強化人間物語 -Boosted Man Story-   作:雑草弁士

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ジオンのニュータイプ

 ソロモンはかなり急いで放棄されたらしく、施設や設備こそ、さほどは破壊されていなかった。しかし物資の類は持ち去られるか、あるいは破棄、破壊された物が多かったみたいだ。ラバンの奴が聞き込んで来た話では、だけどな。……いつの間にか、ラバンたちの事、敬称や階級つけないで呼び捨てにする様になったなあ、私。

 だけどその話は、正しかったみたいだ。このためレビル将軍は、星一号作戦――目標がア・バオア・クー、月面グラナダ、そして敵の本丸サイド3ムンゾのどれかは未だ発表されてはいない――の実施を延期し、ルナ2から物資を運ばせざるを得なかったんだ。

 しかしその補給物資の輸送は、遅々として進まない。何故なら……。

 

(ラ……ラ……。)

(くっ……。またか!やめろ!やめてくれ!……くそ、『私』『俺』の能力じゃ、届かないのか!?)

 

 ゴルゴムの……いや、ララァ・スンの仕業だ。彼女がエルメス使ってビットで攻撃して、補給艦コロンブスがソロモンに入港しようとするのを攻撃して、沈めてやがるんだ。なんであの女、ジオンに協力してやがるんだ!

 ……そんな事は分かってる。シャアがジオンにいるからだ。ララァはシャア・アズナブルを愛してるからな。アムロ曹長には悪いが。実際、アムロ曹長はフラれてるに等しいんだよな、気付いてないみたいだけど。『シャアをいじめる悪い人』『シャアを傷つけるいけない人』『あなたの来るのが遅すぎたのよ』だもんなあ……。

 ジャブローでシャアを殺しておけなかったのを悔やんでたけど、あそこでシャアを殺してたら……。ますますひどい事になってたかもなあ。復讐鬼ララァ・スンなんて、嫌すぎるぞ。上手く行けば、アムロ曹長がその心の隙間にはまり込むかも知れんが……。いや、正史より酷い殺し合いになる方が確率高いか。

 あ。連邦軍将兵が大勢死んだのが感じ取れる……。

 

「……終わったな。くそ、頭が痛い……。」

 

 比喩的表現じゃなく、本気で頭が痛い。いつものヘビがうねる様な痛みだ。いや、痛みの強さだけは普段以上だが。

 

「レビル将軍は、どう判断してるのかな。ちゃんと報告はしておいたが……。」

 

 そう、私はこれがジオンのニュータイプ能力者……。ララァですら、私は真正のニュータイプと認めていない。彼女の感性は、あまりにもオールドタイプ的だからだ。それはともかく、これがジオンのニュータイプ能力者の仕業であること、『ラ……ラ……。』と聞こえるのは、おそらく敵の名前の一部ではないかとのことを、私はレビル将軍に既に報告済みである。

 私はペガサスの自室を出て、食堂に向かおうとした。そろそろ昼食時なのだ。今しがた、人が大勢死んだのを感じたばかりで、食欲は無いに等しい。だが食わねば……。と、その時端末が呼び出し音を鳴らす。

 

「こちらゼロ少尉。」

『こちらブリッジです。お食事はお済みですか?』

「いや、これからだ。」

『そうですか……。申し訳ないのですが、即時ブリッジへ出頭してください。レビル将軍がお呼びです。』

「!!……了解。すぐに向かうとお伝えしてくれ、伍長。」

 

 部屋を飛び出した私は、即座に廊下の艦内移動用グリップに捕まり、ブリッジへと急いだ。

 

 

 

 ブリッジでは、レビル将軍がノーマルスーツを着用していた。パイロット用のやつだ。

 

「よく来てくれた、ゼロ少尉。」

「将軍……。そのお姿は?将軍はスクランブル配置には入られていらっしゃらない、いえ机仕事が忙しすぎて、入る余裕が無いはずでは……。」

「私は囮だ。

 ……度重なる補給艦の事故を、連邦軍司令部はなんらかの手段による攻撃と判断した。そのため、已む無く最精鋭の戦力である私の直卒部隊をもって、周辺空域の哨戒にあたる事になった。

 そう言う筋書きで、私が本当に哨戒に出る。それをダブルスパイを通じて敵へ流す。いや、既に流してある。……私が囮である事は、敵から見てもバレバレであろうな。だが同時に、私を亡き者にする最大のチャンスでもある。敵がその「何らかの手段」に自信があるならば、ここで投入してくるはずだ……!!」

 

 私は思わず叫ぶ。

 

「む、無茶です将軍!あ、いえ、失礼しました。」

「いや、構わんよ。だが、このまま補給線を寸断されていてはソロモンを後方基地として使う事ができん。それは星一号作戦の実施に影を落とす事になる。

 それに私は、貴官らを信じているからな。ことにゼロ少尉、君ならば私を護り抜いた上で、敵を倒してくれるだろうと。」

「……そう言われては、どうしようもありません。了解しました。ですが、僕からの嘆願を聞いてもらえないでしょうか。確実に将軍を護り、同時に敵を倒すために必要な事です。」

 

 レビル将軍は怪訝な顔をして、それでも頷く。

 

「む?言ってみたまえ。」

「ホワイトベース隊……今はたしか第13独立戦隊でしたか。それを至急、呼び寄せてください。彼らのうち少なくともアムロ・レイ曹長は、一度会いましたが間違いなく僕に匹敵するか、僕を凌駕する戦力です。「本物」になれるかどうかは、彼次第ですが……。」

 

 難しいだろうなー。私はそう結論付ける。御大が、アムロはパイロット最強だがニュータイプとしてはオールドタイプ的感性を持っていて、学習できないためにオールドタイプとして死んでいくしかない、って言ってるもんな。

 だからアムロ曹長は「本物のニュータイプ」にはなれないだろう。あ、いやコレじゃ「私の」結論じゃなく「御大の」結論だな。

 

「アムロ君が!?あ、申し訳ありません将軍。」

 

 ウッディ・マルデン艦長が驚いて自制を忘れる。将軍は目でそれを赦し、言った。

 

「艦長。私の名前で、艦隊司令部に命令を通達してくれ。第13独立戦隊、改ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースは、最大戦速にてソロモン宙域、X+256、Y+128、Z+512ポイントへ向かえ。そこで改ペガサス級強襲揚陸艦ペガサスとランデブーし、その後は私の直接命令に従う様に。」

「将軍、ありがとうございます。」

「いや、構わんよ。それでは我々は、一足先に合流ポイントへと向かうとしよう。艦長、頼む。」

「はっ!」

 

 マルデン艦長が操舵手に命令を下し、ペガサスは出港する。あれ?私の昼食はどうしよう?

 

 

 

 昼食は何とかなった。目標ポイントまではまだ時間あるんだから、即座に艦の食堂行けばいいんだよ。私は急ぎ、出されたハンバーガーを齧って、パックに入ったドリンクで胃に流し込んだ。

 

「そんなに急いで食べると、胃に悪いよ少尉さん?」

「いや、急ぎなんだ。ごちそうさま!」

 

 俺はトレーを返却口に押し込むと、急ぎ壁際の移動用グリップへ取り付いて右舷のデッキへと向かう。そして私は妙な事に気付いた。

 

(あれ?……『私』、自分の事を今さっき『俺』って考え無かったか?)

 

 そのまま私は、右舷デッキへと流れて行った。今はそんな事に気を取られている暇は無い。……だがその事は私の脳裏に、まるで鍋の黒ずみの様にこびりついて離れなかった。

 

 

 

 第13独立戦隊との合流ポイントで、ペガサスはソロモンとの相対速度をゼロにして、ホワイトベースを待っていた。私は今、右舷デッキの格納庫でG-3ガンダムのコクピットに居る。いつララァ・スンが来ても良い様にだ。だが私は別の気配を感じる。

 

(……なんだ?ララァ・スンじゃない……。しまった、もう1人いた!ブラウ・ブロだ!シャリア・ブル!!)

『MS隊は、全員出撃せよ!ゼロ少尉がまず発艦し、それが終了次第に第1、第2小隊が出撃する!』

「将軍!?将軍も……『感じた』のですか?」

『うむ。だが気のせいか、あの『ラ……ラ……。』と言う声の主とは違う気がするのだが?』

 

 俺は通信用サブモニターの中の将軍に頷く。

 

「はい……。はっきりと違いますが……。強敵です。お先に行きます。

 ゼロ・ムラサメ、G-3ガンダム、出るぞ!」

 

 私のG-3は、カタパルトで射出され、ペガサスの右デッキから宇宙へと飛び出す。そしてシャリア・ブルの気配の方へ全力で飛翔した。

 

「……そこか。居た!……あまい!!」

 

 そこには3つの胴体を無理矢理に束ねた様な、MAがいた。そして私のG-3は『前方』ではなく『上方』からの殺気の線を回避する。回避したとたん、そこにはメガ粒子のビーム束が走り抜けた。

 徐に俺は、G-3のビームライフルで『左方』と、次に『上方』を狙撃。ビームライフルの放った粒子ビームは、今射撃したばかりの有線サイコミュの2連装メガ粒子砲と、そして今まさに射撃しようとしていた単装メガ粒子砲をほぼ同時に撃ち抜いた。爆光が閃く。

 

(ほう!これは凄いな……。恐るべきニュータイプの様だ。)

(!?……貴様、何故ジオンに手を貸す!)

(!?)

 

 私のG-3はビームライフルで『下方』に『視え』る殺気の源である有線2連装メガ粒子砲を狙う。

 

(連邦政府は確かに腐っているさ!腐臭ぷんぷんだ!俺の様な兵器であるニュータイプもどきの強化人間を作るのが、それを証明してる!)

(きょ、強化人間だと!?君は……!?)

(だがな、それを変えようと努力している人もいる!俺を作り出した命令を出してしまった事を恥じ、悔やみ、償おうとしている人がいる!

 だがジオン公国はどうだ!貴様が手を貸しているザビ家はどうだ!?サイド1、2、4、5のスペースノイド数十億を殺害しておきながら!スペースノイドの代表みたいな顔をして、お笑いにもスペースノイドの解放をお題目に捧げるジオン公国は!?)

 

 有線2連装メガ粒子砲を撃ち抜く。爆光が広がる。これでブラウ・ブロに残された兵装は、向かって右側に展開している、左舷の有線単装メガ粒子砲のみだ。

 ララァ・スンではないが、シャリア・ブルも戦いをするべき人間ではないのだろうと思う。能力は凄まじい。戦闘能力も恐るべきものがある。だが、射撃前の殺気のラインが……殺意の気配が、完全に見え見えなのだ。

 訓練を積んだニュータイプ能力者であれば、対処は容易い。……いや、有線サイコミュは無線の遠隔サイコミュに比べ、気配がものすごく読みづらいのは確かだ。遠隔サイコミュは、かなりの遠距離であっても気配が読める。

 実際、コロンブス補給艦を破壊したビットの行動は完全に読めた。読めていても、対処のしようが無かったが……。でも、遠隔サイコミュが読みやすいのは、本当に本当だ。ほら、この通りに。俺はG-3の頭部バルカンを乱射した。その弾丸は、エルメスから遠隔操作され、私のG-3ガンダムを撃とうとしていたビットを撃破した。

 

(来たか!エルメスのララァ!)

(!?……わたしの名を読みとった!?あなたが……あなたが生き残れば、シャアが死ぬ!)

(だからニュータイプではないと言うんだ!ハハ、いやこれがニュータイプなのか!?ニュータイプとは、せいぜいがこの程度の物なのか!?

 なら俺は……。オールドタイプで……。強化人間で充分だ!)

 

 他のビットからビームが走るが、俺のG-3にはあたらない。全て読めている。そして後方からの射撃で、ビットが1基墜ちた。

 

(絶望してはいかん、ゼロ少尉!)

(将軍!?)

(レビル!?今あなたをここで墜とせば!)

(させない!)

 

 また1基、ビットが撃墜された。白、青、赤のトリコロールに塗装されたガンダム、その中身はG-3仕様なのだが、それがビームライフルを撃ったのだ。黒と銀で塗装されたプロトガンダムが、その後ろに付く。来てくれたか、アムロ曹長。

 更にその後ろに赤い中距離支援型MS……ガンキャノンが2機。そしてそれを追い抜くように2機のコア・ブースターが飛び込んで来る。

 ……そっか。ビグザムがあのザマだもんな。スレッガー中尉、生き残ったのか。

 

(く、ニュータイプでは無いはずだが!!)

(あまいんだよ、シャリア・ブル!彼らは俺との特訓で何度も打ちのめされても、それでも諦めずに食い下がって来た猛者揃いだ!)

(私の名も読み取った!?強化人間の力とは、これほどの物か……!?)

 

 有線単装メガ粒子砲が1門となったブラウ・ブロを、5機のジムスナイパーⅡが追い詰めて行く。しかし有線でのオールレンジ攻撃に戸惑い、なかなか仕留められないでいる。だが逆に、ブラウ・ブロも1機たりとて撃墜できないでいた。シャリア・ブルの焦りが感じられる。ついでにシムス中尉の慌てっぷりも。

 そこに長距離狙撃が来る。……読めたが、読みにくい。これが戦いを専らにする者の射撃だ。ほとんど殺気を表に漏らさずに撃って来る。

 

(!?……しゃ、シャア!!)

(アムロ曹長!レビル将軍と3機連携を取る!ジャブロー地下でやった、あの呼吸だ!)

(りょ、了解!)

(うむ。)

(やめて!シャアを殺させはしない!あなたがたがいると、シャアが、シャアが死ぬ!)

 

 残されたビット9基が、一斉にこちらを狙って来る。同時にようやく判別できる距離に近づいたエルメス本体のメガ粒子砲からも、ビームが迸った。

 

(悪いな!9基なんて限界を超えた数のビットを操らせて悪いんだが、俺たちレベルにはビットはほとんど意味を為さないよ!)

 

 これがハマーンの操るキュベレイのファンネルなら、ファンネルを操る糸もほとんど見えず、射線も判別できないんだろうなー、と思う。ララァ・スンもシャリア・ブルも、そのうちそのレベルに達する事はできるだろうが……。こいつらはニュータイプ能力者ではあっても、兵士や戦士には程遠い。

 ……ほんとなら、『私』『俺』も程遠かったはず、なんだけどなあ。あれ?さっきからいつもの頭痛がしているんだけど、その頭痛がなんら行動や思考の障害になってないぞ。なんか、頭痛を含めた身体の苦痛と、『俺』『私』の意識が切り離されたみたいな……。

 と言うわけで、わたしがビームライフルで1基、頭部バルカンで1基、そしてビームサーベルで1基の合計3基ビットを墜とし、レビル将軍、アムロ曹長もそれに倣って3基ずつビットを墜とした。……あれ?レビル将軍のニュータイプ能力、増してないか?

 

(墜ちて!)

 

 あ。ハヤト伍長のC-109ガンキャノンが、エルメス本体の2連装メガ粒子砲を受けて……。あ、分離してコア・ファイターになった。ハヤト伍長ェ……。運が無いよな、ハヤト・コバヤシ。

 

(ハヤト!くそおおおぉぉぉ!)

(あなたが来るのが、遅すぎたのよ!)

(何を!?)

(なぜ今になって、あらわれたの!?)

(ララァ、ララァ・スン!!)

(まずい!アムロ曹長とララァ・スンが共振を始めた!?)

 

 くっそ、今になって!シャアのゲルググも来た!

 

(わたしはシャアを愛してしまった!あなたたちを殺さねば、シャアが死ぬ!)

 

 アムロ曹長のガンダムが私たちとの連携を外れ、エルメスと1対1でドッグファイトを始める。シャアの赤いゲルググが突っ込んで来る。それを右半分を切り離した半壊状態のブラウ・ブロが支援する。く、第1小隊と第2小隊は!?ああ、いや。ブラウ・ブロの高出力に振り切られただけか。撃墜されてなくて、良かった。

 

(では、この僕たちの出会いは何なんだ!?)

(ああっ!これは!?これも運命だと言うの!?)

 

 ……凄いドッグファイトだ。機動戦には向かないエルメスで、ガンダムの攻撃を全て躱している。一方ガンダムは、だが徐々に詰将棋をする様にエルメスを追い込んでいる。

 

『奴との戯言をやめろ!ララァ!』

 

 シャアが来た。『私』『俺』はそれを撃つ。シャアはゲルググの左腕を犠牲に、その射撃を受け流す。そこへメガ粒子ビームが。

 

(邪魔なんだよ!シャリア・ブル!)

(うおっ!)

 

 ブラウ・ブロに残された最後のメガ粒子砲を撃ち抜き、そして左半分も破壊する。攻撃手段を全て失い、ブラウ・ブロの操縦担当をしているシムス中尉はブラウ・ブロ中央部だけで逃走を図る。だが逃がさん。私はブラウ・ブロ中央部に追いすがると、ビームサーベルで制御系の集中している場所を貫き、ブラウ・ブロを沈黙させた。

 何故だろう。殺してはまずい、そう言う気がした。

 

「赤い敵MSを、赤い彗星のシャアを止めろ!ガンダムと敵MAの戦いに割り込ませるな!」

『了解!……ザザザくっそ、速い!照準ザザッ合わねえ!』

『泣き言を言うザザザ、ラバン少尉!こうやって撃つんザザッ!!』

 

 ツァリアーノ中佐機を中心として、アレン中尉機、ラバン機、デリス機、ロン機、それにカイ軍曹のC-108ガンキャノンとスレッガー中尉のコア・ブースターが、狙撃用ビームライフルで、240ミリキャノンで、メガ粒子砲で、シャアのゲルググを狙う。どれがあたったのかは、わからない。だが爆光が広がった。

 

『ザザった?赤い彗星を墜としたのか?』

『やったな、ははザザザはは。』

『違うぜ!やったのザザッ片脚だけだ!』

 

 カイ軍曹の言う通りだ。シャアは攻撃を躱せないと知ると、射線上にあった右脚を切り離し、『私』『俺』とレビル将軍の迎撃もすり抜けて、エルメスとガンダムの間に飛び込んだのだ。そしてガンダムに向けてビームライフルを撃つ。ガンダムはその射撃をあっさり躱したが、それは突入を試みていたセイラ軍曹のコア・ブースターに命中した。

 

(大佐!いけません!)

『しまった、アルザザッイシア、か!?』

(セイラさん!くっそおおおぉぉぉ!!)

(落ち着け、アムロ曹長!……駄目だ、「外」からの声は届かないのか!?なら何故シャアは、あの低レベルなニュータイプ能力で「入れ」たんだ!?)

 

 コア・ブースターは半壊しながらも、まだ行動可能だった。右側の主翼と尾翼を失い、装甲板がめくれ上がり、帰艦できても全損扱いは免れないだろう。

 

 アムロ曹長のガンダムが、ビームサーベルを抜き放ち、シャアのゲルググを貫かんとする。ララァ・スンのエルメスがシャアのゲルググを突き飛ばし、身代わりになる。まずい!まずいまずいまずい!

 アムロがララァを殺したら、シャアによる悲劇の引き金になりかねん!どうすれば!この場でシャアを殺すか!?あの強運の塊を確実に殺せるか!?ここからビームライフルで狙撃して、『俺』『私』が先にララァを殺すか!?だが間に合うか!?どうすれば、どうすればいい!?

 

 

 

 ぷちっ。

 

 

 

 そして『俺』の中で、何かが切れた音がした。




さて、ニュータイプ能力が異常発達しはじめたのは、アムロ曹長だけではありません。主人公たるゼロもまた、今回の戦いで急激に能力が肥大化しつつあります。おまけにレビル将軍も。
そして1人称の変化……。これがいったい何をあらわすのか。主人公の身に、何が起こるのか!おまけでララァとシャアとアムロの三角関係は。

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