「駒川の者として」を読んでくださりありがとうございます。
第二話になります。
それではどうぞ
「なあ茉子。さっきのことは謝るから、そろそろ機嫌直してくれないかな?」
「別に、怒ってませんけど?」
「怒っているじゃないか……」
玄十郎さんの依頼で、春祭りの練り歩きに参加することになった俺は、同じく俺のサポートをお願いされたらしい幼馴染の常陸茉子とともに建実神社を目指していた。
「言っておくが、あれは茉子も悪いからな。年頃の娘が男の布団に潜り込むなんて」
「うっ……でも!抱き寄せる必要はなかったじゃないですか!うう、もうお嫁にいけない」
「あ、あれは、からかわれる前にからかってしまおうという寝ぼけた頭で精一杯考えた末の行動で、いわば正当防衛的な……」
「幸彦に傷物にされました!」
「人聞きの悪いこと言うな!」
ことの発端は、数分前。仮眠を取っていた俺のベッドに茉子が悪戯で潜り込んできた。すぐに冷静になり、恥ずかしくなった茉子は布団から抜け出そうとするが、悪戯されると思った俺が事もあろうが茉子を抱き寄せて反撃に出てしまった。本当に、何を考えてるんだ、俺……。
「さっきの事は忘れよう。その方がお互いのためだ」
「うん。ワタシもそう思う」
お互い忘れる事にした。
「それで、今日の練り歩きの件だけど、芳乃様の護衛の方は大丈夫なのか?」
「お父さんにお願いしたから大丈夫。現役は引退してるけど、ワタシの師匠だもん」
常陸家は先祖代々
「そうか。安春様からはなんて言われたんだ?」
「幸彦のサポートをしてくれないかって。あと出店も楽しんでおいでって言われちゃった」
「なるほどな」
おそらく今回の依頼は、俺と茉子を休ませるために大人たちが考えたのだろう。発起人は芳乃様あたりかな。
町内会のサポートではなく俺のサポートと言ったのも、神社の手伝いに廉太郎たちが入ったのも、俺たちに出店を楽しんでもらう口実なのだろう。
俺は今朝も遠まわしだが根を詰め過ぎないよう言われたし、茉子は毎日朝武家の家事をこなしている。玄十郎さんたちからの粋な計らいというやつだ。
だとしたらなおさら今日の練り歩きは頑張らないとな。
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「これであの二人も、少しは羽をのばせるかしら」
舞の奉納の準備を進めながら、今ここにいない幼馴染の姿を思い浮かべる。
茉子も幸彦も、巫女姫としての仕事をサポートしてくれる。毎日休まず、私のために。
「芳乃、暗い顔をしておるぞ。大丈夫か?」
「ムラサメ様……」
気がつけばムラサメ様が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
ムラサメ様は穂織にある伝説の御神刀「
「大丈夫です。少し、茉子たちが心配で。ちゃんとリフレッシュできればいいのだけれど」
「あの二人なら大丈夫であろう。むしろ吾輩は芳乃の方が心配だぞ。少しは肩の力を抜いた方が、効率がいい事もある」
「ご心配ありがとうございます。ですが、これは私の仕事ですから。休んでる暇なんかありません」
二人がいつも頑張っているのに、私が休むなんてできない。
私が頑張らないといけないんだ。それが巫女姫として生を受けた宿命。
「はぁ。昔から頑固なのは変わらんな、芳乃は。いや、芳乃だけではないか。芳乃も茉子も幸彦も、吾輩から言わせれば働きすぎだ。危うくて見てられんぞ」
私たちはみんな不器用だから。きっと多くの人に心配をかけているのかもしれない。
「吾輩も、芳乃たちの力になれればいいのだがのう……」
ムラサメ様が呟いた小さな声には、悔しさと悲しさが混ざっているように感じた。
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「常陸さん、駒川くん。二人とも手伝いに来てくれてありがとう」
建実神社に着いた俺たちを玄十郎さんが迎え入れてくれた。
「いつもお世話になっているんですから、これくらいは当然です」
「そうですよ。芳乃様も町内会の皆さんによろしくお伝えくださいとおっしゃっていました」
「ほお、巫女姫様が。それは皆も喜ぶでしょう。」
巫女姫である芳乃様は街の住人に愛されている。穂織で生まれた人間は皆、親から巫女姫を大切にするようにと教えられて育つ。
もはやこの街の風習であるが、それでもこの街全ての人が芳乃様を慕い見守ってくれるのは、芳乃様の人柄あってのものだろう。
「では駒川くん、早速で悪いが今日のスケジュールを確認した後、甲冑のサイズを合わせてくれないか」
「わかりました。よろしくお願いします」
「うむ。よろしく頼む。私は神社の準備の方に1日縛られることになると思う。何かわからないことがあったときは、申し訳ないのだが魚屋の魚海か古本屋の榎本に聞いてくれ」
玄十郎さんは静かに神社の神殿の中に入っていった。
「本当、古希を迎えているとは思えない人だ。玄十郎さんは」
「今でも素振りを毎日欠かさずしているって、安春様が言ってたよ」
若い頃から剣道をしていて、その実力は警視庁の幹部がわざわざ穂織まで来て、稽古をつけてくれと頼みに来るほど。還暦を越えても衰えず、古希を過ぎた今でも背筋はピンと伸びている。呪いのことも知っているので、俺にとっても頼りにできる人だ。
「じゃあ、ワタシは一度戻るね。練り歩きに参加する皆さんのためにおにぎりを作っているって町内会の奥様方に聞いたの」
昔の合戦のときの兵糧としておにぎりが振る舞われたらしい。それにあやかって手の空いている奥様方が朝武家の台所を借りておにぎりを作り参加者に配るのだそうだ。
「そうだな、スケジュールの確認も甲冑のサイズ合わせも俺一人で大丈夫そうだし、適材適所といこうか。美味しいおにぎりを期待してるよ」
「この常陸茉子にお任せください!」
茉子のおにぎりか……考えてみれば何年ぶりだろう。
少しだけ、ほんの少しだけ楽しみだ。
「なーにぼうっとしてるんだよ幸彦!……うん?ありゃ茉子ちゃんじゃねぇか!なんだよこの!隅に置けないやつだな〜え〜?おい!」
完全に背後をとられた。気配を消しておきながら、結局やかましいぐらいの大声を出して絡んでくる人間は穂織には一人しかいない。
「
「おいおい。せっかく師匠自らが出迎えてやったんだぜ?もうちょっとましな反応見せろよ」
穂織の商店街で魚屋「
「離してあげなさいよ。幸彦が困ってます」
「おいおい聞いてくれよ古本屋!このやろう茉子ちゃんを見ながら顔赤らめてやがったんだぜ?」
「ちょっ赤くなんかなってないですよ!」
「魚屋さん。あなたはまず私の話を聞きなさい」
魚海のおやじさんの魔の手から救おうとしてくれているのが、同じく商店街で古本屋を経営している
「昔から何も成長しないのは問題ですよ?」
「そうだぞ?幸彦。気を抜いてるから背後をとられんだ。もっと精進しろ」
「私はあなたに言っているのですよ、魚屋さん」
「俺は強くなってるぞ?」
「性格の話をしてるんですよ」
榎本さんは眉間に手を当てため息を吐いた。
この二人はいつもこの調子だ。元同級生らしく、昔からお互いをライバルとして認識していたらしい。こんな二人でも、武術家としては超一流だ。魚海家も榎本家も朝武家に仕えていた武士の家系。閉鎖的な環境で独自の文化を育んだこの街には、先祖から受け継がれる武道の流派を持つ人間が多い。親から子へ。そして孫へと、戦いの知恵や技術を残してきたのだ。
「あの、迎えに来たって言ってましたけど、それってつまりは」
「おう。お前は俺の部下。つまり家来として練り歩きに参加してもらう」
「魚屋さんが侍大将として馬に乗りますので、私と幸彦はその横に控えて歩くことになっています」
「そうなんですか。お二人が一緒なら心強いですね」
「なんだ?緊張でもしてたのか?大丈夫だって、安心しろよ!」
「そうですよ幸彦。何せ、魚屋さんでもできるくらいなんですから」
「すごい。こんなに説得力のある言葉は初めてですよ」
「ダァッハッハッハ!照れるぜおい!」
この通り魚海のおやじさんはバカだ。武術家としては尊敬できるすごい人ではあるのだ。あるのだが……バカなのだ。
「では幸彦、諸々の説明と準備をするのでついてきなさい。バカ……魚屋さんも行きますよ」
「なあ幸彦。今バカって聞こえた気がしたんだが」
「……気のせいですよ」
俺は魚海のおやじさんから顔を背け、榎本さんについていった。
◆◆◆
「町内会のみなさーん!おにぎりを持ってきましたー!」
甲冑の着付けが終わったころ、茉子や奥様方が大量のおにぎりを運んできてくれた。
「おおー!茉子ちゃんも作ってくれたのかい?」
「かー!茉子ちゃんのおにぎりが食べられるなんて嬉しいねぇ〜!」
「ありがとう茉子ちゃん。今度野菜安くするよ!」
「じゃあ、うちはコロッケおまけしよう!」
「うまい!茉子ちゃんみたいな子が息子の嫁さんになってくれたらな〜」
「お前んとこの盆暗なんかにゃもったいねえよ」
「それにおめぇ、茉子ちゃんには幸彦がいるからなぁ!」
「あんたたち!何鼻の下伸ばしてるんだいみっともない!」
「あはは、みなさんありがとうございます。ですが、幸彦とは
みんなおにぎりを嬉しそうに手に取り、口々に好き勝手喋っている。
相変わらず茉子は人気者だ。
朝武家の台所を任されている茉子は、商店街に毎日買い物に行く。幼いころから通い続けているため、商店街や町内会のアイドルと化しているのだ。
しかし、茉子さん?やっぱりまだ怒ってないかい?そこまで何もの部分を強調しなくてもいいじゃないか。いや、何もないのは事実だが。
「何もないそうですね」
「落ち込むなよ幸彦!」
この人たちは少し黙っていてほしい。
「茉子ちゃーん!こっちにもおにぎり持ってきてくれるかーい?」
「あ、はーい!」
魚海のおやじさんに呼ばれ、茉子は小走りで向かってきた。
「魚屋さん、古本屋さん。いつも幸彦がお世話になっております」
「おう!お世話してるぜ!」
「お世話されてるの間違いじゃないですか?」
「おう!お世話して、お世話されてるぜ!」
「もう俺突っ込みませんよ?」
「あは、本当に仲がいいんですね」
俺たちの会話を聞いていた茉子はおかしそうに笑った。
「へへ、まぁな!そんじゃま、いただきますっと。あーむ!んー!うまい!」
「本当ですね。美味しいですよ常陸さん」
「ありがとうございます♪そう言ってもらえると、作った甲斐がありました」
「幸彦も、食ってみろよ!うまいぞ!」
言われなくても食べるつもりだったが、急かされるとなんだか気恥ずかしくなってしまう。
「じゃあ、いただきます……ん!……うまい」
「当然でしょ。ワタシが握ったんだもん」
絶妙な塩加減で、優しく、しかし力強く握られたからだろうか、口に入れた瞬間、お米が解けるように広がる。文句のつけどころないうまさだ。
「おーい。こっちにもくれるかなー?」
「今行きまーす!それじゃ幸彦、また後でね」
「ああ、また後で」
「あ、それと……」
歩きだそうとした足を止め、茉子はこちらを振り向くと、俺の耳元に顔を近づけた。
「甲冑姿、似合ってるよ」
そう微笑みながら言い終えると、何もなかったように去っていった。
「ははは、今のは反則だぞ」
おそらく、茉子には一生かなわないだろう。
おかげで顔が熱い。今朝の仕返しにまんまとはまってしまったようだ。
……後ろでニヤニヤしている大人たちは無視することにした。
◆◆◆
昼過ぎから始まった練り歩きは、特筆することなく無事終了した。
強いて書くなら、茉子のおにぎり効果なのか、いつも以上にみんな気合が入っていた、というぐらいか。まさしく歴戦の武将たちの凱旋だった。茉子のおにぎり恐るべし。
そして現在、頑張って茉子をエスコートしようと思っていたのだが、
「あわあわ……そわそわ……おろおろ……芳乃様は大丈夫でしょうか?」
どうやら、芳乃様が心配すぎて出店どころではなくなってしまったようだ。
「し、心配しすぎだよ、茉子。ま、まだ、あわ、あわわわわわわわ」
かくいう俺も、茉子と同じ気持ちだったりする。
一度咳払いをし、気持ちを落ち着かせるため息を吐く。
……よし。
「なあ茉子。提案があるんだが……」
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舞を奉納し終えた私をお父さんが出迎えてくれた。
「お疲れ様、芳乃。はいタオル」
「ありがとうお父さん」
舞を踊っている間は無心になれる。過去に起こった悲しいことも、これから起こるかもしれない辛いことも、何も考えず、舞に集中できる。
だから、これから先も、私は踊り続ける。
最後まで。お母さんがそうであったように。
私の命が尽きるまで。
「芳乃?」
「っ!なに?お父さん」
「いや。昼頃からずっと顔色が悪かったからね。何かあったのかい?」
「大丈夫。昨日ちょっと遅くまで本を読んでたから、そのせいだと思う」
「………」
「お父さん?」
「いや、芳乃が大丈夫ならそれで良いんだ。だけど、もし何かあるのなら相談してほしい。僕に話すのが嫌なら、茉子君でも幸彦君でもいい。とにかく、一人で抱え込まないでくれないかな」
「本当に大丈夫だから。心配しないで」
私は自分にできる精一杯の笑顔を見せる。お父さんをこれ以上不安にはさせたくないから。
「そうか。うん。なら、いいんだ。僕はまだ仕事があるから失礼するよ」
「あっ、それなら私も手伝う」
「いいからいいから。小春君もいるし、芳乃は休憩してて」
これ以上は逆効果だと思った私は、素直に従うことにする。
「はぁ」
自室に戻った瞬間ため息が漏れる。
みんなを心配させたいわけじゃない。ただ頑張りたいだけなのだ。
そうしないと、きっとお母さんは……。
「ため息は幸せを逃すと言うぞ?」
「きゃっ!もう!驚かさないでくださいよ、ムラサメ様」
「驚かしたつもりはないぞ?それよりも、芳乃。ため息ばかりするでない。吾輩まで気が沈みそうだ」
ムラサメ様は肩を落として見せた後、クワッとこちらに顔を向けた。
「ほれ!息を大きく吸え!今逃した幸せを取り戻すのだ!」
「えっと、いったいどういう……」
「いいから吸ってみるのだ!」
「は、はい!……すぅ〜〜〜〜」
言われた通り大きく息を吸って見る。
「どうだ?幸せが戻ってきたであろう?」
「あの……よくわからないのですが」
その時、私の部屋の襖が開けられ、私のよく知る二人が入ってきた。
「失礼します。芳乃様、ムラサメ様」
「茉子!?幸彦まで!今日は出店を楽しんできてねって言ったのに……」
「あは、もちろん楽しみますよ♪ね、幸彦」
「ええ、その前に忘れ物を取りに来たんです」
「忘れ物?」
「そうなんですよ。では、行きましょうか、芳乃様」
茉子が私の右手を握る。
「じゃあ、行きましょう、芳乃様」
幸彦が私の左手を握る。
「あの……これは一体どういうこと?」
「ははは、茉子が、芳乃様が心配すぎて出店に集中できない〜!って言うものですから」
「ちょっと!幸彦だって心配しすぎて壊れたロボットみたいになってたじゃない!」
「いや〜面目無い。それで二人で話した結果、芳乃様も一緒に連れて行こうということになりまして」
「芳乃様をおいて楽しむなんてやっぱりできません。ですので!今日は昔みたいに三人で楽しみたいな〜っと思ったんです」
「で、でも、私着替えてないし、それにお父さんの手伝いも」
「安春様にはもう俺と茉子で許可を取ってあります。何も心配ありません」
「それに、巫女服のままで楽しんではいけない決まりはありません。むしろ巫女姫様の楽しんでいる姿を見せることで、周りに安心感を与える効果も期待できるのではないでしょうか?」
この二人に死角はなかった。
昔みたいに三人で。とても魅力的な提案だ。
「断ったとしても、無理やり連れて行きますけど」
茉子がいい笑顔でとんでもないことを言う。
「……わかりました。今日だけ、ですよ」
二人は顔を見合わせ、そして微笑む。
「うむ。やはり息抜きは必要だからな」
「ムラサメ様は二人が来ることを知ってたんですか?」
「そうだぞ。だから芳乃に教えようと部屋に入ったのだが、暗い顔でため息なぞ吐いていたからな。ちょっとしたサプライズを考えたわけだ」
「さすがムラサメ様。エンターテインメントのなんたるかを分かっていらっしゃる」
「当たり前だ、幸彦。吾輩はえんたーていなーだからな!」
「ムラサメ様もご一緒にどうですか?」
「いや、今日は三人、水入らずで行くといい。吾輩はまた次の機会に期待しておるぞ」
さっきまで暗い空気が充満していた部屋が、明るい笑い声で溢れている。
使命を忘れることはできないが、少しだけ楽しみたい。
私はそう思った。
◆◆◆
「わぁ〜!すごいたくさんお店があるんですね!」
「昔はこんなに出店も屋台もありませんでしたよね」
「観光客が来るようになったからな。娯楽の少ない街だし、みんなも気合を入れてるんだろう」
三人でこうして出かけるのは随分久しぶりに感じる。私も茉子も幸彦も、自分の役目を理解し始めてからは、遊びに出かける行為は自然としなくなった。
「正直、幸彦が今回の提案をした時はびっくりしちゃいましたよ」
「え!?幸彦からの提案だったの!?」
幸彦は心配性で、私たちが関わることには、とても注意深くなる。
そんな彼が、大勢の人がいるところに遊びに行きましょうなんて、普段なら決して言わないと思ったのに。
「実は今朝、姉さんに根を詰めすぎだと言われまして。それに、駒川の者として芳乃様のメンタルケアも仕事の一つですから。安全面も、俺と茉子が側にいて、茉子の父親も近くで控えています。師匠たちにも、怪しい人がいないか警戒してもらっているので」
「心配性が治ったわけではなかったんだ」
「当たり前です。対策はいくらしたって困らないし、絶対に安全なんてないですから」
「この通り、いつもの幸彦ですよ」
「そうみたいね。でも、それが幸彦ですもんね」
「そういうことです。さぁ、早く廻りましょう。どこがいいですかね?」
「食べ物関係はたくさんありますよ。あ、射的もありますよ——
「たこ焼き、たい焼き、焼きそばなんかの定番も——
二人が楽しそうにしているのを見て、私まで楽しくなってしまう。
来て良かった。気がつけば私も笑顔になっていた。
◆◆◆
「なんで屋台の焼きそばって美味しく感じるんでしょう?」
「それを言うなら、祭りで食べるものは大抵美味しく感じる気がするな」
「茉子も幸彦も買いすぎよ」
「そういう芳乃様も、たい焼き三つも食べてたじゃないですか〜」
「美味しそうに食べてましたよね。あの後行列ができてましたよ」
「だって!おまけって言ってくれるからつい……」
私たちはその後もたくさんのものを食べ歩きしました。
◆◆◆
「芳乃様、チョコバナナです」
「ありがとう、茉子」
「甘いものはいいです。脳に糖が染み渡る」
「ふふ、幸彦幸せそう」
私もチョコバナナを食べようとするが、なんだか周りからの視線がすごい気がする。
「……茉子。クナイを貸してくれないか?」
「はい」
幸彦は茉子からクナイを借りるとチョコバナナを上に放り投げた。
一閃。チョコバナナは見事に輪切りで三等分に分かれていた
「輪切りにする必要があったの?」
「いえ、ちょっとした見せしめですよ。『あんまりいやらしい目つきで見てるんじゃない。君たちのもこうしてやろうか』って」
「?茉子、どういうことかしら?」
「芳乃様はお気になさらないでください。ささ食べましょう」
普段食べないものもたくさん食べれました。
◆◆◆
「芳乃様。射的がありますよ」
「ほんとだ。私やったことないの」
「ふっふっふ。この常陸茉子に任せてください!的を当てるのはは得意ですから♪」
「……クナイは使うなよ?」
「わかってるもん!芳乃様、私が教えるので一緒にやってみましょう!」
初めての遊びもたくさん楽しめました。
◆◆◆
ずっと遊んでいたい。そう思えるほどに、楽しい時間でした。
幼い日のあの頃に、戻ったように。
でも、運命の歯車は、私たちがこうしている間も回り続けていて、
「あー!こんなところにいた!探したぜ幸彦!巫女姫様と常陸さんもいるな。」
「どうしたんだ、廉太郎。そんなに慌てて」
「いやさ、じいちゃんに三人を呼んでくるように言われてさー」
「俺たちを?」
「何かあったんですか?」
「それがさ、俺の従兄弟が叢雨丸を折っちゃってさ」
「なんだって!?」「なんですって!?」
私はその運命から逃げることはできない
「とにかく行こう!」
「ええ!芳乃様、行きましょう」
覚悟を決めろと言われているような、そんな気がした。
忘れられる前にと思い頑張って書きました。
マルチビタミンです。
第二話を読んでくださり、ありがとうございます。
第二話では、オリジナルキャラを二人登場させました。
将臣の師匠が玄十郎さんなので、幸彦にも師匠的人間を作りたいと思い、出来上がったのが彼らでした。
千恋万花は主要キャラクターはもちろん、それを見守る大人たちも素敵な人ばかりなので、オリジナルキャラを入れるのは緊張しますが、魚海なんかは書いてて楽しいです。大人たちが活躍する話もそのうち書きたいと思います。
どうでもいいかもですが、魚海のCVのイメージはてらそ◯まさきさん。榎本のCVのイメージは加◯将之さんです。
そして今回は芳乃の心理描写を多く書かせていただきました。
難産でしたが、いかがでしたか?
各キャラに葛藤と成長があるので、原作の良さを消さないようこれからも励んでいきたいと思います。
次回はとうとう、将臣の登場です。