強化人間物語 -Boosted Man Story-   作:雑草弁士

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戦って、また戦って

 粒子ビームが飛び交う戦場に、爆光が閃く。また1機のリック・ドムⅡが()ちる。

 

 

『ザッおらぁ! この俺の眼の前で、コロニーを地球に落とそうなんザッザザザ、っざけた真似してんじゃねえぞ!?』

 

『……! ザッ……!! ザザッ』

 

『ザザッわかってる! オープン回線にしちゃいねえだろうが!』

 

 

 通信でヤザンの怒声が響き渡り、ユウに(たしな)められている。まあ、ヤザンの言う通りに隊内回線で怒鳴っているから、軍法、軍規で禁じられている戦場での敵との通信では無い。まあ一応は。

 

 

(……見える!)

 

 

 そして俺はGP03のステイメン部分の腕を動かし、フォールディング・バズーカでザクⅡF2型を撃墜する。同時にメガ・ビーム砲を操り、ムサイ後期型のエンジンポッドを狙撃。ムサイ後期型は爆沈。頭の中に、蛇がうねる様な頭痛と共に、多数の断末魔の絶叫が響く。

 だが俺は既に、そういうのは慣れっこになってしまっている。俺は頭痛を意識から切り離すと共に感情を押し殺し、次の獲物を探した。クワトロ大尉のGP04がドラッツェを狙撃して、シロッコ率いる第04中隊の、核パルスエンジンへの進路を確保するのが見える。

 

 

(そのまま進め、シロッコ!)

 

(ふ、言われずとも!)

 

 

 あいつら、出会った頃はあんなに相性悪かったのにな。少なくとも戦場では、阿吽の呼吸で互いをフォローし合っている。戦場の外では、まだちょっとアレだが。

 そしてシロッコの第04中隊に若干遅れているが、レイヤー大尉の第03中隊もユウたち第02中隊の切り開いた道を驀進(ばくしん)している。

 

 

『ザッザザこちら0301-00、砲撃開始予定位置まであとおよそ60秒。第02中隊、ザザッ進路上のザザッ敵機の排除を要請する』

 

『……!! ザザザ』

 

『貴官に感謝を、0201-00ザザッ』

 

 

 ユウのフルバーニアンが、レイヤー大尉のビームバズーカ装備GP-02を支援してリック・ドムⅡを撃破する。そして第03中隊と第04中隊が、廃棄コロニーに取り付けられた核パルスエンジンを狙える位置についた。

 デラーズ・フリートの部隊は既に半壊しかけていたが、それでも核パルスエンジンを護ろうと必死に追いすがる。だが第01中隊と第02中隊が、今度は第03中隊と第04中隊を護る壁になって敵機を後方に通さない。その更に後方より、俺たちの母艦群もまた艦砲射撃による支援砲撃を送り込んで来る。一分の隙も無い。

 

 うん、誇らしいな。これが俺の部隊だ。鼻が高いよ。

 

 そして第03中隊、第04中隊のMS(モビルスーツ)が一斉に、廃棄コロニーに取り付けられている核パルスエンジンへと全開の火力を送り込む。核パルスエンジンはその巨大さからくる耐久力で一瞬は耐えた様に見えた。しかしながら次の瞬間、それは巨大な爆炎を吹き上げて粉々に爆散する。

 後方のブランリヴァルより、通信が届いた。

 

 

『ザザザちらブライトだ。今の爆発により、廃棄コロニーの軌道が変更された模様ザザッ。計算させたが、このままいったん長円軌道に入り、最終的ザッザッ月面の西、嵐の大洋の端に落着する様だ』

 

「月の施設とかには被害は出なさそうだな。了解だ艦長。最低限の作戦目標は達成できたな」

 

 

 俺の人工的なニュータイプ感覚に、敵部隊の士気があからさまに低下するのが感じられる。まあ、それはそうだろう。乾坤一擲の作戦が失敗に終わったのだ。奴らは必死に隊列を整えて、この場から離脱しようとしている。

 ……悪いが、そうはさせん。いや、悪いなんて本音では欠片も思っていないが。

 

 

「『オニマル・クニツナ』大隊! 状況02-01だ! 事前打ち合わせの通り、残敵掃討に入るぞ!」

 

『『『『『『ザザッ了解!!』』』』』』

 

 

 俺たちは勝ち戦の勢いのまま、逃走しようとする敵に襲い掛かった。

 

 

 

*

 

 

 

 そして廃棄コロニーを防衛していた敵戦力を撃滅した俺たちは、今現在月を周回する軌道上に乗っている。デラーズが月方面に抑えとして置いていた戦力は、俺たち『オニマル・クニツナ』大隊と、そしてマット少佐の大隊『デルタ・スコードロン』が月の低軌道上に到着した時点で、撤退して行った。

 まあ、それはそうだろう。流石に2個MS(モビルスーツ)大隊とソレを載せた艦隊が、突然に現れたとなれば、逃げるしかなかろう。敵は月の連邦軍戦力となんとか拮抗するだけの戦力しか無かったし、マット少佐の『デルタ・スコードロン』はここまで戦闘を一切していない、まっさらな戦力だ。

 

 ちなみに『デルタ・スコードロン』はサイド5からまっすぐに廃棄コロニーを地球に落とした場合に備えて、そちらの軌道を通って来た。今回そちらは空振りに終わったのだが、廃棄コロニーが月を周回して重力ターンする軌道を取ったと言う事で、万一に備えて急ぎ駆けつけてくれたとの事だった。

 

 空振りと言えば、地球上空の軌道上でソーラー・システムⅡを展開して、廃棄コロニーが来るのを待っていたバスク大佐なんだが。俺たちがコロニー落下を阻止したという報告を受けて、激怒したらしいな。そんな噂がこっちまで流れて来るあたり、この世界におけるティターンズの本来の理念である綱紀粛正は、本気で形骸化しているな。

 しかしバスク……。能力的には高いのかも知れないが、性格が全てを台無しにしていると思うのは気のせいだろうか。こう言った場合、まずはコロニー落としが失敗に終わった事を喜べよ。いや、奴に手柄を立てさせたくなかった俺が言える事じゃないかも知れないが。

 

 そして俺は今現在マット少佐と、今後の打ち合わせの通信をしている。

 

 

「マット少佐、来援感謝する」

 

『いや、ゼロ中佐。もう少し早めに来らザザッたら、撤退する敵戦力に追い打ちできた可能性もザザザった。形としては偶然に後詰みたいになったが、正直何もできなかった感が強い……』

 

「いや、単に敵を撤退に追い込めただけでも充分だ。こちらは見た目は万全でも、一戦して消耗していたからな。あの時点では張子の虎だ。

 それよりも、今後の事なんだが……」

 

 

 マット少佐の表情が少々(しか)められる。ちなみにマット少佐の口調がタメ口なのは、俺がそれでいいと言ったからだ。階級では追い抜いてしまったとは言え、あちらは年長者でもあるしなあ。ま、他に上位者が居る場合には序列をきちんとしないといかんが、この場でなら構わんだろ。

 

 

『ゼロ中佐は、上から何か聞いているかい? ザザザこちらはどちらにせよ最終的にはそちらと合流する様に言われていたから、ザザッそちらに指示を仰ぐ様になっていると思っていたんだが』

 

「ああ。レビル将軍からの命令では、俺の『オニマル・クニツナ』隊と少佐の『デルタ・スコードロン』は合流後、月方面からア・バオア・クーもしくはサイド5を奪還する作戦に参加するように、との事だったな。ただしア・バオア・クーとサイド5のどちらになるかは、直前に封緘(ふうかん)命令を開封することで知らされる。

 封緘(ふうかん)命令書は5通預かってるからな。現状の状況に合わせて、どれを開封するか通信か何かで命じられるんだろうさ」

 

『なるほザザッ了解した。じゃあそれまでは待機するしか無いか……』

 

「そうだな。だが何にせよ、ア・バオア・クーかサイド5のどちらかの奪還戦に参加するのは間違い無い」

 

『ああ、了解だ。ザッザザッ』

 

 

 残留ミノフスキー粒子によるノイズが酷い。まあとりあえずは、どちらかの奪還戦に向けて覚悟しておくか。……できれば、ア・バオア・クーの方がいいんだがなあ。もしかしたら、ア・バオア・クーを奴らに取られた時にMIAになった、ロンの奴が捕まってるかも知れんし。上手くすれば、捕虜を解放できるなら……。奴を助けられるかも知れん……。

 

 

 

*

 

 

 

 ほっとした。安心した。何があったかと言うと、レーザー通信でコンペイトウに居るツァリアーノ大佐から指示された番号通りの、その封緘(ふうかん)命令書を開けたんだ。そしたら、俺とマット少佐の大隊は共にア・バオア・クーへと進軍し、本隊が要塞のSフィールドから攻撃をかけるのとタイミングを同じくして、要塞のNフィールドより突入しろとの命令が書いてあった。

 うん、ア・バオア・クー攻めで安心した。いや、まだロンの奴が生き残っているとは限らない。捕まっているとは限らない。だが、わずかでも可能性があるのなら……。

 

 なお(ラグランジュ)5方面に『星の屑』作戦の(オトリ)として全面攻勢をかけていたデラーズの部隊は、レビル将軍とティアンム提督に圧倒され、しかしながら致命傷は負わない程度の損害で撤退して見せたらしい。

 そしてレビル将軍は、コンペイトウの護りをベーダー中将とティアンム中将に任せ、自身は軍を率いてア・バオア・クーへ進軍中らしい。ちなみにその間、地球方面を護っているのはコーウェン中将とワイアット大将だったりする。特にワイアット大将は政治的な暗闘には強い人だし、ゴップ大将との繋がりも強い。レビル将軍ともWin-Winの付き合いが続いているし、現状任せて大丈夫な人だ。

 

 何にせよ、俺たち『オニマル・クニツナ』隊とマット少佐たち『デルタ・スコードロン』は今現在、月の周回軌道を離脱して、ア・バオア・クーへと向かっている。戦力的に言うならば、あくまでこちらは保険だろう。こちらは精鋭部隊とは言え、マット少佐たちを含めても2個大隊でしか無い。あくまで主力はレビル将軍たちの方だ。

 しかしながら、もしも敵が数的にこちらを甘く見てNフィールドの防備を薄くしたならば……。もしかしたら、一泡吹かせるチャンスはあるかもな。

 

 

 

*

 

 

 

 俺はGP03の操縦席(コクピット)で、息を潜めていた。俺たちの艦隊は、マット少佐の艦隊と共に物凄い濃さのミノフスキー粒子を散布した暗礁空域に隠れ潜み、今か今かと出番を待っているのだ。

 この状況を作るのは、非常に苦労した。アイザック3機と護衛機のガルバルディβ1機で構成された独立偵察小隊が、非常に頑張ってくれたのだ。彼女らがア・バオア・クーにデラーズ・フリートが敷いている偵察網の穴を見つけ、そこを掻い(くぐ)る形で暗礁空域に艦隊を隠れさせる事に成功したのである。

 

 GP03の武装コンテナ取っ手に自機を捕まらせているレイラが、接触回線(おはだのふれあいかいわ)で声を掛けて来る。今は戦闘待機だから、副官口調だ。

 

 

『ゼロ中佐、予定時刻です。ただ、連邦軍本隊は、Sフィールドへの展開を完了できていない模様です。まずいのでは?』

 

「あちらは大軍だ。何もかも予定通りに行くとは限らんさ。幸いと言ってはなんだが、デラーズ・フリートの方も手間取ってる様だ」

 

『了解です』

 

 

 だがここで、連邦軍にもデラーズ・フリートにも悪いとしか言えない事態が起きる。デラーズ・フリート側の一部の兵が暴発したのだ。そいつらは完全に切れ散らかした暴走状態で、連邦軍本隊の左翼の端に突っ込んで行ったのだ。左翼の端に居たのは、俺が知る限りではレビル将軍以外の派閥からかき集められて来た戦力で、部隊展開が遅れていた原因になっていた奴らだった。まあ、練度が低い連中だったって事だが。

 

 

「やばい! なし崩しに乱戦になっちまう!」

 

 

 その時、レビル将軍麾下の改ペガサス級セントールから、全方位に向けて通信が発せられた。内容は『ルゥーバァーブ発生』である。本来は本作戦開始の符丁(コード)は、『プレーボール!』だった。しかし今回発せられたのは、野球での乱闘を意味する『ルゥーバァーブ』だ。これは偶発的に戦端が開かれてしまった事を意味しているのだ。

 このままだと、作戦も何も無い状態でぐちゃぐちゃの乱戦になっちまう。どうするべきか……。

 

 俺が悩んでいたのは、一瞬だけだった。俺の人工ニュータイプ能力には、暴発した奴らに引きずられ、残りのデラーズ・フリートの連中も連邦軍本隊に突っ込んで行くのが感じられたのだ。俺は決断した。

 

 

「『オニマル・クニツナ』隊! そして『デルタ・スコードロン』! 敵は暴発した一部部隊に釣られてSフィールドの連邦軍本隊へ無謀な突撃をかけた! 俺たちはNフィールドより要塞中枢へ吶喊(とっかん)し、一気に勝負を決めるぞ!」

 

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 

 俺たち『オニマル・クニツナ』隊と、『デルタ・スコードロン』は要塞近傍の暗礁空域から一気に脱すると、最大戦速でア・バオア・クーのNフィールドより突入をかけた。




『星の屑』作戦は、あっさりと失敗に終わりました。まあ、当初から試作2号機の奪取に失敗して連邦軍の宇宙戦力を壊滅させられなかった事もありましたし。主人公たちの改変の結果、デラーズ・フリートにとっては不利な条件が揃っていましたからね。
そして宇宙要塞ア・バオア・クーの奪回作戦。連邦軍、デラーズ・フリート、双方の練度が低い奴らのせいで、どちらも作戦通りに行かないで無様な乱戦状態から戦端が開かれてしまいました。困ったもんです。
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