強化人間物語 -Boosted Man Story-   作:雑草弁士

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GP02と核

 ジャブローのドックで、改ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースに、GP01・ゼフィランサスが2機、GP02・サイサリスが2機積み込まれて行く。その隣では、改ペガサス級強襲揚陸艦メレディス・マコーマックにGP04・ガーベラが2機、GP05・ローレル・ガンダムMk-Ⅱが2機、載せられていく途中だ。

 その様子を、カメロン広報部中尉が今どき珍しい、フィルム式カメラで写真に撮って行く。その隣では、カメロン中尉に付いて来たハリソン・ハマートン広報部少尉が、やや大きめの手持ちカメラで、動画を撮っていた。

 

「いや、すっごいですねー!ガンダムタイプが4種8機も!これら、これからどうなるんですか!?」

「上から聞いてないのか?レイラ?」

「開示しても大丈夫な情報ですね。」

「そうか、なら教えてやるよ、カメロン中尉。この4種8機と、これとは別の宇宙専用機1種2機が、一時的に俺の部隊である「オニマル・クニツナ」大隊に配備される。まず宇宙用を除いたこれら8機を、某基地の演習場で各種運用試験を行う事になってるんだ。……聞けよ。」

 

 カメロン中尉は、うわー、うわーと一生懸命に写真を撮っていた。駄目だ、こいつは。何と言うか、上はこの任務にあたり、思想的に絶対に信頼できると判断した者だけを送り込んで来たらしい。能力や技量のほど、そして性格は度外視して。

 間違いない。こいつが今俺が言った情報を知らなかったのは、聞かされなかったんじゃなく、聞いてなかっただけだ。

 

「カメロン中尉!ブランリヴァルへ戻るから、付いて来るんだ!」

「へひゃぁっ!?え、は、はいぃっ!!」

 

 まったく、こいつは……。あ。

 

「ハリソン少尉!貴官もだ!」

「えー。」

「えー、じゃない!!」

 

 まったく……。

 

 

 

 南太平洋を越え、トリントン基地へと向かう最中も、カメロン中尉は五月蠅かった。

 

「中佐ぁ!この任務に選ばれたご感想は!多数のガンダムタイプの試験を任されて、いかが思ってらっしゃいますか!?」

「光栄に思っているぞ?」

「……ソレだけですか?」

「他に何を言えと。」

 

 いや、コイツからすれば俺の方も、面白みのない取材対象かも知れんな。だがなー。奪われる可能性の高い機体を2種4機抱えてて、リップサービスする余裕なんて無いんだが。

 そんなこんなしている間に、オーストラリア大陸が見えて来る。トリントン基地まで、あと僅かだ。

 

「うぉー!あれがトリントン基地ですかー!おい、ハリソン少尉、きちんと撮ってるか!?」

「無論です。」

 

 ……五月蠅いな、ほんとこいつら。いやハリソン広報部少尉は五月蠅くないのだが、2人混ぜると五月蠅さは3倍になる。俺の溜息を乗せて、旗艦であるブランリヴァルはトリントン基地へと進入していったのだった。

 

 

 

 トリントン基地の司令は、以前俺たちが関わった事件で更迭され、新しい人物に交代していた。ゴップ派のエーミール・オーフェルベック大佐だ。俺とレイラは、オーフェルベック大佐に到着の挨拶をするため、司令執務室へと出向く。お決まりの敬礼と答礼を済ませ、俺たちは自己紹介をする。

 

「エーミール・オーフェルベック大佐、自分はレビル将軍直属部隊ツァリアーノ連隊所属、第01独立部隊「オニマル・クニツナ」大隊大隊長、ゼロ・ムラサメ中佐であります。こちらは大隊副官の、レイラ・レイモンド中尉です。」

「うむ、楽にしてくれたまえ。わたしがエーミール・オーフェルベックだ。

 それで……明日から新型機の試験をここの演習場で行うのであったな。機体試験中の、演習相手のMSはこちらから出すことになっておるが……。何か注文が無ければ、RGM-79の高機動試験機、俗にパワード・ジムと呼ばれている物を出そうと思っておるのだが。」

「パワード・ジムですか?」

 

 驚いた俺に、オーフェルベック大佐は頷く。

 

「うむ、既に型落ちとなりかけておるジム改ベースの強化型であるがな。しかし近代化改修も2度にわたって行われ、継戦能力は低いが短時間ならばジムⅡよりも手ごわいぞ。」

「ありがとうございます。」

「何、他の機体と言えばこの基地には、もはや先ほど型落ちと言った、ジム改しか無いのだよ。ははは。まあ、裏を返せば、核弾頭もキシリア・ザビも移送してしまったこの基地は、本当の意味で抜け殻だからな。新鋭機など、必要無いのだよ。おっと、どちらも機密事項であったな。うっかり口に出した事は、黙っていてくれたまえよ?

 ……中佐、ところでだな。わたしが何かしてしまったのか、それとなくレビル将軍に聞いてみてくれないかね?」

「は?」

 

 俺は唖然とした。オーフェルベック大佐は、沈痛な表情を作って言う。

 

「いや、わたしは大きな手柄こそ無いものの、大過なく勤め上げてきたつもりなのだよ。出来得るならば、もっと重要度が高い基地の司令官に移りたい……。と言うか、この基地の司令を命じられたのが、青天の霹靂であったのだよ……。ゴップ大将に異動をお願いしても、さっぱりだ。

 貴官は、レビル将軍の覚えもめでたいのであろう?何故わたしが異動できないか、レビル将軍からゴップ大将へ問うていただけないか、訊ねてはもらえんかね。いや、無理なら忘れてもらっても構わんのだが……。」

「いや、基地司令と言うだけでも充分に重要な職務かと……。と言いますか、重要な基地と言いますと宇宙ならルナ2、コンペイトウ、ア・バオア・クー……。地球ならばベルファスト、オデッサ、キリマンジャロ、ニューヤーク、その辺りですか……。

 そこら辺は、ジオン残党どもに狙われる可能性が大きいです。よしておいた方が無難ですよ。」

「なんと!?」

 

 驚愕を露にするオーフェルベック大佐に、俺は噛んで含める様に言った。

 

「まあ今言ったのは、今まで前線で戦い続けたわたしの皮膚感覚的な感想なのですがね。より良い立ち位置を求めるのなら、基地司令ではなくジャブロー勤務を希望してみたらいかがでしょうか。あっさり通るやもしれませんよ?おそらく代わりの者が、少佐か中佐あたりの者が、押し込まれて来るでしょう。」

「うむむ……。ぜ、前線ではそんなに酷いのかね?既に下火になったかと思っておったよ……。」

「残念ながら。ジオン残党は狙いを定め、蜂起の時を待って牙を研ぎ澄ませております。最前線は宇宙ですが、幾度も騒ぎがありましたよ。我々「オニマル・クニツナ」大隊……大隊に部隊が拡張されたのは先日ですが、それも幾度も駆り出されましたよ。」

 

 オーフェルベック大佐は、苛立ちを露にする。俺は溜息を自身の内側に押し込めた。

 

「むむむ、ファントムスイープ隊他の、ジオン残党狩り部隊は何をしておるのだ!」

「彼らは頑張っていますよ。「F.O.T.A.」隊なんて、部隊の半数の人員や装備を失いながらも、地球へのマスドライバー攻撃を阻止してくれましたし。今頃は、再編制と再装備が完了しているのかな?……それとも、連邦軍全体を襲う軍縮の嵐の中、隊の規模を縮小せざるを得ないのかもしれませんね。

 まったく……。地球連邦政府は、現実を分かっていない。ジオン残党が、「軍」と言えるほどの戦力を未だ残している事を。まあ、総戦力では一年戦争当時にア・バオア・クーやサイド3ムンゾに集結した旧ジオン公国軍の、10%にも満たないでしょうが。ですが、今のまま軍縮を急ぎ過ぎると、下手を踏むと「残党軍」と、良い勝負になってしまうかも知れません。」

「なんと……。」

「ファントムスイープ「隊」……ですか。「隊」レベルでは、全てのジオン残党「軍」に対処する事など不可能です。ですが……連邦軍は、いや連邦政府を含め、地球連邦は気を抜きすぎています。本当なら一部の「隊」だけではなく、連邦「軍」全体で事にあたらねば……。」

 

 驚くオーフェルベック大佐。俺は連邦軍人でさえも、ジオン残党に対して甘い認識しか持っていない事にがっかりする。そこでレイラの精神の手が、俺の心にそっと触れて慰めてくれるのが分かった。いかんいかん、がっかりしているヒマなんてない。

 

「他の基地司令官へ異動できないのは、ゴップ大将が大佐を大事な人材と考えているが故でしょう。ゴップ大将は、レビル将軍とも近い……。比較的、この世界の「現実」を良く知っておられるお方です。」

「うむむむ、り、理解した。」

「ああ、ここでの話は、オフレコで願いますよ。漏れたら、まずい事に。ただ、「戦争」が「終わった」と言う勘違いだけは正す様に、この基地内だけであっても、努力していただきたいです。」

「むむむ。りょ、了解だ。」

 

 基地司令との会談は終わった。俺たちはいつもの敬礼と答礼のやり取りを終えて、退出した。

 

 

 

 改ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースに、俺はレイラとブライト艦長を連れて出向いて来ていた。何故かカメロン広報部中尉と、ハリソン広報部少尉は付いて来なかった。この艦に搬入された、GP01・ゼフィランサス2機と、GP02・サイサリス2機の様子を見に来たのだ。

 ちなみにこの後、俺たちは改ペガサス級強襲揚陸艦メレディス・マコーマックにも向かい、GP04・ガーベラとGP05・ローレル・ガンダムMk-Ⅱ各々2機ずつの様子を見て来る予定だ。

 そこへ黄色い声が響く。

 

「ブライト艦長~~~!」

「や、やあエマリー艦長。」

「いらっしゃったんですのね!」

 

 エマリー艦長……エマリー大尉……。まず順番として、俺たちに敬礼だろうが。俺は咳ばらいを送る。レイラが苦笑しているのが感じられた。

 

「おぉっほん!」

「あ、し、失礼しました中佐!」

「いや、それだとブライト艦長も中佐なんだ。どっちだかわからん。名前を入れて呼んでくれ。」

「し、し、失礼をば!ゼロ中佐!」

「うむ、大変失礼された。」

 

 冗談交じりで微笑を浮かべ、敬礼と答礼を交わす。

 

「それで、GP01と02は?」

「はい、左右両MSデッキに、各々1機ずつ搬入されております。02は、右舷デッキの物がMLRS仕様、左舷デッキの物がビーム・バズーカ仕様に換装させておきましたわ。」

「ああ、それでいい。まずは、そうだな……。左舷から行こうか。」

 

 左舷デッキに到着した俺たちは、そこで写真を撮っている士官2名に気付く。彼らの方でもこちらに気付くと、敬礼を送って来た。俺たちは答礼を返す。だが……。

 

「見ない顔だな?中尉、少尉。」

「は!自分たちは広報部の者であります!カメロン中尉とハリソン少尉が急病で急遽後送されたので、急ぎ送り込まれた代役です!」

「レイラ、こちらに報告は?」

「いえ、来ていません。」

「な、なにぶん急な事でありましたので……。」

 

 俺は意地悪く言ってやる。

 

「ならば、こんなところで写真を撮るよりも、まずは我々へ面通しが先だろう。」

「は、も、申し訳ありません!中佐殿!」

「中佐、だけではな。隣にいるのも中佐だから、それではわからんだろうに。」

「は、え、あ……。ぜ、ゼロ・ムラサメ中佐ですね!申し訳ありませんでした!」

 

 まあ、俺の顔はけっこう売れているからな。率いる部隊その物は規模、人員共にそこそこ機密度高いけど、一年戦争で英雄扱いされたし。でも、ソレはお前さんも同じだよ。なあ、ロバート・ギリアム大尉?

 俺は拳銃を抜いて、その中尉に突きつけた。驚くブライト艦長とエマリー艦長。だがブライト艦長は流石な物で、すぐに立ち直って自分も拳銃を抜き、構える。レイラ?俺の隣で、少尉の方の相手に拳銃を突きつけてるよ?

 

「な、何を!?」

「自分の顔が売れていないなどとは、思わない方がいいな。元ジオン公国軍突撃機動軍エースパイロット、ロバート・ギリアム大尉。エマリー艦長、MPを呼んでくれ。ジオン残党のスパイを捕まえたと。」

「は、はい!」

「くっ!」

 

 その時、レイラが銃を突きつけていた少尉が、拳銃を抜き打ちで発砲……しようとする。そんな事、レイラがさせるわけがない。彼女は撃った。頭に2発、心臓に2発。本来ならば、生かして捕らえたかったが、そうもいかんだろ。断末魔の絶叫が、頭の中に響く。だが今更俺もレイラもそれに動じたりしない。

 

「……!」

 

 相棒の行動で俺たちに隙が出来たと思ったのか、ロバート大尉は身を翻した。そしてそこにはクワトロ大尉が待っていたりする。俺が念話で呼んで置いたのだ。

 

「どこに行くのかな?」

「く、くそっ!」

 

 クワトロ大尉の突きつけた拳銃にロバート大尉が怯んでいる間に、続々とエマリー艦長が呼んだMPが押し寄せて来る。だがロバート大尉は、諦めない。いや、ある意味で諦めていたのか?懐から手榴弾を取り出して、ピンを抜こうとする。自爆するつもりか。

 させんよ。

 

「ぐあっ!は、放せ!」

「放したらお前、自爆するだろうが。迷惑だ、死ぬなら関係ないところで1人で死ね。」

 

 ボキッと嫌な音を立てて、俺がひねり上げたロバート大尉の腕が折れ、肩が外れる。彼の格闘能力では、強化人間である俺の格闘能力に敵わない。俺はピンの外れていない手榴弾を彼から取り上げた。

 

「ブライト艦長、この手榴弾たのむ。」

「あ、ああ。」

「……っと!」

 

 俺は一瞬だけロバート大尉に先んじて、彼の口の中に地球連邦軍正式拳銃の銃身をねじり込んだ。こいつ自殺しようと、舌を噛むために大口を開けていたところだったのだ。

 MPの大尉が、俺からロバート大尉を受け取る。

 

「トラヴィス大尉、頼んだ。何か噛ませて、舌を噛めない様にして拘束しておいてくれ。」

「了解しました。来い!全スペースノイドの裏切り者、面汚しめ!」

 

 このMP大尉……トラヴィス・リーガン大尉は、スペースノイド……それもサイド2の8バンチコロニー、アイランド・イフィッシュ出身だ。スペースノイドだと言う事で、連邦軍内部ではなかなか出世できなかったし、色々嫌な思いもしただろう。しかし腐らずに頑張ってきたのだ。

 そして彼の出身コロニーは旧ジオン公国のブリティッシュ作戦に用いられ、地球に落とされた。彼の旧ジオン公国に対する憎悪は深い。レイラやマリオン曹長など、ジオンからの亡命者たちに対する態度も、最初は堅かった。それを改善するのに、どれだけ苦労したか……。

 だが今はジオンからの亡命者たちに対しての憎悪も晴れている。人工ニュータイプ感覚って、便利だな。そう言うのが、はっきり分かるんだし。頭は痛いが。……だが関係ない者への憎悪が晴れた分、未だに故ギレンやザビ家を仰いでいる奴らへの怨み憎しみは、精錬され研ぎ澄まされ、凄まじいほどになっているのだ。

 ジオンのエースパイロットであったロバート・ギリアム大尉は、皮肉なことにモビルスーツ戦でもなく、ノーマルスーツを着てもいない状況下で、あろうことか連邦軍中尉の制服を着用してお縄になった。拘束された彼からは、まごう事無き殺意が俺に向けられている。だがそれは同じ事だ。俺も奴を殺したくて仕方が無いのを、我慢しているんだ。

 

「……カメロン中尉と、ハリソン少尉の捜索を急げ。」

「了解しました。即刻手配します。……中佐?」

「やつら……やつが着ていた連邦軍中尉の制服に、見覚えのあるカレー・ウドンのカレー・スープの染みがあった。あれはカメロン中尉たちの物を奪ったんだろう。」

「!!」

「命だけでも無事であるといいんだけど、な。」

 

 俺は溜息を吐いた。

 

 

 

 駄目だった。カメロン中尉とハリソン少尉は殺され、トリントン基地に併設されたMS演習場の、野外トイレ個室に隠されていた。身ぐるみ剥がれたみじめな姿で。俺も、ブライト艦長はじめとする各艦長も、警備体制は万全を取っていたのだが……。

 だが艦の外、トリントン基地では俺たちの要請を受けてはいたものの、そこまで真剣に受け取っていなかったのだ。この一件に関し、基地司令官オーフェルベック大佐は階級が下の俺に対し、平身低頭で謝罪した。まあ、俺の後にあるレビル将軍とその派閥の影に怯えていたんだろうけどな。

 カメロン中尉たちは、GPシリーズの試験の一環である実機演習のための演習場を、あらかじめ撮りに行って、そこで襲撃されたらしかった。連邦軍の甘さが、浮き彫りになった事件だな、これは。

 ロバート・ギリアム大尉たちの目的は、やはりGP02・サイサリスだった。情報が錯綜しているのか、やつらの話ではGP02は既に核装備されている事になっていた。見当違いも甚だしい。……この情報は、上の許可を得てロバート大尉に自白剤、それも廃人一歩手前の強力な奴を投与して得られた情報だ。たぶん間違いないはずだ。

 TV画面の中では、レビル将軍が記者会見を開いている。ガンダム開発計画の概要について発表し、ガンダム各機の軍機に触れない程度の概要について説明し、GP02が核抑止力のための核攻撃ガンダムである事について語った。

 そしてジオン残党の脅威と、巷で言われている南極条約についての誤解……南極条約が禁じているのは核の使用であり、研究や生産は含まれていない事、南極条約は戦時条約であり、一年戦争の終戦とともに効力を失っている事などについても、きちんと分かりやすい表現を使い、一般に向けて放送した。

 レビル将軍の背後にあるスクリーンには、今現在のリアルタイム映像でGP01、GP04、GP05がGP02の支援のもと、パワード・ジム隊を軽々と蹴散らして行くのが映し出されている。……2機のGP04に乗って部隊指揮してる、クワトロ大尉とシロッコが、楽しそうで何よりだ。

 そしてTV画面の中では、レビル将軍が広報部のカメロン中尉とハリソン少尉が、GP02を奪取せんとしたジオン残党軍「デラーズ・フリート」によって――デラーズ・フリートの名が正式に使われるのは、これが初めてである――殺害された事を発表していた。レビル将軍は、2人の広報部士官の犠牲について哀悼の意を表し、デラーズ・フリートに対する討伐が遅れている事を謝罪した。

 ここで記者の1人が地雷を踏む。

 

『レビル将軍!罪のない2人の士官の犠牲は、新型の核装備ガンダムを開発し、いたずらにジオン残党を刺激した事に原因があるのではないのですか!?』

『……質問に質問で返すのはマナー違反である事は、重々承知で問おう。すると何かね?君は襲い来るジオン残党に対し、備えもせずに甘んじてその刃を受けろと、こう言うのかね?』

『いえ、一年戦争がもう終わったと言うならば、彼らに手を差し伸べてもよろしいのでは?核武装するなどと言うのは、失効したとは言え南極条約の理念にも反します。』

『それをここで言うのは、お門違いだな。我々は軍隊だ。外敵から無辜の市民たちを護るのが使命だ。ジオン残党に手を差し伸べるかどうかについては、我々の上、地球連邦政府に対して言ってもらおう。

 そして、我々はジオン残党を恐れている。その実戦力ではなく、奴らが何をするかわからない精神の持ち主だからだ。一年戦争中において、ジオンは南極条約が失効していないにも関わらず、何度も核、生物兵器、そしてコロニー落としに代表される衛星軌道上からの大質量弾攻撃を行って来た。条約破りは、彼らのお家芸なのだよ。

 そして先日機密解除されたばかりの情報が、ここにある。ジオン残党、インビジブル・ナイツと称する者たちが、戦力を何処からかかき集めて月のマスドライバー施設を狙ったのだ。彼らの手元には地球の様々な軍施設を狙った、軌道計算プログラムがあったとの事だ。……マスドライバー攻撃も、当然ながら南極条約違反であり、条約そのものは失効してはいても、その精神を受け継ぐ様々な法で禁じられている。

 ……奴らは、それを敢行したのだ!』

 

 レビル将軍の気迫に、質問者である記者は、腰が引けながらそれでも抵抗を試みた。

 

『し、しかし!彼らとの、スペースノイドとの融和路線を取ったならば、そう言った動きも抑えられるのでは……。』

『訂正したまえ!!』

『ひ……!』

『ジオン残党と、一般のスペースノイドを区別しない言い方は、一般のスペースノイドに対する侮辱に等しい!』

『そうだそうだ!』

『勉強不足だぞ!旧ジオン公国は、そしてそれを継承するジオン残党は、スペースノイドの裏切り者だ!』

『物知らず!恥知らず!』

 

 周囲の別の記者たちからも責められ、当の質問者である記者は四面楚歌である。レビル将軍が、とどめの様に言った。

 

『無論、我々連邦軍からもスペースノイドに対する融和政策は、あくまで進言と言う形で提案している。シビリアン・コントロールの原則を崩すわけにはいかぬのでね。

 しかしだな、君。それとこれとは話が違う。スペースノイドたちとの融和政策と、ジオン残党に手を差し伸べるか否かと、そして何より!ジオン残党の脅威に備えて軍備を整え、核の脅威に備えて抑止力としての核装備ガンダムを揃える事とは、各々まったく次元の異なる話なのだ。

 それとも何かね?極論になるが、君は我々がジオン残党に備えずして、そして無辜の一般市民が犠牲になったとき、「よく犠牲を我慢して、軍備を整えなかった」と褒めてくれるのかね?犠牲になるのが、君自身や、君の家族であるかも知れぬのに?』

『……。』

『我々は、我々が連邦軍である以上、現実に存在する脅威……連邦市民に対する脅威に立ち向かい、備えねばならんのだ。……質問に対する答えは、これで良いかね?』

『……。』

『……ッ!!で、では次に質問のある方はいらっしゃいますか!?』

 

 司会者が、気を取り直して議事進行する。TV画面の中で、次々に記者たちの手が挙がった。……さっきの記者と、その属するニュース局の名前は、しっかりと覚えておこう。まあ、憲兵隊や諜報部もチェックしてるだろうけどな。

 だがやはり奴らはGP02に手を出して来た。近いうちに、デラーズの屁理屈な演説があるんじゃあないかな、と俺は思う。デラーズ・フリートの存在がこう言う形にせよ発表されてしまった以上、向こうは準備不足だろうと何だろうと、立たねばなるまい。こっちはそれまでに、GPシリーズの運用試験を終わらせてしまわねば。

 

「中佐、そろそろお時間です。」

「ああ、ありがとうレイラ。」

 

 俺はカメロン中尉とハリソン少尉の葬儀に出るために、TVを消して執務室の椅子から立ち上がる。その俺に、レイラが付き従った。……カメロン広報部中尉がいないのが、ちょっと寂しく感じるとは、考えもしなかったよなあ。

 とぼとぼと俺たちは、ブランリヴァルの廊下を歩いて行った。




さくっと退場、カメロン中尉とハリソン少尉。哀れな……。
そしてラストはレビル将軍の一人舞台。主人公、大隊長になってから影薄くなってないかなあ?
まあ、階級や職責が上がるに従って、現場からは遠くならないといけないしなあ……。
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