強化人間物語 -Boosted Man Story-   作:雑草弁士

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再会の戦友たち

 身体に凄まじいGがかかる。速度の頂点に乗ったところで、俺のGP03からレイラのアレックス3とエグバート准尉のガルバルディβが離脱。そしてそのまま前方にいるドラッツェの編隊を撃ち崩す。

 Nフィールドからの俺たちの奇襲に気付いた、Sフィールドのデラーズ・フリート部隊は、一瞬動きを鈍らせた。その隙を見逃すレビル将軍ではない。

 

 

『ザザッ全軍に告ぐ! 今こそ好機! 右翼部隊はそのまま前進ザザザ要塞へ突入! 中央及び左翼は突出して来ザザッザザザザ敵を半包囲下に置き、殲滅する!』

 

 

 レビル将軍は動きの鈍い自軍左翼部隊をその場にとどめ、中央部隊で敵を回り込んで叩くつもりの様だな。一方で右翼部隊はそのまま前進させて、中央部隊の背後を撃たれないようにすると共に要塞へと進軍させている。

 いったんはグッチャグチャの乱戦になりかけた状況を、その圧倒的な指揮能力とカリスマで見事に立て直しているな。流石としか言いようが無い。

 

 一方の俺たちは俺たちで、突出した部隊に釣られずにア・バオア・クーに残留していた敵MS(モビルスーツ)MA(モビルアーマー)を、次々に撃墜して行く。そんな中、かつてのジオン軍が開発したMA(モビルアーマー)ヴァル・ヴァロが、同じく旧ジオン軍のMA(モビルアーマー)ビグロ2機を従えて飛来する。

 こいつら……。手練れだな。

 

 

(レイラ! エグバート! こいつらニュータイプ能力者じゃないが、かなりの手練れだ! 向かって右のビグロから()るぞ!)

 

((了解!!))

 

 

 まずは先頭のヴァル・ヴァロと左のビグロにフォールディング・バズーカを1発ずつ2連射。あくまでこれは牽制だ。そしてレイラ機とエグバート機が右のビグロに向けてビームライフルを撃つ。俺もGP03のメガビーム砲を同じく右のビグロに撃ち放った。

 真空中であるが故、爆発音は聞こえる事は無い。爆炎と爆煙がただ宇宙に飛び散るだけだ。しかし俺たちには、操縦者(パイロット)の断末魔の声がはっきりと聞こえる。

 

 だが俺もレイラも既にその程度では気にもとめない。完全に慣れてしまっているのだ。俺たちよりも経験の少ないエグバート准尉だけは、その断末魔の絶叫に少しだけひるんだのが、俺の人工ニュータイプ感覚に感じられる。

 

 

(エグバート、気にするなと言っても無理だろうが、慣れろ! 慣れないと、いつか潰れるぞ!)

 

(りょ、了解!)

 

 

 それでも奴は既に素人レベルでは無い。気持ちでひるんだ部分はあるが、それでも身体は半ば勝手に動き、次の目標である向かって左のビグロを撃っていた。俺とレイラも、ビグロめがけてビームを撃つ。しかし相打ちの様な形で、そのビグロもまたビームをエグバート機へと撃ち放った。

 俺はそれを読んでいる。なので機体を急加速させて、ビグロのビームが発射される直前に、GP03の巨体でエグバート機のガルバルディβをかばってやった。ビグロは3条のビームを受けて爆散。ビグロのビームは、俺の機体のIフィールドで無効化される。

 

 一方のヴァル・ヴァロはプラズマ・リーダーを射出し、起死回生の一撃を狙う。プラズマ・リーダーとは、地上用MA(モビルアーマー)のはしりであるアッザムの必殺兵器、アッザム・リーダーと同様の放電兵器である。流石にあれを喰らっては、ちょっと痛いじゃ済まないだろう。

 なので俺は爆導索を射出する。爆導索がプラズマ・リーダーに絡み付くのを確認すると、一気に起爆。威力はともかく装置自体の耐久力が低いプラズマ・リーダーは、あっさりと粉々になった。プラズマ・リーダーを潰されたヴァル・ヴァロは焦った様子でビームを撃つが、基本こちらにはビームは効かない。

 

 そこへレイラのアレックス3がビームライフルで狙撃。急所を撃ち抜かれたヴァル・ヴァロはエンジン部より爆炎を吹き上げて四散した。

 

 

「よし、第04中隊は俺たち司令部小隊と共に要塞上空で支援! 第01、02、03中隊は要塞内部に突入せよ! 突入部隊の指揮は、クワトロ大尉に一任する!」

 

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 

 うん、本当なら俺も要塞内部に突入したかったんだがな。俺の乗機はGP03だ。デンドロビウムだ。オーキスを切り離してGP03Sステイメンだけになれば、要塞に入って行けるんだが……。流石になあ。

 特に致命的な損傷を喰らったってわけでも無いのに、オーキスを分離してコアMS(モビルスーツ)状態のステイメンだけにするわけにゃ行かんだろ。こんなところで必要も無いのにオーキス捨てたら、予算の無駄遣いもいいところだ。駄目だろ、そりゃ。

 

 

 

*

 

 

 

 シロッコのGP04ガーベラが、ここら周囲で最後に残ったドラッツェを撃墜する。

 

 

『ふむ、気概はあるがザザッ戦の技量は届かなかった様だなザッ』

 

「敵が弱いのは有難い事じゃないか」

 

『ふふ、それはその通りなザッだがな。ザザッ多少は手ごたえが欲しいと言うのも、本音ではある』

 

 

 軽口を叩きながらも、俺とシロッコは周囲の警戒を怠ってはいない。無論、レイラ、エグバートやその他の部隊員たちも同様だ。と、そこへ味方の一団が近づいて来る。先頭にいるのは、GP03……レビル将軍だ。

 

 

『ゼロ中佐ザッ状況は?』

 

「はっ、レビル将軍! 今現在部隊の第01~03中隊を要塞内の制圧に送り込んでおります!」

 

『そうザッこちらもツァリアーノ連隊を突入部隊とし、送り込んだところだ。流石にデンドロビウムでは要塞内部の制圧はザッザザザからな。あとは吉報を待とう』

 

「はっ!」

 

 

 そんな中、レビル将軍機に付き従っていた2機のG-3仕様ガンダムが、俺のGP-03に寄って来る。それらは右腕を伸ばすと、GP03の機体に接触し、接触回線(おはだのふれあいかいわ)で話し掛けて来た。

 

 

『よお、ゼロ! 久しぶりだな! 元気そうで何よりだ!』

 

『おひさしぶりですな、中佐殿! ははは』

 

「本当に久しぶりですね、アレン中佐。また会えて嬉しいよ、デリス」

 

 

 うん、気配で誰なのかは分かっていた。かつて一年戦争時代に、レビル将軍の直属部隊として一緒にやっていた、ディック・アレン中佐とデリス・ハノーバー少佐だ。本当に、懐かしいなコレは。機体はまだG-3ガンダム使ってたのか。あちこちにセンサーとか追加されてるし、たぶんコア・ファイター撤去して最新の全天モニタとリニアシート組み込んでるはずだな。

 ちなみにアレン中佐はその通り中佐に、デリスの奴は少佐に、それぞれ昇進していたはずだ。ちょっと前までは少佐と大尉だったんだが、レビル将軍がキリマンジャロ基地とその周辺を()とした作戦に於いて、2人は自分の部隊ごとレビル将軍のところに召集されたそうだ。そして彼らはその作戦でそれぞれ手柄を立てて、宇宙に上がってくる直前に昇進したと聞いている。

 

 

『あとはラバンの奴とバージル、それに……ロンの奴が居れば同窓会なんだが、な』

 

『ロンの奴……。無理して殿(しんがり)なんかしなきゃ、脱出可能だったってのによ……。生真面目なあいつらしい……』

 

 

 アレン中佐とデリスの奴の気持ちが少し沈むのが、俺の人工ニュータイプ感覚に感じられる。まあ、気落ちしてても周囲の様子を油断なく見ているのは流石なんだが。俺も周囲の気配を油断なく探りつつ、言葉に苦笑の雰囲気を乗せて語った。

 

 

「何、まだわからないですよ。捕虜になって生きている可能性も、まだ残ってるんです。そうでしょう、アレン中佐? そうだろ、デリス?」

 

『……ああ。そうだな、はっはぁ。気落ちするのはまだ早ぇってか?』

 

『ですな……。』

 

「ところでさっき話に出たラバンは? バージルの奴は、来年までは士官学校だから仕方ないとしても」

 

 

 ちょっと強引だが、話題を変えて見た。アレン中佐の苦笑する感じが伝わって来る。

 

 

『あー、奴も久々にレビル将軍と共に戦いたがってたんだがよお。旧ジオンの潜水艦部隊にとどめ刺す作戦があってな……。水中型ガンダム乗りの(やっこ)さんは、どうしても抜けられなかったんだ』

 

「それは仕方ないですね……」

 

 

 そして俺は、GP03のメガビーム砲を唐突にぶっ放す。レビル将軍のGP03も同じく。そしてシロッコのGP04も、ロングビームライフルで狙撃する。レイラや他の者たちは反応はしていたが、届く武器が無い者がほとんど。その中でハイザック・カスタムに乗っていたやつらが1~2機ばかり、ビーム・ランチャーを撃ってはいたが。

 いや、何があったのかと言うと、ア・バオア・クーの埠頭からザンジバル改良型がこそこそと逃げ出そうとしていたんだ。エンジンブロックに数発のビーム直撃を受けたザンジバル改良型は、港ブロックを巻き込んで爆炎を上げた。

 

 

 

*

 

 

 

 ほどなくして、クワトロ大尉からア・バオア・クー正副予備3ヶ所の司令部機能を失陥させ、要塞を手に入れたとの報告が入った。宇宙要塞ア・バオア・クーの奪還は、成功したのである。

 レビル将軍は艦より歩兵……陸戦隊を降ろし、彼らによって要塞全域を掌握する。幸いなことと言って良いのか、要塞内部には戦闘能力を持つ人員はさほど残っておらず、要塞の占領はスムーズに進んだ。どうやら大半のデラーズ・フリート人員は、俺たちが撃沈したザンジバル改良型での脱出を試みた様で、あっさり宇宙の藻屑になったらしかった。

 

 そして俺たち……と言うか、ア・バオア・クー奪還戦に参陣していた俺、レビル将軍、ツァリアーノ大佐、アレン中佐、デリスにとって、朗報が舞い込んだ。それも非常に大きな朗報だ。

 

 ……ア・バオア・クー内部に監禁されていた連邦軍人捕虜のリストの中に、かつてア・バオア・クー失陥当時に要塞所属部隊の教導隊を率いていた、ロン・コウ大尉の名前があったのである。

 

 

 

*

 

 

 

「……んの野郎、心配かけやがってぇ!」

 

「そうだそうだ! 他所の部隊が撤退するための殿(しんがり)を買って出たんだって? かっこつけるからそんなザマに遭うんだよ!」

 

「おいおいアレン、デリスも。その辺にしておけ。まあ、ロンと教導隊がその役を買って出なきゃあよ。あのときはその数倍の損害だっただろうって試算が出てるんだ。勘弁してやれ」

 

「「はあ……」」

 

 

 ツァリアーノ大佐、アレン中佐、デリスが口々に言う。アレン中佐とデリスは憎まれ口を叩くが、それでも嬉しさが隠しきれていない。重力ブロックにある病室のベッドに括り付けられたロンの奴は、半透明の酸素マスクの向こうで引き攣る様に頬を歪める。たぶん笑ったのだろう。俺もまた、溜息をついて言葉を吐き出した。

 

 

「ほんとにな……。よく生き残っていてくれたよ。ほっとした」

 

「……」

 

 

 ロンは目を(まばた)かせて、こちらに応える。それしかやり様が無いのだ。奴を始めとした捕虜たちは捕虜生活の間、水分はともかくとして食事は満足に与えられなかったらしい。まったく無かったわけでは無いが、なんとか命を繋ぐに足る程度だった様だ。今のロンは、ガリガリに痩せこけて身動きすらままならない様子なのだ。

 俺は思わず歯を食いしばった。デラーズ・フリートの奴らは、所詮はテロリストに過ぎないとは分かっているつもりだった。しかし戦友のこの姿を見ると、悔しさと共に怒りが湧いて来る。

 

 と、そこへ新たな来客が来る。

 

 

「諸君、来ておったのか」

 

「「「「レビル将軍!!」」」」

 

 

 俺たちは一斉に敬礼をした。数名の副官を連れたレビル将軍は答礼すると、頷く。

 

 

「ああ、楽にして良い。さてロン・コウ大尉、久しぶりだな。ア・バオア・クー失陥時に貴官と教導隊の奮戦のおかげで、多くの連邦軍が命を拾ったのは聞き及んでおる。……本当に、よくやってくれた。そして、本当によく生きていてくれた……!!」

 

「!!」

 

 

 レビル将軍からは、深い(いたわ)りの気持ちが感じられた。そしてかすかに、押し殺した怒りの気持ちも、また。レビル将軍も俺と同じく、戦友の無残な有様に……。デラーズ・フリートの捕虜虐待に、怒りを覚えているのだ。

 レビル将軍は、ロンのやせ細った手をそっと、負担にならない様に握り、しばしそのままでいたが、やがて手を離した。

 

 

「本当であれば、もっと長く居たいし、話したい事ももっともっと沢山あるのだが。他の救出された捕虜たちも慰問しなくてはならぬのでな。行かねばならない。名残惜しいが、これで失礼するよ」

 

 

 そして再度の敬礼と答礼を終えて、レビル将軍は病室を出て行く。そしてツァリアーノ大佐が口を開いた。

 

 

「ああ、俺もそろそろ行かにゃならねえ。お前らは?」

 

「俺もそろそろです。自分の大隊を放り出して来てるんで」

 

「あ、俺はまだ大丈夫だ。副官にぜんぶ放り投げて来てるからよ」

 

「アレン中佐……。あ、俺もまだ大丈夫ですよ」

 

 

 俺とツァリアーノ大佐は、苦笑する。そして俺はロンの奴に言う。

 

 

「早く身体治して、前線に戻って来いよ? 戦いは、まだまだ終わりはしない。デラーズ・フリート以外にも、まだ敵はいっぱい残ってるからな?」

 

「……」

 

 

 ロンは(まばた)きでこちらに応える。それに込められた強い意志を、俺は感じ取った。そして俺とツァリアーノ大佐は、敬礼と答礼でアレン中佐、デリス、ロンと別れると、病室を立ち去った。




幸いにもロン・コウ大尉は生きながらえました。ただ、ちょっと骨と皮になってますが。体重戻して鍛え直して、いつ頃になったら前線に戻って来られますかね。彼には頑張って欲しいものです。
さて、ア・バオア・クーを奪還し、デラーズ・フリートに残る拠点はサイド5とイバラノソノです。サイド5奪還戦は、あれは防御拠点としてはあまり向いていない場所ですけれど……。地球連邦政府と連邦軍という立場からすると、あまり激しくドンパチしてコロニー壊したりも……。せっかく復興してきたコロニー群ですからねー。
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