問題児+剣士が異世界から来るそうですよ?   作:HuseRocK

6 / 11
第05話

「なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」

 

 

太陽が地平線に沈み始めた頃、噴水広場で合流した俺たちが飛鳥や耀から聞いた話に黒ウサギがウサ耳を逆立てて怒っている。

 

 

突然な展開に黒ウサギの嵐のような質問や説教が飛び交う。

 

「ゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリーで内で戦うなんて!」「準備をしている時間もお金もありません!」「一体どういうつもりがあってのことです!」

 

「聞いているのですか三人とも!!」

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」

 

「黙らっしゃい!!!」

 

口裏を合わせていたような言い訳に黒ウサギが激怒している。

 

そこにニヤニヤと笑って見ていた十六夜が止めに入る。

 

「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

 

蛇神に見境なく喧嘩を売った十六夜が言うなよ…――とは思っても口には出さない。

 

「十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ?この〝契約書類(ギアスロール)〟を見てください」

 

黒ウサギが差し出した〝契約書類(ギアスロール)〟を十六夜が受け取り、俺は横からそれを覗き込んだ。

 

契約書類(ギアスロール)〟とは〝主催者権限(ホストマスター)〟を持たない者たちが、〝主催者(ホスト)〟となってゲームを開催するために必要なギフトである。

 

それにはゲーム内容・ルール・チップ賞品が書かれており〝主催者(ホスト)〟のコミュニティのリーダーが署名することで成立する。

 

十六夜が現在手に持っている〝契約書類(ギアスロール)〟を読むとそこには、

 

「え~っと、〝参加者(プレイヤー)が勝利した場合、主催者(ホスト)は参加者の言及するすべての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する〟―――か、確かに自己満足だな」

 

「そうだな、時間をかければ立証できるものを、わざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」

 

ちなみに飛鳥たちのチップは〝罪を黙認する〟ということらしい。

それも、これ以降もずっと口を閉ざし続ける意味である。

 

「でも時間さえかければ、彼らの罪は必ず暴かれます。だって肝心の子供たちは………その、」

 

黒うさぎが語尾を濁した。

彼女も〝フォレス・ガロ〟の悪評については聞いていたらしいが、流石にここまでひどい状態だとは想像もつかなかったのだろう。

 

「そう、人質は既にこの世にいないわ。その点を責め立てれば必ず証拠は出るでしょう。だけどそれには少々時間がかかるのも事実。あの外道を裁くのにそんな時間をかけたくないの」

 

箱庭の法はあくまで箱庭都市内でのみ有効なものなのだ。

 

無法地帯になっている外に逃げられてしまったら箱庭の法で裁くことは不可能だろう。

 

「それにね、黒ウサギ。私は道徳云々よりも、あの外道が私の活動範囲内で野放しにされることも許せないの。ここで逃せば、いつかまた狙ってくるに決まってるもの」

 

「ま、まぁ……逃せば厄介かもしれませんけれど」

 

「僕もガルドを逃がしたくないと思っている。彼のような悪人を野放しにしちゃいけない」

 

先程から飛鳥や耀と共に行動していた少年が同調する姿勢を見せている。

 

黒ウサギは諦めたような態度で頷き、

 

「はぁ~……。仕方がない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。

〝フォレス・ガロ〟程度なら十六夜さんとキリトさんがいれば楽勝でしょう」

 

俺は、まかせろ――と言おうとしたのだが、十六夜と飛鳥が怪訝な顔をして、

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」

「当たり前よ。貴方たちなんて参加させないわ」

 

フン、と二人が鼻を鳴らす。

 

黒ウサギは慌てて二人に食ってかかった。

 

「だ、駄目ですよ!御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」

 

「そういうことじゃねえよ黒ウサギ」

 

真剣な顔で十六夜が右手で黒ウサギを制して言った。

 

「いいか?この喧嘩は、コイツらが売った。そしてヤツらが買った。なのに俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」

 

「あら、分かってるじゃない」

 

「………。ああもう、好きにしてください」

 

丸一日振り回され続けて疲弊した黒ウサギはもう言い返す気力も残っていないようだ。

 

 

その後、黒ウサギが〝サウザンドアイズ〟へギフトの鑑定に行こうと言い出した。

 

黒ウサギと同じく疲弊していた俺は、十六夜たちの会話に口を挟むこともできずに、黒ウサギについていくような形で〝サウザンドアイズ〟へ向かった――

 

 

 

     ※

 

 

 

「へぇ、変わった木だな」

 

〝サウザンドアイズ〟に向かう道中、俺たちは興味深く町並みを眺めながら歩いていた。

そこには桃色の花を散らし、新芽と若葉を生やし始めているけれど、桜とはどこか違う木が立ち並ぶ街路樹があった。

 

「桜の木……ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けてるはずがないもの」

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

 

「……?今は冬真っ盛りだろ?確かにこのあたりは暖かいと思うが」

 

「………?今は秋だったと思うけど」

 

ん? と話が噛みあわなかった俺たちに黒ウサギが笑って説明し始めた。

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」

 

「へぇ? パラレルワールドってやつか?」

 

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論といものなのですけども……今からコレの説明を始めますと一日二日では説明しきれないので、またの機会ということに」

 

曖昧に濁して黒ウサギは振り返った。どうやら店に着いたらしい。

 

日が暮れ始めたからなのか割烹着の女性店員に黒ウサギは滑り込みでストップを、

「まっ」

「待った無しですお客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

かける暇も無かった。

 

 

黒ウサギが悔しそうに店員を睨みつけている。

 

「なんて商売っけの無い店なのかしら」

 

「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

 

黒ウサギと飛鳥が横で文句を言っている。

 

俺は、ふと今さっき黒ウサギが言っていた立体交差並行世界論について考えようとした。

 

もしかしたら俺がこの世界に来た理由や元の世界に帰る方法が分かるかもしれないからだ。

 

俺が思考を開始しようとしたら、横で黒ウサギがキャーキャーと喚き始めた。

 

どうしたのかと俺が耳を傾けると、

 

「〝箱庭の貴族〟であるウサギのお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

「……う」

 

一転して黒ウサギが言葉に詰まった。

 

けれど十六夜がなんの躊躇いもなく名乗った。

 

「俺たちは〝ノーネーム〟ってコミュニティなんだが」

 

「ほほう。ではどこの〝ノーネーム〟様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

グッと黙り込んでしまった。

 

黒ウサギの言っていた〝名〟と〝旗印〟がないコミュニティのリスクとはまさにこういう状況だった。

 

 

俺たちの目線が黒ウサギに集中した。

 

彼女は心底悔しそうな顔をして、小声でつぶやいた。

 

「その……あの……私たちに、旗はありま」

 

黒ウサギが言い終わろうとするその瞬間―――

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉ! 久しぶりだ黒ウサギイィィィィィ!」

 

黒ウサギは店内から爆走してきた着物服を着ている真っ白い髪の少女に抱きつかれ、少女と共に空中を四回転半ひねりほどして街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んでいった―――

 

 

 




読んでいただきありがとうございます!

夜眠い中書いたので誤字・脱字や変な文法のところがあればご指摘ください。

感想待ってます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。