今俺は、購買で飯を買ってから雨宮里香と廊下を歩いていた。
「ふーん。いつも音楽準備室でお昼ご飯を摂ってるんだ」
「まあな。あそこにはキーボードがあるから、暇潰しにもなるしな。……まあ、
「……そっか。じゃあ、何かの曲聞かせてよ。キーボードでいいからさ」
「つっても、今はJ-POP系とボカロ系しか弾けないぞ」
「ん、それでもいいよ」
了解。と頷き、俺は音楽室準備室に入って行く。
其処には、合同体育の時にバスケットボールが顔面に直撃し、保健室で授業をサボって?いた公正が仰向けに寝ていた。
「キエ――!」
すると、公正は突然奇声を上げて上体を起こす。大方、昨日の演奏の事でも思い出したのだろう。たぶん、いや、知らんけど。
「あれ、翔太に雨宮さん?どうしたの?」
「いや、俺は昼飯を食べようと音楽準備室に来ただけだけど。てか、公正は保健室で寝てると思った」
「気分転換に、音楽準備室で寝てただけだよ。あと、雑念を払ってた」
「雑念ねぇ。まあいいや、公正の分も買って来たから、やるよ」
俺は公正に、卵サンドとモーモ印の牛乳パックを渡し、公正はそれを受け取った。保健室で渡そうと思っていたが、今渡せて何よりだ。
昼飯を食べ終わると、隣の椅子に座っている里香が、
「じゃあ、翔太君。一曲お願い」
「まあいいけど。選曲は俺の自由でいいか?」
「OK♪」
ったく。と言い、俺はキーボードに手を乗せる。
そして、俺が弾きカバーする曲は、
――――シャルル。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「(……凄いなぁ)」
私は、想いが籠っている音を聞き、内心でそう呟く。
「今日はボカロなんだな」
音を聞き付け、渡君も音楽室に来たようだ。ちなみに、その手には翔太君と同じ購買メニューがあった。
私は振り向き、
「今日って、いつも弾いてるの?」
「いや、時々だな。まあでも、翔太の選曲は、誰にでも馴染み深い曲だけど」
へぇ。と私は声を上げる。
「(翔太君と伴奏してみたいなぁ。私のヴァイオリンと)」
でも、翔太君はピアノだけは拒絶してるんだよね。どうしよっか?
ちなみに、渡君と有馬君は、何やら男性特有?の話をしていたが、私の耳には奏でる音しか入ってこなかった。
「ゴラぁぁ渡!またケイコ泣かせたでしょ!」
「ひっ」
突如ドアを開け放たれ、そこには憤怒の形相をした椿ちゃんがバット片手に立っていた。
「(……渡君。そういう所は直していこうよ。将来、背中刺されちゃうよ……)」
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
~翌日~
俺が学校に通学していると、後ろから凄まじい足音がした。
「待てコラー!」
「だから、無理だって言ってるだろっ!」
「無理じゃない!おとなしく伴奏しろ――!」
宮園は器用に靴を脱ぎ、それを公正に後頭部に直撃させる。
まあなんだ、公正頑張れ……。
「おはよう」
「おう、里香か。で、どういうこと?」
途中で合流した里香に話を聞く俺。
「うん。実はかをりちゃん、二次予選通ったんだよ。聴衆推薦っていうやつで」
「ほーん。それは解ったが、何で伴奏が必要なんだ?一次予選の時、伴奏する人居たよな?」
里香は苦笑した。
「伴奏者に愛想つかれちゃったらしいんだ」
まあ確かに、伴奏者を振り回しまくる演奏をしていたので、そうなるのも不思議では無い。
「なるほどなぁ。そこで公正の伴奏、か。でも、大丈夫なのか?あいつら」
「たぶん大丈夫だよ。翔太君は、今年の毎報コンクールに出場予定とかあるの?」
「出るわけないだろ。もうピアノは辞めてんだから」
「……やっぱり、あの事件が原因?」
あの事件とは、俺の両親が、俺のピアノコンクールを見る為に車を走らせていたが、不慮の事故で亡くなったのだ。――そう、俺の両親はピアノに
「……まあ、な」
「……そっか。不躾な質問をしてゴメンね」
「……気にすんな。まあ、お前らから見たら、俺がピアノにいじけてるようにも捉えられるだろうけど。きっと両親も、俺がこうしてる事は望んでないと思うけどな」
「じゃあさ、ピアノを私だけの為に弾いてくれる、かな?」
俺は目を丸くする。
「……そんな告白めいた事できるかよ……」
それを観客に聞かれるとか悶絶ものである。
「でも、考えといて」
「へいへい。考えるだけな」
その日の昼休みに流れた音楽は、いつものポップスでは無く、クラシックであった。――サン=サーンス、『序奏とロンド・カプリチョーソ』。
それから音楽準備室に向かったから、途中から聞こえなくなって来たけど。だが、音楽準備室もサン=サーンス、『序奏とロンド・カプリチョーソ』の楽譜が所々に貼り付けられていた。まあ、公正が伴奏をやれ。という、宮園たちの意思表示なのだろう。
この事が繋がり、俺は朝に行われていた鬼ごっこの正体が解った感じである。
それから一週間というもの、宮園たちの強引なやり口は続いた。そして、昼休みの音楽も同じという事もあり、流石に俺のクラスのだけでも不満の声が多かった。――明日は、二次選考当日である。
最初はいいんですが、後半から更新ペースが落ちるんですよねぇ……。
ではでは、次回(@^^)/~~~