問題児+剣士が異世界から来るそうですよ? 作:HuseRocK
「ジン坊ちゃーン!新しい方を連れてきましたよー!」
ジン坊ちゃんと呼ばれたこの少年の名前はジン=ラッセルといい黒ウサギのコミュニティのリーダーである。
ジンは帰ってきた黒ウサギと一緒にいる人たちを見て、
「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性二人が?」
「はいな、こちらの四名様が――」
クルリ、と振り返り、カチン、と固まる黒ウサギ。
「……え、あれ?あと二人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から〝俺問題児〟ってオーラを放っている殿方と、つかみどころがなくて、飄々としていて、二刀の剣を背負った剣士のような、というより見るからに剣士の殿方は…?」
「ああ、十六夜くんと桐ヶ谷くんのこと?彼らなら〝ちょっと世界の果てを見てくるぜ!〟とか言って駆け出していったわ。」
飛鳥があっちの方と言って指差したのは上空4000mから見えた断崖絶壁――つまり〝世界の果て〟。
黒ウサギはウサ耳を逆立てて二人に問いただした。
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「〝止めてくれるなよ〟と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「〝黒ウサギには言うなよ〟と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょう御二人さん!」
「「うん」」
この会話で黒ウサギは前のめりに倒れこんだ。そんな黒ウサギとは対照的にジンは蒼白になって叫んでいる。
どうやら〝世界の果て〟には幻獣というギフトを持った獣――特に〝世界の果て〟付近の幻獣は強力らしい――がいるということだ。
だが問題児二人は気楽に、
「あら、それは残念。もう彼らはゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?……斬新?」
などと話している間に黒ウサギはキリトたちを追いに行ったようだ。
飛鳥たちは軽く自己紹介して箱庭の外門をくぐっていった。
※
その頃のキリト&十六夜ペア
「ヤハハハハ!お前かなり速いな、俺についてこれるとは!」
「まぁな!」
キリトは余裕を持って答えるがこれでもかなりギリギリだ。
俺は今黒ウサギについていくところを抜け出そうとした十六夜についてきている。
俺もこの世界のことは気になっていたし、何より十六夜の正体――NPCなのかプレイヤーなのかそれとも本当に生身の人間かどうかを確かめたかったのだ。
しかし生身ならばこれほどの速さで走れるのだろうか?と疑問に思ったものの、黒ウサギの話によると彼らは本物の、ゲームの中の設定などではなく実際に超能力と呼ばれる力を手にしているのだから当然なのかもしれないが。
「桐ヶ谷って言ったっけか、お前もなかなか強そうだな!」
「キリトでいいよ!」
「そうか、俺のことも十六夜でいいぞ!」
耳に鳴り響く風の音に負けないように、俺と十六夜は大声で会話している。
幸いにもこの世界は俺のSAO時代のステータスもそのまま生きているようだ――ようなのだが、俺は今限界に近いスピードを出しているにもかかわらず十六夜は俺と同じかそれ以上のスピードを出している。
(つまりこいつは俺と同じプレイヤーという考えでいいのか?いやだけどそれにしてはこの世界はリアルすぎるんだよなぁ)
気づけば十六夜はさらにスピードを上げていた。
化物か!――とでも突っ込みたくなる速さである。
俺も負けじとスピードを上げていった。
※
必死に十六夜を追いかけているうちにどこかについたようだ。
「すごい滝だな」
俺が素直に感嘆を漏らしていると、地響きがだんだんと近づいてきた。
『ほぅ、こんなところに人間が来るとは珍しい。』
急に目の前の滝から蛇のような生物――後に黒ウサギから聞いた話では蛇神――が出てきた。俺が一体なんなのかと見ていると、
「おい、てめー強そうだな俺と戦え」
十六夜がいきなり勝負をふっかけた――この時の十六夜はとにかく何でもいいから戦ってみたかったらしい。
流石に蛇神もいきなり勝負を挑まれるとは思っていなかったらしく虚を突かれたようだが、
『―――なかなか面白い人間だ。さぁ、試練を選ぶといい!』
どうやらやる気のようだった。
が、十六夜はその態度が気に入らなかったらしく、一体何様のつもりなのか、
「はっ、随分偉そうに言ってくれるじゃあねぇか。お前にその価値があるか試さしてもらうぜ!」
急に十六夜が跳躍し、なんとそのまま蛇神を蹴っ飛ばし、盛大な水しぶきをあげた。
俺はかなりの数のすごい技や強力な敵――もちろんゲームの中だが――を見てきたがこれには驚くほかなかった。
話は変わるが、目の前にボス級のモンスターが現れると倒したくなるのがゲーマーの性というものだろう。
「俺も参加するぞ」
俺が十六夜の返事を聞く間もなく蛇神が起き上がった。
『まだ……まだ試練は終わってないぞ、小僧どもォ!』
水柱が立ち上がり、蛇神が咆哮を上げる。
だがキリトは、もちろん十六夜も引く気はない。
『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃をしのげば貴様の勝利を認めてやる』
「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ」
ボス級モンスターが妥協するとは驚きだが、それに喧嘩を売る十六夜には絶句するしかあるまい。
――まぁ、俺も倒すつもりだが。
『フン――その戯言が貴様の最後だ!』
蛇神が雄叫びを上げて嵐のように水が巻き上がる。
竜巻のような水柱はかなりの高さまで舞い上がり、今にもこのあたりを破壊しそうだ。
水柱は三本がそれぞれ生き物のように蠢き俺と十六夜に襲いかかる。
この力こそ〝神格〟のギフトの力だった。
―――しかし
「―――ハッ、しゃらくせえ!!」
十六夜は腕のたった一振りで三本の水柱をなぎ払う。そしてそのまま空中で体勢を整えながら地面に向かって落ちていく。
十六夜の活躍に目を奪われながらも、俺も二刀流突撃技ソードスキル《ダブルサーキュラー》を発動させる。
『馬鹿な!?』
驚愕する声が辺りに響き渡る。
俺の力は少し違うが十六夜の力は人智をはるかに超越していたのだ、驚くのも無理はない。
俺がソードスキルが発動したことに安堵していた直後、大地を踏み砕くような爆音が響いた。十六夜が俺の後ろから、亜音速で飛んできたのだ。
蛇神の胸元に潜り込んだ俺のソードスキルと十六夜の蹴りは蛇神を空高く打ち上げ、そのまま川に落下さした。
その衝撃で川が氾濫し、水で森が浸水する。――そう水が。
「え、ちょっと待っ―!」
※
また全身を濡らした俺たちはバツが悪そうに川辺に戻ると、黒ウサギもいつの間にか来ていた。
「あれ?お前黒ウサギか?どうしたんだその髪の色」
黒ウサギが俺たちに気付き、怒り心頭といった様子で振り返った。
「もう、一体何処まで来ているんですか!?」
「〝世界の果て〟まで来ているんですよ、っと。まぁそんなに怒るなよ」
十六夜が小憎たらしい笑顔で対応している。
「それにしてもすごい速さだな」
俺たちはここに来るまでそれなりのスピードを出してきた。ここで止まっていたとは言え、黒ウサギのスピードはかなりのものだ。
「むっ、当然です。黒ウサギは〝箱庭の貴族〟と呼ばれる有名な貴…しゅ……?」
黒ウサギが首をかしげていた。かと思えば急に取り繕って、
「ま、まぁ、それはともかく!十六夜さんとキリトさんが無事で良かったデス。
水神のゲームに挑んだと思って肝を冷やしてましたよ」
「水神?あ、もしかしてあれのことか?」
俺は水神の方を指すと黒ウサギはそりゃぁもう大変驚いたようで、
「人間が神格を倒した!?そんなデタラメな!」
と、急に騒ぎだした。
「そんなにすごいことなのか?」
「は、はい!そりゃぁ、もう!
あっ!蛇神様は生きています?ゲームの内容はどうであれ、あなたがたは勝者ですのでギフトだけでも頂いていきましょう!」
「あん?」
黒ウサギの話では、神仏とのギフトゲームは〝力〟〝知恵〟〝勇気〟か選ぶらしく、俺たちは神仏本体を倒したため、かなりのレアアイテム――ではなくて、ギフトがもらえるらしい。
黒ウサギは嬉しそうに蛇神の方へ向かっていく――のを俺と十六夜が不機嫌そうな顔で――いや俺はそこまでではなかったが――前に立ちふさがって邪魔をした。
「ど、どうしたんですか十六夜さん、桐ヶ谷さん。なにかお気に召されましたか?」
「別に、敵を倒したらアイテムがもらえるというのは当然のことだと思うぜ。
だから別にこの蛇神からアイテムをもらうのは当然だ。だけど―――」
「オマエ、何か決定的なことをずっと隠しているよな?」
十六夜が俺のセリフを引き継いで黒ウサギに質問した。
十六夜の軽薄な表情が消え、黒ウサギの表情も硬くなった。もちろん俺も表情を消す。
「……なんのことです?箱庭の話やゲームのことならお答えすると約束しまたね?」
あくまでしらを切るらしい態度の黒ウサギに、俺は心から懇願した。
「――――黒ウサギ、もしお前が俺たちが呼び出されたことに関係する重要なことを隠しているなら教えて欲しい、俺はほかのやつらとは違って間違えてここに来たと思うし、出来ることなら早く元の世界に戻りたい」
俺の言葉に十六夜と黒ウサギは驚いたようで、しばらく沈黙していたが、
「―――分かりました、観念しましょう。」
ついに黒ウサギが折れ、ポツポツと語りだしてくれた。
とりあえず今回はここまでです!
ちなみに原作より黒ウサギが到着するのが遅いのは、キリトのせいで十六夜がスピードを上げたからです。
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