強化人間物語 -Boosted Man Story- 作:雑草弁士
俺たちの艦隊がサイド5宙域に到着した時、デラーズ・フリートのサイド5残存兵力は、部隊を
問題は、撤退する奴らの本隊に多数のサイド5船籍の輸送船舶が入っていた事だ。我々としては、おそらくそうでは無いか、と思っていた事でもあるし、後々にサイド5での聞き取り調査をして確定した事でもあるが、奴らはサイド5に所属する輸送船舶を無理矢理に徴用、それをもってしてサイド5にある物資を
馬鹿野郎。声を大にして、そう言いたい。奴らは何も変わっちゃいない。旧ジオン時代から、何も変わっちゃいないんだ。自分たちだけの『正義』のためなら、
俺たち『オニマル・クニツナ』大隊も、マット少佐の『デルタ・スコードロン』も、アレン中佐やデリスの隊も、逃げる奴らを全力で追いかけて、可能な限り叩き潰した。だが俺たちが
戦術としては、確かに有効かも知れん。地球連邦軍としては、レビル将軍としては、サイド5の住民を飢えさせるわけにはいかない。だから急ぎ、多数のコロンブス改級を呼び寄せて、サイド5へと食料品や電子部品を始めとした大量の物資供給を始めた。だがその分、こちらの動きは遅れる事になる。
*
現状サイド5に於ける物資流通は、連邦軍の輸送艦艇がそのほぼ全てを代行している。ごくわずかは、軍属になってはいるが厳密な意味で軍人ではない、民間の輸送船も入って来ているんだが。ちなみに誤解されている事が多いし国ごとに定義が違ったりするんだが、軍属と言うのは軍人以外で軍隊に所属している者だったり、軍の組織に所属しない民間の軍関係者を言ったりする。
まあ、これはあくまで狭義の判断ではある。広い意味だと、軍隊に所属していれば皆、軍民問わず軍属と言う事もあるが。だからアニメの『機動戦士ガンダム』第1話でアムロ君が、『父が軍属です!』と言ったのも、広い意味でなら間違いじゃないんだ。厳密に突き詰めると、テム・レイは技術大尉でちゃんとした軍人だから、軍属という表現は間違いだと思うが。
「こちらが『まだ動けない』って情報は、エルランのルートを通じて奴らに流れてるのか?」
「その可能性は高いと言う話だがな」
俺とブライト艦長はサイド5暗礁宙域へ向けて航行中の、ブランリヴァル
「我々と『デルタ・スコードロン』の2個大隊を以てしての、奇襲攻撃か……。そして連邦軍本隊は少数ずつ
「連邦軍内部にすらも、正確なコロンブス改級の数を秘匿しておいて、秘密裏に戦闘参加部隊への補給を完了させる……。今回動かしたコロンブス改級の数は、本来サイド5への補給に必要な数の倍だ。あくまでサイド5への補給はちゃんとやった上で、戦闘参加部隊への補給は万全にできる」
「なるほど……。そして今回動くのは、レビル将軍派閥の部隊のみ、か。他派閥の部隊はあえて動かさず、サイド5への補給のために連邦軍は動けない、という体裁にするわけか。となると将軍は……情報部は、エルランの内通ルートをほぼ確実に特定している事になるのか」
感心した様なブライト艦長の様子に、俺も少々の
「ああ、ブライト艦長。レビル将軍は、サイド5奪還戦をはじめる前から、いやもしかしたらア・バオア・クー奪還戦前から、この展開を読んでいたのかも知れん。エルランのルートから、『まだ連邦軍は動けない』って情報がデラーズ・フリート内部に流れていれば、俺たちの奇襲は最大の効果を発揮する事になるな」
「奇襲攻撃が失敗しても、後詰め部隊の規模と想定敵戦力から、おそらくは何とか勝てるだろうが……」
「できるなら、戦後のレビル将軍派閥を維持するためにも、人的に大きな損害は避けたいところだな。
……レイラ!」
「はい」
俺の呼びかけに、背後で控えていたレイラが即座に反応する。今は勤務中なので、副官口調だ。
「大隊の連中は大丈夫か?」
「既に戦闘待機中です」
「了解だ。俺たちもそろそろ機体へ向かうとしよう」
「はっ!」
俺とレイラはブライト艦長に敬礼を送る。ブライト艦長も答礼を返して来た。そして俺たちは
*
奇襲は成功した。やはりエルランの内通ルートから流れた情報は、ある程度どころじゃない信頼性があった模様だ。俺たち『オニマル・クニツナ』隊は、慌てて
(クワトロ大尉! シロッコ! 3時方向の宇宙港より、ティベ級が出港中! 潰すぞ!)
(了解した!)
(ふ、こちらも了解だ)
俺たち3人の乗るGP04GRは、一斉に出港中のティベ級を狙撃する。各々のロングビームライフルが放った閃光が艦体を貫き、次の瞬間ティベ級は爆沈した。宇宙港の施設もまた、かなりの損傷を受ける。おそらくあそこからは、他の艦は出港できまい。
そして『オニマル・クニツナ』大隊は、暴れに暴れまくった。それは勿論のこと、敵の眼を惹き付ける目的があったのだ。しばし後、俺たちが待っていた事態が発生する。
イバラノソノの、俺たちが戦っていた方面とは別の側面から、凄まじいまでの爆光が立ち昇る。今回の奇襲攻撃には、幾つかの目的があった。その1つが成功を収めたのである。
「マット少佐、やってくれたか!」
そう、これはマット少佐の『デルタ・スコードロン』の戦果だ。まあ彼らだけではない。『オニマル・クニツナ』隊の独立偵察小隊、偵察用
その『デルタ・スコードロン』が、なんで隠密行動していたか、と言うとだ。以前俺たちがイバラノソノを偵察して、当時軍曹だったコーリー准尉が写真を撮って来た事があった。その際に判明したんだが、イバラノソノの中枢部分だけだが、核パルスエンジンで場所を移動できそうだって分かったんだよな。
ここまででもう解るだろう。『デルタ・スコードロン』の仕事は、その核パルスエンジンをブチ壊す事だったんだ。そのために『オニマル・クニツナ』大隊は必要以上の大暴れをして、デラーズ・フリートの眼を惹き付けていたわけだ。
これでもう、イバラノソノは移動する事はできない。奴らはもう、逃げも隠れもできなくなったわけだ。
「ブライト艦長! 作戦第2条件達成だ! レビル将軍の本隊に通信を!」
『ザッ解だ! 通信士、本隊へ送信! ザザザッ『波ハ打チ寄セタ』!!』
そして俺たちは戦闘を継続しつつ、ゆっくりと後退を始めた。『オニマル・クニツナ』隊だけじゃなく、『デルタ・スコードロン』もだ。流石に敵も、こちらの奇襲から時間が経過して、戦列とか整いつつあるからな。俺たちが精強だって言っても、このままだと物量ですり潰されちまう。
それに戦線に、グワジン級戦艦が出て来たからな。おそらくアレはグワデンだろう。デラーズの座乗艦……。アレが出て来た瞬間、敵の動きが変わった。流石の指揮能力だよ、くそったれ。
俺たちは母艦群を隊列の中央に入れて、じわじわと、じわじわと後退する。
『ザッ……。……』
「わかってる、ユウ。こっちとしては潰走にならん様に、整然と下がらにゃならん」
『こちザザッ0301-00、レイヤー大尉。02小隊と03小隊ザザザッ少しばかり消耗が激しいでザザッ』
「第03中隊そのものを、隊列の内側に入れろ。被撃墜は避けたい」
レイヤー大尉のホワイト・ディンゴ中隊は主力機がハイザック・カスタムだ。主武器がビームランチャーなので、射程距離は長く支援能力は高い。隊列の内側に入れてもそう大きく戦闘能力は削がれない。
そして……。待ちに待った物がついに来た。一条のビームが、『デルタ・スコードロン』のハイザック・カスタムを撃墜しようとしたビグロを、爆光に変える。
(遅くなってすまんな、ゼロ中佐)
(将軍! 来援は有難いのですが、お願いですから単機で最前線に出ないでくださいませんか!?)
(大丈夫だとも。ツァリアーノ大佐がすぐに追いついて来てくれる。それに君たちを信じておるからな)
うん、レビル将軍のGP03デンドロビウムだ。その後ろからは、続々とツァリアーノ連隊の
『ザザッすまんゼロ中佐! 俺のザザッザ隊が追い付いて来るまで、少し我慢してくれるかザザッ?』
「了解です、大佐! 全機、レビル将軍のGP03を中心にして展開! ツァリアーノ連隊が追い付いて来たら、それと交代して後方に下がるぞ!」
『『『『『『ザッ了解!!』』』』』』
たしか予定では、アレン中佐の大隊は俺たちから見て2時方向、デリスの部隊は10時方向から突入して来る味方部隊に所属しているはずだ。と言うか、そちら方面の主力として扱われてるらしい。
そして俺たち『オニマル・クニツナ』大隊と『デルタ・スコードロン』は、ようやくの事でレビル将軍のGP03に追いついて来たツァリアーノ連隊の前衛部隊と交代し、ようやくの事で後方に下がる事ができたのである。
*
ここはサイド5暗礁宙域の外縁部、主戦場から見ると最後方に位置する場所である。俺の『オニマル・クニツナ』隊とその母艦群、マット少佐の『デルタ・スコードロン』とその母艦群は、数隻のコロンブス改級の輸送艦より補給を受けていた。損傷した
俺は俺で、ブランリヴァル
『ゼロ中佐。あ、いえ、お食事中でしたか』
「かまわんレイラ。今終わったところだ。どうした?」
『はい、第03中隊の損傷機ですが、あと30分で応急修理完了との事です。その他の補給は完了していますので、30分後には再出撃が可能になります』
そうか、30分か。と言うか、30分もあるんだったら機体から降りて、パイロットの待機室に行ってそこで飯を食うんだったよ。
「了解した。隊員たちには、可能な限り身体を休めておく様に伝えてくれ」
『了解です』
俺の機体の整備は既に完了しているからな。俺も再出撃に備えて、少しだけでも休みを取っておくとするか。
*
結局のところ、俺たちの再出撃は30分ではなく1時間後になった。いや、レビル将軍から直接命令が下ったんだよ。デラーズ・フリートの戦力が2つに分かれて、片方はレビル将軍たちに突っ込んで行ったそうだ。だがもう1つの方なんだが、と言うかこちらの方が数的には多いんだが、一丸となって連邦軍の圧力が弱めの方角に向かい、逃走を図っているらしかった。
なおグワデンと思われるグワジン級戦艦は、レビル将軍の方へ突っ込んで行った部隊に含まれているらしい。なるほど、デラーズっぽいやり口だな。今更ながら、自分を犠牲にして少しでも兵たちを逃がそうとしてやがるのか。
……今更、なんだよな。ああ、今更すぎる。冗談じゃない。あんな事、こんな事、色々散々にやりやがったデラーズ・フリートの兵員を、逃がしてたまるもんかよ。
俺たち『オニマル・クニツナ』大隊に下された命令は、逃走する奴らの頭を押さえる事。今現在奴らの先頭を捕捉できる位置まで、各母艦に乗ったまま最大戦速で突っ込んでいる最中だ。ちなみに、これまで一緒に行動してた『デルタ・スコードロン』はちょっとまだ再出撃が叶わない状態なので、俺たちだけで殺る事になる。
ああ、そうだ。殺る気満々だよ、俺は。俺たちは。デラーズ・フリートとして、テロリストとして決起しやがった以上、逃がすつもりは更々無い。
「しかし……。何処に逃げるつもりだ? やっぱりアクシズか?」
『アクシズの艦隊が地球圏近傍に進出して来ている、という報告は……』
「そうなんだ、レイラ。その報告は、無い。ただ、こちらの対宙監視の眼を掻い潜って来ている可能性は、無くも無い。今の段階では、あらゆる可能性を排除するわけには行かん、な」
アクシズ勢力……。やはり来ている、のか? そして、どう動く? ……アクシズの奴ら、まだ来てないといいんだがなあ。
俺は深々と、溜息を吐いた。
さて、今回はエルランの内通ルートを逆用して、主人公たちの部隊とマット少佐の部隊で奇襲攻撃を掛けました。更に主人公たちの部隊を正面から攻めさせて、マット少佐に核パルスエンジンを壊してもらいました。
まあ、レビル将軍はかなり前、下手すると青葉区奪還戦よりも前から、この策を練っていたわけなのですがね。そのエルランは、今何処にいるのでしょうか(笑)。
そしておそらくデラーズの命令で、半数を大きく超えるデラーズ・フリート兵力が脱出を試みております。デラーズはレビル将軍の部隊に特攻しかけてますね。主人公たるゼロは、アクシズ勢力を警戒しておりますが、はたして。