TSハンター 作:TS死ん者
「フミちゃ~ん!!」
「フミちゃん! 結婚してくれ~!!」
男たちが求愛を続けるその先、この世の者とは思えぬほどの美しさを持つ少女が一人!
道行く誰もが振り返る。あの美少女は何者か? まるでアイドル! 都会に咲いた一輪の花。
学生服に身を包んだ少女たちは気にするそぶりも無く通学路を歩いていた。
「フミちゃん、今日も大人気だねー」
「もーアミちゃんったら、そんなことないよぉ」
友達の女の子にちゃかされ恥ずかしそうに美少女は笑う。舌をちょこんと出してほんのり顔を赤らめる姿に男たちはより一層とりことなった。
だが彼らは知らないのだ。彼女がその美しい笑顔の裏に隠された真実を。
(ククク、世の中の毒男子ども。崇め称えろ、褒め奉れ! お前たちブ男どもの無様な姿こそがこの俺を唯一楽しませる!!)
おお恐ろしい! なんと醜い心だろうか!
美しい花にはトゲがあるという。しかし彼女のそれはトゲを凌駕し凶器と言わんばかりではなかろうか。
彼女の名前は伊藤 文(ふみ)。全世界の少女がうらやむ美貌、そして世の中の男性が振り向かずにはいられない万人に一人の美少女。
だが彼女には誰もが知らない驚きの秘密がある。そう、それは……
(ククク。まさかこの俺が元男だなどとは誰も思うまい)
彼女は、元男性なのである……!
それは神の悪戯だった!!
冴えないサラリーマン伊藤 一彦は、ある日目が覚めるとオンナノコになっていたのである!
おまけに体まで若返っていた自分の姿にナルキッソスのごとく惚れてしまう始末。彼は名前を偽り、一彦の年下のいとこ伊藤 文として第二の人生を歩もうとしていたのだ。
「だけど本当にフミちゃんは綺麗だよねー。うらやましいなー、妬ましいなー」
「もうアミちゃんったら。私は別にフツーだよぉ。背だって高くないし、モデルみたいにスタイルも良くないし……。ほーんと、全然フツーだよぉ」
「フミちゃん、またそんなこと言ってると――」
文の友達の中津 亜美(あみ)が言葉を言い切る刹那、どこからともなく現れた強い風が辺りに吹き荒れる!
「きゃあ!」
イタズラな風が文のスカートをめくり上げる。わざとらしく急いで押さえつけようとするも、文の魅力に取りつかれた男子たちはその一瞬を見逃さなかった!
『お、おおっ!! 見えた!! 純白のパンティー!!』
その時間、わずかコンマ2秒!! 欲望の化身と化した野獣どもの今日のオカズが決まった瞬間であった!
「もう……エッチな風さん♪」
ドギュゥゥ――√v――ン!!
で、出たァ――ッ、文の必殺、悩殺攻撃だァ~~ッ!! この攻撃を食らった男はことごとく文に魅了されてしまうという恐ろしい攻撃だ!!
「は、ハウゥッ!!」
「グフォォ!!」
「オオオッ、なんて、なんて華麗……なんだ、ぐはっ」
案の定悩殺され心がぴょんぴょんし始めた彼らは登校中でありながら吐血し悶絶する。受験競争の激しい今の時代に生きる男子生徒たちにとってその一撃は重すぎたのだ。
「ほら言わんこっちゃない。文ちゃんが謙遜するといーっつもどこからともなく風が吹くんだから。気をつけなくちゃ」
「えへへ~、ごめんごめん!」
「それにしてもいきなり静かになったね。どうしたんだろう?」
築かれた屍の山に気付く様子も無く少女たちは学校へ向かう。
おお、恐ろしいTS者。そんな存在をこのまま許し続けて良いのだろうか!?
否!!
確実に否である!!
そのような世界にとって不純な存在を許してはならない!
たとえ神さま仏さま閻魔さまが許そうと、秩序ある人間世界においては許し難き存在である!!
「ゆえに、私は許さない! 人間たちをたぶらかす悪しきその存在を!! 男どもを魅了しほくそ笑むその醜悪さを!!」
「だ、誰!?」
突如空から降ってわいた声に戸惑う少女たち。見上げた先には宙を漂う一つの影!
見るがよいその白き仮面! 見るがよいそのたくましき両腕! 見るがよいその主張せんばかりのモッコリブリーフ!!
太陽を背に浮かび上がるそのシルエットはまがうことなき変態の象徴!! 上半身を裸体にさらけ出し風にはためく白マント! たぎらせた汗を光らせる黒いスキン!!
「この世に悪がはびこる限り、据え膳拒むは漢の鑑! 世の男たちをたぶらかす魔の存在を許さない秩序と規律の使者……、
それがこの俺、TSハンター『トランセックス』!!!!」
宙を漂う彼の姿に誰もが口を開けて呆ける。無理もあるまい、彼らからすればその雄々しき姿は次元を超えた勇ましさだ。
今のご時世に筋肉を隆々とさせたブリーフ一枚の男が惜しげもなく面前にその姿をさらけだしているのだ。そんな者が他にどこにいるという? いやいるはずがない!! いてはならない!!
全ての女性がうらやむ存在が伊藤 文であるように、全ての男性がうらやむ存在こそ、TSハンタートランセックスその者なのである!
「伊藤 文! 貴様は元男でありながらTSによって美少女と化し世の男たちをだまし続けた。純真純朴な彼らをもてあそぶその姿勢、万死に値する!!」
「黙れ、この変態マスク!! なにわけわかんないこといってんのよ! フミちゃんは何の変哲もない美少女よ!」
「ザコはひっこんどりゃあああああああああああああ!!!!!!」
トランセックスの奥義が一つ、ブリーフ炸裂弾が発動!!
彼の類まれなる筋肉によって放たれたブリーフは第三宇宙速度に達する砲弾となる。その砲弾に衝突した物質は打ち上げ花火のように爆発四散するのである!
「ぎょバァうッッッ」
ブリーフ炸裂弾が当てられた中津 亜美は辿るべき運命へといざなわれた。体中の血は一瞬にして蒸発し骨が粉みじんとなり果てる。
ブリーフが破裂する衝撃と共に中津 亜美を形成していた物質は勢いよく空気中へと放出された。彼女は死んだのだ。
「な、中津ゥ――ッッ!!」
「次は貴様の番だ。覚悟しろ、伊藤 文!!」
「チィィ! 者共、出合え、出合えぇ!!」
文の呼び声に合わせどこからともなく現れる男たち。彼らは文のファンクラブ構成員だ。
いつでもどこでも文の命令に従えるよう交代制で彼女を四六時中見守るという、アル○ック顔負けのホームセキュリティーだ!
「あの変態マスク野郎を殺せ!!」
「イィーッ!」
「彼女のためならたとえ火の中、水の中」。そう豪語する彼らはその言葉に偽りなく、空に浮かぶトランセックスへと襲い掛かる!
「愚か同志たちよ。その病んだ心を癒す方法はただ一つ……肉体言語によるコミュニケーションだあああああああああああ!!!!!!」
飛んできた者どもを殴る、殴る! 襲い掛かる者どもを蹴る、蹴る!
トランセックスに立ちはだかる輩は誰一人として許されない。なぜなら彼は秩序の使者だからだ!
だが闘いの最中、隙を見つけた一人がトランセックスのたくましい腕へと掴み掛った!
「ヒーッヒッヒッヒ!! 捕まえたゾぉ~~ッ!!」
決してお子様には見せられないようないやらしい笑みを浮かべる男子生徒。なぜだか異様に興奮している様子だ。
彼が抱き着いているのはトランセックスの病的なまでに健康的な二の腕だが、その太さは平均的な女子高生のフトモモ程度はある。病める彼にはそれが文のフトモモを想像させるのかもしれない。
「愚か者が! それは俺のセリフだと言うことがわからんのか!!」
男子生徒の腕を空いた手でつかみあげるトランセックス。
彼からすれば高校生の腕など赤子同然、ゆえに軽く握りしめただけでその骨は濡れせんべいのごとくひしゃげてしまった!
「ひンぎゃアぁぁぁぁ!! 腕が、腕がァ~~ッ!!」
「これが秩序と規律を愛する漢の、大しゅき♡ホールド・アトミックバスターだあああああああああ!!!!!!」
空中から放たれたトランセックスの空中落下落としは全てを巻き込み粉砕するサイクロンのごとく大回転する!
トランセックスがゲームセンターに立ち寄った時偶然見かけた格闘ゲームで見たその技は、今や彼の大技の一つなのは誰もがしるところだ。
トランセックスに羽交い絞めにされた男子生徒は落下するまでの遠心力により既に絶命していた。しかし彼の技は止まらない。
地上に巣食うTS者に見せつけるかのように、地表を揺るがす衝撃が構成員を襲う!
「グギャアアアア!!」
「フ、フミさまあああああ!!」
放たれた衝撃が周囲の構成員たちを吹き飛ばす! 住宅の屋根がはがれ、ビルが倒壊し、大地が引き裂かれる。これがトランセックスの真骨頂!
「……あとは貴様だけだ。伊藤 文」
「クッ……!」
あれほどの衝撃の中、伊藤 文だけが無傷でその場に残っていた。それはトランセックスの権能『絶対正義』によるものである。
『絶対正義』は制裁対象を特殊なバリアで包み一切のダメージを与えなくすることが可能である。勘違いしてはならない、それは決して慈悲ゆえではないのだ。
「さぁ、構成員は全て倒れた。貴様も元男であるならば、漢らしく己の身一つで俺を打ち負かして見せろ」
彼はTS者を許さない。彼は絶対悪の存在に絶望を与えるべく、あえて己の身一つしかない状況を作り出し制裁を与えるのだ。
「うっ……うぅ……っ! もう、許してよぉ……! 怖いよぉ……!!」
なんと! あろうことか伊藤 文はここまできても慈悲を請おうと必死であった!
女子らしく女の子座りを見せつけ、流れ出る涙を両手で押しとどめようとするその姿は普通の男性であれば心を射抜かれたであろう。
しかし彼女の前に立つ男は秩序と規律を愛する男! 偽物の涙に情を寄せるような温い精神は持っていない。
「だあああああまらっっっしゃい!!!! 貴様は一体どれほどの男をその涙で陥れてきた!! 罪を数えるまでもねぇ……、俺がまとめて断罪してやる!!」
「……どうして」
「ヌッ」
座り込んでいた伊藤 文が立ち上がる。あれは嘘だと言わんばかりに涙は引いており、その目に浮かぶのは憎悪と侮蔑であった。
「どぉぉおおおおおおおして俺の邪魔をするんだよおおおおおおおお!!?? 俺が誰かに迷惑かけたか!? 俺が罪を犯したのか!!??」
開き直って逆切れする文。しかしトランセックスは冷静だ。かつて幾度となくTS者を狩ってきた彼にとって、追い詰められた元男たちの誰しもが文のように発狂するのは日常茶飯事だった。
「男の分際で美少女を語り、男たちを騙す貴様の存在が悪なのだ」
「ハアアアア!!?? 俺はどっからどおおおおみても女だろうがああああ!! そもそもおおお、男どもは勝手に俺に欲情しポコチンおったててるだけだろおおおお!! 俺はなあああんもしちゃいねぇ、全部男どもが勝手に騙されてるだけだろうがあああああ!!!!」
文はゲラゲラと笑った。確かに法律でTSしてはならないと定められているわけではない。TS者が男たちを魅了し惑わせてはいけないなどと言うこともない。彼女の言い分は最もだ。
しかし本当にそれでよいのか?
文が実は元男であったことを知れば、世の中の男性は必ずその疑問に行きつくだろう。
私が好きなのでは男ではない。僕が好きなのは純真無垢な美少女だ。俺が好きなのは中身がオッサンの女の子などではない、と。
「いいや、違うぞ伊藤 文。貴様も元男であるならばわかるはずだ! 男たちは心の中で純粋な女の子を欲していることに。貴様のようなダメリーマンが女になったところで決して彼らを心の底から満足させることはできないと」
「黙れ、黙れ、黙れ!!」
「彼らはみな純粋なのだ。そんな彼らを利用しほくそ笑む貴様は絶対悪なのだ!!」
「黙りやがれええええええ!!」
伊藤 文は髪を逆立てながらトランセックスへと襲い掛かる! その顔は最早美少女の面影はなく、会社疲れのサラリーマンが社会に逆上する表情そのものであった。
「くたばれTS者!! 貴様らの罪は死を持って償え!!」
文の両手がトランセックスの首を絞めんとすると同時、トランセックスの放った正拳突きが文のみぞおちを捕らえる。
「ゲグゥ……ッ」文が言葉にならないうめき声をあげ体制を崩す。すかさず顎にとび膝蹴りを食らった文は空高く打ち上げられた。
「トランセックス最終奥義! 『赤ちゃんボンバー』!!」
トランセックスが両手でハートを形どる。桃色の可愛らしい光線が列をなし、身動きの取れない伊藤 文へと一直線に向かっていく。
「うぐぅ……っ!? な、なんだ、これは!?」
光線が直撃した文は腹部に疼きを感じ始める。
それは女性の喜び。すべての生物の雌が感じる最高の幸福。
『赤ちゃんボンバー』……それは女性となったTS者に女性としての喜びを与える、罪深くも慈悲深い、トランセックス最終奥義である!
「宣告してやろう、貴様の臨月は一分後! 死にゆく貴様に最後にせめてもの慈悲だ。貴様は貴様の赤子と共に死にゆくがいい」
「ひっ……! ま、まさか、にん、しん……!?」
「い、いやだ、孕みたくない!!」 空中でもがき苦しむ文に呼応し暴れまわる彼女の赤子。女性にとって最高の宝物を宿した彼女は、しかし男性として最も味わいたくない瞬間を体感していた。
「いやだ、いやだああああ!! 助けてくれ!! 俺は、子供なんか産みたくないっ!!」
TS者たちは忘れているのだ。女性として生を得た以上、その最もたる役目である子を授かるという行為を。
文の赤子が暴れまわる。膨れ上がったお腹からまもなく新たな生命が誕生しようとしているのだ。
「いやだああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
最後の時まで出産することを拒み続ける文。その願いに応えるように彼女の子宮が風船のごとく膨れ上がる!
文が全身に赤い光を放つ。ガス爆発を彷彿させる音と共に大爆発する四肢。文の体は子宮を中心に四方八方に四散した。
「幸か不幸か、貴様の子供は
また一人、人の世に蔓延る悪であるTS者を葬った正義の使者トランセックス。しかしその背中には哀愁を帯びていた。彼の進む先に見える未来は平和か、はたまた…………。
TSハンター『トランセックス』。彼の闘いはまだまだ続く。その終わりはTS者が滅ぶまで見えることは無いのだ――!