強化人間物語 -Boosted Man Story- 作:雑草弁士
1ヶ月。それがデラーズ・フリートに呼応して立ち上がった地上のジオン残党軍を、レビル将軍率いる直属部隊を中核とした地上の連邦軍が叩き潰すのに、必要だった時間だ。その間俺たち宇宙にいる者達は、ア・バオア・クーやサイド5からちょっかいをかけて来るデラーズ・フリートの部隊を、モグラ叩きのように殲滅していた。
そして今現在、敵が片付いた地上から続々と戦力が、宇宙へと打ち上げられている。レビル将軍ご自身が、最前線でデラーズ・フリートを叩く作戦を指揮するおつもりの様だ。ただそうなると問題なのが、レビル将軍の機体である。
……いや、レビル将軍が今使ってる機体、RX-78NT-1なんだよな。アレックスの1号機。コックピットは初期型全天モニタから、最新の全天モニタとリニアシートに更新されてるし、その他色々な近代化改修が施されてはいる。いるんだが。
結局のところ、アレックスは1年戦争時代の機体だ。いや、うちの部隊でも使ってはいるし、度重なる近代化改修で単なる性能面では部隊でもトップクラスだよ? けどなあ……。結局のところ、機体の耐久性とか、整備性とか、古い機体ってのは色々と、なあ?
書類を整理しながら、レイラが言葉を紡ぐ。
「ねえ、ゼロ。やっぱりわたしが今使ってるGP03だけど……。あれなら機体の耐久性とか継戦能力とか、あとIフィールドもあるし防御も鉄壁よね? あれをレビル将軍にお使いいただいた方がいいんじゃないかしら」
「俺もそう思う。とりあえず次の定時連絡で、そのあたりの事をツァリアーノ大佐通して将軍閣下に進言するつもりだ。レイラは俺のアレックス3を使ってくれ」
レビル将軍は、
*
俺たちの進言はきっちり通った。ツァリアーノ大佐が口を酸っぱくして言ったおかげで、レビル将軍は現状2機だけ存在するGP03のうちの1機を、対デラーズ・フリート戦の間は自身の乗機とする事になった。まあ、下手な艦船よりも安心と言えば安心か。
ところで俺たちの『オニマル・クニツナ』大隊なんだが、レイラの乗機を変更するだけでなく、ちょっとばかり人員補充することになった。これまでクワトロ大尉の第01中隊とシロッコ大尉の第04中隊の、双方の第03小隊が欠員になってたんだよな。その小隊長に、今回昇進したばかりのアダム・スティングレイ少尉とファング・ィユハン少尉を中尉待遇って事にして押し込んだ。
ちなみにこれは、後々にこの2人を士官学校に押し込むための措置だったりする。いや、部下を指揮する経験をちょっとだけでも形だけでも積ませて、以前俺が受けた速成カリキュラムを受けさせようと思ってるんだ。ツァリアーノ大佐とか上の方にも話は通ってるし、推薦状とかの手配も大丈夫だ。
そして隊員とかには、ツァリアーノ大佐の口利きで人材が入って来た。と言うかたぶん、大佐の背後にいるレビル将軍の思惑が、かなり強力に働いてるんだろうとは思うんだがな。
何故って、新たに入って来た6人……。一年戦争の時にシャアたちと戦って、そのときにニュータイプ能力の大規模な発現に巻き込んで目覚めさせちまった奴とか、あと戦後に強化人間のミチルを助けるために同じくニュータイプ能力を大規模に使って目覚めさせちまった奴とかだったんだ。
つまりは、そこまで強力ではないものの、全員がそこそこのニュータイプ能力者だって事だな。
そいつらを含めた、新たな『オニマル・クニツナ』隊の編制表が、これだ。
レビル将軍直属大隊第01独立部隊『オニマル・クニツナ』大隊:
大隊指揮小隊(司令部小隊):
大隊長:ゼロ・ムラサメ中佐
(GP03:デンドロビウム)
大隊副官:レイラ・レイモンド中尉
(RX-78NT-1:アレックス3)
隊員: エグバート・エクルストン准尉
(RMS-117:ガルバルディβ)
管制:マリー・アップルヤード准尉
(母艦ブリッジオペレーター)
独立偵察小隊:
小隊長:リディア・ターラント中尉
(RMS-119:アイザック)
隊員:ホーリー・ヴィンセント少尉
(RMS-119:アイザック)
隊員:エルサ・ニールンド軍曹
(RMS-119:アイザック)
隊員:ヘイデン・ファーバー軍曹
(RMS-117:ガルバルディβ(護衛機))
第01中隊:
第01小隊(指揮小隊):
中隊長:クワトロ・バジーナ大尉
(GP04:ガーベラ)
隊員:タクヤ・カトウ少尉
(RMS-117:ガルバルディβ)
隊員:ザカリー・アルドリッジ軍曹
(RMS-117:ガルバルディβ)
第02小隊
小隊長:フィリップ・ヒューズ中尉
(RMS-117:ガルバルディβ)
隊員:ブリジット・サトウ曹長
(RMS-117:ガルバルディβ)
隊員:イェルド・ショールバリ軍曹
(RMS-117:ガルバルディβ)
第03小隊
小隊長:アダム・スティングレイ中尉待遇少尉
(RMS-117:ガルバルディβ)
隊員:エイルマー・ケンブル准尉
(RMS-117:ガルバルディβ)
隊員:リタ・ダフ准尉
(RMS-117:ガルバルディβ)
第02中隊:
第01小隊(指揮小隊):
中隊長:ユウ・カジマ大尉
(GP01-Fb:フルバーニアン)
隊員:マリオン・ウェルチ准尉
(GP05:ローレル(ガンダムMk-Ⅱ))
隊員:コーリー・ディズリー准尉
(RMS-117:ガルバルディβ)
第02小隊
小隊長:クリスチーナ・マッケンジー中尉
(GP05:ローレル(ガンダムMk-Ⅱ))
隊員:ウェンディ・デッカー曹長
(RMS-117:ガルバルディβ)
隊員:エイミー・マーケット軍曹
(RMS-117:ガルバルディβ)
第03小隊
小隊長:ヤザン・ゲーブル中尉
(GP01-Fb:フルバーニアン)
隊員:ラムサス・ハサ少尉
(RMS-117:ガルバルディβ)
隊員:ダンケル・クーパー少尉
(RMS-117:ガルバルディβ)
第03中隊:ホワイト・ディンゴ中隊
第01小隊(指揮小隊):
中隊長:マスター・ピース・レイヤー大尉
(GP02-BB:サイサリス・ビームバズーカ装備)
隊員:アキーム・ウラディスラヴィチ・ゴンチャロフ曹長
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
隊員:アレシア・グラナドス軍曹
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
管制:アニタ・ジュリアン曹長
(母艦ブリッジオペレーター)
第02小隊
小隊長:レオン・リーフェイ中尉
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
隊員:ランディー・ブレイン曹長
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
隊員: レグロ・ゴメス軍曹
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
第03小隊
小隊長:マクシミリアン・バーガー中尉
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
隊員:マイケル・ニューマン軍曹
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
隊員:ヘルカ・パータロ軍曹
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
第04中隊:
第01小隊(指揮小隊):
中隊長:パプテマス・シロッコ大尉
(GP04:ガーベラ)
隊員:ケイシー・ゲラティ少尉
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
隊員:ヴィオラ・ハンブリング少尉
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
第02小隊
小隊長:ジャック・ベアード中尉
(GP02-MLRS:サイサリス・MLRS装備)
隊員:ギャリー・フリーマントル曹長
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
隊員:カーティス・イーストン軍曹
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
第03小隊
小隊長:ファング・ィユハン中尉待遇少尉
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
隊員:カール・グリント准尉
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
隊員:ガドフリー・ダウディング軍曹
(RMS-106CS:ハイザック・カスタム)
整備中隊:
整備中隊長兼第0班長:ウィリアム・ウィルコックス准尉
第1班長:アストナージ・メドッソ曹長
第2班長:トラヴィス・ウォール軍曹
第3班長:ボブ・ロック曹長
第4班長:ヘルマンニ・ハータイネン軍曹
艦船:
旗艦/強襲揚陸艦:改ペガサス級ブランリヴァル
艦長/提督:ブライト・ノア中佐
(司令部小隊・独立偵察小隊搭載艦)
強襲揚陸艦:改ペガサス級ホワイトベース
艦長: エマリー・オンス大尉
(第01中隊搭載艦)
強襲揚陸艦:改ペガサス級ペガサス
艦長:ウッディ・マルデン少佐
(第02中隊搭載艦)
強襲揚陸艦:改ペガサス級イルニード
艦長:ガディ・キンゼー中佐
(第03中隊搭載艦)
強襲揚陸艦:改ペガサス級メレディス・マコーマック
艦長: マニティ・マンデナ大尉
(第04中隊搭載艦)
補給/輸送艦:ネルソン級MS軽空母サフランⅢ(補給/輸送艦として使用)
艦長:メッチャー・ムチャ大尉
補給/輸送艦:ネルソン級MS軽空母シスコⅣ(補給/輸送艦として使用)
艦長:マイケル・アシュトン中尉
このうち、エグバート・エクルストン准尉、リタ・ダフ准尉、カール・グリント准尉、エイルマー・ケンブル准尉は一年戦争時代に、ギャリー・フリーマントル曹長とガドフリー・ダウディング軍曹は戦後にミチルを助けたときに、ニュータイプ能力の大規模発現に巻き込んで目覚めさせてしまった者たちだ。なおリタ・ダフ准尉はかつて、ホワイトベースの第13独立戦隊に後半から参加し、ジオンの『ソーラ・レイ』破壊任務に就いた事もあったな、そういえば。
本当なら、歓迎会とかでも開いてやりたいのは山々なんだが、この状況ではそうもいかない。それどころかこの状況下では、隊の連携を取るための訓練時間をひねり出すのも難しい。まあ、難しいけれど連携訓練はやっておかないと部隊の隊員の生死に直結する。頑張ってコンペイトウ宙域で模擬戦とかやった。まあ、訓練中に緊急出撃かかる事もときどきあったけどな。
しかしデラーズの奴め。こうもポツンポツンと戦略的に意味の無さそうな攻撃を散発的に仕掛けて来るだけってのは……。何か思惑があるのはわかる。たぶんこの状況にこちらが慣れて来た頃に、ドカンと何かやるつもりなんだろ。
たとえば……。コロニー落とし、とかな。
*
そう思っていたらレビル将軍からの命令で、『オニマル・クニツナ』大隊はデラーズ・フリートの攻勢に対する即応態勢から外れる事になった。俺たちはその通達を、コンペイトウの要塞司令官ダグラス・ベーダー中将経由で受ける。ベーダー中将の隣には、先日まで入院していた要塞駐留艦隊司令官マクファティ・ティアンム中将の姿もあった。
「……と言う事だ。ゼロ中佐、貴官ら『オニマル・クニツナ』隊はこれまで働き過ぎたからな。少し休んでもらう……。と言うのは、表向きの事だ」
「表向き、ですか。やはり……」
「うむ、ゼロ中佐。レビル将軍のお話では、デラーズ・フリートが何がしか
ベーダー中将が頷いて言う。俺と共に来ているブライト艦長、ガディ艦長、副官のレイラは、表情が硬い。レイラは副官として議事録のメモを取るのに忙しいから、そこまででは無いが。
そしてベーダー中将は続ける。
「貴官ら『オニマル・クニツナ』大隊は表向き休養に入ってもらうが、レビル将軍のご下命あり次第、即座に出撃できる様に即応態勢を整えておいてくれ」
「「「はっ! 了解いたしました!」」」
俺たちは一糸乱れぬ敬礼を以て、中将に応えた。
*
デラーズ・フリートが、本腰を入れてサイド1、サイド4、コンペイトウを攻撃しているらしい。全面攻勢だ。ただ、『らしい』と言うのは俺たち『オニマル・クニツナ』大隊は、現場に居ないからだ。
「レビル将軍及び地上から打ち上げた戦力は今現在ルナ2に集結、順次コンペイトウへ向けて進発している最中、か」
「そう言う話だな、ブライト艦長。傍受した敵通信を解読した様子では、
……自身とその直属部隊、そしてデラーズ・フリートの正面戦力全てをもってしての、盛大な『
そう言う事だ。このデラーズ自らが率いた全面攻勢は、本来の作戦目的から目を逸らすための
うん、やはり奴らはコロニー落とし作戦『星の屑』をやらかすつもりなんだ。だが、そうはさせん。
今現在、俺たち『オニマル・クニツナ』大隊はレビル将軍の命令により、最大戦速で月へと向かっている。一方で、マット・ヒーリィ少佐の第02独立部隊『デルタ・スコードロン』が、ほぼ直線コースでサイド5宙域へと航行中だ。
サイド5からコロニーを地球に落とそうと言うのなら、普通は
だが、デラーズの事である。コロニーに別軌道を取らせてコロニー迎撃を阻止する可能性が高い。それを読んだレビル将軍の思惑により、俺たち『オニマル・クニツナ』大隊が月へ派遣されたのだ。そして現状、その読みは当たっている。コロニーは地球では無く、月へ向かって移動を始めたのだ。
「デラーズの目論見は、まず間違いない。コロニーに月での重力ターンを行わせ、普通とは別の軌道で地球への直撃コースに乗せるつもりだ」
「だろうな。そこで俺たちだ。重力ターンする前に、核パルスエンジンをブチ壊す」
「ゼロ中佐、月面の連邦軍は?」
「残念ながら、デラーズが残した抑えの戦力に、文字通り抑え込まれているそうだ。ブライト艦長、なんとしてもコロニー落としを阻止するぞ。……最悪の場合、ティターンズが地球上空でソーラー・システムⅡを展開してコロニーを待ち構えているそうだが。だがティターンズに、バスク大佐に、大きな手柄を立てさせてやるわけにはいかん」
「……」
ブライト艦長は、黙して頷く。彼もジャミトフ、と言うよりはその下にいるバスク大佐のヤバさを痛感しているのだ。バスクの行いのヤバさは、近頃ますます目に余る様になって来ているのだ。
以前ティターンズから、レビル将軍が大量に前線の士官、パイロットを引き抜いた事があった。その後バスク大佐は必死にあちこちから兵員をかき集め、補充したのだが……。その際に思想的に自分に近しい物を優先して集めた模様で、現在のティターンズは
更にその行いも先鋭化し、あからさまに
ジャミトフ中将はしかし、それを黙認しているかの様な行動を取っている。ジャミトフ……何を考えている? 俺の知識上でのジャミトフの本来の目的は、地球環境保全のために地球から人類を追放する、という物であったはず。それに必要な強権を得るために、とりあえず目の前の悪事は、大事の前の小事、として黙殺するつもりか?
……いや、それにしてもジャミトフ中将の行いは読めない。バスク大佐は、ジオン公国転じて
*
俺の乗るGP03が、宇宙を
俺たちの後方には、『オニマル・クニツナ』大隊の第01~04中隊の機体が、見事なフォーメーションを組んで俺たちを追尾している。最後尾には俺たちの母艦群が、最大戦速で俺たちを追う。そして俺たちの前方には、巨大な廃棄コロニーが月の周回軌道に乗っていた。その周辺には、デラーズ・フリートの艦や
「レイラ! エグバート! 再確認だ! 俺たちの役割は真っ先に突っ込んで、後続のために敵陣に傷口を作る事だ!」
『了解!』
『りょ、了解ですっ!』
戦闘濃度のミノフスキー粒子下だが機体が接触しているため、
「俺たちが切り開いた傷口を、第01、第02中隊がこじ開ける! 第03と04中隊がコロニーの核パルスエンジンを再噴射前に叩き壊す!
さっくり片付けて、奴らの目論見を潰してやるぞ! 行くぞ!!」
『『了解!!』』
((((((了解!!))))))
後続の連中からの声が、思念に乗せて俺に届く。そしてレイラとエグバート准尉の機体が、俺のGP03から離脱してその左右に陣取る。
油断していたのか、今更ながらに迎撃態勢を取った敵機……ドラッツェを、メガ・ビーム砲で狙撃。ドラッツェは一撃で爆散、消滅する。僚機らしきリック・ドムⅡをレイラが、ザクⅡF2型をエグバート准尉が、それぞれ撃墜。
俺たちは廃棄コロニーに装着されている核パルスエンジンへの道筋を切り開くため、敵陣中央に斬り込んで行った。
いや、続編書くのに3年……。書かなきゃ、書かなきゃと思っていたんですが……。ついつい他の作品に浮気をしてしまって、気付いたらもう3年……。本当に申し訳ありません。
さて、主人公たちはいったんデラーズ・フリートとの戦いの正面を外れて、コロニー落とし『星の屑』作戦を防ぐための行動に出ます。まあ『星の屑』自体が原作とはかけ離れた状況になっておりますが。
原作ではGP02による核攻撃で連邦の宇宙戦力を減退させた上で、移送中コロニーを奪って色々と小細工して地球に落としたわけですが。本作ではサイド5を占拠しておりますので、そこの廃棄コロニーを使う事にいたしました。また連邦の宇宙戦力が減退しておりませんので、デラーズ本人が真正面から大規模攻撃をコンペイトウに行い、それを
まあ、色々見抜かれてしまっているわけですがね(笑)。
そして裏でソーラー・システムⅡを用意しているバスクと、その後ろで色々と瞬動しているジャミトフ。どうなりますやら。