問題児+剣士が異世界から来るそうですよ?   作:HuseRocK

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第07話

「俺がやろう」

 

十六夜が〝契約書類(ギアスロール)〟を読み終えるのが早いかどうかというタイミングで、俺は一歩前へ出ながら宣言した。

 

ある程度は動物に乗った経験がある――といってもゲームの中だけだが――俺が行くのが一番いいだろうと思ったからだ。

 

とてもじゃないが、蛇神と闘った――というより一方的に倒した――時にみた十六夜のギフトはこのゲームに向いているとは思えないし、他の二人――飛鳥と耀はなんといったって女性なのだ。

 

しかし、耀が俺のとなりに来て、まるで小動物のような目でこちらを見て懇願してきた。

 

「このゲーム、私にやらしてほしい」

 

言い終わるや否や耀はグリフォンの方へ向き直り、真っ直ぐにグリフォンを見つめ、俺が彼女に抱いた第一印象を覆すような熱い視線を投げ掛けている。

 

それに呼応したかのように耀の肩に乗っていた猫がニャーニャーと鳴いた。

 

そして、それを聞き取ったかのように耀がそれに答えた。

 

「大丈夫、問題ない」

 

関係ないかもしれないが、SAOには、動物と会話をしながらクエストを進めていく――ちなみにSAO内の数少ない女性プレイヤーから人気があった――というような物もあった。なので、もしかしたら動物と会話が出来るようになるギフトなのか?だとしたらアスナやスグたちに紹介したら大喜びだろうな。 と考えていると、いかんせん感傷的な気分になってしまったので、俺は、これはいかん、と気を引き締め直した。

 

「本当に大丈夫なのか? これは相当な難易度だと思うぞ。 もしも失敗したら―――」

 

したら、の後に言葉を続けることはなかった。

 

なぜなら耀の瞳を真正面から、ハッキリと見てしまったからだ。

 

彼女の瞳は、まるで欲しかったものを見つけた子供のように輝いてる。そしてそれと同時に、負けるはずがない、という自信が溢れでていた。

 

しょうがないか、別に特別上手なわけでもないし、こんな目をされたら断りずらいしな。とまで考えたところで、

 

「大丈夫、問題ない」

 

俺の気持ちを理解してくれたのか、ささやかな笑顔と共に、自信に満ち溢れた言葉をくれた。

 

耀の言葉に、俺は苦笑と共に返事を返した。

 

「分かった。怪我をするなよ」

 

そういえばこの世界では怪我をするのか?とふと疑問に思い、今度実験をしようと決意したことは誰にも言わないことにしよう。

 

 

俺はここでふと思いつき、少々恥ずかしいのを我慢しながら耀に声をかけた。

 

「これ、使ってくれ」

 

俺はそういいながら今まで着ていた、妙に重量のある、それでいてなぜかしっくりきていた、愛着のあるコートを脱ぎ、耀に差し出した。

 

「……? いいの?」

 

耀が小首を傾げながら俺に了承を得てきたので、俺は当然という態度で、

 

「ああ、もちろんだ。使ってくれ」

 

「―――そう、ありがとう」

 

耀は、やはり寒いのか顔を朱色に染めながら聞き取れないくらいの小さい声で呟き、そのまま小走りでグリフォンの方へ走っていった。

 

俺は、余計なことをしたかな? と反省しつつ、いままで着ていた服―――《コートオブミッドナイト》を脱いだことによって襲ってくる寒気に身を縮めながら十六夜たちの方へ戻ることにした。

 

 

     ※

 

 

―――耀のギフトゲームが始まった。

 

 

はっきり言ってしまうと、耀がいったい何をグリフォンと話していたのかは俺には全くわからなかった。

 

想像することはできても確信できないので考えることをやめ、俺は耀の言葉に耳を傾けておくことにした。

 

 

すると思いがけない一言が耳を貫いた。

 

「命を賭けます」

 

―――――ッ!?

 

今耀は何て言った!? いや、そんなことは聞くまでもなく理解しているのだが、それでも考えずにはいられなかった。

 

耀は怪我をしないと俺と約束しておきながら、このゲームに負けると命を自ら絶つと言ったのだ。

 

それは裏を返せば負けないという自信の現れなのだろうが、それでも突然にそんなことを言い出されれば驚いてしまうのも仕方がないだろう。

 

 

黒ウサギと飛鳥が反対するも白夜叉と十六夜の言葉によりこの賭けが成立し、グリフォンが耀を背中に乗せ一気に山まで駆けて(・・・)いった。

 

比喩ではなく、実際に、空気を踏みしめてグリフォンが駆けていく。

 

 

ここから何があったのかは、俺にはうっすらとしか分からなかった。

 

空を駆けるグリフォンの背に黒い塊がヒラヒラと尾を引いているのが分かったが、目的の山まで差し掛かった辺りから俺の視力―という概念があるか知らないが―では、ハッキリと捕らえることはできなくなった。

 

その刹那、急にグリフォンの飛行速度が上がった。

 

ここから山頂まで行ったときの約二倍の速度でこちらに戻ってくる。

 

しかし、見ている俺にとっては、確実に行ったときよりも早い速度でグリフォンが戻ってきているのに、とても長く感じられた。

 

ようやく、といった具合でやっと耀をのせたグリフォンが帰ってきた。

 

けれどもホッとしたのも束の間、グリフォンが旋回を初め、耀を振り落としにかかってきた。

 

しかし耀はそれにもなんとか耐え抜き、グリフォンと共に俺たちの元に降下してきた。

 

グリフォンが湖畔の中心まで到達して、俺たちが耀の勝利を確信した瞬間――――耀の手から手綱が放たれ、耀の体が空中を舞っている。

 

俺はそれを視認した刹那、ほぼ反射的に走り出していた。

 

背後で十六夜が俺と同じようなことをしている黒ウサギを止めにかかっているが、俺はそれを意識する間もなくスタートダッシュを決め、耀が落ちてくるであろう落下地点にたどり着いた。

 

 

――――しかしその時、耀の体が翻り、落下速度が緩やかに失速していった。

 

そして、遂には地面まで降りてくることはなかった。驚くべきことに、つい先程までそんな素振りを見せなかったはずの耀が、風を纏い、上空で浮いている。

 

まるで今できるようになった(・・・・・・・・・・)かのような、おぼつかない、しかし力強い飛翔を見せる耀に俺は思わず感嘆を漏らしていた。

 

そして、そのままゆっくりと上空から降下してきた。

 

耀が完全に純白の地面に降り立ったとき、いの一番に話しかけたのは最も近くにいた俺ではなく、いつの間にか後ろから歩いてきていた十六夜だった。

 

「やっぱりな。お前のギフトって他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」

 

十六夜のそろそろ見慣れてきた軽薄な笑みに、むっとしたような声音で耀が返す。

 

「………違う。これは友達になった証」

 

耀が答え終わると、彼女の三毛猫が真っ新な純白の大地に肉球の跡を残しながら、耀の肩を目掛けて駆け寄ってきた。

 

相変わらず三毛猫の言葉は分からないが、心配しているであろうことは理解できた。

 

三毛猫への返事なのだろう、耀が三毛猫に話しかけた。

 

「うん、大丈夫。指はジンジンするけど―――桐ヶ谷君の貸してくれた服のおかげであったかいよ」

 

するけど、の後に俺の方を少し見て、三毛猫の頭を撫でている。

 

そのあと思い出したように俺の方に歩み寄ってきて、今まで着ていた耀の――ではなく、俺の貸していたコートを脱ぎ俺に向かって突き出した。

 

「……これ、ありがとう。 助かった」

 

「いや、役に立ってよかった。――あと、俺のことはキリトでいいよ」

 

正直言うと、この間俺はずっと黒の薄手のシャツ一枚しか着ていなかったので、返してもらえてありがたかったのだが、そんなことは噯にも出さないように気をつけて答えた。

 

 

―――これは余談だが、耀のギフトは先天性のものではなく、首に下げている木彫りのおかげらしい。

しかもそれは彼女の父親が独自に作ったものらしく、白夜叉曰くそれが本当なら耀の父親は神代の天才らしい。

 

そしてこのギフトを鑑定しようと思えばかなりの上層でなければ鑑定できないらしい。

 

 

この話まで至ったときに、黒ウサギは驚いたように白夜叉に質問した。

 

「え? 白夜叉様でも鑑定できないのですか? 今日は鑑定をお願いしたかったのですけど」

 

ゲッ、と気まずそうな顔に白夜叉の表情が変化した。

 

「よ、よりによってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいとこなのだがの」

 

とは言いつつも、白夜叉は困ったように白髪を掻きあげ、俺たちを見定めるように眺めている。

 

しばらくの間、俺たちを見定めていたが、やがて俺たちに向けて質問してきた。

 

「うむ、三人とも素養が高いのは分かる。しかしこれではなんとも言えんな。おんしらは自分のギフトの力をどの程度に把握している?」

 

「企業秘密」

「右に同じ」

「以下同文」

 

「うおおおおい? いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに」

 

白夜叉たち四人が話を進めていく中で、俺は一人取り残されているのを感じて四人の話に割り込んだ。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。 三人、ってことは俺は含まれていないのか?」

 

俺の、はぶられたかも、という不安や、なぜ俺だけ、という疑問などが入り乱れた問に白夜叉は、やっとか、という様子で答えた。

 

「やれやれ、おんしも気づくのが遅いのう。 思い出してみい、〝契約書類(ギアスロール)〟にもおんしの名前はなかったろうに」

 

言われてみればその通りだった。あの時はギフトゲームの内容にばかり気を取られていて、プレイヤー名は軽く聞き流していたことに、遅まきながら失念しながら、尚も白夜叉に問いかけた。

 

「でも、何故なんだ? 俺だけ、その……一人特別扱い何だ?」

 

俺が言い終わると、白夜叉は俺の近くまで、音もなく近づいて一言、他の誰にも聞こえないような声で簡潔に囁いた。

 

「おんしは、茅場晶彦の関係者かそれに準ずる何かであろう。 あとでおんしの疑問に答えてやるから残っておれ」

 

俺は、茅場晶彦という人物名を聞いたとたん、体が雷に打たれたかのような衝撃に包まれた。

 

あの男―――茅場晶彦がこの世界に来ていただと!?

 

俺は以前浮かび上がっていた、嫌な予感とも言える疑問が的中したことに、やや不快感を感じながらその後の成り行きを見守っていた。

 

 

結局白夜叉に鑑定してもらえることになり、白夜叉が柏手を二回打つと、十六夜たち三人の前にそれぞれ光り輝くカードが現れた。

 

おそらく彼らのギフトが記されているのだろう。

 

その後にそのカード――ラプラスの紙片についての説明があり、十六夜たちは俺を取り残して先に帰ることになった。

 

 

     ※

 

 

白夜叉と二人きりになった和室で、しばしの静寂があった後、黒衣に包まれた剣士――キリトは話の本題を切り出した。

 

「それで、一体どういうことだ。 俺がこの世界に来てしまったことと、茅場晶彦がどんな関係を持っているのか説明してくれ」

 

キリトの責め立てるような問に、白夜叉は意にも介さない態度で答えた。

 

「まあ待て、それを説明するには少し話を遡らなければなるまい」

 

 

そう前置きをして白夜叉は語りだした―――。

 

 




読んでいただきありがとうございます!そして更新遅れて申し訳ありません!
しばらくこんなペースが続きますが、何卒宜しくお願いします。

さて、
前回までにあまり内容が変わらない、等の意見を多数いただきましたが、今回は文を少し自分で考えました。話の流れなどは最初の方なので目を瞑ってください(笑)
けれど、あまりにひどい場合や、二巻分でも同じようなことが起こっている場合は報告ください。

そして、オリジナル要素も入ってしまいましたが、楽しく読んでいただければ幸いです。

毎回言っていますが、誤字・脱字やおかしいところなどを報告していただけるとありがたいです。
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