問題児+剣士が異世界から来るそうですよ?   作:HuseRocK

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第08話

「その前に一つ、聞いておきたいのだが、おんしと茅場晶彦は一体どういう関係なのだ?」

 

これから聞くであろう、茅場晶彦についての話に対して身構えていた俺は、白夜叉の質問に虚をつかれたが、直ぐに意識を取り戻しそれに返答した。

 

「―――そうだな、簡単に説明すると、その男―――茅場晶彦はソードアート・オンライン、略してSAOというゲームを開発したんだ。そのゲームは実際に、画面上でプレイするわけではなく、本当にゲームの中に入って遊ぶことが出来るというもので、世界中のゲーマーが、もちろん俺もそのゲームに注目し、夢中になっていた。

 けれど、そのゲームは開発した茅場晶彦自らの手によってゲームの中で死ぬと現実でも死んでしまうデスゲームにされた。

 つまり俺はそれに巻き込まれた被害者ということになる」

 

俺は説明しながら、少しずつ頭が冷えてきたのを感じていた。

 

俺の説明を聞き終えた白夜叉は少し考えるような素振りを見せた後、更に質問を重ねてきた。

 

「念のために聞いておくが、おんしは死んでおらんのじゃな?」

 

「ああ」

 

「ふむ、おんしはそのゲーム―――ソードアート・オンラインに入ろうとしてここに来たのか?」

 

「いや、そういうわけじゃなくて、これはアルバイトなんだ。SAOの後に発売されたアルヴヘイム・オンラインの調査みたいなもので」

 

「来るときに何か変わったことはあったか?」

 

矢継ぎ早に質問され、そろそろ教えてほしいこともあったのだが、何か関係ありそうなので、グッとこらえ、次々と答えていく。

 

「変わったこと? そういえば――いつもと違う機械で来たけど…」

 

途中で比嘉さんの言っていた『一応国家秘密なんスから』という言葉を思いだし、詳しいことは黙っておく。

 

俺が答え終わると同時に、白夜叉が「それじゃ!」とよく通る声で叫んだ。

 

「いや、すまぬ。少々話が脱線したの。 それでは本題に入るとするか」

 

白夜叉は先程叫んだことについては説明せずに、やっと俺が聞きたかったところについて話初めた。

 

「あの男が初めてここにやって来たのはあやつが十代半ばぐらいの頃だったかのう―――

 

 

 

    ※

 

 

 

―――夏

 

一年で最も暑い時期

 

その季節になったことを告げるように、この世界――箱庭にもアブラゼミがまるで警鐘のようになき続けている。

 

そんな気温の中、とある青年がある湖のほとりに倒れていた。

 

この人間が何者なのか、その正体を知るものはこの世界にはまだいない。

 

そんな、無防備に仰向けで倒れている青年の近くを、偶然にも金髪の女性が通りかかった。

 

その女性は好奇心に溢れる目で、青年を観察した後、少し驚いたような顔をして、懐から一枚のカードを取り出した。

 

女性がカードを取り出すと、たちまちにカードが光だし、小さい人の形をした生物が出てきた。

 

そのままその生物は青年を持ち上げ、運んでいく。

 

行き先は幸か不幸か商業コミュニティ〝サウザンドアイズ〟

 

 

この行動が、未来を、世界を、この先の物語を、大きく狂わせていくとは、この女性はおろか、精霊や魑魅魍魎、もしかしたら神までもが、まだ考えてもいなかった。

 

 

―――まだ蝉が警鐘をならすかのように鳴き続けている。

 

 

    ※

 

 

「―――こ、ここは?」

 

今まで湖のほとりに倒れていた青年は目覚めると同時に呟いた。

 

すると青年の右後方から、幼い少女の高い、よく通る声が聞こえてきた。

 

「おお、ようやく目覚めたか。具合はどうだ?」

 

そう青年に問いかけたのは、やはり幼女ぐらいの見た目の女性だった。

 

「……あなたは?」

 

「紹介が遅れたの。 私は白夜叉、この四桁の外門、三三四五外門に本拠地を構えている〝サウザンドアイズ〟の幹部だ」

 

青年は考える。

 

自分が作り出した試作機にはこのようなキャラクターが存在しないことを。

 

そして何よりこれが試作機で、そのようなソフトウェアなどはまだ導入していないことについて。

 

「おんしは?」

 

唐突な白夜叉の質問に青年は少し戸惑う。

 

「おんしの名前じゃ。 まだ聞いておらんからの」

 

ようやく青年は質問の意味を理解して答える。

 

「私は茅場晶彦。 プログラマーをやっていて、いつの間にかここにいたんだが―――」

 

青年――茅場晶彦は一度間をおいて呼吸を整えてから問う。

 

ただ単純に、好奇心と希望に突き動かされて。

 

「―――私はどうしてここに?」

 

「知り合いがおんしをここまで運んできたんだよ―――」

 

「いや、すまない。そういう意味ではなく、どうしてこの世界に私が来たのかという意味なんだが……」

 

白夜叉は質問の意味を取り違えていたことに気づき、答えようと思い思考し始めたところで、ムッと声を発した。

 

「おんしはやはりこの世界の住人ではないのか? だとしたら―――」

 

ふむ、と白夜叉は考え込む素振りをする。

 

(この世界のものではないとすると、異世界から呼び出されたということか? 確かに容態がおかしかったが特別な力があるようには思えん。 それにそのようなことは聞いておらんしの)

 

「おんしは、何か、特別な方法でここに来たということか。 よかったらどうやってこの世界に来たのか教えてはくれんかの?」

 

二人の間に見えない戦いが繰り広げられる。

できるだけ情報を明かさず、どれだけ相手から必要な情報を引き出せるかという頭脳戦が。

 

しかしこの勝負、先に折れたのは茅場の方だった。

 

「―――分かった。その代わりこの世界についての情報を教えてもらおう」

 

白夜叉の了承を確認してから茅場は語った。

 

「私はさっき言ったとおりプログラマーをやっていて、ゲームを作っている」

 

茅場は白夜叉に自分が作っているものや、自分の夢などを話した。

 

フルダイブ型マシンやそれ専用のゲームソフトを作っていること。

その機械の仕組みや、内部構造などを言葉で、できるだけ解りやすく。

 

―――そして、自身の夢のことも。

 

「私は、今も信じているんだよ。この世界のどこかに、もしくは遥かな異世界にでも、空中に浮かぶ、あの浮遊城があると」

 

 

そんな茅場の話を聞いた白夜叉は脳内で話をまとめ、ある結論を導き出していた。

(その自身で作った機械によってここに来たということか、しかしどうして…)

 

「この異世界に来れるように設定したのか?」

 

白夜叉は質問した。

自分が今、一番知りたいことをストレートに。

 

「確かに一縷の望みを託していたが、まさか本当に来れるとは思っていなかったよ。 おかげで用意していたソフトウェアなどが無駄になったな」

 

茅場は苦笑しつつ答え、白夜叉に、こちらの番だ、とでも言いたげに聞いた。

 

「さて、今度は私が教えてもらおうか。 ここに、あの、私が夢見続けていた浮遊城はあるのか?」

 

「残念ながら聞いたことないな」

 

今度は白夜叉が苦笑して答えた。

 

「――――そうか……」

 

茅場は、やはり、という感じで嘆息した。

 

「では、何か帰る方法を知らないか?」

 

「それこそ、皆目見当もつかんわ。 おんしはここへ来るための過程が通常とは異なるからのう……」

 

白夜叉の答えに更に落胆した様子を見せ、茅場は礼を言った。

 

「――そうか、ならいい。 介抱してもらって感謝する。 これで失礼するとしよう」

 

茅場が立ち上がると、白夜叉がそれを呼び止めた。

 

「待て、おんしこれからどうするつもりだ?」

 

「それは―――」

 

少し止まり、茅場晶彦は考える。

失礼すると言っても次何をするかまでは考えていなかったのだ。

 

「とりあえず、私が何故ここに来たのかと元の世界に帰る方法を探すとしよう」

 

「何故提案しているのかが気にかかるが――。 それよりもおんし、どうせ行くあてもないのだからここにとどまらんか?」

 

白夜叉の突然の提案に驚く茅場。

 

「………何故だ? それで君たちに得があるようには思えないが?」

 

「何、そんな大層なことでもない。 私は何故、おんしがここに来たのか、いや、来れたのか(・・・・・)が知りたいだけだ」

 

茅場はここで、白夜叉が自分を利用しようとしていることに気づいたが、彼女の言った通り行く宛もないことも事実なので、ため息をつきながら答えた。

 

「―――分かった。しばらく世話になる」

 

こうして茅場晶彦の異世界での生活は幕を開けていった。

 

 

 

     ※

 

 

 

「―――すまない。ノリノリで語っているところ悪いがその話長くなりそうなんだが……?」

 

俺は白夜叉の話を遮り、気がかりになっていたことを訊いた。

 

「ん? そうだのう。 ちと長くなるかもの」

 

「ちとってどれぐらいだよ」

 

「何、ほんの一、二時間程度だ」

 

何千年も生きると時間感覚が狂ってくるのか!等と内心驚きつつ、俺は白夜叉に懇願した。

 

「………え~っと、すまないが短めに済ませてくれないか? 十六夜たちを待たせても悪いし、詳しい話はまた今度にしてくれ」

 

「そうか、仕方がないのう」

 

白夜叉はやれやれと短いため息を吐き、本当に要所のみをまとめて説明してくれた。

 

「それでだの、何故茅場やおんしがこの世界に来れた―――いや来てしまったのかというと、おんしらが来るときにつけた機械がその中に用意された仮想空間ではなく、この世界におんしらの情報を出力しとるからだ。 まあ厳密にいうとおんしらはここに来たのではなく来たように見えていると言った方が正しいのやも知れんが」

 

白夜叉が本当の本当に要約して説明してくれた。ここまで要約すると逆に疑問ばかりが溢れでてきてしまう。

 

俺がそんな疑問に惑わされていると、白夜叉が最後に一言付け足した。

 

「――まあ全てあやつの受け売りだがの」

 

白夜叉の言葉に思わずガクッと来たが、気にかかることもあるのでこれ以上言及せずに白夜叉に訊いた。

 

「出力した、と簡単にいうが実際どうなってるんだ? 俺の発したい言語ややりたい行動は俺がつけてきた機械が読み取ったとしても、この世界に出力するにはそれ相応な機械や設備がいるだろう?」

 

俺の質問に対して白夜叉は、ふむ、となにやら記憶を探り始め、約二十秒の静寂の後に語った。

 

「確かあやつが言っておった理屈は、おんしらの機械はおんしらの体の形や大きさなどの情報を仮想空間に出力すると言うものだった。 しかし偶然にも――とはいってもあやつは接続がどうの配列がどうの等と言っておったが――おんしらの機械はそれの持つ仮想空間にではなく、この世界―――箱庭に接続してしまったということだ」

 

白夜叉はここで区切り、思いだしたかのように付け足した。

 

「それで、どうやって出力しておるのか、という話だったな。 ―――これこそ簡単な話だよ。出力するための機械の代わりがこの世界〝箱庭〟にギフトとして存在しているのだよ。 それがおんしの声を出し、おんしの体格を造り、おんしの肉体を創った。 それだけのことだよ」

 

白夜叉はさらりと発言した。

 

「――――はぁ?」

 

流石に俺もこれは理解し難かった。 いや簡単に理解は出来たのだが、形容できなかった。

 

例えば、ここが茅場の創った世界だというのであれば多少無理があろうと頭である程度は理解し、認める自信があった。

 

だが、それが魔法やギフトということで片付けられれば唖然とする他ない。

 

そんな俺の疑問が表情に現れていたのか、白夜叉は早口で更に付け加えた。

 

「もちろん初めから揃っていたわけではないぞ。 本当に運だけでここにたどり着いた茅場は当初声を出すことができなんだろう。 それだけではなくこの世界のものを視認することすらも難しいほどだった。

しかし、ギフトの力によって確認できているなら、ギフトの力によって補強することもできるというのは必然であろう。そう思いやってみたのがうまく成功したということだ。 念の為に言っておくとおんしの体は本物のようで本物ではない。ギフトによって構成されているということをしっかりと理解しておけよ。

話を戻すが、その後あやつはこのコミュニティに存在してあったほとんどのギフトを解析し、それをおんしの付けてきた機械に組み込んだと思われるな」

 

茅場―――その単語が出るたびに言葉では表し難い感情が俺の胸中を渦巻き、俺の心臓が強く鼓動を刻んでいく。

 

そのせいなのか、白夜叉のこんな簡潔な文にすらも驚いてしまう自分に少々呆れつつ、白夜叉の言ったことを頭の中で整理していった。

 

つまり茅場がこの世界に来てからの行動は、倒れているのを女性に拾ってもらい、コミュニティ〝サウザンドアイズ〟まで連れてこられ、その際に自身の肉体や声などの情報をギフトなどで補強された後に、この世界のギフトをある程度解析し、それを俺たちの世界へ持って帰り、試作機などに組み込んだ、ということだろう。

 

しかしこの見解で気になるのは、何故俺の付けてきた機械にもギフトが組み込まれているのか、ということだ。しかしこれについては白夜叉に問い詰めても仕方のないことなのであとで解消することにして、もう一つ、気になることがあった。

 

それは―――

「この世界から帰る方法があるということか?」

 

ギフトを持ち帰ったというのならば、いや持ち帰っていなくとも茅場明彦はナーヴギアを作りゲームメイカー《アーガス》を運営していたのだから帰っているはずなのだ。

 

ほぼ無意識に放った、俺の期待を込めた問に対する白夜叉の答えは、残念ながら俺の期待を裏切るものだった。

 

「いや、残念ながらそういうことではない。 あやつは書置きだけ残し急に消えたのだ。 確か内容は――

『  拝啓 白夜叉殿                                        この度は本当に世話になった。それにもかかわらず突然居なくなってしまう非礼を詫びたいと思う。 本題に入らせてもらうと、私が急に消えてしまった理由は私の付けてきた機械にある。この機械は一定時間経過すると強制的に私の意識を遮断し現実世界へ戻るようにしてあった。つまりそれが今日だ。何度も言うが突然いなくなってしまい本当に申し訳ない。もしもまた会えるようならば会おう。 それでは体に気を付けて』

というような内容だったかの。 まあとりあえず、おんしが帰る方法は私には分からんが、そう気を落とさずに地道に探してゆけ」

 

 

 

     ※

 

 

 

白夜叉との話を終え、黒ウサギたちの下へ漆黒のコートを羽織った剣士は急いで足を運んでいた。

 

白夜叉が帰り間際にキリトの脳内へ黒ウサギたちのコミュニティの位置を示すマップをギフトとして送ってくれたので、一切の迷いを見せず、キリトは足を動かしていく。

 

しかしその道中、頭の中のマップに気を取られていたのか、普段なら絶対によけられるであろう地面の凹みに足が引っかかり、そのまま派手に三メートルほど転がっていく。

 

「イッテェェエっっ!!」

 

キリトの足首の近くにはひどい擦り傷ができていた。それと同時にゲームの世界なら感じる事のないが、子供の頃にはよく感じていた刺すような痛みが足首を襲ったのだ。

 

そしてこの出来事はその少年に衝撃をもたらすには十分だった。

 

 

 

なぜなら―――――その傷はほんの三十秒ほどで完治してしまったのだ。

 

「っはぁぁあ!?」

 

キリトの脳内に白夜叉の言葉が蘇る

 

『おんしの体は本物のようで本物ではない。ギフトによって構成されているということをしっかりと理解しておけよ』

 

そしてまたもや少年は叫ぶ。

 

「もうちょっとちゃんと説明しろよっ!!」

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます!

続き遅れてしまい申し訳ありません…。できるだけ早く投稿できるように気をつけていきますので、何卒宜しくお願い致します。

内容ですが、キリト君にチート能力(?)追加です。まあ変わってないといえば変わってないんですけど、実際の肉体が完治していくのをみる気分を見るのはどんなだろうなー。と思ったり。
理解しがたいところがありましたら、感想などで教えてください。
僕もあまり頭のいい方ではないので、もしかしたら、『箱庭の不思議な力!』というかもしれませんが、今後のためにも報告していただけると幸いです。

最後になりましたが、誤字脱字や変な箇所、気に触るような箇所がありましたら、遠慮せずに申し上げていただけるとありがたいです。
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