環境も変わってしまう。延期では無く、中止するしか無いな。』

「将軍……。諜報部は何と?」

『今、必死で調べておるそうだ。敵だけでなく、味方まで調べねばならんとはな。憲兵隊本部も協力してくれるそうだ。だが……。

 そちらから送られてきたデータの条件に一致する哨戒艦隊は5つ。それぞれが別個の、大小の派閥に属しておる。……わたしの派閥に属する哨戒艦隊もあったな。それが今回の、敵と通じていた小艦隊でない事を、切に願うが……。』

 

 レビル将軍の派閥は大きい。末端が、勝手な動きをする事が無いとは言い切れない。しかし派閥の基本方針に逆らう動きをする者はいるのだろうか。特に今回、まだ内々ではあったがほぼ決定していた作戦の邪魔をするなど……。いないとは言い切れない、今の連邦軍の状況に、腹が立つ。

 ブライト艦長が、質問をした。

 

「ところで、今後我々は如何に行動すればよろしいのでしょうか?先ほど聞かされた当初の予定では、我々が攻略作戦の先鋒に立つ事になっていた様ですが。」

『うむ……。作戦が中止になる以上、別の任務にあたってもらう事になるのは当然なのだがな。それについては検討中だ。いや、任務が無いのではない。逆なのだよ。ありすぎて、どれに貴官らを充てれば良いか難しくてな。』

「「は、はあ……。」」

 

 俺とブライト艦長の、唖然とした声が被った。

 

『あちらこちらから、優秀なMS部隊を派遣してくれ、優秀なMS部隊を含む戦隊を回してくれと言われておってな。困っておるのだよ。手元にも戦力を残しておきたいしな。

 とりあえず、君たちは厳しい任務を完了したばかりだ。手元に残す戦力に入れておくので、1週間は休暇と訓練に充ててくれたまえ。

 それと、第42独立戦隊だが、本来のMS隊は復帰の目途が立っておらん。隊長陣も失われておるのでな、最低でも再編成と再訓練が完了するまで、「オニマル・クニツナ」隊を貸しておく。こちらも任務や作戦を考える上で、セットとして考える事にする。』

「「了解しました!」」

『うむ。ではまた連絡する。それではな。』

 

 モニター画面のレビル将軍と、敬礼と答礼を交わし、通信は終わった。

 

 

 

 俺とレイラは、フラナガン機関救出組の子供たちに会いに来ていた。いつ彼らとクスコ・アル軍曹が、ロンデニオン・コロニーに移るかもわからん。そうしたら、会う機会が減るかも知れん。会える内は、できるだけ会っておこう。

 ちなみにコーリー軍曹とアンドルー軍曹は、今日も来ている。この2人は、部隊の他の面々に比べ、来る率が異様に高い。やれやれ。

 アーヴィンは最初コーリー軍曹を怖がっていたが、害は無いと理解すると普通に接する様になった。でも俺とレイラは、コーリー軍曹とアーヴィンを2人きりにするな、と他の子供たちに頼んであるんだが。その事を、コーリー軍曹は知らない。

 アンドルー軍曹は、彼は彼でクスコ軍曹に夢中な様だ。ただクスコ軍曹の方は、迷惑とまでは思っていないが同時に、眼中に無いと言うか、何と言うか、「お友達でいましょう」的な……。鈍いわけではない。強力なニュータイプ能力者だし。だが、嫌いでは無いがあまり好みでは無い模様。アンドルー軍曹……。

 

「どうしたの?」

「いや、アンドルー軍曹が哀れで。」

「ああ……。でも、だからと言ってクスコに好きになってやれと言うわけにも行かないし……。」

「わかってるさ。ほれ。」

 

 俺は自分の皿から、自分のスプーンでアイスクリームをひとさじ取って、レイラの方に突き出してやる。レイラは最初目を丸くしていたが、ぱくりとそれを食べた。俺は直前でスプーンを引き戻す様な意地悪はせんのだ。うん。……レイラの顔が赤い。彼女は笑いながら言う。

 

「この子たちの前で、何をするのよ。」

「不味かったか?」

「美味しかったけど……。お返しよ。」

 

 レイラも、自分のアイスクリームをひとさじ差し出して来る。同じ品で何をやってるんだと言われるかも知れんが、それはまあ、そう言う物だと。いただきます。……うん、美味い。

 

「……赤くならないわね。」

「大丈夫だ、耳を見ろ。」

「あ、真っ赤になってる。」

「ふっ、俺に死角はない。」

「何言ってるのよ、ふふふ。」

「ふふふは良いんだけれど、この子たち真似してるんだけど。」

 

 クスコ軍曹の声に周囲を見回せば、子供たちがアイスクリームを食べさせ合いっこしている。大半は、ただ真似をしているだけだったが、年齢が比較的高く、子供たちのリーダー格をやっているハリー、ケイコ、ジェシーの3人は、真面目に本当の意味で真似をしているみたいである。

 ……ハリー、両手に花。うん、頑張れ。お話では両手に花とかハーレムとか羨ましがられるが、現実にはキビシいぞ。俺?俺は器が小さい人間なんでな。1人でせいいっぱい。だからこの1人を、自分の限界まで、めいっぱい愛するぞ。うん。照れるなあ。

 ……。

 …………。

 ………………。

 ……コーリー軍曹、アーヴィンと食べさせ合いっこして、顔がぐにゃぐにゃに蕩けてる。普通にしてれば、凛々しいお姉さんキャラなのに。

 

 

 

 今日も俺たち「オニマル・クニツナ」隊は、ルナ2近傍宙域にて、実機演習を繰り返していた。だが今日の訓練は、いつもと少し趣が違う。俺とレイラ、マリオンがチームとなって、ブリジット伍長とウェンディ伍長のペアを相手取っていたのだ。

 ちなみに残りの面々の訓練は、ユウに頼んである。ユウは俺が何をやりたいのかを無言で察し、快く残りの部隊員の訓練を引き受けてくれた。……ちょっと見てみたが、俺より厳しくないかアレは。

 

『くうっ!や、やっぱり無茶で…!す、よっ!』

『あきゃー!うわきゃー!あうー!』

「無茶なのはわかってる。だが、お前たちに素質があると思ったから、可能な限りそれを高めるためにやってるんだ。」

 

 ちくしょう、頭が頭痛で痛い。やっぱりサイコミュ無いと、共感して共振現象を起こすのは無理かな?あれが起きれば、一発でニュータイプ能力の才能を目覚めさせられるんだが。ぶっちゃけ、今のままだと能力のコントロールが効かない。先日の様な任務の時、能力のコントロールが効かないで、敵に探知されるのは避けたいのだ。

 実際いたしなあ。覚醒したばっかりで能力コントロールできず、うっかり「視て」しまったのを俺たちに気付かれた、敵のニュータイプ能力者が。

 

「だが、2人ともこちらの攻撃を、ぎりぎりで避けはするんだよな。」

『確かに。ですが、試しに殺気を消して撃つと、面白い様に2人ともあたってくれるんですよ。特にウェンディ伍長。』

『手加減してるとは言っても……。これほど避けられるとは。明らかに、わたしたちの殺気を感じて避けてます。』

「……エルメスが、欲しいな。最低2機鹵獲機があったはずだが、しかしどちらも解析に回されて、バラされてるからなあ。」

 

 レイラが自信なさげに言う。

 

『ダメ元で、申請してみたらどうでしょうか。連邦軍の開発部は、ニュータイプ研の協力なしでサイコミュ機の解析を行っています。少しでもデータが欲しいはず。わたしたちが協力する事で……。駄目、でしょうか。』

「レビル将軍を通じて、申請、してみるか……。だが通る可能性は……。」

 

 

 

 通った。

 

 

 

 翌々日のこと。装甲があちこち外され、そこに大掛かりな追加装置が括り付けられているエルメスのコクピットで、俺はサイコミュの制御に集中していた。脳が痛い。激しく負担がかかっている。このエルメスは、ルナ2基地で分解、解析されていたレイラ機を、急遽組み立てて、今までの解析結果の成果である補助機器を無理矢理取り付けたものだ。

 ちなみに、一番最初に鹵獲したララァ機は……。行方不明だ。いや、あの手この手を使ってコリニー派閥が持って行って、事故で損失した事にしやがったのだ。責任?トカゲの尻尾切りで、適当な奴が処分されて終わり。ちくしょう。

 だがそれが嘘である「らしい」事、ニュータイプ研に運び込まれた「らしい」事が諜報部の調べでわかっている。決定打は無いが。まあ、それがあったからレイラ機はジャブローに送らず、ルナ2で調べていたんだがな。

 ブリジット伍長、ウェンディ伍長のハイザック・カスタムが、こちらを狙っている。悪いな、狙いが甘い上に殺気を消し切れていない。簡単に「わかる」ぞ。

 エルメスを上昇させ、模擬戦用のレーザーを躱す。そしてビット12基を制御し、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ……。

 

『すごいわ……ですね。わたしは1基しか制御できない上、それもろくに動かせなかったんですが。』

『わたしも6基のビットが精一杯だったわ。その場合、本体までは制御できなかったし。』

 

 すまん、応答してる余裕が無いんだレイラ、マリオン軍曹。ウェンディ、ブリジット、両伍長の機体を撃破判定。さて、頼まれた「実験」の半分は終了、と。ビットを収納する。ふう、疲れた。頭痛がする。頭が割れる。いでででで、いだだだだ。

 

(んじゃ、残り半分の実験、開始するぞー。)

((了解。))

 

 まあ、ビットの制御はすさまじくつらかったけど、念話を送るのはサイコミュの助けがあった方が楽だな。次はサイコミュの助けがあれば、意図的にニュータイプ能力者間で、共振現象が起こせるか、だ。おそらくかなり負担がかかる事が予想されるため、今日の訓練と実験はこれで終わりだ。

 俺はおそらく俺が一番共感しやすいであろう人物……。レイラ・レイモンド少尉さんに精神を集中する。そして……。あっさりと共振現象は起きた。

 

 

 

 俺たちは、俺たちの機体を俯瞰する状態で、宇宙空間に浮かんで眺めていた。

 

(レイラ……。)

(ゼロ!?これが……貴方の言っていた事なの?)

(ああ。……っと、ほら。あいつらも来た。)

 

 マリオン軍曹と、ブリジット伍長、ウェンディ伍長の精神体が、この宇宙空間に投影されてくる。

 

(成功したんですね、少佐。)

(え、え、えええっ!?何が起きてるんですか!?)

(あ、わたし1周して何か冷静になっちゃいましたー。)

(ソレは現実逃避だ。)

 

 とりあえず俺は、手短に何が起きているかをブリジット伍長とウェンディ伍長に話した。

 

(わたしたちが……。ニュータイプ、なんですか!?)

(ブリジット、話をよく聞こう?ニュータイプは、宇宙時代に即した新しい考え方ができる人間。わたしたちは、単にニュータイプ能力を持ってるだけかも知れないよ。新しい考え方、できてる?)

(う゛……。)

(……1周どころか2、3周まわってホントに冷静になりやがったな。)

 

 どうやら、補助機器に搭載されたリミッターが、ちゃんと働いてるみたいだな。共振の焦点になってるのは、前回と同じく俺だ。だがここはルナ2近傍、下手にルナ2全体の潜在的能力者を叩き起こしでもしたら、俺、また倒れるだろ。だから、この訓練宙域だけを対象にできる様に、リミッターが付いているのだ。

 俺は、こいつらを含めた全員、レイラとマリオンにも、前回ソロモン宙域で全ニュータイプ能力者に見せた映像を見せてやった。

 

(……ひどい。)

(こんな未来が?)

(嘘、でしょう?)

(嘘だと言ってよ少佐!)

 

 ガンダム世界でその台詞は、シャレにならんからやめなさい。って言うか、その台詞がフラグだったら俺、死ぬじゃん。ミンチよりひどい状態で。

 

(今は、嘘になった。色々頑張ったからな。未来は随分変わったはずだぞ。)

(そ、そうなんですね……。よかった……。)

(うん。もっとひどい事になる可能性だって、まだあるんだ。)

((((え゛。))))

 

 俺は、遠くに見える地球を見遣る。

 

(今、人類は疲弊している。それなのに、まだ戦いをやめられないでいる。なんとかしようと焦ってるんだけれど、俺個人では、その道筋すら見つけられない。だから、大勢仲間が必要なんだ。ニュータイプ能力者も、そうでない者も。)

(手伝うわ。いえ、最初からそう言っていたでしょ?)

 

 最初に言ってくれたのは、やはりレイラだった。次にマリオン軍曹が。

 

(わたしも……ユウも手伝ってくれると言っています。)

 

 ユウはニュータイプ能力者じゃないし、今「ここ」に来てもいないんだけど、何かしら通じ合ってるのね。……いい事だと思うよ。うん。

 

(わたしも頑張って、手伝います!)

(わたしも!いえ、今までも頑張ってたつもりですが、もっともっと頑張ります!お手伝いします!)

 

 ブリジット、ウェンディ両伍長も叫ぶ。俺は徐に言った。

 

(……ありがとう。さて、そろそろ時間切れ、かな?)

((((えっ……。))))

 

 俺の意識は、またもやストンと暗闇の中に落ちて行った。

 

 

 

 俺はベッドの上で呻く。

 

「う~……。頭が割れる……。」

「半日、意識不明だったのよ?ほんとに心配したんだから……。」

 

 レイラが泣き晴らした真っ赤な目で、文句を言う。ごめん。ほんと、ごめん。と言うかそこの技術屋。リミッターは?

 

「すいません、調べたらリミッターが焼き切れてまして。ゼロ少佐の能力に、耐えきれなかったのではないかと。おそらく少佐と同等以上の能力を持つと言われるアムロ・レイやララァ・スンでも、同じ現象が起こるかと。

 おそらく、ビット12基とエルメス本体を同時制御した時点の事だと思われます。」

「……んじゃ、ルナ2の人間を巻き込まなかったのは、俺が自分で能力を制御しただけかよ。」

「まず、おそらく……。し、しかし今回おかげ様で貴重なデータが取れました!このデータで、連邦版サイコミュがきっと!!強化人間である少佐にも、ほとんど負担をかけないシステムを!!」

 

 この研究員、流石に俺が強化人間である事、知ってんのか。ここで、レイラが怒った。レイラの剣幕に、俺も研究員も謝るしかない。

 

「でも、こんな実験はもう駄目!禁止ですからね!絶対駄目!!」

「「はい、ごめんなさい……。」」

 

 ……レイラは気付いてるかわからんが、彼女のニュータイプ能力はやはり共振現象によって、拡張された気配がある。今怒られた時、同時に思念が俺の頭の中に響き渡ったんだ。その強さは、今までの比じゃ無かった。俺の能力も、彼女ほどの伸び幅は無かっただけで、けっこう伸びたんじゃないかと思う。アムロと互角ぐらい、行ったかな?

 けど、それ故に……。いや、それ以前に連邦版サイコミュ、強化人間にも優しいシステム……。そのデータは、絶対にニュータイプ研には渡せないな。ニュータイプ研がもしも後ろ暗い事をやっていなくとも、ジャミトフたちには渡せない。後でユウにでも、レビル将軍への連絡を頼もう。

 

 

 

 ……ブライト艦長の方がいいか。ユウじゃ、まだレビル将軍とは話が通じないからな。




さて、前回の最後に出て来た小艦隊の正体は、だいたいわかりました。ただし根っ子を捕まえる事はできませんでしたが。もっとがんばれ、諜報部。もっとがんばれ、憲兵隊本部。
そして、主人公は部下2人を完全に覚醒させるため、ちょっとした挑戦をば。……で、また倒れました。余禄として、レイラや自分、たぶんマリオンもでしょうが、能力的に拡張された予感がひしひしと。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。