東方探求記~secret researcher~   作:ス・ザク

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初めましてアントニナスです!
どうかよろしくお願いします!


第1話:岡野正也

チュンチュンチチチチ

 

特にこれといった事のない朝が訪れた

 

「う、ううん・・・・」

窓から朝日が差し込み、瞼の外側を照らす、せっかく人が気持よく寝てたのに起こすんじゃねぇ

はぁ・・・何で朝ってこんなに憂鬱なんだろうな、一日の中で一番嫌いだよ

 

瞼を擦り、目覚まし時計を確認してみると、針は9時を指していた

今は夏休み真っ只中だから別にこの時間に起きた意味は特にない、起こされたんだから仕方ない

 

「あーもう、ニ度寝する気も失せたし、朝食朝食」

クローゼットから私服を取り出して着替えた後、階段を下って台所へと向かった

 

両親は仕事に行っている為、完全アローンである

冷蔵庫の中から冷やしてあったおにぎりを取り出し、ソファに腰掛けて頬張った

 

 

 

俺の名前は岡野正也(おかのまさや)、私立高校に通うどこにでもいる高校2年生だ

中学の頃はバスケットボールをしており、レギュラーの一員として県内の大会の優勝に向けて貢献した

高校からは部活は無所属であり、無論夏休みも退屈な物であった

友達はいるんだが、一人はバイト、もう一人は旅行中なので、する事も無く、家でボーっと過ごすか、近所をうろつくかの2択である

 

うちの両親は、昔から何かと俺に対して素っ気ない、熱が出ても看病してくれないし、何か嫌な事があっても相談にすら乗ってくれない、全て、「自分で何とかしなさい」の一言であしらわれる

だから、自慢では無いがこれまであらゆる事はほとんど自分でこなしてきた、だが、これは今に限った事ではなく、自分がはっきりと言葉や物事を理解出来るようになったその時以来ずっとである

これが普通の親が子供に対する扱いなのか?と疑問にも思ったが、特に気にしない事にした、気にしたって仕方ないもの

 

 

ところで今日、こんな夢を見た

 

まっ白いぼんやりとした空間に一人佇む俺に、どこからかこんな質問を投げかけられた

 

≪もし、異能の力が飛び交う地に行ったら、お前はどんな力が欲しい?≫

 

異能の力、と聞いて真っ先に頭に思い浮かんだのが、友人から借りて読ませてもらってる某ライトノベルだった

 

そして俺はその質問に対してこう答えた

 

「うーん・・・別に俺はそいつらと武器持って戦おうなんて思わないし、平和的に過ごしたいから、その異能の力を凌ぐような力でもあれば十分かな、例えば、イマ〇ンブレ〇カーみたいな」

イマ〇ンブレ〇カーというのはそのラノべの主人公の右手に宿ってる不思議な力の俗称だ

それ一本であらゆる異能の力を打ち消す事が出来る

 

すると声の主はこう答えた

 

≪ふむ、ならばそれに酷似した力、汝に与えんとす≫

 

そう言い終えるや否や突如ピカーンと眩い光に襲われ、そこで目が覚めたんだっけ?それでもってその光の正体が朝日だったという何とも締まらない終わり方だったとさ

 

ええい、夢の事考えたって仕方無い、おにぎりも食べ終わったし、ちょっくらスーパーまで行って戦利品を買い集めるとしよう

 

そう思い立ち、自転車に跨って地元のスーパーへと出かけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、暑い暑い」

スーパーで買い物を終え、現在マイ・バイサコー(つまりは自転車)に跨り、信号を待っている

籠の中にはスイカバー数本と三ツ〇サイダー、ズボンの両側にある大きめのポケットの中には苺大福がそれぞれ1個ずつ入っていた、わしゃ苺大福好きなんだよ、何もつっこまないでおくれ

レジ袋が有料化されたので、直に持っていくしかなかった、エコバックなんてそんな気のきいた代物は家には無い

 

 

まだお昼時では無いものの、茹だるような暑さが襲いかかる、何せ今日の日中の最高気温は38度だ

 

 

さあて家に帰ったら早速クーラーガンガンに効かした部屋でスイカバーを食らいつこうかと考えていたその時である

 

(ん?)

ふと、向かい側で信号待ちをしている女性に目が行った

いや、別にやましい事考えたとかそんなんじゃなく・・・・

 

 

格好が異様だったのだ

 

明るい柄の蝙蝠傘を手に持ち、ゴシックロリータな衣装を身に纏い、細長いリボンのついたナイトキャップを被った金髪ロングの女性だった

 

(な、何だあの人?)

コスプレ愛好家か?にしてはこの時期あんな暑そうなモン着てて大丈夫か?とか考えていたその時である

 

 

 

ギィィィン!

 

 

そんな効果音が、頭の中で鳴り響いた気がした

 

 

(か、体が、動かない!)

金縛りにでもあったのか、体が微動だにしない

突然の事に俺はパニック状態に陥った

 

 

その時、信号が青になった

 

 

すると、その女性はこちらにむかって一歩一歩近づいてくる

 

(動け・・・・動けよ!)

第六感はとっくに鳴り響いていた

理由は分からない、ただ、目の前の女性に尋常じゃない何かを感じた

 

女性との距離はおよそ30メートル

 

だが、こうしてる間にも一歩一歩、カウントダウンのように互いの距離は縮まって行く

 

(くっ・・・!どうにかならないのか!?)

 

あと20メートル

 

(う、うぐぐっ・・・・!)

が、何とか右手だけは震えつつ、重々しくも少しずつなら動かせるようになった

 

(た・・・頼む!)

その右手を踏ん張って、少しずつ太ももに持っていく

その動作に、何の意味があるのかなんて分からなかった、ただ、本能がそうしろと命令している気がしてならなかった

 

あと18メートル

 

(は・・・早く!)

 

あと16メートル

 

(う、うおおおおおおおおおおおおお!)

やっとの思いで右手が触れたその時だった

 

 

 

パキン!

 

 

 

何かが解き放たれた、そんな感じの効果音が頭の中で鳴り響いた

 

 

そして、金縛りに遭っていた身体が、嘘のように軽くなったのだ

 

 

(動ける・・・・・!)

そう思った頃には既に自転車を逆方向に走らせていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ・・・はぁ・・・・」

あれからどれだけ漕いだのか、そろそろ限界だったので路地裏に自転車を止め、俺は建物の陰にもたれかかって座り込んだ

あの女性の姿はもうどこにも見当たらない

 

「にしても、あの人は一体何者だったんだ?」

新手のファッションか?それにしてもここらじゃ見慣れない格好だったな・・・・

 

なんてあれこれ思考を巡らしていたその時だった

 

 

 

「人様を見るなり逃げ出すなんて失礼な人間ねぇ」

安堵していたのもつかの間、突如、右上の方から声がかかる

 

振り向くとそこには先程の女性が立っており、こちらを見下ろしていたのだ

 

「い、いつの間に!?」

ガバっと勢いよく立ちあがる、もう金縛りにはならない

 

「どこに逃げても無駄、とだけ言っておきますわ」

一息置いた後、彼女はこんな事を言い始めたのだ

 

 

 

「貴方の両親の秘密について、知りたくは無いかしら?」

「両親の・・・・秘密?」

一体何をいい出すんだこの人は、いまいち意味が分からない、というか何であんたが他所様の家庭事情知ってるんだ?そもそも両親に秘密があったなんて、俺も初耳だぞ?

 

「あんた、一体何者なんだ?」

大分落ち着きを取り戻し、彼女に質問を投げかける

 

「人に名を訊く時は自分から名乗るのが筋ではなくて?」

それもそうだったな、少し失敬だった

 

「俺は、岡野正也だ」

半ば冷静、半ば警戒心の籠った声で自分の名を名乗る

 

「私は八雲紫(やくもゆかり)、幻想郷からやって来た妖怪よ」

 

げんそーきょう?妖怪?

聞き慣れない単語が次々と耳に入る

前者はよく分からんが妖怪って何だ?ありゃ架空の生き物だろ?実在する筈が無い

 

「それで、その両親の秘密ってのは一体何なんだ?」

とりあえず一番疑問に思った事を聞いてみる

 

「あっちに行けばそのうち分かるわ」

「あっちって?そのげんそーきょうとやらにか?」

そもそもそんな場所実在するのかよ、聞いた事も見た事も行った事も無いわ

 

「ふむ、両親の秘密とやらは俺も興味があるな、ならば連れてってもらおうかそのげんそーきょうとやらに、最も、そんな場所が実在すればの話だがな」

口調からも分かるように、俺はこの人の言う事は真に受けていない、こんないきなり訳の分からない事話し出す人の言う事なんざ誰が信じるか

 

「そうねぇ、じゃあその前にあっちに行っても困らないかどうか、私がテストしてあげるわ、付いて来なさい」

「?」

テストって何だ?

さまざまな疑問を抱えながら言われるがまま彼女、八雲さんの後を追った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八雲さんに案内された所は、誰もいない古びた公園だった

付くや否や、「そこに立ちなさい」と言われ、現在彼女と向かい合った形で棒立ちしていた

 

「それじゃあ始めるわよ」

「何をです?」

始めるわよ、と言われても、まず何をするのかすら分からない

 

「まあ分かるわ」

そう言って八雲さんは懐から扇子を取り出し、片手で広げる

 

そしてその扇子をスッと横に薙いだ

 

 

すると、そこから奇妙な物が形成されたのだ

 

 

「何だあれ?」

何やら空間が裂けたような隙間(?)が現れた、両端はリボンのような物で結ばれている

 

またしても見慣れないそれをじっと見ていたその時である

 

 

 

ビュン!

 

突如、その隙間の中からテニスボールぐらいの大きさの‘何か’が飛んで来たのだ!

 

 

「うぉっと!??」

俺はそれを咄嗟に横に身を引いて回避する

するとそれはさっきまで自分がいた場所に着弾し、弾けて砂が舞った

 

「こ、これは一体・・・・!?」

「まだまだ終わらないわよ」

質問を投げかけるも、彼女は構わず再び扇子を薙ぐ

すると今度は自分の横から隙間が形成され、またしても弾が飛んでくる

 

ドォン!

 

それも何とか回避し、その弾はやはり地面に着弾した

 

「て、テストってまさかっ・・・!」

戦えって事かよ!?

 

この人、八雲さんの言っていた事は本当なのかもしれない、現にこうして得体の知れない物を見せつけられてるんだから

そして彼女の言っていた幻想郷というのがどんな所なのかもこれで大体想像がついた、この感じだとそこの人達もこんな風に戦闘スキルが備わってるって事なのかもしれない

恐らくこれはそこで生き延びれるかというテストなのだろう

 

あれこれ考えていると、今度は前後から俺を挟むようにして隙間が生み出され、二方向から弾が少しタイミングをずらして発射された

 

「うわわっ!」

たまらず真横に緊急回避する

 

ドォンドォン!と、生きた心地のしない効果音が鳴り響く

 

(くぅ・・・これでは一方的にやられてるだけだ、何とかしなければ)

すると突如、今度は目と鼻の先に隙間が形成されたのだ

 

(ま・・・ずいっ!)

 

 

その時、脳裏に今日見た夢の事が甦った

 

 

 

≪もし、異能の力が飛び交う地に行ったら、お前はどんな力が欲しい?≫

 

もしかして奴の言っていた‘異能の力’っていうのはこれを指しているのかもしれない

だが、問題はそこでは無かった

かと言って別にこの声の主が八雲さんの物だったとかではなくて・・・

 

 

何か、力を与えるとか言ってなかったか?

 

もしそれが本当なら、俺の右手には例の力が宿ってるって事に・・・・

 

いや、所詮は夢だ、何を真に受けてるんだ俺は

 

 

 

そんな思考を巡らしていると、目の前から弾が飛んで来た!

 

が、もう避けるのも間に合わない

 

 

(まずい・・・・!)

そう思うや否や、とっさに右手を突き出していた

その動作に何の意味があったのだろうか・・・

 

たまらずギュッと目を瞑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(う・・・うう・・・ん?)

あれからどれだけの時間が過ぎたのだろうか、あの後の事は、よく覚えていない

ただ、弾が飛んで来て身構えたという事しか・・・

 

いや待て、それだったら俺はぶっ倒れてるはず

何故俺は立ってるんだ?

 

 

恐る恐る瞼を開いていく

すると・・・・

 

 

そこに隙間があった

しかし、中からは何も飛んで来ない

 

だが、さっきは確かに弾が飛んで来た

なら、その弾は一体・・・・?

 

ふと、今さらながら右手を突き出したままだという事に気がついた

そしてその右手を確認してみると・・・

 

 

シューっと、何やら手のひらから細い煙のような物が出ており、傷一つ無かった

 

 

そこで俺はようやく理解した

 

 

「まさか・・・打ち消した!?」

何と、イマ〇ンブレ〇カーなる力が、本当に宿っていたのだ!

まさか、あの夢のお告げも本当だったのか!

 

顔を見上げ、紫さんの方を向くと、彼女は満足そうにニッコリした表情で

 

「さあ続けるわよ」

と言い、再び扇子を薙ぎ、隙間を形成した

 

そこからはやはりテニスボールの大きさの弾が発射される

 

だが・・・

 

 

パキン!

 

脳内にそんな効果音が響き、俺の右手によってそれは打ち消される

 

(消せる!)

今度は背後から弾が飛んでくる

だが、やはり振るった右手によってそれは打ち消された

 

(弾は全てこの右手で何とか出来る!)

 

すると今度は四方から隙間が形成され、自分が閉じ込められた形になった

 

少し戸惑ったが、俺は目の前の隙間の端に付いているリボンを右手で叩いた

 

 

パキン!という効果音と共に隙間が打ち消され、前回り受け身の要領でそこから脱出した

 

 

ドォン!と、さっきまで自分がいた所に3発の弾が着弾する

まさに間一髪だった

 

 

起き上がると、目の前には八雲さんの姿があった

 

「う、うおおおおおおおおおおお!」

今までの仕返しだ!と言わんばかりに、半ばその場のノリで彼女に向かって右手を構え、突進した

 

が、しかし・・・・

 

 

「合格ね」

という八雲さんからのありがたい合格通知を受けた

 

 

そして気がつくと自分の上半身は既に突如現れた隙間の中に入り込み、バランスを崩していたのだ

 

「なっ・・・・!?」

 

そして俺は、そのままその隙間に呑まれ、奇妙な空間へと落ちて行った

 

 

 

 

「ようこそ幻想郷へ」

彼女からの歓迎の言葉を最後に、俺の意識は途耐えた

 

 

TO BE CONTINUED

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