「駒川の者として」読んでくださりありがとうございます。
第二十五話になります。
それではどうぞ。
朝日が差し込む穂織の山。
その山の中で大きな山犬と青年が向かい合っていた。
鋭い双眼で睨みつける山犬に、青年は必死に語りかける。
「狛、少しだけでもいい。話を聞いてくれ」
『貴様と話すことなどないと言っている。祟り神を私に喰わせてくれるのなら話は別だが』
「それは……できない」
『ならばこれ以上の会話は無意味というものだ。徒労に付き合う義理はない』
「待ってくれ!君の力になりたいのは本当なんだ。話し合えば、祟り神を喰らう以外にも君を取り戻す術が見つかるかもしれない」
『自惚れるなよ人間。身の程を知れと言ったはずだ。』
地響きのように重く突き放すような声に青年は息を呑む。
『いたちごっこがしたいなら独りでやれ。次くだらないことで呼び出したらその首を食いちぎる』
「あ、狛!まだ話は終わって——」
青年が呼び止める前に山犬は姿を消し、一枚の霊符だけがその場に残った。
「だぁぁ!もう!狛のわからず屋ーーーー!!」
普段の青年からは想像もできないような叫び声が穂織の山に木霊する。斯くして今日も、青年《幸彦》の一日が始まるのだった。
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「はぁぁぁぁ」
「朝っぱらから盛大なため息とは、どうやら難航しているようだね」
「そうなんだよ。あんなに拒絶されたら意思疎通も難しすぎる……」
俺が退院してから3週間が経った。狛を呼べるほどにまで回復した俺は、ほぼ毎日、狛と会話を試みているのだが……。
「契約主に対して首を食いちぎるはないだろ……。怖すぎるって」
まさしく連戦連敗。俺の言葉に耳を傾けることなく話を打ち切られてしまう。式神に逆らわれるなんて、陰陽師の末裔が聞いて呆れる。思わずため息が溢れ出る。
「狛が本当に犬神の生まれ変わりなのだとしたら当然の反応なんじゃないかな?伝承が正しいなら犬神は人間に対して相当な憎しみを持っているはずだから」
「それはそうなんだけど。でもあいつ自身は犬神だった頃の記憶や感情をなくしたって言ってたし。今まで話してみて思ったんだけど、なんだか言動と行動がちぐはぐっていうか、違和感があるんだよなぁ」
その違和感がなんなのかはわからない。
でもなにか引っかかるものがある。
「ああもう!さっぱりわからん!」
「まぁ落ち着きなさい。ほら、コーヒー」
「ありがとう、姉さん」
姉さんに渡されたコーヒーは珍しく俺好みの甘さになっていた。普段は体に悪いから砂糖の量を制限されているのだが、今日は特別なのだろう。姉さんの心遣いがありがたかった。
「ところで欠片の方はどうなったのかな?あれから進展はあったの?」
「一応少しずつ回収していってるよ。今日も朝から欠片を探しに山へ行くって朝稽古の時に有地が言ってたから」
呪詛を解くカギになるかもしれない欠片。その欠片も今では手のひらサイズにまで大きくなっている。ムラサメ様が毎日山に入り欠片を探し、有地たちが回収する。地道だが、確実に成果は出ていた。
「時間はかかるかもしれないけど、ちゃんと前には進めてる。さすがは有地ってところかな」
俺をライバルだと言ってくれた彼は俺のはるか先を進んでいる。それなのに俺はこの体たらく。悔しさを飲み込もうとコーヒーに口をつけた時だった。
「——ッ!?」
ガシャン
鋭い刃物で切りつけられたような鋭い痛みが両腕に走り思わずカップを落としてしまった。今までに感じたことのない痛みに困惑する。
「幸彦!?大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫。ちょっと狛を呼び出すのに力を使いすぎたみたいだ」
慌てて駆け寄ってきた姉さんを安心させるため、咄嗟に誤魔化す。
割れてしまったカップを拾いながら姉さんに気づかれない程度に腕の調子を確認するが、特に違和感は感じられなかった。包帯のおかげで穢れも順調に払えているはず。
それでは、今の痛みはいったい何だったのだろうか。
自身の体に起きた異変に多少の疑問を抱きながらも、とりあえずは目の前の割れたカップを掃除することにする。
ああ、お気に入りのカップだったのに……。狛には威嚇されるしカップは落とすし、今朝はとことんついていない様だ。
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「今日のお昼はスタミナのつくものにしましょう!」
そう宣言してお昼のお弁当作りを始めた常陸さん。台所からは美味しそうな匂いが漂ってきている。
「なんだかいつも以上に気合が入ってない?」
「おそらくご主人たちが心配なのだろう。今日の祟り神退治に茉子は参加できないからな」
「もう、茉子は心配しすぎなんです」
そう言いながらもどこか嬉しそうな朝武さんの頭には白い獣の耳がぴょこりと生えていた。
今朝方朝稽古を終えた俺は、ムラサメちゃんが見つけたという欠片を回収するために朝武さんや常陸さんと一緒に山に入った。
無事に欠片は回収できたが、帰り際、朝武さんの頭に祟り神出現の合図でもある獣の耳が生えてしまったのだ。
常陸さんはまだ怪我が治りきっていないため祟り神退治に参加できない。みづはさんからキツくドクターストップをかけられているらしい。本人曰く大丈夫らしいが、以前みづはさんの言いつけを破って無理をしたらしく逆らえないと言っていた。まあみづはさんが許しても幸彦が許さないと思うけど……。
なので今日は俺と朝武さんだけで祟り神を祓わなければならない。
「ところで、ご主人は何も変わりないか?先ほどは何かに呼ばれている気がすると言っておったが」
「ああ、うん。なんとなく気にはなるけど、体に異常があるわけでもないし大丈夫」
「ならいいが。でも気をつけるのだぞ。ご主人が呼ばれたと感じたすぐ後に芳乃の頭にあの耳が生えたのだ。何かしら関係があるかもしれん」
ムラサメちゃんが言うように、欠片を拾った後にほんの一瞬感じた言葉では表しづらい感覚。呼ばれているが一番しっくりくるのでそう説明しているが、もちろん誰に呼ばれているかはわからない。一度幸彦に相談したほうがいいだろうか。
「茉子くん、僕も手伝おうか?」
「お父さんがいたら茉子の邪魔になるかもでしょ?私が茉子を手伝うから、お父さんは早くお仕事の準備をすること」
「えぇ!?芳乃が料理のお手伝い!?」
「お父さん?その反応はなに?」
「いやぁ娘の成長が嬉しくて、つい驚いちゃってね。卵を電子レンジで爆発させていたあの芳乃が、今では立派に料理の手伝いができるなんて」
「いつの話をしてるんですか!!?」
顔を真っ赤にしている朝武さん。俺的には可愛らしい朝武さんの昔話を聞けてラッキーだが、本人にしたら恥ずかしい話を暴露されたようなものだし当然の反応か。安春さんはそんな朝武さんを見て嬉しそうだ。
「お二人とも。楽しそうなところ申し訳有りませんが、台所ではしゃぐのは大変危険なのでやめてくださいね」
「「すみません……」」
で、でた!常陸さんの黒いオーラ!笑顔なのが怖さを助長してる気がする。朝武さんも安春さんもしゅんとして謝っている。その姿はまるで台所仕事をしているお母さんにちょっかいを出して叱られる父と娘のようだった。
◆◆◆
……ダメだ。全然集中できない。
教卓で先生が話している内容が右から左へと流れていく。朝からずっとこんな調子だ。授業にまったく身が入らない。机に広げたノートは真っ白なまま、俺の視線は黒板ではなく窓から覗く穂織の山々に吸い寄せられていった。
「おい将臣」
「廉太郎、授業中に話しかけるのはまずいだろ」
「ばーか、とっくに放課後だっつうの」
「へ!?」
周りを見渡すと各々が帰り支度をしている。もう教室にいない生徒もちらほら。思った以上に上の空だったようだ。まさか帰りのホームルームに気づかないとは。
「ったく、ボーッとしてないで早く帰る準備しろよ」
「もしかして待っててくれたのか?」
「なに言ってんだよ。今日は俺も厨房の手伝いがあるから一緒にじいちゃん家に行こうぜって昼飯ん時に話してただろ」
「あー……」
そういえばそんな話をしていたような、ないような。正直な話昼休みも心ここに在らずだったので記憶が曖昧だ。廉太郎に申し訳ない気持ちが湧く。
「悪い、すぐ支度するから」
「おう。しかし随分と上の空だったな。今回約束してたのが俺だから良かったけど、これが巫女姫様だったらお前どうすんだよ。もっとしっかりしないとあの鬼彦にこっぴどく叱られるぞ?」
「確かに、芳乃様が待たされるなんてことがあれば小一時間は説教するだろうな」
「どわぁッ!?い、いきなり背後から現れるのは心臓に悪いだろ!」
いつもの如く気配を消した幸彦が廉太郎の背後から姿を現した。
「すまない。癖だ」
「なんだよ、癖なら仕方ない……ってなおさらタチが悪いわ!」
「あはは……それで幸彦、俺に何か用か?」
「ああ、ちょっと有地に聞いておきたいことがあったんだ。その前に、廉太郎。さっき俺のこと鬼彦って言ったかい?」
幸彦はニコっと笑いかける。一見爽やかな笑顔だが、黒いオーラが溢れ出ている。
恐い!恐いよ!常陸さんもだけどそのオーラってどうやって出してるの!?
「ソンナコトイッテナイゾ」
下手くそか!?自白してるようなもんだぞ!?
廉太郎は額から汗をダラダラと流し目が泳いでいる。そんな廉太郎に幸彦は「そうか」と頷き教室の窓側まで移動すると、おもむろに窓を開いた。
「猫丸、いるか?」
幸彦の呼びかけに猫丸が窓の外から姿を現した。幸彦は懐から紙を一枚取り出し猫丸の前足にくくりつける。
「これを玄十郎さんのところまで持って行くんだ。頼んだよ」
「にゃー」
そのまま走り去る猫丸。猫丸が見えなくなったところで俺は幸彦に問いかける。
「なあ、猫丸に何を持って行かせたんだ?」
「どこかの誰かさんが病院で柏木さんに行った行為を綴った密告文」
「だぁぁぁ!待ってくれぇ!猫丸ぅぅ!!」
廉太郎は血相を変えて教室を飛び出し、ものすごい速さで猫丸を追いかけて行った。
「ちょっとやりすぎじゃないか?」
「安心しろ、ブラフだ。廉太郎がここにいたら話せない内容だったからな」
と言いつつちょっとだけスッキリしたような顔をしている。きっと鬼彦呼びが気に入らなかったのは本心なんだろう。今後鬼彦呼びはやめよう。廉太郎の二の舞はごめんだ。俺は密かに胸に誓ったのだった。
◆◆◆
話を誰かに聞かれないよう教室を出た俺たちは、学院の裏手にある自動販売機前のベンチに移動した。昼休みは飲み物を買いに来る生徒で賑わうこの場所も放課後になるとほとんど人通りはなくなる。
俺は幸彦に今朝の出来事や俺が感じた誰かに呼ばれるような感覚について相談した。幸彦は俺の話に真剣に耳を傾けている。
「なるほど、どおりで授業中も山を見ていたわけだ」
「あー……気付いてた?」
「うまく誤魔化そうとはしていたけど、あれじゃあ俺や茉子は騙せないぞ。まぁ芳乃様は気づいていないようだったけど」
さすがは忍者と医者の息子といったところだろうか。彼らの観察眼にかかれば隠し事なんかすぐにばれてしまう。
「茉子なんか『何か大きな危険を感じてるんじゃないか』って心配してたんだからな」
「うぅ、余計な心配をおかけしてしまったようで……あとで常陸さんに謝らないと。そういえば朝武さんや常陸さんは?」
「芳乃様は念のため保健室で姉さんに診察してもらってる。茉子はその付き添いだ。その間に俺が君に話を聞きに来たってわけさ。この話も芳乃様が有地に伝えたって言ってたけど、どうやら聞いてなかったようだな」
「……面目ない」
廉太郎だけじゃなく朝武さんの話まで覚えてなかったとは。罪悪感がすごい。
幸彦はやれやれと息を吐くと、真剣な表情に切り替える。
「話を戻すが、誰かに呼ばれた感覚がしたと言っていたね。今日は一日中そんな感覚なのか?」
「いや、今朝の一瞬だけだったけど、それが無性に気になって」
「ふむ」
幸彦は顎に手を当て考え込む。そして自分自身に確認するように言葉を紡いでいった。
「考えられるとするなら、有地が叢雨丸の使用者だからか、それとも有地自身が憑代と何かしらの
「縁?」
「そうだ。繋がりと言えばわかりやすいか?」
「繋がり?俺と憑代に?」
頭をフル回転して考えるが、俺と憑代の繋がりなんて思い浮かばないし覚えがない。
「縁というのは必ずしも実感できるものじゃない。自分の身に覚えがないような小さな関わりでも縁にかわりない。袖振り合うのも他生の縁という言葉があるようにそれが前世からの魂の繋がりであるかもしれない」
「そんなの、確かめようがないじゃんか」
前世の繋がりなどわかるはずがない。そもそも前世があったのかさえわからないのだ。俺の当たり前の反応に幸彦は冷静に頷く。
「その通り。でも可能性としては否定できない。……少し大げさに話したが、君は小さいころ穂織によく来ていた。覚えていないだけで憑代の欠片となにか接点を持ったのかもしれない。まぁどちらにせよ推測の域を超えることは難しいから今は深く考えなくてもいいだろう。問題は、何故今になって呼ばれるような感覚がするようになったかだが……」
幸彦はそのまま俺のポケットを指差す。そこには念のため持ち歩いている憑代の欠片が入っている。
「憑代を集めることによって、憑代自体の力が強くなっているのかもしれない。今回有地が感じた誰かに呼ばれるような感覚に関して言えば特別危険はないだろう。でももしこの先憑代の力が強まりすぎて私生活にまで影響がある場合は、なにか対策を考えたほうがいいかもしれないな」
そこまで言い終わると早速対策について考え始める幸彦。全く頼りになる奴だよ、ほんと。
「……どうした?なにか案でも思いついたかい?」
「いや、幸彦ってすげーなって思ってさ」
「すごい、か。……それは光栄だね」
幸彦は照れたように笑った。一瞬表情に陰りが見えた気がしたが、気のせいだろう。幸彦は「さて」と話に区切りをつけると、腰掛けていたベンチから立ち上がり、飲み終わった缶コーヒーの空き缶をゴミ箱に捨てる。
「憑代についてはあとでムラサメ様や安春様に相談してみるよ。引き止めて悪かったね」
「そんなことないって。むしろ相談にのってもらって幾分か気持ちが楽になった。サンキューな」
「それなら良かった。今日は茉子がついていけないからな。芳乃様を頼んだよ」
「おう!」
自分自身に対しての鼓舞も兼ねて右手を上げて力強く返事をする。それを見た幸彦は満足そうに頷くと保健室のほうへ歩いて行く。朝武さんを迎えに行くのだろう。俺もじいちゃんのところに向かわねば。
俺が踵を返したときだった。幸彦が「そうだ」と何かを思い出したように声をあげる。こちらを振り返ることなく幸彦は俺に問いかけた。
「最後に一つだけ。今朝誰かに呼ばれた感覚がしたとき痛みは感じたかい?ナイフで切られるような鋭い痛み」
「え?痛みは何も感じなかったけど」
「そうか……いや、なんでもない。じゃあまたあとでな」
表情こそ確認できなかったが、幸彦の言葉に彼の感じている不安のようなものを感じた。もしかしたらまた何か厄介ごとを一人で抱えているのかもしれない。
「俺が聞いても、教えてくれないんだろうなぁ。……はやく幸彦に頼られるような男になれればいいけど。まずは今日の祟り神退治だ。うん」
特別気負うわけではないが、自然に拳に力が入る。山が気にならなくなったわけじゃないけど、集中できないほどじゃなくなった。あとは稽古の素振りで心を落ち着かせればいつも通りの自分を取り戻せるだろう。
「おや?マサオミではありませんか」
学院を出たところで偶然レナさんと遭遇する。
「レナさん?珍しいね、こんな時間にまだ学院にいるなんて」
「今日はたまたまです。ミヅハさんにお薬をもらいに保健室によっていたので」
「薬?どこか具合が悪いの?」
そう言われてみれば、少し顔色が悪い気がする。
「大したことじゃないですよ。ただ、今日は朝から少し頭痛がしてまして。日本にきてからたまに痛くなるときがあったのですが、慣れない環境で無理は禁物とミヅハさんに注意されちゃいました」
「レナさんは働き者だから。ちゃんと休んだほうがいいよ」
「ふふ、心配してくれてありがとですよ、マサオミ。女将にも今日と明日はゆっくり休んでいいと言ってもらえたので大人しくしていようと思います」
レナさんはばつが悪そうに笑ったあと、「ところで」と周りを気にしながら小声で話を続けた。
「ヨシノの頭にケモミミが付いていましてが、今日も、その……タタミ神と戦うのですか?」
相変わらず絶妙に間違えてくるレナさん。きっと祟り神のことだろう。“畳”のことを“祟り”って言い間違えてたのが懐かしい。
「うん、そうだよ。放っておくと強くなっちゃうみたいだし、欠片も集めなきゃいけないしね」
「欠片でありますか?」
「あれ?朝武さんやムラサメちゃんから聞かなかった?」
「タタミ神や呪いについては聞きましたが……」
どうやら朝武さんたちは欠片の説明までしなかったらしい。まあ確かに、診療所で祟り神と戦った時点では欠片が呪詛を解く重要な手掛かりだと確信はなかったはずだし省いたのだろう。ただでさえレナさんはショッキングな内容を一気に知ってしまったのだから。
「あの、マサオミ。よければ私にも欠片について教えてくれませんか?私に何が出来るかわかりませんが……友達の、ヨシノのために何かできることがあるのなら協力したいんです!」
レナさんがグイッと顔を近づけ訴えかける。
近い可愛いいい匂いぃぃ〜!という男子高校生の劣情さえも引っ込んでしまうほど、レナさんはまっすぐ俺の目を見つめてくる。
俺こういうのに弱いんだよ……。
俺はレナさんを危険に巻き込まない程度に欠片について説明した。
「で、これがその憑代。欠片を集めて憑代を元通りにして犬神の魂を慰撫すれば呪いが解けるんじゃないかって、俺たちは考えてるんだ」
「これが、憑代……」
レナさんはじっと憑代を観察する。
「他の欠片もこのくらい大きいのでありますか?」
「ううん、もっと小さかったよ。5センチもなかったぐらいかな」
「ムムムム……」
レナさんは必死に何かを思い出そうと唸る。
「この欠片、どこかで見たように気がするのですが……」
「本当!?」
「ハイ。ただ、私はどこで見たのでしょうか?」
「いや俺に聞かれても……」
「ムムムムムムムム……!」
レナさんはますます唸って思い出そうとするも出てきそうになかった。
「レ、レナさん。無理に思い出さなくていいって。もしかしたら勘違いかもしれないし、頭痛だってしてるんでしょ?」
「うぅ、申し訳ありません。ですが!何かわかればすぐに報告しますので!」
「うん。その気持ちだけでありがたいよ」
レナさんを見ていると、心から朝武さんのことを心配しているのだとわかる。朝武さんにこんな素敵な友達がいると思うだけで俺まで嬉しくなるのだから不思議だ。
「そうだ。俺もじいちゃんの所に寄らなきゃだから、よかったら一緒に帰らない?」
「オオ!モチのロンでありますよ♪」
俺はレナさんと一緒に志那都荘へと向かう。この後幸彦に騙されて先に志那都荘にいた廉太郎がレナさんと一緒に帰った事実を知り血の涙を流すが、それはまた別の話。
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みなさん、こんにちは。常陸茉子です。
突然ですが、ワタシはもうダメかもしれません。何故かって?それは現状を見てもらえれば分かると思います。実は今、ワタシ、木の上にいるんです。
「た、高い……微妙に高い……」
なんで高所恐怖症のワタシが木の上にいるのか。話は数分前に遡る。
芳乃様がみづはさんに診てもらっている間お手隙になったワタシはなんとなく校舎を巡回していた。多分、祟り神との戦いに参加できないことで若干の焦りがあったのだと思う。とにかく何かをしていないと落ち着かなかったのだ。当然校舎には目立った危険はなくワタシはそのまま外に出た。
「にゃ〜」
弱々しい仔猫の鳴き声を聞いたのはそんな時だった。辺りを見回すと木の上で震えている仔猫を発見した。どうやら降りられなくなってしまったのだろう。
純粋に仔猫を助けてあげたかったし、何より祟り神は元々犬神、獣を司る神様だ。もし仔猫に何かあったら祟り神になんらかの影響があるかもしれない。仔猫がいる枝の高さはせいぜい2メートルちょっと。これぐらいならワタシでも大丈夫だろう。
なん度も言うがワタシは焦っていた。
ワタシは勢いをつけて木の幹を蹴るようにして駆け上がる。そして案の定というかなんというか……。
「た、高い……微妙に高い……」
こうして冒頭の場面に戻るというわけである。
(……って冷静に回想してる場合じゃないです!早く仔猫を助けてあげないとっ!)
「ももももう大丈夫ですよ〜。ぉ大人しく、大人しくしててくださいね。るーるるるるる……るーるるるるる」
木の実に必死にしがみつきながらなんとか右手をゆっくりと前に差し出す。なるべく怖がらせないように、そして安全に木から降りられるように。
「にゃあぁぁぁ〜〜〜」
「ひぃ!?逃げないでぇ、動かないでぇ、揺らさないでぇ、離れないでぇ」
仔猫が怖がって体をよじるたびに木がグラグラと揺れ動く。正直泣きそうなほど怖いですが、頑張るんだ茉子負けるな茉子。
「あと少し……もう少しで……」
足場にしては頼りない枝の上でグッと手を伸ばしそして……。
「にゃあ」
「あ、やった!仔猫確保!」
「にゃぅ、にゃぅ、にゃっにゃにゃあ!」
いきなり捕まって驚いたのだろう。ワタシの腕の中で仔猫が暴れだす。
「あ、待って!ダメ、暴れないで、お願いですからっ」
あばばば揺れる揺れるぅ!
仔猫が落ちないように両手で抱え込む。しかし仔猫は止まらない。
両手を木の枝から離したせいでバランスを崩す。あ、これはまずい。そう思った時には遅かった。
「あっ、きゃっ、きゃああああぁっ!?」
枝から離れた体は当然重力に従って落ちる。受け身を取れないこともないが、その場合仔猫が怪我をしてしまうかもしれない。ワタシはとっさに猫をかばいぎゅっと目を閉じる。
「ぐっ……」
「———ッ!」
しかしいつまでたっても痛みは襲ってこなかった。
「か、間一髪ってところだな。無事か?茉子」
代わりに聞こえてきたのは聞きなれた幼馴染の声だった。恐る恐る目蓋を開けてみる。すると息を切らせながらも心配そうにワタシの顔を覗き込む幸彦と目が合った。
「あ、あれ?幸彦?ワタシは一体……」
「少し落ち着けって。それより怪我はないか?痛むところは?」
「あ、うん。へ、平気。痛みはどこにも……」
「そうか、はぁぁぁぁ良かった」
幸彦は心から安堵したような声をあげた。えっと、混乱してて状況が上手く把握できない。
「そうだ!仔猫!」
「にゃ〜」
腕に抱えていた仔猫を確認すると、先ほどまで怯えていたとは思えないほどの気の抜けた声を出した。良かった、怪我もないみたい。
仔猫はそのままワタシの腕から飛び出しどこかへ去っていった。
「あ、行っちゃった」
「あの様子なら大丈夫そうだな」
「うん。……ところで幸彦」
「なんだ?」
「ワタシ、枝から落ちてしまったような気がするのですが……?」
「ああ」
「でも、痛くない……?」
そこでようやく、ワタシは今自分が置かれている状況を一つずつ確認していく。いつもより近い幸彦の顔。幸彦と会話しているのに立っている感覚がない。そして、私を包み込むように抱きかかえている幸彦の腕……………。
「ッ!?!?!?」
一気に顔が熱くなる。
「あのっ、あのっ、こ、こ、これっていわゆるお姫様抱っこ……というものでは?」
「今頃気付いたのか?」
幸彦はやや呆れたように笑った。
「咄嗟だったからな。でも良かった。茉子も仔猫も怪我がなくて」
「ッッッ」
幸彦の言葉で心臓の鼓動が早くなる。
こ、この鼓動の高鳴りはなんですか!?落ち着け常陸茉子。深呼吸深呼吸。だ、だめです!恥ずかしくって幸彦のことを直視できない!
ワタシは思わず両手で顔を隠す。こんなみっともない顔幸彦に見せられない。
「茉子?大丈夫?」
「だ、大丈夫ですっ、本当にっ。ただ、すごく恥ずかしくって」
「あー………」
幸彦は少しだけそっぽを向くと申し訳なさそうに話し出した。
「そんなに恥ずかしがられると、その、俺まで恥ずかしくなってくるんだけど……」
「ご、ごめんねっ、嫌だとかそういうわけじゃなくって、むしろ落ち着くっていうか、ってワタシ何言ってるんだろっ!?」
「い、いや、謝らなくていいから落ち着けって」
思わず本音が出てしまったが、幸彦の腕は力強くてとても安心できた。あんなに小さかった幸彦がである。まぁ春祭りの時にそれはわかっていたことだったが、彼の腕に抱きかかえられて改めて実感する。
「力、強くなったね」
「まぁ、鍛えてきたからな」
「ワタシ重くなかった?」
「全然。むしろ軽すぎて心配になるぐらいだ」
「そ、そっか……」
「顔赤いぞ?」
「だ、だって、殿方にお姫様抱っこされるなんて初めてで」
「俺も、まさか茉子を本当にお姫様抱っこするとは思ってもみなかった」
冗談でなら言ったことはあるけどな、と照れた風に笑う幸彦。
心臓が張り裂けそうなほど大きな音を立てている。これ以上はおかしくなりそうだ。
「あ、あの!そろそろ下ろしてもらえませんか?」
「え、あ、ああ。そうだな。でも本当に大丈夫かい?また腰抜かしてたりしないか?」
「大丈夫。大丈夫だけど、その……緊張とドキドキでうまく体が動かせなくて」
「わかった。ゆっくりおろすから」
ワタシを下ろした後も、幸彦は左腕でワタシの体を支えてくれる。いつも通りといえばいつも通りなのだが、今は遠慮して欲しかった。ドキドキが収まらなくて死んでしまう。
「幸彦っ。も、もう一人で立てるから」
「あ、ああ、すまない」
幸彦の手が離れる。名残惜しいと思ってしまう自分がひどく恥ずかしかった。
ワタシの体に異常がないとわかった幸彦は一度息を吐いて腕を組み、眼を細める。
「しかし、随分と無茶をしたじゃないか。下手したら怪我だけじゃすまなかったんだぞ」
「うぅ、ごめんなさい」
ぐうの音もでない。確かに幸彦が来てくれなかったらあのまま背中から落ちていただろう。打ち所が悪ければ大変なことになっていたにちがいない。
「でも、よくワタシが木の上にいることがわかったね」
「保健室に行ったら、まだ茉子が戻ってきてないと芳乃様に言われてな。校舎にいなかったから外だろうと思って探してたら木の上で仔猫と一緒に震えてる茉子を見つけたんだ。まったく、肝を冷やしたぞ」
お姫様抱っこの時息を切らしていたのは、ワタシのために駆けつけてくれたからだったのか。
「本来ならデコピンの一つでも食らわせてやりたいところだが……今回は見逃そう。その子に免じてね」
「え?」
幸彦の目線の先には先ほど助けた仔猫とその母猫が佇んでいた。仔猫はワタシの足元に咥えていた猫じゃらしを置くと「にゃー」と一声鳴いて母猫とともに山の中へ戻っていった。
「随分律儀な猫だな。よかったじゃないか、茉子。茉子が頑張ったから、あの仔猫もああして母猫と一緒にいられるんだ」
親が子供を褒めるように、幸彦はワタシの頭をポンポンと撫でて優しく微笑んだ。もう限界だった。
「わ、ワタシっ!お先に失礼しますっ!!」
逃げるようにしてその場を離れる。最後のは反則だ。顔の火照りも胸の高鳴りも治らない。どうせこの後芳乃様の家で会うことになるのだが、とにかく少しでも落ち着く時間が欲しかった。
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「芳乃様、どうかご無理はなさらないでくださいね」
「わかった」
「危ないと思ったらすぐに逃げてくださいね!」
「わかったから」
「いいですか、芳乃様。くれぐれも、くれぐれもお怪我のないように気をつけてくださいね!!」
「もう、茉子。心配しすぎです。有地さんもムラサメ様もいるんだから」
「それはそうですけど……やっぱり心配で」
夜。支度を終えた芳乃様と有地を見送るため、俺たちは山の麓に集まっていた。診療所での一件以来、久しぶりの祟り神退治である。
今回参加できない茉子はそわそわと落ち着かない様子だ。まぁ気持ちは痛いほどわかるけどな。
「くっくっく、幸彦が増えたな」
「それはどういう意味ですか、ムラサメ様?」
「なに、心のそこから身を案じてくれる者がいるのはとても素晴らしいことだと暗に言いたかっただけだ。気にするでない」
にんまりとした表情を見せるムラサメ様。どことなくからかわれたような気がしなくもない。
「おーい、ムラサメちゃーん。そろそろ出発するよー」
と、気がつけば出発の時間になったようだ。芳乃様と有地が並び立って待っている。
「有地、芳乃様を頼む」
「うん。大船に乗ったつもりで……とまではいかないけど、朝武さんと協力して頑張ってくるよ」
短い会話を交わし、拳を合わせる。後は信じて待つしかない。
「二人とも、どうか気をつけて。いってらっしゃい」
「「いってきます!」」
安春さんの言葉に元気に返事をした二人はあっという間に見えなくなった。
「待つだけというのが、これほど辛くて怖いなんて」
二人の姿が見えなくなるまで手を振っていた茉子がか細い声で囁く。よく見ると茉子は小さく震えていた。
「大丈夫。きっと無事に帰ってくるさ」
「……幸彦も安春様もお強いですね。ワタシ、まだ震えが止まりません」
「茉子……」
こんな時に気の利いた言葉を投げかけられればいいのだが。不甲斐ないことに、俺は茉子の肩にそっと手をやることしかできなかった。
「そうだ、茉子君。これから夜食の準備をするんだけど、手伝ってくれないかな?」
「お夜食、ですか?」
「うん。芳乃も将臣君も張り切ってたから、きっと頑張りすぎてお腹が空いちゃうと思んだよ。だからおにぎりでも握ってあげようかなって」
安春様は普段と変わらぬ様子で茉子に語りかける。この場にいる誰よりもこの時間を悔しいと思っているはずなのに、誰よりも人のことを思いやることができる。安春様はそんなお方なのだ。
「そうですね……わかりました!この常陸茉子にお任せください!」
茉子もそれをわかっているのだろう。空元気かもしれないが、顔を上げて家の中へと戻っていった。
「申し訳ありません、安春様。お気遣い感謝します」
「そんなにかしこまらなくていいって。茉子君には日頃からお世話になってるし、彼女の気持ちもわかるからね。それにね、自分の娘のことを心から心配してくれる友人がいるんだ。親としてこんなにも誇らしいことはないよ」
安春様は優しく微笑んだ。
俺の両親も誇れる人だと思っているが、安春様は本当に素晴らしい父親だ。だからこそ、俺も茉子も安春様や芳乃様にお仕えしているのだ。
「僕は茉子君のところに行くけど、幸彦君はどうする?」
「俺はもう少しだけここにいます。あとで向かいますのでお先に戻っていてください」
「そうかい?今日は少し冷えるから早めに戻っておいでね」
安春様を見送ったのち、俺は山へと向き直る。そして、いるかもわからない神様に向けて祈るのだった。
どうか今日も、
芳乃様と有地が無事に戻りますようにと。
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『やあ、レナ!メールをくれてありがとう!どうやら日本で充実した毎日を送っているようでお祖父ちゃんも嬉しいよ。おっと、そうだ。お前が知りたがっていた話だけど、随分懐かしい話を持ち出してきたね。あの時は怒ってごめんよ。孫娘より大切なお宝なんて存在しないのにな。
ハハハまた脱線してしまった。そうそう、
しかし感慨深い気分だ。孫娘が僕のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが出会った街にいるなんて。よかったらまた話を聞かせておくれ。それじゃあ体には気をつけて。お祖父ちゃんより」
お祖父ちゃんからのメールを読み終えた私の顔は真っ青になっていた。もし、メールに書いてあることが本当なら。私は取り返しのつかないことをしたことになる。
真っ白になりそうな頭を振り、なんとか自分を落ち着かせる。まだそうと決まったわけではない。思い過ごしの可能性だってあるのだ。私には判断できないことでも、ユキヒコなら……。
私は時計を確認する。今日は祟り神退治をしているので、ユキヒコたちはヨシノの家にいるだろう。
もしかしたら嫌われるかもしれない。でも話さなければ。ヨシノを救うにはそれしかない。私は急いで志那都荘を飛び出した。
穂織の街はすっかり日が落ち暗闇が広がっている。私は街灯の少ない道をひたすら走った。心なしか頭痛が酷くなっている気がする。
「はぁ、はぁ……なにか、おかしいです」
これだけ走ればもうとっくにヨシノの家についてもいいはず。それなのに、先ほどから全くヨシノの家が見えてこない。まるで迷路の中をぐるぐる回っているように。
「おや、お嬢さん。こんな時間にそんなに急いでどちらに向かうのですか?」
いきなり見ず知らずの男の人が私に声をかけてきた。目の前に姿があるのに、カメラのピントがずれるようになぜだかその存在をはっきり認識することができない。
その男の声を聞くたびに体からは冷や汗が流れ、頭が割れるように痛くなる。
「申し訳ありません。私急いでおりますので、失礼します」
直感とでも言うのだろうか。今すぐこの男から逃げなければならないと本能で感じた。私は足早に男の前から立ち去ろうとする。しかし私の行く手を男が塞いでしまう。
「悪いけど、君をこの先に向かわせるわけにはいかないんだ。ようやく探していた最後の欠片が見つかったんだからね」
「何を言って……っ!?」
男が私の腕を掴む。同時にトンカチで何度も頭を殴られるような激しい頭痛が私を襲う。
「僕もこんなことはしたくないんだ。でも、俺の復讐の為なんだ。くはは、でひゃひゃ、ふはははは。ごめんよ」
形容しがたい嫌悪感で鳥肌が立つ。と同時になにか違和感を感じる。あまりの頭痛で、気を抜くと意識が飛んでしまいそうになるのを我慢しながら、私は男に問いかける。
「あなたは……いいえ、
「…………………………」
私の発言に、先ほどまで明るく笑っていた男の顔から表情がなくなる。
例えるなら、そう。日本の能面のように、感情を全て無くしたような、そんな顔。私は思わず身震いする。得体の知れないなにかがそこにはいた。
「……異国の娘に見透かされるとはな。随分と良い目を持っているらしい。それは憑代の力か、それとも……まぁいい」
男のしゃべり方が変わった。こちらも先ほどとは真逆の抑揚のないじゃべりだ。
「そうだ。いいことを思いついた。ここでそなたの欠片を奪うことは簡単だが、くくく、今はまだそのままにしてやろう。ただ……」
男は私の頭に手を当てる。
体が金縛りのように動かない。
「記憶は少し弄るがな。はは、震えているな。だが安心しろ。その恐怖もすぐに忘れる。そして然るべき時にずべてを思い出してもらおう」
「ど、どうして、あなたは欠片のことを知っているのですか?なぜ、こんなことをするのですか!?」
「なぜ……?決まっている」
そこで男は大きく体をのけぞらせ空を仰ぐ。先ほどまで表情のなかった顔には、見たこともないような邪悪な笑みを浮かべていた。
「復讐だ!俺を裏切った朝武家に!先祖の恨みを忘れ下僕に成り下がった常陸家に!俺が味わった以上の絶望を与える為のな!!」
まるでシェイクスピアの劇のように大げさに声を上げる男。そしてまた次の瞬間には能面のような表情に変わる。私は、それが不気味で不気味でしかたなかった。
「娘、そなたにも協力してもらうぞ?そなたがこの記憶を思い出した時、どのような顔を見せてくれるのか。実に楽しみだ」
私の頭に当てられた手に力が込められる。
瞬間、私の意識はブラックアウトした。
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「……っ!?」
「幸彦?どうかしたんですか?」
「いや……なんでもない。少し、腕が痺れてさ」
「なら僕が代わりに食材を切るから、幸彦君は少し居間で休んでていいよ」
「いえ、せめて盛り付けだけでも手伝います」
「だけど……そうだね。よーし!芳乃や有地君が戻ってくるまでに美味しい夜食を完成させよう」
「ああっ!安春様!それはケーキを切る包丁ですって!」
「……心配だ。……いろんな意味で」
「駒川の者として」第二十五話を読んでくださりありがとうございます。
更新が遅れてしまい申し訳ありません。なかなか書く時間が取れず一ヶ月以上更新ができませんでした。これからもこのペースの更新になるかもしれません。全ては仕事次第ですが……。
さて今回の話ですが……いろいろ詰め込みすぎました。分けて投稿も考えましたがキリが悪かったので文字数が大変なことになりました。作者的には茉子のお姫様抱っこが書けたので満足です。
……共通ルート完結までもう暫くお付き合いください。
あ、あと2話ぐらいで終わるはずです汗
※8月4日 加筆修正あり。