強化人間物語 -Boosted Man Story-   作:雑草弁士

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来る新人、去るミチル

 宇宙世紀0081、12月。いろいろドタバタしているうちに、年末だ。補充兵は、まだ来ない。人事課で、人事課長が収賄容疑で逮捕されたのだ。捕まえたのは憲兵隊本部、レビル派の身内だし、正当な理由があるだけに怒ることもできん。ただ、早急に新たな人事課長が配されて問題は全てクリアになったので、そろそろ新兵の方はやって来るはずだ。

 問題は、ツァリアーノ大佐に頼んでいる熟練兵の方だ。どうも、なかなか適した人材がつかまらないらしい。年が明けてすぐ、例の核兵器移送作戦が発動するらしいので、それまでに幾らか余裕をもって、補充兵が到着して欲しいと思う。

 

「やれやれ、アレックス2機が先に直ってしまうとは思わなかったな。」

「そうですね、少佐……。」

 

 先の強化人間相手の戦いで中破した、俺のアレックス3、ユウのアレックス2だが、ルナ2内の工廠で修理が行われて、綺麗に直って艦に戻って来た。今、両機とも搬入が行われているところだ。俺たちはそれを監督している。ウィリアム整備長が大声で怒鳴っているのが見えた。

 ちなみにアレックス以外のハイザック・カスタムは全機、既に修理が終わっている。今まで実機演習は、俺とユウはハイザック・カスタムの予備機を使ってやっていた。それでも他の部隊員に負けないのは、自画自賛すべきか、部隊員が不甲斐ないと怒るべきか。

 ここだけの話、レイラ相手に苦戦したのは秘密。だってさー、レイラは俺の癖とかぜんぶ身近で見て知ってるし。ニュータイプ能力も強くなってるし。俺は全力が出せない機体だし。レイラ自身、そろそろハイザック・カスタムで間に合わなくなってきてるほどだし。

 ん?誰かがこっちを窺ってる気配がする。あ、こっち来た。

 

「あ、あの……。申し訳ありません、少佐殿、少尉殿。」

「何か?伍長」

「は!じ、自分はこの度レビル将軍直下のツァリアーノ連隊第01独立中隊「オニマル・クニツナ」隊に配属になりました、イェルド・ショールバリ伍長であります!「オニマル・クニツナ」隊部隊長、ゼロ・ムラサメ少佐殿とお見受けしましたが、間違いありませんでしょうか!」

 

 あーあー、こいつガチガチに緊張してるよ。しかしこいつが、イェルド伍長か。ようやく来てくれたか、助かったな。この大荷物って事は、今ルナ2に到着したばかりか?俺とレイラは、敬礼してくるイェルド伍長に答礼を返す。

 

「ああ、間違いない。俺がゼロ少佐、こちらが副官のレイラ・レイモンド少尉だ。

 ……そう緊張するな、伍長。来てくれて感謝する。」

「はっ!た、ただいまシャトル、ツレタカ・マルにてルナ2へ到着いたしました!着任を申請いたします!」

「うむ、着任を許可する。歓迎する、伍長。ホレ、向こうに見えるサラミス改級巡洋艦キプロスⅡに、お前が所属する第3小隊が乗っている。あれが、これからお前の母艦だ。あの艦に行って、出入り口で立哨している兵に、第3小隊小隊長のフィリップ・ヒューズ中尉に連絡を取ってもらえ。」

「はっ!ありがとうございます!で、では失礼します!」

 

 イェルド伍長は、どたばたと言う感じでキプロスⅡの方へ走り去って行った。結局最後まで緊張の抜けなかったイェルド伍長に、俺もレイラも思わず微笑が零れる。ただなあ……。もう少し気を抜く方法を覚えないと、これから先、つらいぞー。

 

 

 

 手錠と足かせで繋がれた、10~11歳程度の東洋系、黒髪黒眼の少女が、俺の目の前に立っている。正直やりきれないんだが、この措置は彼女自身が望んだ事だ。

 

「ミチル、元気でな。」

「へんな物、食べちゃだめよ?それから、ご飯の前にはきちんと手を洗うのよ?それから……。」

「彼女さん、そこまで言われなくても大丈夫。安心して。プロト・ゼロ、お世話になったわね。あと、わたしを捕虜にした優男さんたちにも、よろしくね。」

「ユウたちの第2小隊だな?わかった。」

「それじゃ。」

 

 ミチルは、女性兵2名に付き添われて部屋を出て行く。彼女はこれから心理ブロック、精神操作などの影響排除を始め、強化人間の副作用の治療の可能性を探るために、ジャブロー基地内の新生ニュータイプ研へと赴くのだ。

 その後に付き従う様に、男性の兵士2名が担架をかついで部屋を出る。担架には同じく手錠に足かせを付けられた10~11歳に見える赤髪の少年が載せられていた。今彼の目は閉じられていて見えないが、瞳は青いはずだった。MM-010……仮の戸籍名、エドムントだ。

 MM-010は、常に反抗的であり、かつ暴れたり、かと思えば何かに非常に怯え、何をするかわからない状況であった。彼も治療の可能性を探るためにニュータイプ研へ赴くのだが、その様な状態であったため、やむなく鎮静剤、睡眠薬を投与して意識を奪って搬送する事となっている。敵対した相手とは言え、哀れだった。

 

 

 

 第4小隊はまだ定員割れしているが、とにかくイェルド伍長を使えるようにしなくてはならない。さっそく実機演習を組んだ。とにかく絞れるだけ絞ってやる。あと俺とユウは、直ったばかりのアレックスのならし運転もある。

 フィリップ中尉の怒声が響く。イェルド伍長がフォーメーションを崩したのだ。

 

『イェルド伍長!動きが鈍いぞ!フォーメーションを崩すんじゃねぇよ!』

『りょ、了解です!』

『口で言う前に、実際にやってみせろい!俺の指示を、聞き逃すなよ!』

 

 そして、イェルド伍長は徹底的に絞られた。いや、最初は俺が小隊VS小隊の模擬戦で絞ってやろうかと考えてたんだ。だけど今日はフィリップ中尉の指導する、第3小隊単体での機動訓練で終わってしまった。いや、他の小隊はきっちり模擬戦やったよ?

 そしてルナ2に帰って来たとき、フィリップ中尉がイェルド伍長にちょっとした説教?をしているのを見かけた。その内容は、こうだ。

 

「よう!イェルド!今日はすまんかったなあ!ちょっと言い過ぎた!」

「え……。ちゅ、中尉、そんな事は……。」

「だがなあ。言い過ぎたけど、言い過ぎじゃない。矛盾してる様だがな。」

「え……?え、え……と?」

 

 フィリップ中尉の言葉に、イェルド伍長は目を白黒させる。フィリップ中尉は笑顔で、しかし目はかけらも笑っていない顔で続ける。

 

「なあ……。宇宙では……。戦場では……。何が起こっても不思議じゃない。俺は以前、第11独立機械化混成部隊、通称モルモット隊に居たんだ。一年戦争のときだな。毎日毎日、戦友の誰かが死んだり、もう2度とMSに乗れない重傷になって後送されたり、大変だった……。」

「……。」

「訓練は、自分を裏切らないって言うけどな。結局それも程度問題なんだよな。どんなに訓練しても、死ぬときゃ死ぬ。怪我するときゃ怪我する。実際、お前来る前に第4小隊にいたパイロット、凄腕だったんだが……。訓練も欠かさなかったんだが……。二度とMSに乗れない身体になって、後送された。

 だけどな、死なないために俺たちMSパイロットが出来る事って言ったら、訓練しかねえ。万全の訓練、万全の整備、万全の戦術、そしてひとかけらの幸運。それだけだ。お前だけじゃねえ。お前がヘマすりゃ、仲間も死ぬ。仲間が死にゃ、小隊がやられ、小隊がやられりゃ中隊が潰れる。」

 

 フィリップ中尉は、懇々と言い聞かせる。イェルド伍長は必死な顔つきで聞き入っていた。

 

「俺が見るに、お前はいつも少しだけ余裕を残し過ぎてる。いや、実戦ならかまわねえ。いざと言う時のための余裕残しとかなきゃ、何か起きた時に対処できんしな。だけど、お前訓練で上手くやろうとし過ぎて、力を絞り尽してねえだろ。訓練なんだから、地力を養う場なんだから、限界まで出し切っていいんだ。失敗してもいいからよ。

 なあ、もう1歩、踏み込んでみねえか?まずはもう1歩でいいんだ。どうだ?全力振り絞るの、怖えか?」

「は、はい!あ、いいえ!全力、振り絞ります!!」

「よおっし!んじゃ、今日は俺のおごりだ!飲みにいくぜえ!」

「え゛、じ、自分未成年……。」

「かまわん、かまわん!行くぞ!」

 

 ……さすがフィリップ中尉だな。ああ言うところは、俺にもユウにもクリス少尉にも真似が出来ない。と言うか、ユウはともかく俺は中隊長で少佐だ。できる様にならんといかんなあ。俺も、がんばろ。俺はその場をこそこそと離れるのだった。

 

 

 

 次の日も、猛訓練。今日もフィリップ中尉の怒声が飛んだが、イェルド伍長も、その怒声に凹む様な事はなく、必死に全力を振り絞っていた。前日の訓練であった、上手く無難にこなそうと言うところは多少影を潜め、代わりに限界に挑もうと言う気概が見て取れたのだ。

 おかげで訓練時間の後半からは、模擬戦の訓練に入れた。今の俺に出来る事は、徹底的に叩きのめし、その都度悪いところを指摘してやるぐらいしか無い。そしてイェルド伍長は、最初は何の特色も無い新兵でしか無かったが、今は良い意味で特色のない、万能型のMSパイロットに成長しつつある。って言うか、フィリップ中尉の動きとか参考にして機動してるよな、こいつ。

 そして俺たちは、訓練を終えてルナ2へ戻って来た。さすがに2日連続で猛訓練したから、明日は1日オフの予定だ。俺はレイラを連れて、PXへと向かう。途中で、思い切り伸びをして、首を回して凝りをほぐす。

 

 

 

 事件が起きたのは、その時だった。

 

 

 

 突然、俺たちの頭の中に悲痛な声が響いた。

 

(たすけて!プロト・ゼロ!彼女さん!死にたくない、しにたくないよ!!)

 

 俺は凍り付いた。次の瞬間、慌てて念話の元をたどり、返答を必死で送る。必死にならなければ届かないほど、遠くだったからだ。ここルナ2から通常航行で3日近い、地球近傍の宙域。レイラも必死で念を送っている。

 

(何があった!?ミチル、何があった!?)

(ミチル!!どうしたの!?わたしたち、何をすれば助けられる!?)

 

 念話を送って来たのは、ミチルだった。

 

(痛い、頭、割れちゃうよ!吐き気がする、全部吐いちゃって、胃液も出ないのに、吐き気がするよ!めまいが!世界が回る!立ってられないのに、倒れたのに、まだ回るの!死ねって、マコーマック博士が死ねって!)

(マコーマック博士!?そこにいるのか!?)

(いない、いないけど!あたまがわれる!船員が!この船の船員、アルマン・バウス少尉!レコーダーを!食事の受け渡し口から!いたい、いたい、せかいがまわる!マコーマック博士の声が!MM-008、機密保持のため、死ね、って!!)

 

 何が起こったかは分かった。船員であるアルマン・バウス少尉が裏切り者だったんだろう。そいつが、マコーマック博士の声を録音したレコーダーを、ミチルの部屋に放り込んだんだ。MM-008、機密保持のため、死ね、と録音されたそれを。

 

(しにたくないよ!命令に、したがわないから、頭が割れそうに痛い!しんじゃうよ!しにたいくらい、いたいよ!でも死にたくないよ!死なないと、痛いんだよ!いたい、はきそう、吐くもの無いのに!)

(ミチル!ゼロ、どうにかする事は……。)

(……ミチル、少しだけ耐えろ!今、助けてやる!)

(死んじゃう、死んじゃうよ!たすけて!た、すけて!!)

 

 俺は、とある可能性を思い付いた。ルナ2の廊下を、移動用のバーを掴み、高速で異動する。あとからレイラも付いてくるのがわかる。俺は、ジャブローから来ていたレビル将軍配下のニュータイプ研究室、今は新生ニュータイプ研究所の研究員である、スティーヴ・ランプリング研究員の部屋に飛び込んだ。

 

「わ!?ぜ、ゼロ少佐!?」

「緊急だ!今動かせるサイコミュはあるか!?」

「え、あ。ありますけど……。」

「何処だ!?」

「え、ニュータイプ研で借り受けてる、第3倉庫……。」

 

 俺はスティーヴ研究員の襟首を掴むと、その部屋を飛び出した。慌ててレイラも付いて来る。

 

「ちょ、苦しいです少佐!」

「すまん、急ぎなんだ!」

「あー、もうどうにでもしてください!」

「ごめんなさい!ゼロ、何をする気!?」

 

 俺は第3倉庫に飛び込むと、スティーヴ研究員を放す。げほげほと苦しい息の研究員に、俺は叫んだ。

 

「どれだ!」

「あれです。」

「よりによって、あれか!ええい、かまわん!」

 

 スティーヴ研究員が指差した改造エルメスのコクピットに、俺は飛び込む。レイラが悲鳴をあげた。

 

「ゼロ!また倒れちゃうわ!?」

「だが、これしか可能性は無い!せいぜい倒れて2~3日意識不明になるだけだ!だけどやらないと、ミチルは死ぬんだ!」

「!!……わかった。わたしも手伝うわ。何をすればいいかしら。」

 

 今も脳裏に、ミチルの悲鳴は響いている。俺は少し考え、レイラに頼んだ。

 

「じゃあ、いっしょにコクピットに入って、俺の手を握っててくれ。俺が「巻き込む」から、そのまま手伝ってくれ。」

「わかったわ。」

 

 レイラがコクピットに飛び込んで来る。改造エルメスの核融合炉は停止していたので、外部に繋がれた電源装置から電力を取って、サイコミュに火を入れた。そして俺は一気に念を飛ばす。はるか彼方へと。

 

 

 

 俺とレイラは、生身で宇宙空間を疾走……飛翔していた。無論、投影された意識体での話だ。彼方にミチルのシャトルが見える。俺たちはシャトルに意識を飛び込ませた。

 ひどい。それが第一印象だ。ミチルは汚物にまみれ、七転八倒している。大気圏突入間際で忙しく、誰もミチルの苦境に気付いていない。そしてミチルの周囲に絡みついた、どす黒い思念の触手が、ミチルを絞め殺そうとしているのが感じられる。

 

(マコーマック博士、か。奴の殖え込んだ、精神操作や心理ブロック、それに強化人間の副作用を増幅させる処置の具象化だ。)

(これをどうにかすれば……。)

(前もあったんだ。あるニュータイプ能力者の男に絡みついていた、老害の怨念を、叩き壊した事がある。)

 

 俺は軍用の制式コンバットナイフ……攻撃する意志の具象化を抜き放ち、触手に斬り付ける。刃が欠けた。

 

(駄目だ!俺の、俺だけの力じゃこれを壊せない!)

(わたしも手伝う!)

(いや、2人でも駄目だ……。そうだ、俺たちの肉体は、今ルナ2の中にある。もう一度、あの離れ業を……。やれるか?)

(何をするの?わたしにも手伝わせて!)

(嫌だと言っても、手伝ってもらうさ。サイコミュが1基じゃ、俺だけじゃ手に余る。)

 

 そして俺とレイラは共振し、意志力をまとめて周囲に呼び掛けた。

 

(この声が聞こえるやつ!誰でもいい!俺たちに力を貸してくれ!)

(これを見て!こんな小さな女の子が、操り人形にされたあげく殺されそうになってるの!こんなひどい事、ゆるしちゃいけないわ!)

(頼む!俺たちに力を貸してくれ!おねがいだ!)

 

 ルナ2周辺にいた、ニュータイプ能力者の素質があった者たち全てが、その声を聞き、無惨なミチルの状況を見せられた。

 

(な、なんだこれは!)

(ひどい……。だめよ、こんなの!)

(力を貸せ、だと?どうすれば良いのかね?)

 

 様々な思念が語り掛けて来る。俺たちの声が届いた全員が、応えてくれた。奇跡だろうか。いや、もしかしてヒトは、分かりあえるのかも知れない。真の意味で。そんなに簡単な事じゃないだろうさ。でも、希望はいつもあるんだ。そう思いたい。

 

(あれを、あの女の子を縛り付けてる、黒い触手を、ブッチ切りたいと全力で念じてくれ!俺たちがその思念を束ねる!)

((((((((((((応!))))))))))))

 

 無数の念が、俺たちに流れ込んで来る。俺とレイラは、それを束ねて黒い触手にぶつけた。

 

(!!……ゼロ、こんな苦痛をあなた、耐えていたの!?)

(しまった……。今の状態じゃ、レイラにも流れちまうのか……。大丈夫、俺は随分慣れた。それに、短時間だったら精神から切り離せるし……。)

(……ゼロ、わたし改めて誓う。あなたを治してみせる。)

(ありがとう……。)

 

 レイラが、俺から流れる苦痛を堪えているのがわかる。すまん。だけど今は、ミチルをなんとかしなきゃな。

 

(すごい……。あの黒い触手が簡単に壊れていく……。)

(いや、まだまだ。綺麗に取り除かないとな。……よ、し。こ、これで終わり、だ。)

(ゼロ!?ゼロ!!)

(あ、だめだ。)

 

 また俺の意識は、ブツンと切れて暗闇に落ちた。

 

 

 

 俺はまた、2日ばかり意識不明だったらしい。レイラは今度は泣かなかったが、それでも一生懸命看病してくれたようだ。彼女も半日意識が無かったと言うのにな。で、スティーヴ研究員は、あまりの貴重なデータに大喜びで、どっか逝っちゃってた。

 驚くべきことに、スティーヴ研究員も弱いがニュータイプ能力に覚醒していたりする。そういや、あのとき応えてくれた声に、スティーヴ研究員の声もあったな。彼も3時間ばかり昏倒していたそうである。

 俺が意識不明の間に、レイラがユウやマリオン軍曹、ブライト艦長らと協力して、書類とかレビル将軍に報告とか、やってくれた模様。まず大気圏突入してジャブローに到着したシャトルから、半死半生のミチルが救出されて病院施設に運ばれた。またシャトルの機関員アルマン・バウス少尉が憲兵隊に逮捕される。バウス少尉は、薬物により洗脳されていた疑いが濃いらしい。

 残念ながらMM-010、戸籍名エドムントは死亡が確認された。彼は命令に抵抗などせずに、マコーマック博士の声を聞いた瞬間、舌を噛んだ模様だった。あまりに哀れな、強化人間の少年の死だった。

 レビル将軍は、即座にあの瞬間に倒れたルナ2およびルナ2近傍の宇宙空間にいた艦船の乗員を緊急で呼び集め、保護下に置く。実は以前、ソロモン宙域で覚醒したニュータイプ能力者も、今現在レビル将軍の配下になっているか、保護下にあったりするのだ。レビル将軍は保護下に置いた彼らに、レーザー通信回線で直接話をし、懇々と協力を要請したそうだ。彼らはレビル将軍のレビル派への協力を、確約してくれたらしい。

 

 

 

 そして、俺がひっくり返っている間に、実は驚くべきことがあった。まずクリス少尉の昇進だ。以前からそろそろ良いのでは、と言う話が出ていたので、上のOKが出て昇進が決まったそうだ。と言うわけで、クリス少尉はいつの間にか中尉になっていた。いや、これは驚くべき事じゃない。驚くべきことは、この次だ。

 

「少佐がお休みの間に配属されてきた、第4小隊のヤザン・ゲーブル少尉であります!はっはあ、聞いていたよりも、ヤワなんですかな少佐ぁ!?」

「……なんなら、ひとつ格闘訓練の申請でもしてみるか?」

「……やめときましょう。俺の勘は、あんたにゃ逆立ちしても勝てないと言ってる。」

「いい線まで行くと思うんだがな?」

「クックック……。」

 

 ニヤリと笑う、ヤザン少尉。しかしなあ……。

 

「お前さん、なんで少尉だ?たしか以前、俺がこの隊を結成する際に、可能ならお前を引っ張れないかと調べたら、中尉だったぞ?それにお前の功績なら、そろそろ大尉になってても全然おかしくない。」

「気に入らん上官を殴り飛ばしましてな。格闘訓練の申請をしてからやるんでしたなあ。失敗しましたよ。ククク。」

「そうか……。」

 

 そんな経歴なら、今回の連邦軍をクリーン化する事を旗印にしたティターンズには、引っ張られまい。うん。戦力的には申し分ないんだが……。

 ……クリス中尉、がんばれ。




と言うわけで、ミチルはなんとか無事です。無事じゃないのはクリスチーナ・マッケンジー女史。ヤザンを部下に置いて、いったいどうなることやら!
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