強化人間物語 -Boosted Man Story-   作:雑草弁士

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サイド5へ繋がる一手

 結局のところロンの奴は、ア・バオア・クーから後送されて最後方のサイド2の病院に入院することになった。サイド2を選んだのは、俺の知識とアボット少佐ら情報部の情報、そしてレビル将軍の意見を統合して考えたためだ。デラーズ・フリートを叩き潰した後にアクシズ勢力がやって来た場合、サイド2とサイド6あたりが一番戦乱に巻き込まれないで済みそうだと言う判断による。

 まあサイド6だと色々と政治的に難しいところもあるし、であるならばサイド2と言う事になったんだ。本当は地球に降ろそうかと言う話も出たんだが、地球降下は病身には厳しいんじゃないかって事もあって、宇宙のサイドでまだマシな場所を探したんだよな。

 

 ちなみにサイド2の病院に送られたのは、勿論ロンだけじゃない。いっしょに救出された連邦軍人の捕虜たちは、皆が皆ガリガリに痩せ細っていた。デラーズの野郎め……。ロンを含むそれらの捕虜たちは、ア・バオア・クーでとりあえずの手当てを受けた後、搬送に身体が耐えられると判断されてからサイド2へと送られた。

 ロンたち救出された捕虜が乗ったコロンブス改級の病院船が、ア・バオア・クーの宇宙港を出港していくのを、俺、アレン中佐、デリスの3人で見送っている。ちなみに宇宙港だから全員ノーマルスーツだ。なお流石にレビル将軍とツァリアーノ大佐は忙しくて来られなかった。でも今頃はア・バオア・クー司令部から病院船の出港を見守っているだろう。

 

 

『やれやれ、行っちまったかぁ……』

 

『奴が復帰するまでに、きっちりデラーズ・フリートのやつらはブッチめてやらないといけませんね』

 

『俺たちの戦友をああいう目に遭わせてくれたけじめは、きっちりつけてもらわないとな』

 

 

 アレン中佐、デリスが呟く様に言葉を紡ぐ。俺はそれに応える様に、決意を語った。ああ、そうだ。デラーズの奴は、叩き潰さないとならない。奴はジオン公国の理想がどうのこうの言ってるが、結局のところ連邦を改革しようとしている者達の足を引っ張るだけ引っ張ってる状態だ。

 奴には一分一秒でも早く、この世界から退場していただこう。そうしなければ、いつまでも迷惑を振り撒きやがるだけだ。

 

 

 

*

 

 

 

 まあ、俺だけがそう思ったからと言って、そう簡単にデラーズ・フリート攻略作戦を発動するわけにもいかない。まずは今回のア・バオア・クー奪還作戦による損害の回復からだ。実際のところ、損害軽微な俺の『オニマル・クニツナ』大隊ですらも、弾薬はほぼ空っぽだし、それ以上に片手で数えられる数だとは言えど小破機体は出ている。

 俺の部隊同様に、ア・バオア・クーのNフィールドから突っ込んだマット少佐の『デルタ・スコードロン』もまた、数機の小破機体と1機の中破機体の損害を受けているし。幸いな事に両大隊のどちらも、操縦士(パイロット)に死傷者はいないが。

 

 それだけじゃない。ア・バオア・クーSフィールドに展開していた連邦軍本隊は、乱戦になって戦闘開始した影響で、けっこう被害が大きい。レビル将軍の圧倒的カリスマと極限の指揮能力で持ち直したものの、痛い損害である事は間違いが無いのだ。

 

 何にせよ、ア・バオア・クー奪還作戦でダメージを負った連邦軍は、そのダメージを回復するためにしばし行動を停止せざるを得ない。そんなわけで、今現在ア・バオア・クーにはコンペイトウとグラナダからひっきりなしに物資が届いている。コロンブス改級の輸送艦が、次から次へとやって来るのだ。

 

 

「レイラ、うちの損傷機体は修理じゃなく、後送して新品の機体を受け取る事になってるんだったな?」

 

「はい、ゼロ中佐。可能な限り早くサイド5奪還作戦を開始するために、その様に。それと実機試験のために配備されていたGP01~GP05までのガンダム試作機ですが、これまでの当大隊での実戦運用で試験項目は大半こなれたと見て、これも後送になりますね。レビル将軍のGP03だけは引き続き運用なされますが」

 

「うん、あの人にはGP03レベルじゃないとなあ……」

 

 

 レビル将軍、あの人は平気で機動兵器で最前線出るからなあ。なるべく頑丈で長持ちする機体に乗っていて欲しい。さて、そうなると俺も含め機体が無くなった連中は、どうなるかな? 以前乗っていた機体になるのか?

 

 

「ただ、各中隊の指揮官機および一部隊員の機体は、先行量産型のGP04Gガーベラに差し替えになりますね。無論のこと、中佐の機体もガーベラになります」

 

「そうか。アレックス3には長い事世話になったよなあ……。デラーズを片付けた後に回されるはずだった、GP02の核バズーカ運用試験はどうなる?」

 

「それは現状ペンディングです。戦後、再度我々の部隊に命令が下るか、あるいは別部隊で核バズーカ運用試験が行われるかは、未定となっていますね」

 

 

 そうか、俺の機体はガーベラか。俺は手渡された書類を(めく)る。俺、クワトロ大尉、ユウ、レイヤー大尉、シロッコの指揮官級は当然として、クリス中尉、ヤザン中尉、ジャック中尉、マリオン准尉がガーベラを配備される事になってるな。

 その他のGPシリーズ活用メンバーは、基本的に以前使ってた機体に逆戻りって事か。やれやれ、機体が揃ったら至急の扱いで、機種転換訓練やら空間戦闘での連携訓練とか、ねじ込まなきゃならんな。

 

 

 

*

 

 

 

 シロッコ無双。

 

 いったい何を言っているのかわからないかも知れん。いや、実はシロッコの奴が、送られて来たガーベラのうち、俺、クワトロ大尉、シロッコの機体に試作バイオセンサーを組み込んだんだ。いや、ちゃんと許可を求めて来たから、承諾はしたけどさ。

 他にもウチの部隊員の中で、ニュータイプ能力者が乗ってる機体にも組み込みたいって言ってたんだが。それは許可できなかった。彼らの機体は、今回みたいにいきなり後送されて新品と入れ替えられる可能性もあるからな。万一バイオセンサー装備したまま持っていかれたら、お前も嫌だろう? って言ったら、シロッコは納得してくれたが。

 

 それとあいつ、可能ならばという申し送り付きだったが、試作機体を造ってみたいと言い出した。設計書は既に作ってあるそうなので、ざっくりとした説明と共に見せてみらったが。ぶっちゃけ可変MA(モビルアーマー)、PMX-000メッサーラだった。いや厳密に言うならば、更にその前段階の機体か。

 実機を造るのは、さすがに前線では設備も資材も無いので、連邦軍の工廠に任せたいとの事だったが。俺からレビル将軍に話を通してくれないか、との話だったので、次回の定期報告の際に頼んで見ると言っておいた。

 

 ただ、これはまだ試作機というよりは実験機のレベルだ。可変MA(モビルアーマー)としては最近NRX-044アッシマーがロールアウトし、地球上で猛威を振るっている。ORX-005ギャプランはティターンズ系列の研究所が開発しているらしいのだが、こちら側には情報が上がって来ていない。ティターンズの秘密兵器的な扱いになっている模様。

 実験機としてでもメッサーラを造る事ができれば、地球連邦軍の可変機技術はさらに向上するだろうな。ただ今の段階だと基礎的な技術がまだまだなので、実戦用の機体としては無理が大きいだろう。シロッコの図面や設計書にしても、問題点は幾つか残ったままだと言う事だったし。

 

 

 

*

 

 

 

 シロッコ謹製の試作バイオセンサーは、効果が物凄かった。機体が動く際の、思考とのタイムラグが格段に減ったんだ。それだけじゃない、人工ニュータイプ感覚による知覚力も、かなり跳ね上がった。

 今、俺たちはア・バオア・クー近傍の宇宙空間で機種転換訓練と、機種変更後の連携訓練のための実機演習を行っている。試作バイオセンサーを積んだGP04GR先行量産型ガーベラ改は、非常に調子が良い。打てば響くとは、この事だ。

 

 

「本当に凄いな、シロッコの能力は。才能だけではこうはならんだろう。才能に胡坐(あぐら)をかかず、努力を怠らなかったからこそだ」

 

『うむ、確かに……。この機体能力に関しては、わたしですら何ら文句をつけられんよ』

 

『ふふふ、ゼロ中佐もクワトロ大尉も、もっと盛大に褒め称えてくれてもかまわんのだが? ククク』

 

 

 ミノフスキー粒子が散布されていないため、通信の感度は良好でノイズはほとんど混じっていない。その通信の明瞭さのおかげで、冗談めかして言ってはいるが、シロッコの鼻高々な様子が声音によりはっきり感じられる。いや、人工ニュータイプ感覚のおかげでそれ以上に感じ取れてるんだがな。

 

 

「シロッコ、そう言えば連邦軍工廠からの質問状が、お前宛てに束になって届いてたぞ。レビル将軍を介して提出した、あのメッサーラ実験機設計書に関しての物らしいんだが」

 

『ああ、わかった中佐。演習終了したなら、早速目を通して返信するとしよう』

 

 

 そして俺たちは、実機演習に戻る。新たな機材に多少面食らった面々も居る様であったが、俺の部隊員たちは流石に腕に覚えのある練達の面々だった事もあり、すぐに実戦投入可能なレベルにまで至った。一安心だ。

 

 

 

*

 

 

 

 マット少佐の『デルタ・スコードロン』が、サイド5方面に強行偵察を行った。それによると、デラーズ・フリートはその戦力をサイド5暗礁宙域の本拠地イバラノソノに集中しており、サイド5自体には最低限の抑えの戦力だけを置いているとの事だ。

 これを受けてレビル将軍は、今現在動ける戦力だけでのサイド5奪還作戦を、敢行することを決定した。当然ながら俺たち『オニマル・クニツナ』大隊も、アレン中佐の大隊やデリス率いる部隊も、そして今回の情報を掴んで来た『デルタ・スコードロン』も、その作戦に参加する。

 

 ちなみにアレン中佐とデリス、それにマット少佐には今回の補給で、先行量産型のGP01-Fbフルバーニアンが配備されたとの事だ。彼らのうちアレン中佐とマット少佐は基本的に、通常の活躍の場が地球上である。そのため地球に降りたときにはコア・ファイターを地球用に換装して、GP01ゼフィランサスに仕様変更するんだろうな。

 閑話休題(それはともかくとしてだ)、俺たちを含めた連邦軍艦隊はア・バオア・クーを出港し、今現在サイド5宙域を目指して航行中である。その近傍、サイド5暗礁宙域にあるイバラノソノに対しては、サイド2の連邦軍基地、月面はグラナダ基地、宇宙要塞コンペイトウから可能な限りの戦力を抽出して牽制するとの事だ。

 

 

「……サイド5奪還で(つまづ)くわけにはいかないな。是が非でも、サイド5は『あっさりと』奪還しなきゃならん。損害も可能ならほとんど無しで、だ」

 

「ゼロ中佐、肩に力が入り過ぎてるぞ」

 

「ああ、すまない艦長。だが……。いや、確かにそうだな」

 

 

 俺は溜息を吐くと、(かぶり)を振る。

 

 

「少し、気が()いていたな。一刻も早くデラーズ・フリートを倒してしまわないと、と思ってしまってなあ。奴らは宇宙市民(スペースノイド)の解放とかほざいてやがるが、奴ら自身の行いの結果、改革に逆風を吹かせてる事にちっとも気付いていないんだ」

 

「大丈夫、我々は勝てるさ。まずはそれこそ、サイド5の奪還、解放からだ。落ち着いて行こう」

 

「ああ、そうだな艦長」

 

 

 俺はブライト艦長に頷くと、ブランリヴァル艦橋(ブリッジ)の窓から宇宙空間を眺め遣る。進行方向には、サイド5のスペースコロニー群があるはずだ。

 

 

「レビル将軍がサイド5奪還を急いだのは、これ以上サイド5の人々を奴らデラーズ・フリートの下に置いておくわけにはいかないと言うのが1つ。色々な意味で、な」

 

「長引くと、政治的にもまずいのは簡単に想像できる。それに人道的な面でも、あの政治を知らんか、そうでなくとも性格的に無視をしかねないデラーズにサイド5住民を任せておくわけにはいかん」

 

「そういう事だな。それにサイド5にある戦力が、一応の抑え程度しかないと言うのは好機だ。放置しておいて、何処からか奴らが戦力を調達でもしたら、まずいからな」

 

 

 俺の台詞に、ブライト艦長は眉を(ひそ)める。

 

 

「アクシズ、か……」

 

「ああ。あとはもしかしたら、程度の話だが。……アナハイムとかがひょっとしたら、やりかねん。奴らは二股も二枚舌も、お手の者だ」

 

「あそこがあったか」

 

 

 苦虫を噛み潰した様な顔になったブライト艦長が、吐き捨てる様に言った。まあ、この状況下でそこまで阿呆をやるかどうかは怪しいが、な。

 それに連邦軍の反レビル将軍派閥が、足を引っ張る可能性もある。流石に直接的にこちらに対し攻撃を仕掛けて来る事は無いだろう。ただ、デラーズ・フリートに居るはずのエルラン元地球連邦軍中将……。

 

 奴には地球連邦軍内部への伝手があった。今現在もおそらくはそのうち幾つかが残されていると言うのが、レビル将軍とアボット少佐ら情報部の判断だ。あくまで推測に過ぎないが、それはおそらく正しいだろう。

 奴らに動く余地を与えたくは無い。可能である限り、あっさりと、さっくりと、倒してしまわなければならないんだ。

 

 俺は艦橋(ブリッジ)の窓から、宇宙の闇を見据えた。




さて、ギレンの野望・アクシズの脅威Vで例えますと、ア・バオア・クーからマット少佐たちの『デルタ・スコードロン』を派遣してウチュウ-7を陥落させて、さあ次はサイド5だ、と言うところですね。で、サイド5の様子を見たら配備されているユニット数が少ない、チャンスだ!と(笑)。
まあゲームで言うとチャンスなのですが。実際にその場で生きている主人公たちにとっては色々考えますよね。でも周辺状況が許さないから、攻めなきゃなりません。

でもって、未回収の伏線の1つ、エルラン元中将。はたしてエルランはどう動くのでしょうね。彼は未だ、地球連邦軍内部への伝手があります。いくつかはレビル将軍と、そしてジャミトフに潰されてますけど。いえ、ジャミトフがコリニーやら色々を切り捨てた際に。

でもって、主人公たちの部隊の機体が、少し変更されました。あと、アレン中佐やらデリス少佐、マット少佐の機体も。アレンとデリスは、いつまでもG-3ガンダムじゃないだろうって事で。そしてそこはかとなくシロッコ、大暴れ。
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