「駒川の者として」読んでくださりありがとうございます。
第二十六話になります。
少し長めになってます。
それではどうぞ。
「——せぁッ!」
触手を勢い良く叩きつける祟り神の攻撃を回避し、懐に飛び込み胴体を横薙ぎにする。手応えは薄いものの、なんとか祟り神の体勢を崩すことに成功した。
「朝武さんっ!」
「はい!」
打てば響くように帰ってくる返事に思わず頬が緩む。初めの頃は全然息が合わなかったのに、今では自然に連携が取れるようになってきた。
朝武さんは祟り神の死角である俺の背後から飛び出し矛鈴を構える。
当然、祟り神もやられっぱなしではない。素早く体を翻しバランスをとりながら朝武さん目掛けて触手を伸ばす。
「させるかよッ!」
俺は叢雨丸を構えなおし思いっきり上に振り抜く。その切っ先は祟り神の触手を見事に捉え両断する。俺が触手を切ると信じていたのか、朝武さんはひるむことなく祟り神に向かって駆け抜ける。
「はぁぁぁ!」
朝武さんの構えた矛鈴は祟り神に深く突き刺さる。瞬間一際大きな鳴き声とともに祟り神は倒れ、泡のように消えていった。
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……お疲れ様、朝武さん。怪我はない?」
「はい。有地さんこそ、大丈夫でしたか?」
「うん、俺も平気」
俺が大げさにガッツポーズを見せると、朝武さんは緊張が解けたようにふふふと笑った。俺も彼女の笑顔を見て思わず笑みがこぼれる。
一息ついたところで叢雨丸が淡く光り、ムラサメちゃんが刀から姿を現した。
「見事な連携だったぞ、二人とも。さぁ、早く欠片を回収して戻ろう。茉子たちが心配しておる」
「手元を照らしましょうか?」
「ううん。多分だけど、この辺に……あった」
今朝と同じように、視線がある一点に吸い寄せられる。そこに近寄っていくと淡く光る憑代の欠片を発見した。
「うむ、憑代の欠片で間違いない」
「よし。はぁぁ〜疲れた。なんか、心なしか祟り神が前よりタフになってる気がしたんだけど」
「確かに、茉子がいないのを考慮しても、いつもの祟り神であればここまで時間はかからなかっただろうな」
「もしかして、欠片を集めるにつれて祟り神も力を増しているんでしょうか?」
「わからん。が、ありえない話でもないかもしれん。とにかく今は早く山を降りよう。話はそれからだ」
ムラサメちゃんが話し終えると何処からか、ぐぅという気の抜けた音が聞こえてきた。まぁ何処からっていうか、俺のお腹の音なんだけど……。
「どうやら腹の虫も限界を迎えているようだからな」
「うぅ、情けない」
「ふふ、それじゃあ帰りましょうか」
◆◆◆
「芳乃も将臣君も、無事でよかった。」
帰りの遅い俺たちを心配して玄関の前で待っていてくれたようだ。出迎えてくれた安春さんは、俺たちの顔を見てホッと安堵の息を漏らした。
心配してくれたのは嬉しいのだが、俺も朝武さんも目の前の光景に少しだけ困惑する。
「お、お父さん?その、なんでエプロンなんかつけてるの?」
「ああ、これかい?幸彦君のを借りてみたんだけど、どうかな?似合ってる?」
照れたように頬を染めてエプロン姿をみせる安春さん。似合っていないわけではないが、娘の朝武さんからしたら複雑な気持ちだろう。
これは似合っていると言ったほうがいいのだろうか?居候の身としてはなんとも判断に迷うところである。
「似合ってる似合ってないじゃなくて、どうしてエプロンを着てるのか理由を聞いてるの!」
朝武さんが至極真っ当に聞き返す。少し顔が赤いのは父親のエプロン姿が恥ずかしいからだろう。俺も料理するときなんかはエプロンするし別に気にはしないけど、確かに、安春さんがエプロンをつけているのは物珍しくはある。
「なんでって、それはもちろん——」
「芳乃様〜〜〜〜〜っ!!!!!」
安春さんが返事をする前に家の奥から常陸さんが飛び出してきた。ものすごい勢いで朝武さんに抱きつくとペタペタと全身をくまなく、まるで存在を確かめているかのように触る。
「大丈夫でしたか!?お怪我はありませんか!?どこか痛むところは!?」
「ま、茉子!私も有地さんも大丈夫だから」
「そうですか!よかった……よかったぁ……」
「もう、茉子ったら。心配しすぎよ」
心の底から安堵したように息を吐く常陸さん。そんな彼女を朝武さんは優しく撫でている。なんだかんだ言って、心配してくれる常陸さんに感謝しているのだろう。素直じゃないなんだから。
「うんうん。本当によかった。茉子君ってばずっとそわそわおろおろあたふたはわはわしててね。見かねた幸彦くんが——」
「はわわ安春様!しー!しーっ!」
顔を真っ赤に染めて必死に安春さんの二の句を防ぐ。
「見かねた幸彦はいったい何をしたのだろうなぁ。吾輩気になるぞ」
「相変わらずそういうの好きだよね、ムラサメちゃん。俺も気にはなるけど……その前に」
ぐぅぅ。と、空気を読めない気の抜けた音が響く。まぁ言わずもがな、俺のお腹の音なんだが。生理現象だから仕方ない。
「えっと……何か食べるものないかな?」
「吾輩、ご主人の締まらないところ、嫌いではないぞ」
「有地さん、あのっ、わ、私もお腹が空いてるので気を落とさないでください!」
「ワタシの為に自らを犠牲にするなんて……さすがは有地さん!」
「やめて!みんな生暖かい目で見ないで!」
「あははは。お腹が鳴るのは元気の印さ。軽くだけどつまめるものを用意したから。さぁ、入って入って」
安春さんの言葉に朝武さんが目を丸くする。
「もしかして、お父さんが料理を?」
「茉子君のお手伝い程度だけどね」
「玉子焼きは安春様が作られたんですよ。冷めないうちに食べましょう♪さぁ芳乃様」
常陸さんは朝武さんの手を握り、二人はそのまま居間へと向かっていった。
なんというか……女の子二人が仲良く手をつないでるのを見ると、こう、ずっと見守っていてあげたくなるな。美少女同士ならならなおさら……っとこんなこと考えてたら幸彦にまたどやされる。
「あれ?そういえば幸彦は?」
「言われてみれば姿を見かけないのう」
「ああ、幸彦君なら急用ができたからって家を出て行ったよ」
「急用ですか?」
「うん。夜食を作ってたら彼の式神が戸を叩いてね。幸彦君の式神は街に何体か放たれているんだけど、そのうちの一体が迷子を見つけたらしいよ」
こんな時間に迷子?とも思ったが、泊まりの観光客が迷子になることは少なくないらしい。今回もそうだろうと安春さんは言うが、なんとなく胸がざわつく。安春さんは嘘を言っていないだろうが、もし本当に何か緊急事態の時幸彦が本当のことを言うとも限らない。
「俺、ちょっと見てこようかな」
「やめておけ。祟り神との対峙で疲労が溜まっている今、ご主人が行ったところで足手まといになるだけだぞ。心配しなくても、本当に危なくなれば助けを求めるだろう。意気地なところはあるが、馬鹿ではないからな」
ムラサメちゃんに諭され思いとどまる。彼女の言う通り、何かと抱え込む幸彦だが、本当に危険になったら俺じゃなくても常陸さんには一報を入れるだろう。
祟り神との戦いの後で少し神経質になっていたのかもしれない。多少後ろ髪を引かれる思いはあるが、今は自分の体を休めることが俺の仕事だと考え直し居間へと向かうのだった。
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式神の道案内に従いながら、少ない街灯の明かりが照らす夜道を歩く。気持ちのいい夜風を浴びながらも、俺の眉間には深い皺が寄っていた。
芳乃様と有地の帰りを待っていた俺は、鳥型の式神であるチュン助から迷子発見の合図を受け取った。穂織の街に放っている式神からはたまにこのような知らせが来る。この時間に迷子とは、どこぞの観光客が酔っ払って帰れなくなったのだろう。よくあることなので茉子と安春様に芳乃様達を任せ、特に警戒することもなく一人でやってきたのだが……。
「これは、拙いな……」
夜の穂織は人通りが少ない。都会みたいに娯楽施設もなく特に夜外出する必要がないからだ。しかし、しかしだ。
「人の気配が微塵もしないなんて、ありえないはずなんだけどな」
背中にじわりと冷や汗が湧き出る。
チュン助の案内で迷子がいると思われる公園に近づくとともに人の気配が無くなっていく。それだけではない。人の気配が無くなるにつれて濃くなってきているものがある。穢れだ。
俺は一度立ち止まり辺りを見回す。
(俺の考えが正しいならこの辺りに……)
目当の物は思いの外早く見つかった。街道脇の木に張り付いていたそれは、俺のような陰陽師が
人払いの
呪術使い。
顔もわからないそいつの姿が俺の頭に浮かびでる。
突如俺たちの前に現れ意味深な言葉を残し消えていったヤツは、あれ以降姿を現すことはなかった。もちろん、だからって警戒を怠ったつもりはない。街全体に結界を張り、式神だって数を増やした。それなのにここまで大きな
苛立たしげに霊符を木から剥がすと、たちまち灰となって消えてしまった。
「急ごう、チュン助」
俺の言葉に応えるようにチュン助はスピードを上げる。全速力で公園まで駆け抜けると、ベンチの上でぐったりとしている女性を発見する。綺麗な金髪の女性。あれは——レナさんだ。
急いでレナさんの元へ駆け寄る。穢れが体を蝕んでいるのか、呼吸が浅い。腕の穢れを祓うために穂織の温泉の湯は持っているが、少量ではこの穢れを祓うのは厳しい。そう考えた俺は、チュン助に俺の部屋の霊符を取ってくるよう命令を出そうとするが——。
「にゃ!」
「猫丸!?」
いきなり俺のポケットから勝手に現界した猫丸がレナさんに飛びつく。そして次の瞬間には目を開けていられないほどの眩い光が辺りを包み込んだ。
「今のは、いったい……?」
ゆっくりと目を開けると先ほどまでレナさんを囲うように満ちていた穢れが祓われていた。突然のことで頭が追いつかない。これほどまで強い力は今まで見たことがなかった。
「猫丸……君がやったのか?」
「にゃー♪」
ドヤ顔で返事をする猫丸だったが、すぐに現界が解けて霊符に戻ってしまった。同時にごっそりと霊力を持って行かれる感覚が俺を襲う。この疲労感。猫丸が術の代償として俺から霊力を持っていった証拠だ。
猫丸は守りに特化した式神である。片割れである狛が攻撃に特化している分、それを補うように索敵や結界などのサポートを得意としている。消費霊力が少ないのも特徴でまさに痒いところに手が届く式神だ。街の警護に当たる式神の統括を任せているのもそれが理由である。
そんな猫丸でも回復や浄化の術は使えなかったはず。
しかし今のは……。俺は改めてレナさんの様子を調べる。穢れは残っておらず、先ほどまで苦しそうに浅かった息も普段通りに戻っている。
「いつの間に新しい力を身につけたんだ?」
疑問を口に出すも返答なんて返ってくるわけもなく。結果現状打破につながったから考えるのは後にしよう。
「むにゃ……えへへぇお父さんもお母さんもおじいちゃんも。志那都荘を気に入ってもらえて嬉しいでありますよぉ〜。ムニャムニャ」
先ほどと打って変わって気持ちよさそうな顔で寝言をいうレナさんだが、楽観視はできない。穢れは祓えたが呪いにかかっていないとは限らない。
呪術とは元来人知れず体を蝕み、命を奪うこともある。腕の立つ呪術師ほど
わざとらしく大胆に仕掛けられた人払いの
それなのにこんなにもわかりやすい状況を残したということは——。
「俺たちを
俺はポケットから一枚の護符を取り出す。まだ試作段階だが、駒川の秘術を応用した護符だ。レナさんの額に護符をかざすと彼女の体に取り込まれていった。これでもしレナさんに呪いがかかっていたとしても、呪いの発動を遅らせることぐらいはできるだろう。その間に完成品を作らなければ。
「芳乃様と茉子の友人に手を出したこと、許すわけにはいかない。これ以上あの二人が悲しむことなんて、あってはいけないんだ」
眠るレナさんを抱え上げる。
もしかしたらレナさんは呪術使いの顔を見たかもしれない。後で話を聞く必要があるが、今は彼女を志那都荘に送り届けよう。きっと玄十郎さんも猪谷さんも心配しているだろう。なんと説明したものか、俺は頭を悩ませながら志那都荘へと向かった。
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「うん。わかった。安春様と芳乃様に相談してみる」
常陸さんが電話を終えて戻って来る。おそらく幸彦からだろう。毎日一緒に帰ってるし、いつ迎えに来るか話してたのかな?
「幸彦からはなんて?」
「それが、相当酔っ払ってる迷い人だったらしくて対応に追われてるみたいです。時間も時間ですし今日は芳乃様の家に泊めてもらえって」
「僕にもメールで連絡が来てたよ。うちは構わないから泊まっていくといいよ。芳乃もそれでいいよね」
「もちろん。ふふ、久しぶりのお泊まりですね」
朝武さんが機嫌よく答える。
彼女がご機嫌なのは安春さんが作った玉子焼きのおかげだ。見た目こそ常陸さんの作った玉子焼きに負けるものの、出汁の風味が卵の甘さを引き立て、どこか懐かしささえ感じる味だった。
どちらかといえばしょっぱい玉子焼きが好きな俺でも美味しいと思ったその玉子焼きを朝武さんはたいそう気に入ったようで、一口一口味わいながら食べていた。
「どうした茉子?どこか神妙な顔をしておるぞ。……ははん。さては幸彦が迎えに来ないと知って寂しいのだな」
「ち、違いますよ!全然そんなこと思ってませんから!」
「ならどうしてそのような顔をしておるのだ?うん?吾輩に申してみろ。ほれほれ♪」
「本当に違いますからっ。ただ……いえ、きっと気のせいですね。それより話の続きをしましょう」
ムラサメちゃんの言葉に少しだけ取り乱した常陸さんだが、すぐに姿勢を正し、話を戻した。話とはもちろん憑代の欠片のことである。夜食を食べながらも簡単な反省会をしていたのだ。
「ワタシと安春様にはよくわかりませんでしたが、憑代の力が強まったということは気配も感じやすくなってるんでしょうか?」
「ああ。以前は微かにしか感じられなかった欠片の気配も、今では距離が離れていてもわかるようになってきた」
「えっと、ムラサメ様はなんて?」
「確かに気配は強まっているって言ってます」
「そうか。だったら芳乃や将臣君も感じ方に変化があるかもしれないね」
「そういえば有地さん、今朝私の耳が生えるのと同じタイミングで誰かに呼ばれている気がすると言っていませんでしたか?」
「うん。俺も気になって幸彦に相談してみたんだ。幸彦が言うには俺と憑代との間に何かしらの縁があって、憑代が力を取り戻すことによって祟り神の発生や欠片の場所を敏感に感じ取るようになったんじゃないかって」
ただ、肝心の縁がなんなのかは全くわかっていない。幸彦自身、憑代の力が強まっていることについては断言したものの、俺が誰かに呼ばれた感覚については憶測の域を出ないと言っていたしな。
「でしたら、今ここで試してみるのはどうでしょうか?新しい欠片を手に入れたことですし、何かしら変化があるかもしれませんよ?」
常陸さんの提案に全員が賛成する。俺は憑代を手に取り意識を集中させる。毎日やっていることだが今日は少し集中を強める。
(声は……しないなぁ。そもそも、元に戻りたがっているならもっとアピールがあってもいい気がするんだけど。そしたら俺たちも全力で協力できるのに)
いくら待っても何も感じられない。
1分ほど経った頃だろうか。諦めて緊張を解いたその時。一瞬眩い光が見えたかと思うと、不意に手の中の憑代が熱くなった。しかしその光も熱もすぐに失われて、元に戻ってしまう。
「どうだ?ご主人」
「なんか、一瞬だけ不思議な光が見えて憑代が熱くなったような……気がしないでもないような」
「なんとも煮え切らん答えだな」
不服そうなムラサメちゃんだが、本当に些細な感覚だったのだ。俺が握ってたから熱を持っただけかもしれないし、あれが憑代の反応だとは断言できない。
その後、朝武さんも同じようにやってみたが、特に変わったことは起きなかった。
「変化がないということは、順調に進んでるってことでいいんじゃないかな?」
「そうですね。欠片を集めて怒りが鎮まっているのかもしれません」
俺としては何かしらの変化があったほうがいいのではとも思っていたが、安春さんたちが言うような考え方も間違っていない。
もう遅いし続きは幸彦も含めて明日にしようという安春さんの提案で今日はお開きになった。
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自分の部屋に戻り眠る準備に取り掛かる。寝巻きに着替えるなどして、あとは寝るだけの状態に。
その前にと、僕は仏壇の前に座り手をあわせる。
秋穂へ、今日の出来事を報告する為に。
今日も芳乃は無事に帰ってきてくれた。娘を守ってくれる将臣君やムラサメ様、全力でサポートしてくれる茉子君や幸彦君。彼らのおかげで芳乃は最近随分と元気になった。いや、芳乃だけじゃない。僕も同じだ。
今日なんか、芳乃が僕の料理を食べておいしいって言ってくれた。嬉しかったなぁ。あの玉子焼きの作り方は秋穂に教えてもらったものだ。茉子君も幸彦君もちゃんと言ったほうが芳乃は喜ぶって言ってくれたけど、なんだか恥ずかしくて言えなかった。
芳乃の美味しそうに頬張る顔を見れるだけで、僕は幸せだ。君に似て少し意地っ張りなところもあるけど、彼らなら、そんな芳乃も受け入れてくれる。
(本当は君と一緒に芳乃の成長を見守りたかった。なんて言ったらまた君を困らせてしまうね)
考えないようにはしているが、たまにふと頭をよぎる願い。子供達が頑張っているんだから、大人の僕がしっかりしないと。将臣君たちのおかげでもうすぐ呪いが解けるかもしれないのだから。
(……少し喉が渇いたな)
寝る前に一杯お水をいただこうと今のほうまで向かう。すると障子の陰から中を覗く茉子君の姿を発見した。
「茉子君?何してるの?」
「あっ、安春様。今私は家政婦気分を味わっています」
「??」
茉子君がそっと手招きをするのでそっと近づき襖の隙間から中を覗く。
『あ、あのっ!有地さん!』
『どうしたの?』
『そ、その……友達同士でも、こうやっておでこを触って体温を測るのでしょうか?』
『え?……あっ!ご、ごめん』
『ち、違います。嫌とかそういうことではなくて、ただ……その。こんな風に熱を測ってもらうのも友達同士なら普通なのかなって、疑問に思っただけで……』
居間には芳乃と将臣君がいた。どうやら芳乃の熱を将臣君が測ってくれていたようだ。
「少しお顔が赤かったので心配で見に来たんですが、この中には入りづらくって」
「だからここにいたんだ。確かに、いい雰囲気だね」
父親として、娘が異性の子と仲良くしている光景は一般的には良く思わない人がほとんどなのかもしれない。でも、芳乃があんな風に誰かに心を許している姿は僕にとって嬉しいものだった。
ふと懐かしい記憶が蘇る。僕も昔、秋穂のおでこに手を当てて熱を測ったら、秋穂が顔を真っ赤にしながらあたふたしたことがあったなぁ。普段はしっかり者だけど、結構乙女なところがあったのだ。
「そっとしておいてあげよう。芳乃も将臣君に任せておけば大丈夫だよ」
「……そうですね。では、ワタシは部屋に戻りますね」
「うん。今日もありがとう。おやすみなさい」
僕は茉子君を見送り自室へと戻る。途中の縁側で空を見上げると月が綺麗に輝いていた。
もう少しで満月かな。僕はそっと目を閉じてお月さまへ祈りを捧げる。芳乃たちがこのまま無事に大人になって幸せになりますようにと。
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「ん、むぅ」
息苦しさで目を覚ます。金縛りだろうか体がうまく動かない。それに熱いほどの熱を感じる。もしかして風邪でも引いたのだろうか?昨日朝武さんも顔が赤かったけど、俺の方が先に風邪を引いてしまうなんて。
ゆっくりと目を開ける。するとそこには——。
「すぅ……すぅ……」
「…………」
……どうやら夢を見ているようだ。じゃなければ目の前で朝武さんが俺の布団に入ってすやすや眠っているはずがない。なんか獣の耳も生えてたように見えたけど、夢は記憶の整理ともいうしな。きっと昨日の祟り神退治の記憶が夢として見せているだけだろう。うん。きっとそうだ。
俺はもう一度瞼を閉じて唇を噛んでみる。……痛い。よし。これで目が覚めただろう。改めて目を開けるとそこには——。
「んん……すぅ……すぅ……」
「…………」
夢じゃない、だとぅ!?
え?ええ!?なんでなんでだなんですと??なんで朝武さんが俺の布団うひぃ!ちょっ朝武さん!寝ぼけて抱きつかないで!男の朝は色々とまずいものがぁぁ!!
声にならない叫びを叫ぶだけ叫んだ俺は一度深呼吸をして冷静になる。
(落ち着け有地将臣。まずは状況把握だ。俺は現在朝武さんに抱きつかれて身動きが取れない。うん。ワンアウト。下手に動けば朝武さんが起きてしまう。ツーアウト。このままだと起こしにくる誰かに見られつ可能性が大。スリーアウト。……詰みじゃん)
今こうしている間も、朝武さんの寝息が耳元にかかってくるし、いい匂いするし、なんか柔らかいし、とにかく色々まずい。下手したら幸彦に殺される!
「起きたようだな。おはよう、ご主人」
「ああ、おはようってムラサメちゃんっ!?い、いや違うんだってこれはその……俺にもよく状況がわからないというか!」
「落ち着けご主人。全部わかっておる。今皆を呼んでくるから少し待っておれ」
「わかってるって何を!?ちょ、みんなって誰のこと!?ねぇムラサメちゃん!」
俺の問いかけにムラサメちゃんは少しにやけながら部屋を出て行く。
「んぅぅ……どうしたんですか?朝から大きな声を出し……」
と、耳元で叫んだのがいけなかったのか、朝武さんが目を覚ましてしまった。寝起きで焦点の合わない朝武さんと向かい合う。そしてぴったり視線が合った。朝武さんの顔がみるみる赤くなる。
「あ、ああああああ有地さんっ!?どうして有地さんが私の部屋に!?ままままさかよよよよよ夜這いですか!?」
「誤解ダァァァァ!!」
◆◆◆
「うぅぅ。どうして私、有地さんの部屋に……。し、しかも同じ布団で、あんなに抱きついて」
「と、とりあえず誤解が解けて良かったよ」
「ははは、まぁ落ち着きなって。もうすぐ茉子君が幸彦君を連れてくると思うから」
「げっ!幸彦も来るんですか?」
幸彦がこのことを知ったら……想像しただけで冷や汗が出る。いや、今回は事故だし情状酌量の余地があるんじゃないか?とにかく平謝りするしかないか。
あの後なんとか朝武さんの誤解を解いた俺だが、何故朝武さんが俺の部屋に、しかも同じ布団で寝ていたのかまではわからなかった。朝武さん自身何も覚えていないらしく、目が覚めたら目の前に俺がいた状態だったらしい。
とにかく一回落ち着こうと居間に向かうと安春さんがお茶を用意して待っていた。
「来るというか、幸彦君は昨日の夜からずっと家の周りを見回ってくれてたんだよ」
「え?昨日の夜からですか?」
「うん。詳しい話は幸彦君たちが来てからのほうがいいだろうね。僕だけじゃあうまく説明できないだろうし」
そう言ってお茶をすする安春さん。その落ち着きように俺と朝武さんは思わず顔を見合わせる。
自分の娘が男(一応婚約者ではあるが)の部屋で一緒に寝ていたのだ。普通なら正気でいられないと思うんだけど……。安春さんはどうして朝武さんが俺の部屋にいたのか知っているのか?そういえば、ムラサメちゃんも何か知っているような素振りだったよな。あの時はテンパってたから、からかってるだけだと思ったけど、ムラサメちゃんは
「失礼します」
幸彦と常陸さんはすぐに居間へやってきた。ムラサメちゃんも一緒だ。
「二人とも、おはようございます」
「あは、今朝は大変でしたね」
普段通りに挨拶する常陸さんと幸彦だが、その表情には疲労が隠せずにいた。
「茉子も幸彦もどうしたの?そんなに疲れた顔して」
「これはその……疲労というよりはお二人が無事に目を覚ましてくれたことに対する脱力感と言いますか……」
「その様子だと、やっぱり何かあったんだね」
俺の問いに、二人とも少し困った顔になる。
「何かあったと言えばあったんだが……。その前に確認させてくれ。芳乃様。昨夜のことで何か覚えていることはありますか?」
「え?ええ?私、何かやっちゃったの?」
「あぁいえ、何か問題を犯したとか、そういうことじゃないんです。そうですね……。例えば変な夢を見たとか、いつもと違ったことがあったとか。些細なことでいいのでお聞かせいただければと」
幸彦に言われ必死に思い出そうとする朝武さん。
昨日の夜といえば、朝武さんの顔、少し赤かったっけ。熱はなかったけど関係あるのかな?
「夢は見てないですね。でも、昨日は胸がざわついて寝付けなかったような」
「なるほど。有地はどうだ?昨日の夜……いや、今現在体調に異変は?」
「ん?俺?」
俺にまで話が振られるとは思っておらず素っ頓狂な反応をしてしまう。幸彦は相変わらずまっすぐ俺を見据え頷く。この状況で俺にも質問するってことは、朝武さんが俺の部屋にいたことと少なからず関係があるってことだろう。
「特に異変は——」
そこで初めて自分に意識を向けてみる。朝からテンパりすぎて気づけなかったけど、眩暈とともに熱を出したとき特有の足元がふわふわする感覚がしていた。
「有地?」
ここで嘘をついても仕方がない。
俺は素直に今感じている違和感を伝える。
「なんか、ちょっと熱っぽいかも」
「……やはり、そういうことになるのかな」
「幸彦。芳乃様も有地さんも戸惑ってますよ。ちゃんと説明してあげないと」
自分の世界に入りかけた幸彦に常陸さんが説明を促す。彼女の言う通り、俺も朝武さんも話が見えてこなくて困惑していた。
俺らの様子に気づいた幸彦は申し訳なさそうに頭を掻き、懐から布に包まれた何かを取り出した。
「そうだね。まずはこれを見てくれ」
「これは?……ッ!?」
幸彦が包みを開くと、中から憑代が出てきた。しかし、その様は俺らの知る憑代とはかけ離れたものだった。
幸彦が見せてくれた憑代は、まるで血が通っているかのように真っ赤に染まり、ドクンドクンと心臓が脈打つように点滅していたのだ。
幸彦の話はこうだ。
昨日の夜。異変に最初に気がついたのは、朝武さんと同じ部屋で寝ていた常陸さんだった。朝武さんは、夜中に突然立ち上がり、フラフラと俺の部屋まで向かったという。話しかけても反応はなく、慌てて幸彦に連絡をとった。
幸彦は深夜にもかかわらず急いで駆けつけてくれたようだ。そして状況確認のため俺の部屋に入ると真っ赤に染まった憑代を発見したらしい。
「芳乃様が無意識に有地の部屋に向かったのは、おそらくこの憑代が原因だと思われます。芳乃様に生えた獣の耳や有地が今感じている体の違和感も、この憑代が引き起こしているものでしょう。念のため俺と茉子で家の周りや穂織の街を見て回りましたが、いまのところ危険な気配はありませんでした」
なるほど。安春さんが言っていたように、幸彦も常陸さんも昨日の夜中からずっと街の警戒に当たっていてくれていたようだ。
「これって祟り神の仕業なの?」
「いや、吾輩と幸彦の考えでは違う。どちらかといえば憑代自身が発する信号のようなものではないかと考えておる」
「信号って、憑代が電波を飛ばしてるってこと?」
「信号っていうのはたとえだよ。簡単に説明すれば、憑代はバラバラになった他の欠片に対して呼びかけてるんだ。再び一つになるためにね。おそらく芳乃様はその信号を無意識に受信してしまったんじゃないかな。朝武にかけられた呪詛にはこの憑代が使われている。その繋がりは魂の領域まで深く結びついているんだ。体が憑代に乗っ取られてもおかしくはない」
つまり朝武さんは、俺の部屋にある憑代に引き寄せられて来たということになる。
「憑代に体を乗っ取られるって大丈夫なのか?漫画みたいに朝武さんが朝武さんじゃなくなっちゃうとか?」
「心配はいらん。四六時中乗っ取られるわけではないからな。あくまで芳乃の意識がない寝ている間、それも憑代の力が強まる夜中だけのことだ」
ムラサメちゃんがいうように、朝になって起きた朝武さんはいつもの朝武さんだった。でもいつまでもこんな日が続くのは大変だろう。今回は俺のところに来たからいいけど、下手したら夜中に山の中に入ってしまう可能性だってあるってことだ。
「なんとか対策を考えないとね。ずっと徹夜するわけにはいかないし」
「そのことなんだが……吾輩はむしろ、この信号を利用できるのではないかと考えておる。うまくいけば呪いを解く近道になるかもしれん」
「本当っ!?」「本当ですかっ!?」
思わず前のめりになる俺と朝武さん。呪いを解くのは俺たちの悲願でもある。その近道になるというならば興味がわかないはずがない。
「あのー、ムラサメ様はなんて?」
「いまの状況はもしかしたら芳乃様の呪いを解く近道になるかもしれないとのことでした。ムラサメ様、本当なんですか?」
常陸さんがムラサメちゃんに問いかける。安春さんもみんなの視線が集まるムラサメちゃんの方をじっと見つめていた。
「うむ。今の芳乃は憑代の一つになりたいという想いを受信しておる。つまり憑代に乗っ取られた状態の芳乃であれば、無意識に欠片の元へと向かうわけだ。その後を追えば欠片をまとめて回収することも可能になる。少し危険だが、試す価値はあると吾輩は思う」
「俺は反対です」
幸彦が険しい顔でそう告げた。
「その案は赤く染まった憑代と芳乃様の様子を見て真っ先に思い浮かびました。ですがそれは、芳乃様に囮になれと言っているようなもの。芳乃様に仕える者として頷くわけにはいきません」
「芳乃を囮って、どういうことだい?」
ムラサメちゃんの声が聞こえない安春さんが困惑した様子で問いかける。父親として、娘を囮になんて物騒な話が出たら戸惑うのは当然だろう。
「ムラサメ様は、憑代に取り憑かれた芳乃様に、欠片への道案内をしてもらおうと仰られました。ですがそれは意識のない状態の芳乃様を山の中に入らせることになる。獣の耳が出ている以上、祟り神の襲撃だってあるかもしれない。いや、それ以上の危険だってあるかもしれないんです。ことはもっと慎重に考えるべきだ」
「だがこのままゆっくり欠片を集められるかもわからんのだぞ?憑代がさらに力を取り戻したらどうなるのか。吾輩にだってわからんのだ。動けるうちに動かなければ、せっかくの好機を逃すことになるかもしれん」
「ワタシもムラサメ様の意見に賛成です」
「茉子……」
にらみ合うように議論をするムラサメちゃんと幸彦の間に常陸さんが割って入る。覚悟をきめたようなその姿を幸彦はどこか悲しそうに見つめ返す。
「芳乃様一人を行かせるわけではありません。有地さんもムラサメ様も、ワタシだって一緒に山に入ります。ワタシたちが必ず芳乃様をお守りします。それとも幸彦は、ワタシたちがそんなに信用できない?」
「信用できるできないの問題じゃないんだっ!!」
目を血走らせ立ち上がる幸彦。幸彦がここまで声を荒げるなんて、初めてみる光景だった。俺だけじゃなく、朝武さんもムラサメちゃんも、常陸さんまでもが声を荒げる幸彦に驚いていた。
「穂織の山に残っている全ての欠片が祟り神になっている可能性だってあるんだ。何十何百の祟り神に囲まれて無事で済むわけがない。最悪……死ぬかもしれない。そんな場所に君たちを送り出せって?そんなことできるわけないだろッ!!!」
俺は何も言えなかった。いや、この場にいる誰もが何も言えなかった。沈黙が場を支配する。
「……芳乃は、どう思うんだい?」
と、今まで話の流れに口を出さず見守っていた安春さんが問いかける。
「私?」
「うん。芳乃はどうしたいのかな?」
「私……私は…………この呪いが解ける可能性があるなら、それに賭けたい」
顔を伏せながらも、その手がキュッと強く握りしめられる。
「幸彦の言う通り、危険なのはわかってる。私のせいで、茉子も、有地さんも、危険にさらすことも……。でも私はっ、私の手で呪いを解きたい!ひどい我儘かもしれないけど、それが私の想いです!」
隣に座っている俺だからわかる。震えているんだ。強く拳を握り、覚悟のある目で訴えかける朝武さんが。
思わず俺は彼女の手を握る。
「俺が、朝武さんを守る。幸彦、行かせてくれ。朝武さんは俺が命に代えても守ってみせる!だから……」
幸彦の鋭い視線とぶつかり合う。でも、ここで逃げるわけにはいかない。ここで逃げるようじゃ、きっと朝武さんを守りきることなんてできやしないんだ。
「幸彦君、ありがとう。芳乃のことを心から心配してくれて。でも僕は、芳乃の意見を尊重したい。真っ当な親なら、娘を危険に晒すなんてしないだろうし、僕自身、葛藤はある。でも初めてなんだ。芳乃が呪いに関して、自分の気持ちを打ち明けてくれたのは。今までは、それが運命なんだって、そんな顔してた芳乃が、自分から呪いを解きたいって言ってくれたんだ。僕は芳乃の意思を、芳乃を変えてくれた将臣君たちを信じたい。だから、この通りだ」
安春さんが幸彦に頭をさげる。
その姿を見て、幸彦は大きく息を吐きその場に座った。その様子はどこか自分を落ち着かせようとしているように見えた。
「安春様にそこまで言われたら、反論なんてできるわけないじゃないですか……。有地」
「は、はい!」
「命に代えてもなんて言葉、二度と口にするな。帰ってくるなら全員一緒だ。いいね」
「それって……ムラサメちゃんの意見に賛成してくれるってこと?」
「不本意だが、そういうことだ。だけど二日……いや一日だけ待ってくれ」
幸彦はそう言うと懐から一枚のお札を取り出し、赤く染まった憑代に
「幸彦、これって?」
「霊力を抑える護符だよ。簡易的なものだけど一日ぐらいなら憑代の信号を抑えることができる」
幸彦はそのまま居間から出て行こうとする。
「幸彦?いったいどこへ行くんです?」
「何も対策もせずに送り出すなんてできない。俺は俺なりに、俺が出来うる最善の手を尽くすまでさ」
幸彦はそのまま家を出て行ってしまった。
「まったく、意地っ張りなところは相変わらずですね」
「その割に嬉しそうだが?」
「あ、あはぁ。そうですか?でも、久しぶりに幸彦が自分の気持ちを素直にはなしてくれたなぁって思って」
またあの顔だ。常陸さんが愛おしむような表情をみせるのは決まって幸彦のことを話す時だ。今日はいつもより少し顔が赤いけど、そこに突っ込むのは野暮だろう。
常陸さんの話を聞き終えるとムラサメちゃんは俺たちに深々と頭をさげる。
「芳乃、茉子、それにご主人。すまない。幸彦のいう通り、この作戦は危険が多い。幸彦が怒るのも当然だった」
「謝らないでください、ムラサメ様。私も、私がそうしたいって我儘を言ってしまったんですから同罪です」
朝武さんの言葉に俺も常陸さんも頷く。誰が悪いなんてことはない。ムラサメちゃんも幸彦も、俺たち全員のことが大切だからこそ、お互いに譲れないものを持っていただけなのだから。
「それから……お父さんも。ありがとう。」
「ううん。僕も僕の我儘を言っただけだよ。偉そうなことを言っても、僕には待つことしかできないから」
「そんなことない。お父さんが待っていてくれるだけで、私の力になるんだから」
「芳乃……」
目頭を押さえる安春さん。この二人は本当にいい親子だ。何時ぞやか幸彦が言っていたことを思い出す。この二人に仕えることができて幸せだと。その通りだと思う。俺も穂織で朝武さんや安春さんみたいな素敵な人たちに会えてよかったと思う。
「あの〜、感動的な場面で大変恐縮なんですが……。あはぁ♪芳乃様と有地さんはいつまで手を握っているつもりですかぁ?」
「「………………ッハ!?」」
「うんうん。婚約関係も順調でお父さん嬉しいよ」
「吾輩もそろそろ気を使ってご主人の部屋に入らなければいけないかのう」
一瞬で真っ赤になる顔。慌てて手を離したが朝武さんの目を見れない。朝武さんとの関係が進むには、まだもう少し時間がかかりそうだ。
改めまして、「駒川の者として」第二十六話を読んでくださりありがとうございます。
今回は安春さん視点も入れてみました。
本編ではこの辺りって全然安春さん出てこないんですよね……。妄想全開で書いてたら一万五千字近くまでいくなんて。次回で共通ルートは終えられそうです。
※各話数にタイトルを追加しました。
※9月30日18時半頃 加筆修正あり