問題児+剣士が異世界から来るそうですよ? 作:HuseRocK
俺が急いで黒ウサギたちのもとへ足を運んでいると、周りの景色が線状になり、前から後ろへと流れていくように感じる。ゲームの世界よりもリアルに、肌に当たる春先の暖かい風や地面を蹴る感触が伝わってくる。
心地よい疾走感に包まれながら俺が更にスピードを上げていくと、いつの間にか辺りが廃墟から空き家へと変わっていた。
もう一度頭にマッピングされた地図を見てみると既に黒ウサギたちの近くへと到着していることに気がついた。
少しスピードを落として辺りを見回しながら走っていると、黒ウサギ、十六夜、飛鳥、耀が突っ立っている前に子供たちが一列に並んでいる場所があることに気がついた。
俺が近づいていくと最も早く反応を示したのは十六夜だった。
「よお、和装ロリとの話は済んだのか?」
「ああ、――――それで、今は何をしているんだ?」
俺が十六夜と軽く会話を交わしていると、黒ウサギが割り込んできた。
「帰って来たんですねキリトさん! 丁度良かったデス、今コミュニティの子供たちにあなた方を紹介していたのですヨ」
ということらしいので、とりあえず自己紹介を終えた俺達はそのままの流れで今さっき手に入れた水樹を水路の先にある台座へ設置しに行った。
そして十六夜が水路に水を通すために水門を開けたとたん、水が一斉に流れ出した。
十六夜が再び水を被ろうとするのを回避して、俺たちのもとへ跳躍してくる。
―――俺がこの間に頭にメモをしておいたことは竜の瞳の価値と、十六夜がジンに名付けた御チビというあだ名だけだった。
※
俺たちがコミュニティの本拠となる屋敷についた頃には辺りは既に薄暗くなっていた。
黒ウサギと子供たちが浴槽の掃除に行き、俺たちが一通り館内を見回ったあと、黒ウサギから掃除が終わったとの報告があったので、女性陣がレディーファーストということで一番風呂になり、俺と十六夜は貴賓室で寛いでいた。
俺はやることもないので、どこまでゲームの世界の設定が通用しているのか確かめてみることにした。
先ずは右手を上から下へと降り下ろしてみる。
リン、という聞きなれた鈴の音が響くことはなく、代わりに服の布が擦れる音が聞こえてくるだけだった。
もしやと思い、左手でも試してみたが結果は変わらなかった。
次に目を凝らして辺りを見渡してみる。
いうまでもなく索敵スキルの検証である。
この世界に来た当初に黒ウサギを索敵スキルで発見していたので、成功することは容易に予想できていたが確認のためと詳細を知るために使用してみることにしたのだ。
最初に目に飛び込んできたものは十六夜だった。一番近くに居るということもあるが、それだけではなくゲーム世界ならば光るだけのシルエットが赤みを含んだどす黒い色に染まっていたからだ。
俺の索敵スキルはコンプリートしているので壁の向こうにいる人数などもわかるが、色が変化することはなかったはずだ。
これではまるでエネミーカーソルみたいだ。と思い、とりあえず索敵スキルはエネミーカーソルとプレイヤーの情報を合成したようなものを映し出すという折衷案で納得しておいた。
索敵スキルを物珍しく使ってみていると屋敷の外に明らかに子供のものではない人影が見つけられた。
このコミュニティに現在、在籍しているのは子供を除くと、黒ウサギ、飛鳥、耀、十六夜、そして俺だけで、女性陣は浴場に、十六夜は俺の目の前にいる。
つまり、外にいるのは完全なる部外者ということらしい。
俺がここまで思考をまとめると同時に十六夜が呟いた。
「さてと―――――今のうちに外の奴等と話をつけておくか」
※
「いい加減ここを襲うのか襲わないのかはっきりさせたらどうだ?」
俺が一見何もないように見える草むらに向かって問う。
普通に見れば何もないが、索敵スキルをおもむろに使い続けている俺には草むらに何かが隠れているように見えていた。
そして幸運なことに色は明るい白が入った赤色といったところだろうか。
なにも反応が無いのを確認した十六夜が地面に落ちている石を拾い、軽く投げつけた。
しかしその様子とは裏腹に膨大な爆音が辺りに響き渡る。
音を聞きつけたジンが俺たちのもとへ駆けつけてきた。
「な、何事ですか!?」
「なんだか侵入者らしいぞ」
答えると、先程の爆発で舞い上がっていた人たちが一斉に降ってきた。
否―――人間ではない。 彼らは全員人間とはかけ離れた体質を持っている。
そして皆等しくフォレスガロの被害者だった。
彼らがここに忍び込んだ目的は人質を――彼らの血縁者を助けるために、俺たちに〝フォレス・ガロ〟を完膚なきまでに叩き潰してほしいかららしい。
しかしそれに対する十六夜の返事は―――
「ああ、その人質な。もうこの世にいねえから。はいこの話題終了」
あっけなく、無慈悲にも十六夜が告げる。
そして一連の説明をする。冷静に冷酷に相手を突き放しながらも相手を利用するために。
そして宣言する。これからの行動を明確にするために。
「さあ、コミュニティに帰るんだ!そして仲間に言いふらせ!俺たちのジン=ラッセルが〝魔王〟を倒してくれると!」
※
「どういうつもりなんですか!?」
ジンがたまりかねた様子で叫ぶ。
しかし十六夜は全く意にも介さずに、笑ってやり過ごしていた。
「あんな面白そうな力を持った奴とゲームで戦えるなんて最高じゃねえか」
「面白そうって……お前なあ」
十六夜もコミュニティの現状を知っているはずだろうに、まさかこいつは自分の娯楽のためにコミュニティに協力しているんじゃ…?
俺が内心で冷や汗をかいていると十六夜が弁明のつもりか、今さっきのことを説明してくれた。
「ギフトゲームで勝ち、力をつけるのはのは大前提だ。問題は魔王にどうやって勝つかだ。
俺たちにはコミュニティを主張する旗頭が何もねえんだ。しかしこのハンデを背負ったまま先代を越えなきゃならねえ。そして売り出すものは―――そう、御チビの名前しかねえんだ」
十六夜の説明で俺もようやく全容を理解することができた。
つまり、『魔王を倒す』という名目の下でほとんどの魔王を敵に回す換わりに同じ志を持った仲間を見つけ、協力を仰ぐということだろう。
ジンも理解できたのか、承諾する換わりに一つ条件を出した。
「解りました。しかし条件があります。 今度開催される〝サウザンドアイズ〟のギフトゲームに参加してください」
「なんだ? 俺の力を見せろってことか?」
「それもあります。ですが理由がもう一つあります。このゲームには僕たちが取り戻さなければならない、もう一つの大事なものが出品される」
もう一つの大事なもの。
名と旗印と同等な価値を持つもの。
「―――まさか……、昔の仲間か!?」
「はい。それもただの仲間ではありません。 元・魔王だった仲間です」
仲間が売りに出されている――という事実に、言い表し難い感情が俺の中に渦巻いていくのを感じた。
しかし、それをここで顕にするのは筋違いというものだろう。
いくらここで怒ってもジン達の昔の仲間は帰ってこないのだから―――。
しかしそんな俺とは違い十六夜は、瞳を光らし、いつもの軽薄な笑いには凄みが加わり、気のせいか危険な雰囲気を漂わせていた。
「へぇ? 元魔王様が昔の仲間か。コレの意味することは多いぜ?」
「はい。お察しの通り、先代のコミュニティは魔王と戦って勝利した経験があります」
期待通りの答えだったのか十六夜が目を輝かせてまとめる。
「そして魔王を隷属させたコミュニティでさえ滅ばせる―――仮称超魔王とも呼べる超素敵ネーミングな奴も存在している、と」
しかし、十六夜が抱いている希望とは違い、ジンの答えは割と平坦なものだった。
「そ、そんなネーミングで呼ばれてはいません。魔王にも力関係はありますし、十人十色です」
ジンが語るには、〝魔王〟とは〝主催者権限〟を悪用している者達の名称であり、例えば白夜叉のように〝主催者権限〟の力を悪用せずにいる者は今はもう魔王とは呼ばれていない。――ということらしい。
その後、この話の内容の詳細を頭に詰め込み、俺たちが自室へ戻るため席を立ったとき、ふと閃いたように十六夜がジンに声をかけた。
「明日のゲーム、負けんなよ」
「はい。ありがとうございます」
十六夜の言葉にお礼を返すジン。
そしてジンに十六夜が告げる。
「負けたら俺、コミュニティを抜けるから」
「はい。「………え?」」
十六夜の突然の言葉に間違えて返事を返してしまった俺を差し置き、時間は決闘当日へとシフトしていく――――
読んでいただきありがとうございます!
今回この作品書いていて、ふと気がついたんですが―――展開が遅くね!?
と、いうことで少し今回はペースアップしております。
そのせいなのか元からなのか大変読みづらい文章になっていると思われますが、暖かい目で見守ってください(笑)
誤字・脱字や可笑しな文章、キャラクターの性格について等を感想で報告してくれるとありがたいです。