問題児+剣士が異世界から来るそうですよ?   作:HuseRocK

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第06話

「きゃあーーーーーー…………………。」

 

黒ウサギの悲鳴が段々と遠退いていき、ポチャン、という音が静寂に包まれていた周りに響いた。

 

黒ウサギに抱きついた和服を着た白髪の幼女は、黒ウサギの胸部に顔をうずめて擦り付けている。

 

「白夜叉様!?どうして貴方がこんな下層に!?」

 

黒ウサギが抱きつかれている幼女――白夜叉を引き離そうか悩んでいるように手を空中で泳がせながら質問した。

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに! フフ、フホホフホホ! やっぱりウサギは触り心地が違うのう! ほれ、ここが良いかここが良いのか!」

 

白夜叉が、スリスリスリスリとでも効果音が聞こえてきそうな勢いで顔をこすりつける。

 

「し、白夜叉様! ちょ、ちょっと離れてください!」

 

やはり我慢できなかったのか、黒ウサギは白夜叉の頭をつかみ店に向かって投げつける。

 

くるくると縦回転しながら飛んでいく白夜叉を十六夜が、てい、と気のない掛け声と共に足で受け止めた。

 

「ゴバァ! お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」

 

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」

 

ヤハハ、と笑いながら自己紹介する十六夜。

 

しかし、俺は十六夜の言葉に疑問を覚え、質問してみた。

 

「おいおい、十六夜、いくらなんでも初対面でいきなりロリ認定するのは失礼だろ」

 

確か黒ウサギはあの見た目で200歳だと言っていたような気もするし、この世界では見た目がそのまま年齢というわけではなさそうだからだ。

 

俺の疑問に何故か十六夜は誇らしげに、

 

「いや、違うぜキリト。この世の中には合法ロリという言葉も存在していてだな、見た目が幼女や少女程度なら年齢は関係ないんだぜ!」

 

十六夜が手を広げて、俺の方に歩いてきながら熱弁し始めたところで、今まで呆気にとられていた飛鳥が思い出したかのように白夜叉に質問した。

 

「貴方はこのお店の人?」

 

白夜叉は気を取り直したように俺たちの方に振り返り威厳を取り戻すかのように、しかし少しおちょくるかのような口調で答えた。

 

「おお、そうだとも。この〝サウザンドアイズ〟の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢の割に発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

 

「オーナー。それでは売上が伸びません。ボスが怒ります」

 

限りなく冷静な声で女性店員が釘を刺した。

 

丁度その時服やミニスカートを水でびしょびしょに濡らした黒ウサギがそれを絞りながら水路から上がってきたので、白夜叉の厚意により〝サウザンドアイズ〟の中へ入れてもらえることになった。

 

 

     ※

 

 

個室にしてはやや広めの和室に連れてこられた俺たちは、座布団もなにもなかったのでとりあえず畳の上へ腰を落とすと、白夜叉が今一度自己紹介を始めた。

 

「私は四桁の門、三三四五外門に拠点を構えている〝サウザンドアイズ〟幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

 

「はいはい、お世話になっております本当に」

 

投げやりな言葉で受け流す黒ウサギ。

 

俺は内心で苦笑しつつ、気になったことを黒ウサギに質問した。

 

「その外門、ってのは何なんだ?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」

 

黒ウサギの言った、階層と強大な力――という言葉で、俺は不意に俺達が二年間囚われていたあの浮遊城のことを思い出したが、すぐにそれはないと自己否定する。

 

なぜならアインクラッドを作ったあの男――茅場晶彦はこの異世界に来たことはないだろうからだ……。

 

 

俺は心中を駆け巡る疑念を押さえつけて白夜叉の話に耳を戻すと、俺たちが倒した蛇神の話になっていた。

 

「して、一体誰が、どのようなゲームで買ったのだ? 知恵比べか? 勇気を試したのか?」

 

「いえいえ、この水樹は十六夜さんとキリトさんがここに来る前に、叩きのめしてきたらしいのですよ」

 

黒ウサギの自慢げな言葉に白夜叉は驚いたようで、

 

「なんと!? クリアではなく直接的に倒したとな!? ではその童達は神格持ちの神童か?」

 

白夜叉はそう言ったあと、まじまじと十六夜と俺を順に見ていき、十六夜を見て少し驚いたような顔をし――多分十六夜が神格を持っていないことが分かったからだろう――そのあとに俺を見ると十六夜とは別の――何が、とは言えないがそんな驚きの顔を向けた。

 

俺が、何かあるのか、と白夜叉を見返したときには、既に白夜叉は素の顔に戻っていた。

 

「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

 

黒ウサギが丁度、タイミングよく白夜叉に質問した。

 

「知り合いも何も、あれに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」

 

小さな胸を張り、豪快に笑う白夜叉。

 

俺が、やはり何百歳という年なんだな、等と考えるのと同時に、別の考えも脳内を駆け巡っていた。

 

横では十六夜も同じような事を考えたのか物騒に目を光らせている。

 

「へぇ? じゃあおオマエはあのヘビより強いのか?」

 

十六夜の質問にふふん、と鼻を鳴らして白夜叉が答えた。

 

「当然だ。私は東側の〝階層支配者(フロアマスター)〟だぞ。東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者なのだからの」

 

〝最強の支配者〟という言葉に、俺たち四人は一斉に目を輝かせた。

 

「最強――っていうことは、アンタを倒したら俺たちのコミュニティは東側で最強のコミュニティ――ということになるのか?」

 

「無論、そうなるのう」

 

俺はこの言葉を聞いた瞬間、自然と口から言葉が出ていた。

 

「それは景気の良い話だな。それなら話は早い。

 

 俺たちと〝ギフトゲーム〟をしようぜ」

 

 

俺たちは、すくっと立ち上がり、闘争心を込めた視線で白夜叉を見つめる。

 

その言葉に、白夜叉は、自信にあふれた声音で返答した。

 

「ふふ、そうか。―――しかし、ゲームの前にひとつ確認しておく事がある」

 

「なんだ?」

 

白夜叉は自身の着物の裾から、余裕の表れなのかゆっくりとした動作で、向かい合う双女神の紋――〝サウザンドアイズ〟の旗印が入っているカードを取り出し、壮絶で、凄惨で、それでいて大胆不敵に笑い一言、

 

 

「おんしらが望むのは〝挑戦〟か―――――もしくは〝決闘〟か?」

 

 

白夜叉が言い終わり、刹那、俺の視界が無くなった(・・・・・)

 

―――いや、正しくは意味を無くしたというべきか。 俺の脳内で記憶にない様々な情景が流れ始め、俺たちを足元から呑み込んでいく。

 

 

ふと気がついたときには、あたり一面白銀に染まった――そして、太陽が水平に廻っている世界だった。

 

「――――………っ!?」

 

あまりの異様さに十六夜たちも息を呑んでいる。

 

確かにこの光景は異常だった。 よく分からない感覚が俺たちを襲い気がつけば見知らぬ場所にいた、というのは慣れていない人にとっては――十六夜たちはどうなのか分からないが――ちょっとした恐怖体験だろう。

 

 

だが、幸運なことに俺はこういう状況に慣れていた。というより、自ら望んでやっていた。

 

そう、『リンク・スタート』と呟くだけで俺はこれと似たような感覚を体験していたのだ。

 

かのデスゲームに囚われる直前や、ALO内に閉じ込められたアスナを救うためにダイブする時に―――。

 

 

 

そのお陰なのか、俺はこの状況にいち早く順応できた。

 

 

「――――分かった。降参だよ、白夜叉。」

 

「ほう、それは決闘ではなく挑戦を受けるという意味で受け取ってもいいんかの?」

 

十六夜も何か得がいったのか、苦笑と共にプライドを吐き捨てるような物言いで肯定した。

 

「ああ。これだけの舞台をすぐに用意出来るんだからな。アンタには資格がある。___いいぜ。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」

 

十六夜の最大限であろう譲歩が面白かったのか、白夜叉は堪え切れず高らかに笑い飛ばした。

 

一頻り笑った白夜叉は笑いを噛み殺して残り二人にも問う。

 

「く、くく……して、他の童達も同じか?」

 

「…………ええ。私も、試されてあげてもいいわ」

 

「右に同じ」

 

嫌々、渋々という感じで返事をする二人。

それをみて満足そうに声を上げる白夜叉。

 

横で一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギが、ホッと胸をなでおろした。

 

「も、もうお互いにもう少し相手を選んでください!!階層支配者に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う階層支配者なんて、冗談にしても寒すぎます!!それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も前の話じゃないですか!!」

 

何!? 既に何千歳という年なのか!? やはりロリとは呼びづらいな……。と俺が的はずれなことを心のなかで叫んでいると、十六夜が、少し驚きのこもった声で白夜叉に尋ねた。

 

「何?じゃあ元魔王様ってことか?」

 

「はてさて、どうだったかな?」

 

十六夜の質問には答えずにケラケラと悪戯っぽく笑う白夜叉。

 

その時、彼方にある真っ白な山脈から人とは違う、甲高い叫び声が聞こえた。

 

「何だ? 今の鳴き声」

 

「ふむ……あやつか。おんしらを試すには打って付けかもしれんの」

 

その山脈に白夜叉が、チョイチョイと手招きをしたと思えば、体長5mはあろうかという巨大な獣が翼を広げて空を滑空し、風の如く俺たちの元に現れた。

 

鷲の翼と獅子の下半身を持ち、ゲーム内ならちょくちょく出てくる獣を見て、俺と、なぜか隣にいた耀も驚きが籠った声を上げた。

 

「グリフォン!?」

 

「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。〝知恵〟〝力〟〝勇気〟の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」

 

白夜叉が手招きをすると、グリフォンは彼女の元に降り立ち、深く頭を下げて礼を示した。

 

「さて、肝心の試練だがの。おんしら四人とこのグリフォンで〝知恵〟〝力〟〝勇気〟の何れかを比べ合い、背に跨がって湖畔を舞う事が出来ればクリア、という事にしようか」

 

白夜叉は双女神の紋が入ったカードを取り出すと、虚空から〝主催者権限〟にのみ許された輝く羊皮紙が現れる。

 

白夜叉は白い指を奔らせて羊皮紙に記述する。

 

『ギフトゲーム名〝鷲獅子の手綱〟

 

 ・プレイヤー一覧  逆廻 十六夜

           久遠 飛鳥

           春日部 耀

 

 ・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

 

 ・クリア方法 〝知恵〟〝力〟〝勇気〟の何れかでグリフォンに認められる。

 

 ・敗北条件 降伏か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                  〝サウザンドアイズ〟印』

 

 

 




読んでいただきありがとうございます!

毎回同じことを書いてますが、誤字・脱字や、直してほしいところ、取り入れてほしい要素等があれば報告していただけるとありがたいです!

ちなみに最後の〝契約書類〟にキリト君の名前が無いのはわざとですので気にしないでください(笑)


最近忙がしいので、更新が少し遅れるかもしれません。
気長に待っていてください。

―――――楽しみにしている人がいればですけど……(-_-;)
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