~約束の日~
「来ない。椿たちは五分前行動がなってない」
「まあそう言うなって、いつもの事だろ」
「翔太は、椿たちに甘すぎるよ……」
俺が近場の木の枝を見た所、
「つか、木の枝に掛かっている靴とスパッツはなんぞや」
公正もその木に目をやる。
「ほ、ホントだ!?で、でも、木の枝に靴って可笑しくない?」
「だろうな。で、どうする?」
そんな事もあってか、公正は靴とスパッツを枝から取り公園内に入って行く。
俺も続いて公園内に入ると、女の子が公園の建造物?に乗ってピアニカを吹いていた。また、その下にも、もう一人女の子が。
まあなんだ。子供たちと一緒に演奏し始めた光景は、ブレーメンの音楽隊っていった所だろうか。
「かをりちゃんー。そんな所で吹いてると風が――」
もう一人の女の子の言葉の途中で、突風が吹き荒れスカートが靡いた。かをりと呼ばれた女の子はスカートを押さえたが、その直前にシャッター音。どうやら、公正が写真に納めたらしい。見つかってしまったら、俗にいう盗撮魔になってしまう。
「あ」
「あ」
「へ」
「やっぱり」
女の子は顔を赤くし、公正にピアニカを投げ、顔面に直撃させる。
その後は、『お嫁にいけない』とか『違う、誤解だ』とかの口喧嘩である。
「かをりちゃんったら、こうなる事も考慮しようよ」
「だな。てか、お前誰?」
隣に立った女の子に俺が問う。
「んー、かをりちゃんの友達。今日は、かをりちゃんの付き添いで来た感じ」
もう一人の女の子は、黒髪のセミロング。白いワンピースが似合う子だ。
「私、雨宮里香。あなたは?」
「神矢翔太だけど」
「そ。翔太君ね」
おい、いきなり名前呼びですか……。まあいいけど。
「よろしく、雨宮」
「えー、名前で呼んでよ~。何か理不尽」
「は?お前こそ理不尽だろが」
はあ。と溜息を吐く俺。
「んじゃ、里香。よろしくな」
ともあれ、渡たちも合流した所で改めて自己紹介である。
「こちら、宮園かをりちゃんと、雨宮里香ちゃん……いや、その前になんであんたが居んのよ」
「かをりちゃん一人じゃ、心元ないかなって♪」
「いやいや、私が居るでしょうが!……まあ、私も同じ感じで公正たちを呼び出したけどさ」
ともあれ、椿は、俺と公正に渡の引き立て役しろ。ということらしい。まあ、友人A、Bという事だ。
「お前も友人Aってことか」
「そんな所かなぁ。ってか、お前じゃなくて里香って呼んでよ」
「一回呼んだだろ。まああれだ、気が向いたら呼んでやるよ。つか、椿以外に名前呼びとか、難易度高すぎ」
「ヘタレだねぇ」
「おいこら、ヘタレは言い過ぎだろ」
話を聞いた所、かをりと呼ばれた女の子は、今から
「お前も何か弾くの?見た感じ、何かの演奏家だろ」
「私これでも、ヴァイオリニストなんだ」
よく演奏家って解ったね~。という里香(内心では名前呼びができる俺)。
「雰囲気っていうか、纏ってる空気がって感じだな」
「(さすが、音楽に愛された神童。だね)」
そして、藤和ホールに向かって走り出す俺たち。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「到着!ギリギリセーフ!」
そう声を上げる椿。でも、ホールでは静かにしようね。まあ、防音だから演奏に支障はないと思うけど。
「なあ、やっぱ俺帰っていいか?」
やはりホールは、俺にとっては居心地が悪すぎる。
「ここまで来たのに帰るの?翔太も、かをちゃんの演奏を見てこうよ」
椿にそう言われれるが、やはり帰りたい。
「むっ。私の友達の音楽を聞かないとは、翔太君は何様だ」
「……いや、そんな事をいうお前が何様だよ……」
逃げられそうにないと悟った俺は、観客席に向かい歩き出す。
ホールに入ると、『……神矢じゃないか』『それだけじゃないぞ、あの有馬までいる』と、客席がざわざわする。
「やっぱりあんたらは、コンクール界じゃ有名人よね」
「やっぱ帰る……」
椿の言葉を聞き、俺は踵を返すが情けない声を上げる。
「ほら逃げない」
「離せ。俺は帰る」
里香が離してくれないと悟った俺は、
「……わかった、わかったから離してくれ」
それを聞いた里香は満面の笑みである。
ともあれ、俺は渋々席に着席する。そして、エントリーナンバー一番から演奏が始まった。
「(課題曲は、ベートヴェンヴァイオリンソナタ第9番『クロイツェル』、か。なんつーか、無難な曲だな)」
ちなみに、このコンクールは新設された大規模の大きいもので、少し注目されている。そして、このコンクールは伴奏付きで、結構珍しいコンクール。優勝者は、主催者所有の“グァルネリ”でリサイタルをできる特典もあったりする。
「(あ、音外した)」
だが、頑張ってヴァイオリンを奏で続けるヴァイリニスト。
「どう、久しぶりの生演奏は?」
隣の席に座った里香が、そう言ってくる。
「新鮮だな。久しぶりのコンクールだし」
「……そっか。まだ、ピアノは嫌い?」
「……さあな。……次だな、宮園の出番」
ドレスを身に纏い、舞台袖から宮園が姿を現す。そして、ヴァオリンに弦を載せる。
だが、宮園の奏でる音楽は『クロイツェル』は『クロイツェル』なのだが、ほぼ自己流。自分の有りのままに奏でている。
「……俺に似てる部分を見せる為に、俺を帰さなかったのな」
「そう。君の音楽も、最初の頃は自己が強かったからね。それでも審査員の心を引き付けちゃうんだから、性質が悪いよ」
俺の音楽は、楽譜に忠実に弾き、自己流を若干混ぜる。そして、コンクールで観客の心掴み心に刻みつけた。それがトリガーとなったように、『神矢翔太』の名は、コンクール界に名を馳せたのだ。……でも、一部の審査員には『作曲家の冒瀆だ!』って怒られたけどさ。
「でも、君が玄人になり、自己を無くして楽譜を忠実に弾いてもほぼトップ。チートだね、君は」
「……チートってなんだよ。てか、コンクールは楽譜を忠実に弾く場だし、予選落ちもかなりあったぞ。でも最初の頃、俺が出場したコンクールの結果発表が長かったような気もするけど」
「君が審査員を困らせた結果でしょうが。音を外さないで、自己を混ぜるとかどんだけよ。――でも私、君のあの時の音楽は、嫌いじゃなかったよ」
「あ、そう。それはありがたい」
「淡白な反応だなぁ。もっと『マジで、ありがとう!楽しんでくれて何よりだ!』くらいの感謝の気持ちはないのかね」
「いや、俺にそんな反応を求めるなよ……」
つか、俺が思うに、宮園はコンクールの結果など如何でもいいのだろう。
『自分の納得する演奏』これが宮園の音楽なのだろう。
「俺帰っていいか?コンクールの広場は居心地が悪すぎる。皆には、後でメールする」
「あ、じゃあ私も帰る。かをりちゃんの演奏も終わったことだし、後は椿ちゃんたちに任せよう」
「……なんつーか、お前気分屋なのな。知らんけど」
厄介な奴に絡まれる事になったなぁ。と内心で溜息を吐く俺。
ともあれ、友人Bとしての役目は終わったのだった。
オリ主は、オリキャラと絡ませるスタイルで行こうかと思います。
設定も大雑把ですが、許してヒヤシンス……。