東方探求記~secret researcher~ 作:ス・ザク
「う・・・うう・・・ん?」
あれ、家のベッドってこんなに硬かったっけ?
瞼を開け、よっこいしょと上半身を起してみる
すると・・・
「ってか、ここどこ?」
今自分が寝てた所は周りが木々で囲まれた砂利道の上
おかしいな、わしゃいつも通りマイベッドで寝てた筈なんだが・・・
まだ頭がボーっとする
パンパンと、両手で自分の頬を叩き、頭のハードディスクを起動させ、今自分が置かれている状況の整理を始めた
そういえば昨日何したっけ?確か、晩飯食べてバラエティ番組観て、それから風呂入って寝たんだよな
別におかしな所は無い、だったら何故自分はこんな所にいるんだ?
あれこれ思考を巡らせていたその時である
「ん?」
ふと、少し離れた木々の中から1つの謎の物体(?)が姿を現した
よく見るとそれは物体ではなく、薄い羽を羽ばたかせて宙を飛んでいる生き物だった
「何だあれ?」
瞼を擦り、その生き物を注視する
「妖・・・・精?」
人形みたいな容姿、そして薄い羽、おとぎ話で出てくるそれにそっくりだった、てかそのものだった
いや待て、妖精が実在するはずが・・・
が、その時である
ビュン!
突如、その妖精が俺目がけてスーパーボールぐらいの大きさの弾を発射したのだ
「!?」
俺はとっさに横に転がってそれを回避する
パン!と、それはさっきまで自分が寝そべっていた地点に着弾し、消えた
そして俺は、その光景を見て全てを思い出した
「そうか・・・!俺は、幻想郷って所に来たんだっ!」
得体の知れない力を持った彼女、八雲さんのテストに合格し、俺はあの後隙間の中に放り込まれたんだ!
そして行きついた先がここだったという訳か
いやさ、せめてもうちょっと平和的な所に落としてくれてもよかったと思うんだ、こんな薄暗い森の中とかじゃなくて村とか町とかさ
そうこう考えている内に妖精はどこかに飛び去って行った
何だ、やるだけやって逃げる気か・・・
「どうやら、いつまでもこんな所に留まってたって、いい事ありゃしないな」
よっこいしょと立ち上がり、腕時計を確認する
時計の針は6時を指していた
「さあて、日が暮れる前にどこか安全な場所に行かなければ」
何せここは森の中だ、熊にでも出くわしたらおしまいだ
俺はこの地に来て初めての一歩を踏み出した
あれから15分ぐらいが経っただろうか
未だに森から脱出出来ずに彷徨っていた
途中で何度か妖精に出くわし、弾を撃たれるわ右手を振るって打ち消すわの繰り返しだった
さらには弾を打ってくるばかりでなく、髪の毛を引っ張るなど露骨なイタズラもされていい加減腹が立ってきた
なので左手でその妖精を捕まえてやった事もあった
だが、手足をジタバタさせていて可哀想だったので逃がしてあげた
いやね、それが蝿とかだったら容赦なく潰していたよ、でもさ、よく見たら可愛いのよ、あんな可愛い生き物潰せる訳ないじゃん
そんな事もあって、今も尚フラフラ歩いている訳だが・・・
「あーもう、いつになったら抜けられるんだっ!」
辺りを見渡しても木、木、木、草、砂利道
緑が豊かなのは結構な事だが今の俺からすればそいつらからあざ笑われてるようにしか思えない
畜生・・・
「このままじゃ、本当に熊が出ちまうよ・・・」
半ば脱力状態でフラフラしていたその時だった
トン、と、背中に何かがぶつかったのだ
何だ?と思って振り返ってみるとそこには・・・
「あ、人間だ」
見た目小学生ぐらいの、金髪で黒っぽい服を身に纏った女の子がおり、俺の方を向いてそんな事を言った
頭の左側には可愛らしく赤いリボンが付いている
しかし何故こんな森の中で女の子が一人うろついてるのだろうか?迷子にでもなったのだろうか?
「君、こんな所一人で出歩いてたら危ないじゃないか、お父さんとお母さんは?」
最も自分自身も同じ状況に置かれている訳だが、こんな小さな子を放っておく訳にはいかなかった
もう日も暮れかかってるし
「君、名前は?」
「私?私はね、ルーミアって言うんだ!」
わはーと嬉しそうに両手を広げ、元気いっぱいに自己紹介をする彼女
ルーミアちゃんか、あんま日本人っぽくない名前だな、てか日本人にそんな名前の人はおらん
「ねえねえ」
「ん?」
そんな事を考えてるとルーミアちゃんが俺を呼んでいた
どうしたんだろうか?
「お兄さんおいしそうだね」
「・・・・は?」
いきなり何を言い出すんだこの子は、初対面の人に向かって「おいしそうだね」とは何事か
親はこの子にどんな教育をしてるんだ、将来が心配になったじゃないか
「食べてもいい?」
さらに危ない事言ってきたよこの子、そういうのはもっと大きくなってだな・・・
って痛っ!?
突如、左手首が締め付けられる感覚に襲われた
「ねえ食べさせてよ」
見ると、ルーミアちゃんが俺の左手首を両手で掴んで、あーんと開いている口の中に引っ張ろうとしていた
何なのこの子握力いくつだよ!?
こんな小さい女の子に俺が力負けするだと!?
心霊ドラマなんかにある、子供の霊が物凄い勢いで海やら川やらに人間を引っ張って行くシーンを思い出した
俺は今それに似たシチュエーションをリアルに体感している
(ん?)
そういえば八雲さん、始めて会った時、こんな事を言っていたような・・・・
『私は八雲紫、幻想郷からやって来た妖怪よ』
(まさか・・・・妖怪!?)
彼女自身もそう名乗っていたように、もしかしてこの子も同じ‘妖怪’なのかもしれない
何て事だ、俺は妖怪帝国にやって来たという事なのか・・・・
そんな事考えてるうちに、自分の腕がルーミアちゃんの口の一歩手前まで引っ張られていた
(まずい!)
もしそうならばこの子は文字通りの意味で俺を‘食べる’気だ!
「は、離せえええええええええええええ!」
たまらずに右手でルーミアちゃんの手首を掴み、思いっきり引き離した
すると、強い握力で掴んでいた手はあっさりと引き離され、その勢いでルーミアちゃんはバランスを崩し、俺は解放された
するとルーミアちゃんは鳩が豆鉄砲を食ったような表情でこんな事を言ってきたのだ
「ほぇ、お兄さん力強いんだね」
力強いだと?
いや待て、それは俺の台詞だ
「ちょっと待て!物凄い勢いで俺を引っ張って食らおうとしてた奴が言うな!あれでも結構必死だったんだからな!?」
何だ、それとも俺をからかってるのか!?
「そうじゃないよ、人間の貴方が私より強い力で引き離してたじゃない」
この子よりも強い力で?俺が?
俺っていつからそんな握力ついてたっけ?
ふとその時、引き離した自分の右手を見た
この右手には、イマ〇ンブレ〇カーと似たような力が備わっている
(そうか・・・この右手!)
もしかして弾幕だけでなく、妖怪の力なる物も無力化出来るのかもしれない!
その時、改めて右手の価値観に気付かされた
もし掴まれていたのがこの右手首だったら、俺は一体・・・・?
てかそれより・・・
「てゆーかさ、いきなり承諾も無しに俺を食おうとするな!そもそも俺は食ってもおいしくないし、食べられるつもりも無いからな!」
「そーなのかー」
駄目だ、必死の説得もやる気の無い返事一つで返された
何を言っても聞く耳持たないだろう
「一人でうろついている人間がいたら食べてもいいって誰かが言ってたもん、という訳で食べさせて!」
「断る!」
てか誰だよそんな訳の分からん事吹き込んだ奴は!?
ええい、かくなる上は・・・
「アディオス!」
「あ、待ってよ!」
回れ右して全力でラン・アウェイ
無論待つ訳が無い
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・何だよあの子!?」
只今絶賛逃走中
いくら妖怪といえど足の速さなら負ける訳が無いと鷹をくくっていたのだが・・・
「空飛ぶとか何それ反則だろ!?新手のドラ〇ンボ〇ル!?」
どうやらここの妖怪はタケ〇プターが無くても空を自由に飛ぶ事が出来るようだ
はいはい、どうせ俺は只の人間ですよ!
「わはー、待て待てー」
本人は鬼ごっこのつもりだろうが俺からすれば‘鬼’そのものだった
何故なら今自分に懸かっているのは某鬼ごっこ番組にあるような賞金では無く、紛れも無い‘命’なのだから
更にはカラフルな弾幕までばら撒いてくるし、もうヤダこの世界
いくら右手が有力だからといっても、相手が飛んでるんじゃ一方的にこちらが不利だ
かと言っていちいち弾を消していたって無駄な体力を消耗するだけだ
(ん?)
ふと、今さらながら自分のズボンの両ポケットが膨らんでいる事に気がついた
忘れていたが俺はあの時苺大福を入れてたんだっけか?
(そうだ!こうなったら・・・)
ズササーっと急ブレーキをかけ、「ちょっとストーップ!」と言い放ち、ルーミアちゃんに右手を伸ばし、制止の合図を送る
すると彼女は追いかけるのをやめ、その場に降り立った
「君、お腹がすいてるんだよね?」
「うん、だからお兄さんを食べるー」
「待て早まるな!ここに俺よりももっとおいしい物があるから!」
そう言って俺は片方のポケットから苺大福を取り出し、ビニールをはがしてルーミアちゃんの前に差し出す
「ほれ、苺大福だ!絶対においしいから!ほらあーんして!」
「あーん」
言われるがまま開けた口の中にそれを放り込んだ
「ん・・んぐ・・」
頬張っている姿を見て一瞬和んだのはきっと気のせいだ
ああ、気のせいだ
「ど・・・どうだ?おいしいだろ?」
恐る恐る感想を訊いてみる
「うん、おいひー」
すると満足そうにそう答えてくれたので胸を撫で下ろした
そりゃうまいさ、少なくとも俺の腕なんかよりは!少なくとも俺の腕なんかよりは!(本当に大事な事なので二回言いました)
「そ、それじゃあさ!俺はこれから帰らなければならないんだ!だからさ、ここでお別れな!」
無論今の俺に帰る場所など無いが適当に誤魔化す
「えー、もっともっとー」
するとルーミアちゃんは苺大福が余程お気に召したのか、おかわりしてきたのだ
もう一個あるにはあるが俺の分が無くなってしまう
腹も減って来たし、何か食べなければならなかった
「ま、また今度いっぱいあげるからさ!約束するから!じゃあまたね!」
「うん、ばいばーい」
案外あっさりと解放してくれたみたいだ
おいしい物を食べさせてもらったからだろうか?
とりあえず分かった事は一人で出歩く時は何かしら食べ物を持ち歩こう、でないと俺自身がおゆはんになってしまう
「続くねー、この森も」
苺大福を食べ終え、少し空腹を回復させた所で再び歩き始めたのだが、一向に森から抜けそうにない
こりゃ森の中で一晩過ごす事になるかもしれん・・・・
「こんな所で何してるんだ?」
半ばネガティブ思考になっていると、突如、背後から声をかけられた
驚いて振り向くとそこには・・・
「そんなに驚く事ないだろ」
金髪で左側を三つ網にして、白黒の衣装を身に纏った魔女のような容姿の女の子が片手に箒を持って立っていたのだ
「はぁ・・・まーたへんちくりんな妖怪だな・・・」
「違う違う、私は普通の魔法使いだぜ」
「どの辺が普通なんだよ・・・」
とりあえず彼女は妖怪では無いという事は分かった
何だ、強ち妖怪帝国という訳では無いのか、ほっとしたぜ
「もう一度訊くが何でこんな所一人でうろついてるんだ?妖怪に食われるぜ?」
「うん、現にさっき食われかけた」
貴方も一人でこんな所うろついて何やってるんですかとは敢えて突っ込まない事にした
「どこか宿でもあればいいんだけど・・・」
「ああ、宿は無いが、それならここから少し行った先に人里があるぜ、何なら案内してやろうか?」
「人里!?」
何と、そんな物があるのか!助かった!
「助かる!是非とも案内してくれ!」
「ああ分かった、ちょっと待ってな」
歩き始めて約1時間、ようやくこの森とおさらば出来るとは・・・!
あぁ・・・長かった・・・
もう半ば泣きかけてたんだよな・・・
「おーい、準備出来たぜ、早くしろ」
「ああ、悪い」
後はこの魔法使いに付いていくd・・・ん?
見ると、彼女は何やら箒に跨って、後方の開いている部分に指さしている
こ・・・これってもしや・・・
「ま、まさか・・・・」
「連れていくぜ、せいぜい落ちないように気をつけな」
「おーい白黒、少しスピード出し過ぎやしないk・・・うぉおっ!?」
「他所見すると危ないぜ、それに私は白黒じゃない、霧雨魔理沙だ」
しばらく心臓に悪い空の旅が続いた
まあどっちにしろ俺は助かったんだ、白黒には感謝しないとな
TO BE CONTINUED