カミーユが女だったら鬱でもニヤニヤできる   作:Fabulous

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新年明けてもガンダムだ!


大気圏突入

 アレキサンドリア級ハリオ艦長のテッド・アヤチ少佐は辟易していた。

 

 その原因は目の前の男にある。

 

 航海中に突如としてデータに存在しない未登録のモビルスーツに乗って現れた地球連邦軍所属パプテマス・シロッコはあらゆる手続きを無視しずけずけと艦長室に入り開口一番に──

 

「この艦を今すぐに地球圏へと向かわせて頂きたい。エゥーゴの狙いはジャブローだよ」

 

 と、甚だ無礼で常識を踏み倒すようなやり方に肩を震わすも男の制服に煌めく大佐の階級章は規則や道理を重視する艦長だけに、沸き上がる感情を抑える他ない。

 

「し、しかし確証はありませんよ。エゥーゴはサイド4に集結していると聞きますしな」

 

「貴方には分かるまい。感じるのだよ⋯⋯私には分かる。地球圏には何か大きな力がある」

 

「はぁ?」

 

 納得できる答えが返ってくるとは期待していなかったがあまりに非論理的な答えに開いた口が塞がらなかった。

 

 ──ふざけてるのか? そんな理由で部下たちを最前線へ送れと? 

 

 だが同時に妙な納得も出来た。

 

 俗世から解離した印象を漂わせる彼は所謂、木星帰りだった。

 

 地球から7億5000万km、光速にして実に40光分も離れた惑星は旧世紀に比べ飛躍的に進歩した科学技術で宇宙空間の航行が容易とは言え、尚も辺境とされる神秘の世界だ。

 眉唾ながらそこに訪れた者の中には人ならざる力を手にする者がいると噂されていた。

 

 かつて一年戦争においてシャリア・ブルと呼ばれたジオン軍の兵士は木星帰りとして極めて高い空間認識能力を見せホワイトベース隊を苦しめた事実は、歴史の闇に埋もれながらも神秘の星の力を示している。

 

 今日この時までは、艦長もありがちな戦場伝説の類いだと思っていたが目の前の男の放つ圧に圧倒されていた。

 

 敢えて例えるならば冷気。

 

 自信と覇気に満ち溢れた立ち振舞いとは裏腹に、その瞳は寒気すら覚える程に透き通り、冷えきっていた。

 

「ああ、それと私のメッサーラの整備は最優先で頼みますよ。終わるまで船内で暇をもて余すとします」

 

 こちらの返答も聞かず去っていったシロッコの背が扉で見えなくなると、艦長はあからさまにデスクへ拳を叩きつけた。

 

 木星などど言う僻地で資源を集めていた素人に戦争の何が分かるのだ。武勲を挙げたと言う話も聞かないしそもそも軍部での立場もたいした位置ではない替えが利く存在だ。

 艦長は、一年戦争でミサイルとビームの雨を掻い潜って今の地位を手にしたことを思い返せばあんな不躾な男など怖くはなかった。

 

 

 怖くはないが、命令には従うしかない。それが軍人の定めなのだ。

 

 

 

 

 

 アーガマ艦内 

 

「これが30バンチの真実だ」

 

 モニターに映し出された光景はこの世のものとは思えないものだった。

 大地は枯れ、空気は汚され、人々は皆、死に絶えていた。そこに戦闘の跡はない。ただ夥しい数のミイラとなった死体が死した瞬間のまま、日常の生活の一場面のまま時間が止まってしまったかのようだった。

 

「そんな⋯⋯こんなことって⋯⋯」

 

「う、嘘よ。いくらティターンズでもここまでの虐殺なんて⋯⋯」

 

 コロニーで育ったカミーユは勿論、地球育ちのエマですら戦慄を覚える光景にクワトロは内心手応えを感じた。ティターンズの悪行をどれだけ言葉で言い並べるよりも強烈に単純に理解してもらえる方法がこの映像だった。

 

「残念だがこれはフィクションではない。実際の現実だ。ティターンズは一つのコロニーの住人1500万を皆殺しにした」

 

「でも、確か30バンチ事件は伝染病が⋯⋯」

 

 エマの言う30バンチ事件とは0085年に起きた30バンチコロニーで発生したバイオハザードである。激発性の非常に致死率の高い未知のウィルスによって住民は瞬く間に全滅し被害拡大を防ぐため地球連邦軍により隔離封鎖された悲劇のコロニー─それがエマたちが知る常識だ。

 

「全てティターンズが流したデマだ。実際は地球連邦政府に対するデモ鎮圧を連邦政府がティターンズに依頼し起きた悲劇だ」

 

「まさか、たったそれだけで住人全員を?」

 

「もちろんデモといっても一部は過激化しただろう。だがその代償が住民全員の殺戮など何の合理性も人間性もない狂気だ。彼らは地球連邦に批判的なスペースノイドと見るだけでまるで害虫のように処分したのだ。コロニーに毒ガスを使うと言うスペースノイドにとって最も残酷な方法でな」

 

「これじゃあ⋯⋯まるでジオンと同じだわ」

 

「ショックなのは分かる。だが我々の敵がどんな奴等なのかもう一度しっかり理解してほしい」

 

「これが、敵⋯⋯」

 

 カミーユを胸が締め付けられた。自分よりも幼い少女のミイラが虚ろな瞳で風に流され風化していく惨状が誰かが意図的に起こしたことだと信じられなかった。

 

 

 

「カミーユ、大丈夫? 確かにあの映像はショッキングだったわね」

 

 ジャブロー降下作戦の最終ミーティングを終えたエマはカミーユの居室へ来ていた。クワトロに見せられた映像を見てからカミーユの様子がおかしかったので、心配になり足を運んだのだ。

 

「エマさ⋯⋯中尉。貴女こそ、よく平気でいられますね。あんなに、沢山⋯⋯」

 

「死体が怖い? 軍隊ではあらゆる死体を見せられるわ。実戦でショックを受けないようにね」

 

「聞こえなかったんですか?」

 

「聞こえる? 風の音以外何が聞こえたの?」

 

「だから⋯⋯いや、もう結構です。一人にしてください」

「カミーユ、辛いことがあるなら一人で悩まないで誰かに──」

 

「ほっといてくださいよ!」

 

「エマ中尉に向かってなんてこと言うのよ! カミーユ!」

 

「うわっ、ファ!?」

 

 エマを部屋から追い出そうとした所、そこに幼なじみのファ・ユイリィが現れた。咎められたカミーユは驚いてその場でぴょんと跳ねた。

 

「な、なんでファがここにいるんだよ」

 

「戦争中なのよカミーユ。私も何か手伝わないとね」

 

 私服から官給品の制服に身を包んだファは物資を積んだ荷台を引いていた。何故か大胆に生足を披露していたのが気になるが、軍隊に属す少女なりのささやかな抵抗なのだろうとカミーユは思った。

 

「君が? 危ないよ。戦争は遊びじゃないんだぞ」

 

「あら、私だって役に立てるわ。なんならモビルスーツに乗ってあなたの背中を守ってあげる!」

 

「ファ! 冗談でも止めて!」

 

 ファがモビルスーツに乗るなどとんでもないとカミーユは頭を振った。親友に危険な真似をしてほしくはないし、何より人の命を奪うあの嫌な感覚を味わわせたくはなかった。

 

 だが元から世の為人の為になるような将来を思い描いていた当のファはエゥーゴに属しカミーユと共に戦うことに一種の生きがいを見出してしまっていた。カミーユと再会できても依然、深刻な状況に変わりはなかったがただ黙って親友以上の存在が戦っているのを傍観することは出来なかった。

 

「二人ともお喋りはそこまでよ。そろそろ大気圏突入の準備に──警報!?」

 

 敵機を知らせる艦内アラームを聞き瞬時にパイロットの目になったエマは動揺し顔を見合わせるカミーユたちに檄を飛ばす。

 

「出撃よカミーユ! ファは居住スペースに避難!」

 

「は、はい! ファもエマさんの言う通りにして」

 

「あっ ちょっと待ってよ! カミーユ~!」

 

 

 

 

 

 

「状況は?」

 

 エマたちが格納庫についた頃、クワトロは既に百式のコックピット内にいた。そこにデッキからブライトの直接通信が送られる。

 

「どうやらモビルアーマーに僚艦のシチリアが攻撃されたらしい」

 

「大丈夫なのか?」

 

「残念だがやられたようだ。付近にティターンズの艦隊も確認した。グリプスからの追っ手だ」

 

「敵も必死だな。振り切れそうか?」

 

「艦隊はそうだがモビルスーツは無理だ。それに降下作戦の変更はない。すまないが限界までバリュートは開かず降下しながら戦ってくれ。こちらもギリギリまで援護する」

 

「簡単に言ってくれるな」

 

「貴方なら、できるだろう? クワトロ大尉」

 

 その言葉と共に通信は切られ、クワトロはコックピット内で苦笑した。

 

 新艦長は任務に私情を挟む矮小な男ではないが、自分に関してはとことん人使いが荒いようだ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵⋯⋯敵はどこ!」

 

「カミーユ、隊列を乱さないで。これは実戦よ。ティターンズは私も知らないようなモビルアーマーを使っているわ」

 

 クワトロに続きエマとカミーユもリック・ディアスで出撃し、編隊を組み大気圏突入の準備をしていた。しかし後方のエゥーゴの艦隊が謎のモビルアーマーに次々と襲撃されていることにカミーユの心臓は高鳴る。

 

「どんどんやられてるじゃないですか。これじゃアーガマだって⋯⋯あそこにはファが!」

 

「任務に集中しなさい。私たちが隊列の鍵なの──あれはッ?」

 

 隊列の一機が突如飛来したビームに貫かれ爆発した。迎撃に入るMS部隊の砲火を泳ぐように潜り抜けたその機影は巨大な戦闘機のようだった。

 

「さて⋯⋯この私を惹き付けたのはあの黄金のモビルスーツか?」

 

 操縦席で引き金を引くごとに何人もの命を奪っていく中でもシロッコは気にもかけず忙しなく目を回す。そもそもパプテマス・シロッコの本来の任務は木星船団の隊長でありこの時点ではティターンズでもなければアーガマを追う責任もない。

 

 それでも、本来の母船たるジュピトリスを遥か後方に置き去りわざわざハリオに乗船し専行したのには個人的理由が大きかった。

 

 彼は自身の能力に絶対の自信があった。20代で木星船団の代表となったことは史上稀に見る快挙である。機械工学にも造詣深く手製のモビルスーツも多く製作した。乗機のメッサーラもモビルスーツ産業の覇者たるアナハイム・エレクトロニクス社製に勝るとも劣らぬ性能だと自負している。

 

 そんな自分の輝かしい成功を支えてきたのが、第六感とでも言うべき力だった。その力が、シロッコに告げていた。エゥーゴには何かいる。真の天才たる自分を強烈に引き寄せる存在もまた、自身に匹敵する超越者だと。

 

「黄金のMSから強いプレッシャーを感じる。奴か!」

 

 初めに狙いをつけた百式はいち早くシロッコの殺気を気取り先手のビームを撃った。先手を取られたことなど無いシロッコに取って、新鮮な体験に自然と笑みが浮かぶ。

 

「反応は上々。並のパイロットではないな」

 

 百式の性能やクワトロの技量をシロッコはただ一発のビームを見ただけで知らずとも感じた。

 相当な実力だと、自身に近い能力を持ったパイロットだと肌でひしと理解した。しかし──

 

「違うな。圧倒的でない。何処だ! お前か?」

 

「エマさん! 危ない──ッ」

 

「そ、そんな⋯⋯モビルスーツ?」

 

 MA特有の大出力で急加速したメッサーラはエマの目の前で一瞬にしてモビルスーツに急変形した。頭頂高 18.7mのリック・ディアスが小さく見えるメッサーラの体躯と、心臓を鷲掴みにされたようなプレッシャーにエマの心が止まった。

 

 ──やられる! 

 

 他でもない自分自身が死を直視したその間際⋯⋯

 

「エマさんから離れろー!」

 

 

 

 二人の間に入ったカミーユにシロッコはサーベルを抜き放ち一閃の下に両断するつもりだった。

 

「邪魔をするなら⋯⋯覚悟はいいか!」

 

 

「でぇぇやぁぁあ!!」

 

「なに!?」

 

 上段から放たれるサーベルの軌跡をカミーユはちょうど空手の師範が対刀の模範演舞をしていた時の要領をイメージしていた。

 

 振るわれるサーベル──柄元をリック・ディアスのマニピュレーターで合わせるとその勢いを制止させたばかりかそのままの流れで背後に回りサーベルで切りつけようとする。しかしメッサーラは木星の超重力すら振り切る大出力のバーニアに点火し直面にいたリック・ディアスを吹き飛ばした。

 

「か、カミーユ!? 貴女──」

 

「エマ中尉は一旦離脱してください。こいつはボクが!」

 

「何を言ってるの! ここは協力して敵を⋯⋯」

 

「分からないんですか! こいつは⋯⋯このモビルスーツのパイロットはヤバい! 何か⋯⋯とても嫌な感覚なんです」

 

 あまりの剣幕にエマはこのままカミーユを援護することに躊躇した。謎の可変MSを駆るパイロットはかなりの腕利きだとは理解できるがカミーユの言うヤバい、なる感覚は判別不能としか言えなかった。

 

 しかもそれよりエマはたった今カミーユの行った神業としか言えない動きに皮膚が泡立っていた。まるで武術の達人のような機敏で繊細な動きをMSで行うなど聞いたことも見たこともない。

 MS同士の白兵戦と言えば近接のビームサーベルやヒート系の武器を使って行うのが常識だ。それを無視し生身の格闘技のような戦法を実行できるカミーユの実力と度胸は、軍隊の先輩としてリードしようと密かに思っていたエマの意識を一変させた。

 

 

 ──ただの少女ではないと思ってはいたけど⋯⋯ここまでなの!? 

 

 

 そしてその大胆さにはシロッコも驚愕していた。

 

「危ないところだったな。まさかあんな原始的な方法でこの私の背後に立つとは。しかし、となると君か?」

 

 メッサーラは試すようにMA形態になり瞬く間に戦場を離脱しカミーユたちの視界とレーダーから消えた。

 

「に、逃げた⋯⋯の?」

 

「まだですエマさん! あのMSの気配を感じます。また来ますよ!」

 

 指摘通りカミーユの後方に広がる暗黒から流星の如き光が煌めく。

 

「これは避けられるか?」

 

 シロッコはメッサーラの両肩にマウントされているメガ粒子砲の有効射程ギリギリからリック・ディアスの背中を撃つ。敵パイロットが死角からの攻撃に気づいたところで回避不可能である、とシロッコの明晰な頭脳は少ない情報から瞬時にエゥーゴの新型機の回避運動を予想し最適解を導き出していた。

 

 解き放たれたメガ粒子砲はその計算通り射線上の目標をまっすぐ突き進む。

 

「攻撃!? 死角に注意しなさいカミーユ!」

 

 未だ敵機を捉えられないエマの忠告虚しく既にカミーユの真後ろには強力な光線が迫っていた。

 

 ──墜ちたな

 

 勝利を確信したシロッコ、しかしそのビームは寸前で回避される。コマのように機体をスラスターで回転移動させ紙一重の動きでメガ粒子砲を回避したのだ。

 

 

「くっ!? い、今のは危なかった⋯⋯」

 

 

 ──避けた? いや、今の動きはまるで最初からビームの軌跡を──

 

 シロッコは首を傾げた。未だ普及が完全に進んでいない全天型モニターを仮に敵が装備していたとしても今の攻撃を回避することはエースでも困難⋯⋯それも自身が狙いをつけて墜とすつもりで撃った。それを無傷で躱す芸当をできる者などニュータイプ以外あり得ない、と彼の矜持が僅かに震えた。

 

「私は自分の感覚を信じている。そしてこの感覚⋯⋯間違いない。私を誘ったのは君か!」

 

 そして同時に確信した。あのMSに乗るパイロットこそ意中の恋人だと。

 

「カミーユ油断するな。敵のパイロットは手練れだ」

 

「はい分かります。何か、嫌な気配がします。息が詰まるっ⋯⋯」

 

「戦い慣れてはいないが私の攻撃にはほぼ完璧に対処している⋯⋯ふふふ⋯⋯ハハハハ! 面白い! 俄然興味が湧いたぞ、不思議なパイロット!」

 

「そう易々とな!」

 

 既に再びMS形態に可変したメッサーラは一気にカミーユに迫ろうとするが、そうはさせまいと今度はクワトロの百式が二人の間に割り込んだ。

 

「目障りな。私の邪魔をするならば貴様から墜としてやろう」

 

「私がコイツを引き受ける。カミーユ、君はエマ中尉と降下作戦を完遂させろ!」

 

「でも大尉っ! ボクは──」

 

「勘が鋭いなら全体を見ろ! 作戦を見失うな!」

 

「ぐっ!? ちょこまかと!」

 

「しばらくお付き合い願おうか!」

 

 怒濤の猛攻でメッサーラに肉薄する百式にシロッコは苦虫を噛み潰す。

 

 一瞬の内に常人には理解できない攻防を繰り広げながら戦場を突き抜けていく二人に誰も手出しできず呆然と閃光の軌跡を追うしかなかった。

 

「無茶ですよ大尉! やっぱりボクもそっちへ──」

 

「余所見をするなんて気楽だな! エゥーゴめ!」

 

 カクリコンにしてみれば酷く気分の悪い戦闘である。再三の失態続きで軍内での立場も危うい自分にとって手柄を挙げることは最優先事項であった。

 エゥーゴならば最早相手が何であろうと引き金を引く、躊躇う枷など彼にはもうない。

 

「熱くなるなカクリコン。ライラの言う通り連携して叩くぞ!」

 

「ジェリド、悪いが手柄は俺一人で貰う! 後で妙な難癖をつけられないようにな」

 

「落ち着け! もうすぐ大気圏突入の限界点だ、バリュートが強制で開くぞ!」

 

 ジェリドたちティターンズも大気圏突入用の装備は着けていたが戦闘用ではない間に合わせ。一度バリュートが開けば姿勢は固定され移動も不可能。突入中に解除・ないし不具合が生じれば想像したくもない死に方を迎えることはこの場にいるエゥーゴもティターンズも分かっていた。

 

「その前にやればいいだけのことだ!」

 

「ティターンズっ。この感じは母さんを殺した奴⋯⋯母さんを⋯⋯! 本当に、どうしてお前たちはこんな時でも戦争を止めないんだァ!」

 

 

「貴様はあの小娘か! ちょうどいい、元はと言えば貴様のせいでケチが付き始めた! ここで恨みを晴らす!」

「黙れ! お前なんか、声も聞きたくない!」

 

 

 ここは戦場。敵を殺さなければ安息はない。だがカミーユもカクリコンも、死の恐怖よりも沸き立つ激情に駆られその手に殺意を乗せていた。

 

 

 

「不味いわっ ティターンズのMS部隊に追い付かれてしまった! カミーユが⋯⋯」

 

「エマ中尉、ブライトだ。クワトロ大尉もカミーユも隊列から大きく逸れた。ポイントマンの君は絶対に隊列から離れるな」

 

「しかしっ 二人には援護が必要です」

 

「作戦の完遂には君が必要だ。それくらい分かるだろ、エマ中尉」

 

「──っ。えぇ分かります。ですがあの二人もエゥーゴには必要です」

 

 

 隊列の先頭に立ち降下ポイントを目指すエマの眼下には既に青く輝く大地が迫っていた。

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