東方探求記~secret researcher~ 作:ス・ザク
「着いたぜ、ここが人里だ」
白黒魔法使い、霧雨魔理沙の箒に乗せられ、着いた所はまさしく人が住んでいそうな雰囲気を醸し出した所だった
夜なので全体の事は分からないが、現代人にとっては少し古風な家が立ち並んでいる
だが・・・・
「ようやく着いたか・・・・ははは・・・」
「おいおい、しっかりしろよ」
今は安全な所に来られたという喜びよりも、むしろようやく着いたという開放感の方が大きかった
飛んでる時のあの浮遊感と、魔理沙の肩に掴まっていた事による心臓の鼓動のダブルパンチで少々めまいを起こしているため、放心状態に陥っていた
「だがな、人里で暮らすには慧音の許可が必要だ」
「け、慧音さんって?」
「この人里を守ってる半獣だ、案内してやるからついて来い」
え・・・・半獣って何ぞ?
「あのさ、何か恐ろしい者を想像してしまったんだが・・・」
それもそうだろう、あんな可愛らしいルーミアちゃんにすら恐怖心を抱いたんだから
「その程度で恐ろしいなんて言ってたらこの世界でやっていけないぜ」
「いやいやその程度って・・・」
「つべこべうるさい奴だな、ほら、こっちだ」
ちょっと!と言い放ってみたがお構いなしにすたこらさっさと歩き始めた
そして俺はしぶしぶその後をついていくのであった、せめて話ぐらい聞いてくれよ・・・
「ここだぜ」
そして案内されたのはこれまた古風な一軒家である
見た感じ普通の家だ、恐ろしい妖怪が住んでいるなどとは到底思えない
そして魔理沙は箒に跨ったままこう言った
「じゃあ私はもう行くぜ、せいぜい達者でな」
「え、ちょっと・・・」
あ、あの、せめてその‘半獣’とやらが一体何なのか教えて欲しいんだが・・・
「男なんだから対面ぐらい一人で出来るだろ?じゃあな」
「いやそういう問題じゃ・・・っておい!?」
それだけ言い残すと魔理沙はビュン!と空にあがり、物凄いスピードではるか向こうへと飛び去った
「はぁ・・・行っちゃったよ」
まだお礼も言ってなかったのに・・・何でルーミアちゃんといい魔理沙といい、ここの人達は聞く耳持たないんだろう
それに半獣って・・・聞くからに狼男とかその辺りを彷彿とさせられる
かと言ってずっとここで立ち止まっている訳にもいかないしなぁ・・・・
「ええい、男は度胸だ!」
こんな弱気でどうするんだ俺、この世界に行くって決心したんだろ
だったら泣き事は一切抜きだ
すぅ・・・っと深く息を吸い込み、はぁ・・・っと一気に出して落ち着かせる
よし、いざ参るっ!
「ごめんくださーい」
コンコンと軽くノックをし、扉の向こうに声を投げかける
〈誰だ?〉
少し間を置いて、中から反応があった
声から察するに女性みたいだ
その後、すぐにガラッと扉が開かれた
俺は半ばビクつきながらもその主を確認する
「ん?ここらじゃ見かけない顔だな」
そう答えた家主は、白髪ロングヘアで、青っぽい服を身に纏った女性だった
頭には大学教授が被る帽子のような物を召している
恐ろしい印象など全く無く、むしろ目を惹かれる美人さんだった
「あの、慧音さんのお宅でよろしかったでしょうか?」
その容姿に少し圧倒されつつも、何とか口を開く
「そうだが・・・君は?」
「ええと、八雲紫っていう人にこの幻想郷に招待されました、岡野正也と言います」
うむ、我ながらナイス自己PR
「なるほど、渡来人か・・・」
彼女、慧音さんはしばしうーんと考え込んだ後、突如声を上げて問い詰めて来た
「って八雲紫だと!?一体彼女と何処で会ったんだ!?」
「え?買い物の帰りに道端でばったりと・・・」
何だろう、彼女の名は口にしちゃ駄目だったのかな?
それにしてもあのスイカバーと三ツ〇サイダー今頃どうなってるんだろう・・・まあ痛んでるわな
そんな事考えてると慧音さんは一呼吸置き、こう答えた
「彼女はな、この幻想郷を管理している、いわば大妖怪だ」
「何と・・・」
妖怪だって事は知ってたけど、そんなにすごい人だったとは・・・
「それで、彼女から何か危害を加えられなかったか?」
心配の念を込めて慧音さんが尋ねる
「危害・・・というより、何かテストとか言って模擬戦のような事はさせられました」
「一体何を考えてるんだあいつは・・・何故そんな事を」
どうやら八雲さんはこの世界の人にとってもよく分からない人らしい
「ええと、自分が幻想郷に連れて行って欲しいと頼んだんです」
「何だって!?」
そう答えると慧音さんは声をあげて迫って来た
「いいか、ここ、幻想郷には人間を喰らう妖怪もいるんだぞ!外の世界の、それも只の人間が興味本位で来ていい場所では無い!何故危ない橋を渡ろうとする!?」
おぉう・・・恐い恐い
人間を食べる妖怪が居るって事はさっき知ったけど、まさか説教を喰らうとは思わなかった
「いえ、興味本位ではありません」
「だったら何だ?」
「八雲さんの言ってた、『両親の秘密』というのがどうしても気になりまして・・・」
「両親の秘密・・・?一体何故彼女が君の事情を?」
まあそりゃそう思うわな、俺だって何故八雲さんが自分の知らない事を知ってるのか・・・
「分かりません、ですから、これについては自分で調べてみようと思います」
「なるほど・・・そのためにここ(幻想郷)に住もうとこの人里を訪ねて来たという訳か・・・」
むむ、流石人里の住人だけあって鋭い
こっちも話がスムーズに進んで大助かりである
「はい、空き家か何かあれば有難いのですが・・・」
「空き家・・・か・・・」
慧音さんはしばし案じ、そして思い出したようにこう言った
「確か、ここから少し歩いた所に何年も使われないまま放置してある一軒家がある、中はガラクタや埃塗れで掃除する必要があるがそこでも構わないか?」
何と、都合よく自分の住み家を、それもすんなりと確保する事が出来るとは・・!
「構いません、ありがとうございます!」
「礼には及ばん、それより今日はもう遅いし、私の家に泊っていくといい」
さらには一晩泊めてくれるという良心っぷりである
この人にはいつか絶対恩返しせにゃ!
「あ、ではお言葉に甘えて!」
そして俺は慧音さんの後に続き、家の中に入って行った
あの後、おゆはんをおよばれし、ついでに替えの服まで頂いた
いいんですかこんな立派な物を頂いても?と遠慮がちに尋ねると、私が君ぐらいの頃に着ていた古着だ、今の私には必要ない物だしなと、すんなり譲渡してくれた
俺達の世界でもここまで慈悲深い人はそうそういないだろう、是非とも見習いたい
そんなこんなで真夜中の事である
「うーん・・・」
不意に目が覚めてしまい、布団から上半身を起こす
「これからどうしようかなぁ・・・」
勢いで来てみたのはいいがこれからこの世界で何をしていくかは今の所ノープランである
それにしても・・・
(イ〇ジンブ〇イカーねぇ・・・)
俺は自分の右手を虚ろ虚ろになりつつも眺める
ルーミアちゃんとの一戦(向こうからすれば恐らく遊び感覚)を通じ、これからもこいつがこの世界で生きていく上で重要となる存在である事が分かった
この力が無ければ俺は今ここには居らず、ルーミアちゃんに食べられていただろう
ただ、弾幕を発射すると言った攻撃手段は備わって無いみたいなので、あくまで自らを守る盾と言った所か・・・
一体この力の正体は何なんだろうか、そして夢に出てきたあの人物は一体何者なんだろうか、謎は深まる一方だ
「む?」
ふと、正面の障子の向こうが明るかったので、そちらに目をやった
慧音さんもこんな夜遅くまで大変だなぁと思いつつ眺めていると・・・
(なっ・・・・!?!?)
障子には座り込んだ人影が写っていた
ロングヘアの女性、恐らく慧音さんだろう
ここまではいい・・・・問題は・・・
(な、何だあの角はっ!?)
その女性の頭部から2本の内側に少し湾曲した長い角が生えていたのだ
(はっ・・・!そういえばあの時・・・)
魔理沙の言っていた‘半獣’とやらは、恐らくこのことを指してたのかもしれない
まさか俺・・・・この人に食べられてしまう(文字通りの意味で)のだろうか?
ドサッ
そこまで考えて俺は気を失い、布団に倒れ込んだ
クックドゥードゥルドゥー
そんなこんなで翌朝
布団から起き上がり、現在朝ご飯をおよばれしながら話をしていた
「それで、正也はここに来る途中妖怪に出くわしたりしなかったのか?」
焼き魚を箸で毟りながら慧音さんが問いかける
「ええと、ルーミアちゃんっていう、金髪で赤いリボンを付けた女の子に一方的な鬼ごっこならされてました、あの子は一体何者なんですか?」
俺はそう言って冷ややっこを箸で四等分し、その内の一つを口に含む
すると、はぁ・・・と溜息を付く慧音さん
「そいつは宵闇の妖怪だ、よく生きてたな」
「いや、まぁ・・・・たまたま食べ物を持ってたのでそれを与えたら何とかなりました」
「何とも悪運に強い人間だな、それで、それから他の妖怪は現れなかったのか?」
慧音さんはまたもそう訪ねて、毟った魚の身をご飯の上に乗せ、一口入れる
「その後しばらく歩いてると、霧雨魔理沙っていう魔女みたいな格好をした女の子に出会って、ここまで連れて来てもらったんです、空の旅は生きた心地がしなかったですけど」
そう言って俺はお茶を啜る
「なるほど、それは災難だったな・・・」
慧音さんもそれ続いてお茶を啜る
「どちらにせよ助かったんだから文句は無いですけどね、それはそうと、幻想郷って具体的にどんな世界なんですか?」
舌の先端を火傷させつつ尋ねる、猫舌で悪かったな畜生
最初はてっきり妖怪帝国なのかと思ってたが魔理沙に出会い、その認識はすぐに撤回されたため、いまいちよく分からなくなったのだ
「そうだな・・・まあ一言で言えば‘人間と妖怪が共存する世界’だ、妖怪はともかくとして、ここで言う人間は大きく三つに分けられる、一つ目はこの人里に住んでいるような何の能力も持たない只の人間、二つ目は妖怪を退治する事を家業とする何かしらの能力を持つ人間、そして三つ目は君みたいな‘外の世界’からやって来た渡来人だ」
「なるほど、一口に人間と言っても色々あるんですね」
という事は魔理沙は二つ目に当て嵌まるのだろうか?魔女みたいな格好をしていた辺りRPGみたいに他にも戦士とか僧侶と言った職業があるのだろうか?
それは置いとくとして・・・
「じゃあ、妖怪には例えばどんなのがいるんですか?」
「うーむ・・・人間と同じように社会に溶け込んでいる者もいれば、ルーミアのように目的も無く彷徨っている者、あるいは‘異変’を起こすほどの力を持った者までいる、その種類は実に様々だ」
「‘異変’・・・・ですか?」
「ああ、最近起こったもので言うなら『大結界異変』、あらゆる季節の花が咲き乱れ、同時に幽霊も多数目撃された異変だ、他にも夜が明けない『永夜異変』、冬が開けない『春雪異変』、幻想郷が紅い霧で覆われた『紅霧異変』なんてのもある」
「ほぇぇ・・・」
やっぱり妖怪がいる世界だけあっていざこざも起こってたんだな、俺達の世界じゃ考えられない事ばかりだ・・・
「だが、幻想郷にはそういった異変を解決する妖怪退治のプロフェッショナルがいてな」
なんと、正義の味方のような存在もやはりいるのか・・・・!
「なるほどぉ・・・どんな人なんですか?」
「そうだな・・・普段は暢気で淡泊だが、異変解決となるとその前に立ち塞がる者は人妖問わず叩き潰していく容赦無い奴だ、巷では‘博麗の巫女’と呼ばれているがな」
巫女・・・・その単語を耳にした時、俺の経験が次のように語った
ああ・・・その人に関わると何かとアブノーマルな日々の幕開けになるな、と
ただでさえ幻想郷自体がアブノーマルな世界なんだ、そこで生き抜く為には自身の安全を確保するためにも出来るだけ物騒な力を持った人妖とは関わらぬようにしなければ・・・
あの後、話と朝食を終え、慧音さん宅を後にし、教えてもらった空き家に向かって足を進めていた
別れる際、「無一文はきついだろう、少ないが持って行きなさい」と言われ、少量の小銭を頂いた
(これはいつか必ず恩返ししなければ・・・・)
そう誓った俺は、更に力強い足取りで歩き続ける
人里はまるで江戸時代にタイムスリップしたかのような場所だった、立ち並ぶ木造建築の建物、そしてすれ違う人々は小袖やら羽織やらを身に纏っている
更には一際大きい屋敷まで建っていた、恐らくあの屋敷の主はこの人里の中でも特に強い権力や財産を所持している事であろう
「おお坊主!この大根買ってくかい?今ならサツマイモ1本おまけするぜい?」
そんなこんなで歩いてると突然横から威勢のいい声がかかる
振り向いてみるとそこには八百屋があり、ハチマキと褌を身に付けたおじさんが片手に大根、もう片方の手にさつまいもを手にしてこちらの方を見ていた
「あ、いえ、またの機会に是非利用させて頂きます」
「そうかい・・・おや?そういや坊主、ここらじゃ見ない顔だが新入りかい?」
「はい、新しくこの人里に住まう事になりました、岡野正也です」
「おぉ!一人暮らしたぁ大変だねぇ・・・頑張れよ!うちはいつでも営業してるから何か欲しい物があったらよろしくな!」
「はい!こちらこそ!」
何やら人里の人達とは仲良くやっていけそうだと期待を胸に乗せ、更に一歩一歩足を進めていく
あの後、件の空き家に到着し、慧音さんから渡された鍵を使って入ってみると、中はガラクタや埃塗れで、とても生活出来るような環境じゃなかった
そこで、慧音さんから依頼され、協力に駆けつけて来てくれた2、3人の里の住人と一緒に大掃除をし、およそ一時間後、ガラクタや埃は全て外に掃き出され、まだ使えるものは綺麗にして棚に収めたり設置したりして、ようやく夢のマイホームの出来上がりである
玄関からすぐの所には六畳間になっており、真ん中には卓袱台が置かれている、ここがリビングと言った所か・・・
そしてその奥は台所の間があり、また別の間にはトイレやお風呂まで完備されていた
とりあえず生活環境には今の所何の不満も無い
「点検終了と・・・今から使ってもいいよー」
「あ、ご苦労様です!」
更には河童さんまで点検に駆けつけて来てくれたのだ
某配管工が被っているような緑の帽子、水色のツインテールが特徴的だった
河童というからには皿も付いてるのかな?
「私は妖怪の山の河辺に住んでるから、また何かあったら呼んでねー」
「はい、ありがとうございました!」
こうして河童さんも玄関を後にした
さてと・・・・
「ふぅ・・・これからどうすっかねぇ・・・」
家は確保出来たと言っても、今度は食料云々を確保しなければならない
その為には何か仕事を見つけてお金を稼ぐ必要があるのだ
「といっても幻想郷ってどんな職業があるのかなぁ・・・」
無難に八百屋でバイトでもするか?などと考えていると・・・
「私が職を与えてあげるわ」
おお!あなたは神k・・・・・って
「のわあああああややや八雲さん!?いつからそこに!?」
突如背後から声がしたと思って振り返ってみればそこにはいつの間にか八雲さんが立っていたのだ、ビビったじゃないか
「さっきから、それと下の名前で構わないわ」
ま・・・まあここは幻想郷だし、細かい事にいちいち突っ込んでいてはきりが無さそうだ
それにここの人達って何かとフレンドリーなんだな・・・この人は妖怪だけど
「それで紫さん、職って言うのは一体・・・?」
そう尋ねると紫さんはふふふと微笑み、こう言った
「それはズバリ、依頼屋よ」
「依頼屋ぁ?それってもしかして、頼まれた事を引き受けて、成果を挙げればそれに応じた報酬が貰えるって感じのあれ?」
「まあ大体そんな所ね、貴方、気前良さそうだし、ぴったりの職なんじゃない?」
そりゃまあ周りの人には何かとよく気を使うけど・・・
「それで、その仕事の流れってどんな感じなんです?」
まずはそれが分からない事には話は進まない
「そうねぇ・・・基本は直接あなたに依頼と報酬内容を告げに来ると言った感じね、あなたはそこで頼まれた事をその場所まで行って成し遂げ、戻ったら依頼は完了、依頼主さんから報酬を受け取る、これが一連の流れね」
ふむふむ、要は客の期待に体を張って応える、そんな感じの仕事だな、案外やりがいがありそうじゃないか
「依頼内容は人によりけり、清掃やお手伝いと言った簡単なものもあれば、時には困難かつスリリングなものまで様々ね」
スリリングかぁ・・・それこそ妖怪退治とか頼まれたりするのだろうか
「もし依頼に来て、あなたが不在だった場合は内容を手紙に書いて、郵便受けに入れておく事とするわ、だから郵便物は必ずチェックするのよ」
「ちょっと待ってください、それってつまり依頼屋は自分の家で営むって事ですか?」
仕事をする上で事務所というものは必要不可欠なのだが、説明から察するにこの家を事務所にするって事なのだろうか?
「もちろんよ、何を今更訳の分からない事を言ってるの?」
むぐぐ・・・何かあっさり返されたな・・・
「でも、客の呼び込みとかはどうするんです?自分まだこの里に来たばかりで、ましてや店を構えてるなんてまだ誰も知りませんよ?」
「それについては心配いらないわ、私がちゃんと手を回しておくから、貴方はここで客が来るのを待ってなさい」
貴方だから心配なんですとは敢えて口に出さなかった
「そ、それは助かります、仕事を与えてくれてありがとうございました」
多少ながら腑に落ちない部分は残るが、とりあえず彼女には感謝しなければ
「ええ、せいぜい頑張る事ね」
そう言って紫さんは突如その背後に現れた隙間の中に入り、そしてその隙間は閉じて消えた
「依頼屋かぁ・・・」
この世界に来て、何とか職も確保し、いよいよ今日からここでの生活が本格始動だ
まだまだ分からない事もたくさんあるが、この仕事を通じて経験していけたらいいなという期待もあった
寧ろ今まで暮らしてきた俺達の世界よりも楽しい生活が送れるかもしれない・・・
よーし、早速張りきっていくぞ!
TO BE CONTINUED
会話メインになりつつあって先行き少し不安だなぁ・・・