強化人間物語 -Boosted Man Story-   作:雑草弁士

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宇宙世紀のニンジャたち

 月面グラナダ基地宇宙港で、俺たち「オニマル・クニツナ」大隊は旗艦ブランリヴァルからアーロン・アボット少佐と諜報部員7名の、計8名を下艦させた。彼らと俺たちとでは帰還する時期が違うので、とりあえずはこれでお別れになる。だからと言ってほっとできないのが、このアボット少佐なのだが。

 

「ゼロ中佐、中佐たちはあらかじめ予定されていた通りに、実弾演習を行ってください。それから先は、我々の仕事です。ただ……。」

「ただ?」

 

 まあ、何を心配しているかは分からんでもないんだけどね。

 

「ブレックス少将自身が暴発するとは思えません。ですが、彼の意図を読み違えた側近や、末端の者の暴走暴発、あるいは月面に拠点を持つまったくの別派閥や、それこそジオン残党の襲撃すらもあり得ないわけでは無いのです。注意してください。」

「わかってる。だからこそ、「実弾演習」にしたんだろう?いざと言う時、即座に戦闘行動に移れる様に。」

「ええ。それでは。」

 

 敬礼と答礼を交わし、アボット少佐たちは下艦していった。俺とレイラはそれを見送る。あれ?ああ、いたいた。

 

「どうしたんですか?」

「ああ、いや。アボット少佐がいつの間にか1人になった気がしてな。なんのことは無い、残り7名は周囲に気配を溶け込ませて、認識しづらくしてただけだったよ。その上で、確実にアボット少佐を護れる位置に……。

 あいつらがもしパイロットだったら、ニュータイプのほとんどや、エースの半数ぐらいに対して優位に立てるんじゃないかな。」

 

 まあ、ヤザンみたいな動物的カンのタイプ相手には勝てんだろうが。

 

「ニンジャですか……。」

「ああ、それそれ。」

 

 昔ながらのアナログな方法って、ソレかい。俺は苦笑を漏らしつつ、レイラを促して踵を返し、艦内に戻って行った。

 

 

 

 グラナダ基地近傍の、何もない岩ばかりの平原に設えられた、旧ジオン軍の演習場……。そこは戦後グラナダ基地諸共に連邦軍に接収され、連邦軍の演習場となっている。今日やるのは実弾演習だから、やる事は単純。標的を撃ったり、標的機を撃ったりするのだ。我々の艦隊も、後方で見学している。

 そしてヤザンがぶーたれる。

 

『中佐ぁー。コレ、面白くねえぞー。』

「どうした?」

『いや、な。ラムサスやダンケルレベルの奴らには必要な訓練だと思うんだがよ……。実弾を使っての感覚を覚えさせるか、再確認させるためにな。

 だがよ、実弾演習だから、逆に対戦相手にあてるわけにゃ、いかんだろ。必然的に対戦しての訓練は無しで、オートで動く標的機か、あるいは固定の標的を叩く訓練になっちまう。俺、クワトロ大尉、ユウ大尉、レイヤー大尉、シロッコ大尉、勿論中佐も入ってるが、そのレベルだと各々満点を叩き出して、それ以上がねえ。

 つまんねーよー。』

 

 見ると、通信ウィンドウの中のシロッコとかの顔が確かに面白くないとばかりに頷いていた。クワトロ大尉もだ。だよなー、コイツらニュータイプ能力だけに頼っちゃいない。ニュータイプ能力で感じ取れないはずの自動機械の標的を完璧に叩き落とし、満点の連打を出してやがる。

 今ヤザンが感じた、と言うよりも気取ったのは、ヤザンが今さっき列挙したエースあるいはニュータイプ能力者の放つプレッシャーか。それで対戦が出来なくて、プレッシャーの持ち主と戦ってみたい誘惑に負け、文句を言いに来た、と。仕方ねえなあ……。

 

「あー、クワトロ大尉、シロッコ大尉。済まないが2人で、1対1対1の三つ巴戦で、ヤザンの相手をしてくれないか?ビームサーベルと実弾兵器は禁止、ビームライフルは弱装モードに変更して。」

 

 俺はため息混じりに言った。クワトロ大尉とシロッコはにやりと不敵に笑うが、それでも微妙に同情の視線を送って来る。何故ってコイツらは、部隊運営の経験があるからだ。いやヤザンも一応小隊長だった期間は少ないながらあるし、俺の隊で中尉に返り咲いて小隊長に任命されてるから、わかってくれてもいいハズなんだが。

 ほら、ユウとレイヤー大尉まで、同情の視線を送ってきやがる。うん、何故かって言うと、弱装ビームでもまともに命中すると、装甲が痛むからだ。一応最近の塗装には、若干の……ほんとに若干ながらの対ビーム効果があるんだが。しかし弱装じゃなく通常出力だと、ボウワ社のジムⅡ用標準ビームライフルでも……。いや、一年戦争時のジム用ビームスプレーガンでも、直撃すればあっと言う間に塗装が揮発して、撃破まちがいなしだ。

 塗装には、その程度の対ビーム処理しか無いんだ。弱装ビームでも命中すりゃ、最低で塗装やり直し、酷けりゃ装甲交換の必要があるんだよ。

 

「書類が増える……な。」

『……。……。』

『中佐。お気持ちは理解できますが……。』

「ユウもレイヤー大尉も、何も言わなくてもいい。許可を出したのは俺だからな。それより2人は、クワトロ大尉の隊とシロッコ大尉の隊、それぞれの面倒を見てやってくれるか?」

『了解しました。』

『……。』

 

 あー、事務方に怒られるなー。余計な予算使ったって。そう、俺が一番上だから、俺が怒られるのだ。まあ、仕方ないけど。当然だし。

 

『まあ、仕方ないですよ。一緒に怒られましょう?』

「済まんな、レイラ……。」

 

 こんなことなら、ビームライフル他の火器に取り付ける、模擬戦用低出力レーザー発振器、持ってくるんだった。全天スクリーンの一部にウィンドウが開き、ヤザン、クワトロ大尉、シロッコの三つ巴戦の様子が映し出される。派手にやってやがる……。

 ヤザン機、赤紫のガルバルディβがその高機動性を活かし、障害物の大岩から大岩へとその陰を移動しつつ、弱装ビームを撃つ。だがクワトロ機の赤いアレックス5も最高速度では譲るが細かい機動性では負けていない。すいすいとビームを躱す。そこへシロッコの青紫のアレックス4が割って入る。ビームライフルを連射し、クワトロ大尉がヤザンの射撃を避けた先を狙って撃ち、ヤザン機が岩陰から飛び出す瞬間を狙い撃つ。

 

『墜ちろ!蚊トンボ!!』

『冗談ではない!』

『ええい!』

 

 クワトロ大尉もヤザンも、シールドで受けた。避けられなかったか。ヤザン機、クワトロ機共にシールドをその場に放棄して全力で機動回避に移る。シールドが破壊された、と言う設定なのだ。

 ふむ。3人の中では、シロッコが流石に首一つ抜け出している感じだな。シロッコのアレックス4は、シロッコが自分で手を加えた機体だ。バイオセンサーの試作型……まだ安定性に難があるらしいが、それが搭載されているとシロッコ本人が言っていただけある。まあ、未だ実験装備でしかなく、いつ焼き切れてもおかしくない装備だとも言っていたが。

 だがクワトロ大尉もなかなかだ。ぎりぎりでヤザン、シロッコの射撃を躱し、的確に反撃のビームを撃ち込んでいる。ニュータイプ能力が無い分、つらいのはヤザンだな。けれどそれでも被弾を最低限に抑え、2人に食い下がっている。他の2人との間に差があるとは言っても、いつでもひっくり返りかねない差でしかない。

 あ、ひっくり返った。

 

『……ぬかった、か。動きが、見えなかった、だと?』

『驚きだな。あのような凡百の機体で……。読めなかったのは、試作バイオセンサーのトラブルなのか?』

 

 ヤザン、じり貧だと見たか賭けに出たんだよな。普通、その手の賭けは失敗に終わるが、今回は功を奏したな。ヤザン機は唯一アレックスに勝る高機動力を活かし、クワトロ機とシロッコ機の間をきりもみしながらすり抜けてカっ飛んで、その際にビームライフルを両機に向けて連射したんだ。

 クワトロ、シロッコ両機はヤザンの射撃はぎりぎりで回避したが、ヤザン機とその射撃に気を取られている間に、クワトロ機はシロッコ機の、シロッコ機はクワトロ機の射撃を胴体の真ん中に受けて撃墜判定が下った。

 

「シロッコ、読めなかったのは試作バイオセンサー関係じゃないから安心しろ。クワトロ大尉も、あまり落ち込むな。ヤザンが無意識にまき散らしてた、オールドタイプはオールドタイプなりの超エース級が放つプレッシャー……。それを読むのに気を取られて、お前らの中でその他の事を読むのが2の次、3の次になっただけだ。

 ニュータイプの能力を持つって言ったって、それが全てを解決してくれるわけじゃない。人間の、生物としての限界は厳然としてそこにあるんだ。1人じゃあ、あれを読むのは無理だな。

 俺も戦いの中でではなく、傍から見ていて、しかもレイラといつの間にか無意識に共振して意識が拡大してなかったら、分からなかった。」

『て、照れるわね……。いえ、照れますね。』

 

 いや、複数のニュータイプ能力者が協調すれば、その力は相乗的に高まるからな。カミーユ・ビダンが死者の魂に導かれ、Ζガンダムのバイオセンサーがその力を束ねた様に。

 

『なるほど……。わたしもまだまだ、学ばねばならない事がある様だ。フム……彼の専用機、作ってみたい物だな。』

『信じ難い男だな、ヤザン・ゲーブル中尉……。まさに野獣か……。』

「いいからお前ら、ヤザンのガルバルディβ、掘り出すの手伝え。」

 

 うん、ヤザン機はクワトロ大尉とシロッコの相打ちを誘発するという大金星の後、柔らかい地面に頭から突っ込んで動かなくなった。俺の人工ニュータイプ感覚によると、気を失っている様だな。ガルバルディβの犬神家状態。

 その後、3機のアレックスで、なんとかヤザンのガルバルディβを掘り出しましたとさ。幸いなことに、機体の頭部中心に上半身が傷だらけではあったが、大きな損傷は無い模様。ああ、助かった。これなら……。

 

 

 

 これなら、引き続きの戦闘にも充分耐えられる。

 

 

 

「おい、起きろヤザン!」

『ぐ、ぶっ!?ぐ、あ、頭が、脳が痛ぇ。』

「おい、しっかりしろ!「オニマル・クニツナ」大隊、全機戦闘準備!弱装ビームにしている者は、標準出力に早急に戻せ!」

『『『『『『了解!!』』』』』』

『……!!』

 

 俺の精神から放たれた意志力のパルスに、ヤザンはとっさに反応し、目を覚ました。シロッコはシロッコで、機体OSのオマケ機能で、メモ帳アプリケーションを開き、今しがた検出された様々なデータを記録してたりする。

 

「ブライト艦長!全艦隊、急ぎ後退して戦闘空域から退避するんだ!戦闘終了を確認したら、迎えに来てくれ!」

『了解した。一時グラナダに退避する。それとブランリヴァルの観測機能を使って、超遠距離の静止画映像だがそちらに送る。……無事に戻れよ、ゼロ中佐。』

 

 ブランリヴァルを始め、各艦は退避していった。そして俺は、送られてきた映像を凝視する。そこには、悪夢の存在が表示されていた。

 

「「オニマル・クニツナ」大隊全機!戦闘準備!演習場の弾薬コンテナより、実弾演習で消耗した弾薬を補充せよ!ただし……。」

 

 一拍置いて、俺は続ける。

 

「実弾兵器の弾薬補充を最優先とし、ビーム兵器のエネルギーパックは後回しだ!敵の主力は巨大MA、ビグザムタイプ3機!Iフィールド搭載機だ!残り3分で補充を完了させろ!」

『『『『『『了解!!』』』』』』

『……!!』

 

 各員の返答も、直後の行動も素早かった。素早かった、のだが……。何故かしら彼らの中に俺の指示に対する疑念があるのが、俺の人工ニュータイプ能力で分かってしまう。何故だろう?何処かおかしい事を言ったか?

 レイラが代表して俺に問いかけて来る。

 

『中佐、Iフィールドとは?ビグザムとは……。』

 

 あ。

 そうか、この世界では……ビグザムがその猛威を振るう前にソロモンは無血開城。そしてアニメであれだけ視聴者に衝撃を刻み込んだビグザムは、ソロモンのとあるドックで、持ち出しができなかったため、機密保持のために爆破処理されていたんだ……。

 だが赤いガンダムアレックスに乗った人が、解説をしてくれる。さすがアドバイザー役。頼りになるなあ。

 

『手を動かしながら聞いてくれ。MA-08ビグザムとは一年戦争で旧ジオン公国が開発した、巨大メガ粒子砲を多数装備の移動要塞的な巨大MAだ。動きは鈍いが、破壊パワーは凄い。シミュレーションによると、一瞬でマゼラン級戦艦5~6隻を撃沈できる。幸いなことに、それが投入されたソロモンは無血開城になり、ドックで破壊されたビグザムが発見されたがね。』

『動きが鈍いなら近寄らず、遠距離から艦砲あるいはハイザック・カスタムなどのビームランチャーで狙撃すればどうだい?』

『残念だがレイヤー大尉……。旧ジオン公国でも、ビグザムの弱点を潰そうと躍起になっていてね。Iフィールド・ジェネレーターを搭載したんだ。それと実弾兵器に対しては、巨大さから来るとんでもない装甲の厚さで対処している。

 で、Iフィールドだが……。簡単に言えば、ビーム兵器に対するバリアだよ。ビーム兵器のうちで通用するものと言えば、0距離まで接近してのビームサーベルぐらいか。』

『ありがとう、クワトロ大尉。さて、そろそろ敵が来る。実弾兵器がある者は、それを使え。実弾はビーム兵器よりかは効く。ビーム兵器しか搭載していないハイザック・カスタムは、ビグザムを腹の下に吊り下げて輸送してきている、商用輸送船の改装艦を破壊もしくは鹵獲しろ。

 他の物はビグザムを。ただし、ビグザムの正面に装備されている大口径のメガ粒子砲前には出るなよ!下手すると、いや下手しなくても一撃で墜とされる。』

 

 俺たちの機体のセンサーでも、輸送船がビグザムを3機吊り下げて、こちらへ向かって来るのが捉えられた。……堂々と、輸送船の横っ腹に旧ジオン公国の紋章をペイントしてやがる。と、俺の脳裏に閃光が走った。

 

「第01中隊、左右に散開しろォッ!!」

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 ビグザム3機から、大口径のビーム砲……BGメガ粒子砲が放たれ、今までクワトロ大尉の第01中隊が居たところを白光で塗りつぶして行く。俺は叫んだ。

 

「被害報告!」

『こちらクワトロ大尉、第01中隊は半数がやられ、事実上壊滅しました。カトウ少尉機とザカリー伍長機、イェルド伍長機が、ビームの余波だけで機体を半壊させられ、パイロットは無事脱出しましたが、機体は駄目です。

 フィリップ中尉とブリジット軍曹に、脱出したパイロットを回収させて下がらせたく……。』

「許可する。クワトロ大尉は俺の指揮下に入れ。」

『了解!』

 

 いや、今のは1人ぐらい間に合わないかと思ったよ?まあ断末魔の思念が聞こえなかったから、命の心配はしてなかったけど。皆、よく躱した。よく躱してくれた。っと、そうだ。

 

「ユウ!お前らの中隊主力、ガルバルディβはシールドミサイルを装備し、格闘能力も高い!右のビグザムを任せた!

 レイヤー大尉!逃げようとしている敵輸送艦を逃がすな!こいつらの背後を洗い出す必要がある!だから可能なら降伏させて、不可能ならエンジンでも破壊して逃げられない様に!せめて1隻でも尋問のため、捕まえてくれ!

 シロッコ大尉!そっちの主力はビーム兵器のみのハイザック・カスタムだ!部下はレイヤー大尉に預けて、敵輸送艦を押さえさせろ!大尉自身は、左のビグザムにちょっかいをかけて、注意をひきつけていてくれ!」

『……!』

『『了解!』……だが、別に倒してしまっても、かまわんのだろう?』

 

 シロッコ、それフラグだ。

 

「ああ。期待させてもらう。さ、て……。

 本来大隊指揮小隊は、こういう仕事するための物じゃないんだけどな。大隊指揮小隊!そしてクワトロ大尉!俺たちは中央のビグザムを潰すぞ!」

『『『了解!!』』』

 

 俺たちは3機のビグザムに襲いかかって行った。

 

 

 

 最も早くビグザムを落としたのは、やはりユウ率いる第02中隊だった。と言うか、ヤザン大暴れ。おま、今にも撃とうとしたBGメガ粒子砲の砲身に、ビームサーベルの刺し逃げ攻撃なんかやるなよ。危ないったら無いな。

 ユウの中隊をそのまま左のビグザムに向かわせる。だがたどり着く前に、左のビグザムは火球と化した。シロッコの奴は一撃ももらわずに、両腕の90mmガトリングと、頭部バルカンでビグザムを墜としてみせたのだ。有言実行、やるなシロッコ。

 一番時間がかかっているのが俺たち中央の組だ。だがそれは、俺が少々無茶な命令を下したからである。曰く、「ビグザムの胴体部は、なるべく原型をとどめるように。」と。この強敵相手に、そんな無茶はあるまい。だが俺はビグザムの胴体が、是が非でも欲しかった。正確に言えば、Iフィールド・ジェネレーターが欲しかった。

 いや、今こっそりひそかにガンダム開発計画が裏で進んでるんだけど……。試作3号機の開発、ことにコアMSじゃなく胴体部分が滞ってるんだよね。こないだちょっとレビル将軍に愚痴られた。なんかIフィールド・ジェネレーターが上手く行ってないらしい。たぶん一年戦争でMA-08ビグザムをソロモンで見る事ができなかったのが響いてるんだと思うんだよね。基礎的な技術は万端整ってるし、あとはそれらをどの様なバランスで組み合わせるか、だ。

 そして実動してたお手本が、ここにある。俺はとうとうビグザムの頭の上に取りつく事に成功。そのままコクピット部分を、ビームサーベルで抉ってやった。

 

 

 

 最後のビグザムが撃墜されると、敵輸送艦も降伏してきた。といっても1隻爆沈してて、1隻はエンジン破壊されて月面に着底してるけどね。

 

「さて……。

 !?」

 

 俺は反射的に、ビームライフルを撃っていた。そしてオープン回線で叫ぶ。

 

「今のはわざと外した!次はあてるぞ!」

『『『『『『!?』』』』』』

(!!……わたしを見つけた!?)

 

 相手は隠密に自信があったらしい。と言うか、部下達から驚きの声が。やはり気付いたのは俺だけらしい。なんて隠密能力だ。ニュータイプ能力者の知覚から隠れる能力でもあるのか?まるでニンジャだな。と言うか、今の思念は……女の物?しかも若い?いや幼い?

 相手には悪いが、俺は更に強行に出る事にする。

 

「10数える間に、岩陰から出てこい!さもなくば、その隠れている岩陰をきさま諸共吹き飛ばしてやるぞ!10!9!8!7!……。」

『ま、待って!』

 

 岩陰から出て来たのは、MS……それも各部に補器やら何やら取り付けた、あからさまに実験機だと全力で叫んでいる様な不格好なMSだった。だが、どこか……あるMSの面影がある。

 あるMSとは……。今俺の機体の後にはレイラのガルバルディβが、右側はシロッコのアレックス4が、左側はクワトロ大尉のアレックス5が固めている。あるMSとは、その左側を固めている赤い人の将来の愛機、金ピカに塗れば更に分かりやすいかも知れないが、百式の事である。

 俺は、いかにも意味ありげに呟いてやった。いや、意味は無いに等しいのだが、相手の動揺を誘えればと思ったのだ。

 

「アナハイム・ガンダム……か?」

『な……。なんでそれを!?』

『『『『『『なにーーーっ!?』』』』』』

 

 あ、しまった。味方の方が一斉に動揺しちまった。そうしたら、その百式もどきのアナハイム社製ガンダム?は、それを隙と見たか、飛び立った。……上半身だけで。と思ったら、一拍置いて下半身も飛び立った。そして下半身が左右に2つに割れ、上半身が前後に2つに分離し、コア・ファイターっぽいのが不細工なコアブロックから変形して、空力的には無駄だらけ、宇宙でもまともに飛べるのか?と言う腐ったデザインの小型戦闘機になった。

 俺たちは唖然として、ばらばらになったその機体を眺める。それぞれのパーツは更に細かく分離し、何が何だか。数分かけて、再度合体したその機体は、スラスター部分が後ろに集中した、MA形態に変形してみせた。……撃っちまったら、よかったかな。そのMAは、変形機構こそげんなりするほど駄目駄目だったが、変形後の速度はとんでもなかった。

 

「なあ、MS開発に一家言あるシロッコさんやい。アレ、どう思うね。」

『没だ。』

「だよなあ……。なんで試作機どころか、実験機持ち出して覗き見に来るんだろな。」

 

 俺たちは、憮然として少女?の乗ったMSの噴射炎を眺め続けるのだった。




というわけで、最後にトンデモない人物が登場しました。って誰だか明言はしてませんが。でも誰だかわかりそうですねー。感想返しとかで色々言ってましたしー。

乗ってたMSは、アナハイム製ガンダムの試作機です。試作機と言っても、RX-78ガンダムの様なテスト機ではありません。ほんとの意味の試作機です。「ためしに作ってみましたー」って言うような、実用性ほとんどなしの。

で、今回襲って来たやつらの背後関係は、まだ不明です。たぶん次回で割れる、んじゃないかな?

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