真剣で死ぬまで生きなさい   作:熟女専門美容師

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本作におけるFateキャラクターは、Fate本編のしがらみとはまったくもって関係ありません。ほのぼの時空から切り取っております。




第1話

 

僕自身のこれまでの人生が普通ではないと気付かされたのは中学2年生の夏だった。

 

四ノ宮 白それが僕の名前だ。呼びやすいこの名前を僕は結構気に入っていたりする。

さて、何故僕の人生が普通ではないと自覚したかというとだ。それはこの中学2年生の時、僕にとって初めての学友と呼べる存在ができたからに他ならない。

 

彼は言った。

 

「いや、普通遊んでる途中に間違えて光の柱は出現しない」

 

説明しよう。

僕は所謂、フラグ体質らしい。傲慢だと、自意識過剰だと笑ってくれてもいいが、しかしそう捉えなければ説明できないのだから仕方ない。

彼女は幼馴染だ。金色の髪を優美に靡かせ、舞踏会さながらに背筋を伸ばし歩く彼女の姿は酷く美しい。蒼眼の瞳は宝石のようで、より一層端麗な顔立ちを引き立てている。少しばかり実直すぎる話し方も人によってはたまらなく魅力的に映るだろう、そんな女性。

名を、アルトリア・ペンドラゴンという。

 

容姿端麗、眉目秀麗、才色兼備な彼女だが、しかし誰にだって欠点はある。けれど多くの人は彼女の欠点を知る前に彼女に自らの幻想を重ねる。よってフィルター越しに見る彼女はアイドルさながらの偶像としてその本質を捉えることは難しい。

では、その本質を正しく理解し、そして彼女自身が気兼ねなく接することができる人物がいたら。それは結果として彼女本来が持っていた、或いは接していく過程で育まれていった性質がその姿を表す。

それはポンコツだった。それは大喰らいだった。それは暴れん坊将軍だった。そして、アーサー王だった。

 

彼女は生まれ変わりらしい。よって過去のアーサー王は自分であって自分ではない。他人であって他人ではない。しかしその経験や知識を完全には共有もしていない。記憶はない、けれどその記録は頭に存在する。かなり曖昧な彼女の発言に、残念ながら僕では正確に汲み取ることは難しかったが当時の僕はそんなものかと認識していた。

 

さて、ではなぜこのアルトリア・ペンドラゴン。アルが先のような性質を持っているとわかったかだが、それが学友の示した非常識に繋がる。

彼女はアーサー王ではあったが、今代では未だ赤子からの始まり。つまり精神的に幼なかった。ペンドラゴン家の父と母は少しばかりそのオーラに圧倒されたようだが、親は強しというもの。無垢な愛情を注いでいった。しかしそのオーラは彼女を孤独にしたらしい、これでは駄目だと2人が打った策が、友人であり家が隣である僕の父と母に相談することだったそうだ。

結果的に僕はアルと引き合わされ、初めは警戒していた彼女も次第に心を溶かしていった。

 

その途中だ。

 

ここ、秋葉市はあの川神ほどではないにしろ武術が盛んに行われており、強者が集う聖地の1つとして数えられている。その立地のせいか武芸者が己の鍛錬のために空き地を使う風景が多々見られた。

 

これを、アルは見た。見てしまった。

そして当時の僕も武術をカッコいいと感じていたのだ。

 

アルは剣を構えるフリをした。勿論子供のごっこ遊びだ、怪我でもしたら怒られる。僕も拳を構えたが、相手は女の子。本気で当てようなんて思ってなかった。

 

「行きます」

 

そう、あの時は本当に心の底から信じてたんだ。これは遊びであると。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!」

 

光が空を両断した。

 

 

✳︎✳︎✳︎

 

以上が僕が学友に話したエピソードその1である。

勿論ドン引きされたし作り話だと思われたが後日、本人に引き合わせると呆然と納得していた。

そしてなにも僕の幼馴染は彼女だけではない。それはもう両手の指では足りないほどにフラグを建築してきた僕だがそれは僕の意思ではなく世界の意思だと半ば悟っている。きっとこれが厨二病というやつだろういつか治ってくれるさ。

 

そんな僕も、もうすぐ高校に上がる。進学先は川神学園という学舎でこれは父と母の母校らしい。イベントが多くは飽きない校風だったと自慢気に語っていた。実に楽しみなことである。

 

ここで1つ疑問が湧くだろう。

数々のフラグを建ててきた白さんはアルを含める女の子達と同じ学校ではないのか、と。

結論を述べるが答えは否だ。

 

彼女もしくは彼、に僕がいったのはこうだ。互いの好みを理解し合おうと。僕も学友と関わる中で好みができた。普通で、素朴で、守ってあげたくなる、当たり前のことをどこか当たり前にできる子がタイプなのだ、と。

僕たちが求めるタイプは違う。だからこそお互いの関係をより一層深めるために学びに行くべきではないか、と。僕は強者が集う川神学園に、彼女達は普通を学ぶ為進学校に。それぞれが互いの在り方に少しでも理解を深めれる機会が今だと提案した。

 

これが僕たちの結んだ協定だ。難航したがとりあえず受け入れられたことは、僕のこれからにあたってとても重要な決断であったのではと考えている。

 

 

そして現在。

 

なに不自由なく、そして滞りなく一年が過ぎた。僕は川神学園の2-F在籍の一般生徒としてそれはもう常識的生活を謳歌していた。

 

「四ノ宮君、四ノ宮君」

「お、どうしたクマちゃん」

 

実に平和な昼休みの中、巨体と言っても差し支えない体格の良い温和な笑みを浮かべたクラスメイトが手に持った紙袋を持って話しかけてきた。

「いやぁ、実は前に話した川神ちくわが多く手に入ったからお裾分け」

「おおっ! あの伝説のちくわ職人が作った川神ちくわ!!

クマちゃん有り難う!」

「結構たくさん入ってるから帰ったらみんなで食べてね」

 

食についてこのクマちゃんに敵う人は少ない。いわば食のプロフェッショナルなのが目の前の御仁なのだ。全国の美味いものを食べ歩き自らが運営するブログ掲載する活動をしているらしいが、趣味でやっていたそれが今では全国的に有名な美食サイトとして知れ渡ってるのだから凄い。

 

だからこそ今貰ったちくわも美味しいに違いなかった。

 

「おう。 寮のみんなでありがたくいただくよ」

 

ありがたく頂戴して礼を言う。

それ以外は特になにも起こる事なく帰路に着いた。

 

現在僕の下宿先である島津寮は純和風の旅館じみた作りをしてある結構大きな寮だ。現在の寮生は6人。部屋数はまだあるが寮としては学校から遠いため人気が低いのが悩みどころだ。

 

「うーい、ただいまー……誰もいない感じ?」

普段なら電気がつけられている玄関に明かりはなく薄暗い。

そこでふと思い出す。

 

「なるほど金曜集会か」

 

どうやらいつもの集まりで彼ら彼女らは出かけているらしい。ならば普段は使われている中庭を活用させてもらうとしよう。

 

とりあえず着替えるために自室へと戻る。ここ島津寮では一階、二階で男女分けされており僕は一階の一番端。動きやすい格好に着替えて、陽当たりの良い中庭に出る。

 

まずは入念なストレッチから始めて徐々に筋肉をほぐしていく。怪我はしたくないからな。

その後は適度に汗を掻くまで体操。体が活動できる体制になって初めて鍛錬へと繋がるわけだ。

 

僕は複数の格闘技を使い分けていくスタイルの武人だ。所謂、〜流に師事したこともなければ1つの武器や格闘技にこだわったこともない。それにあまり1つのことに集中できるタイプでもないので向いてないということもある。

 

まぁ、独学というわけでもないのだが。

 

一つ一つの動作を確認するように丁寧に動かしていく。ゆっくり、ゆっくりと動かすことは非常に難しく神経を使う。早い動きは雑さと適当さが出てしまうと散々言われたせいか、最近は専らこれを繰り返していた。

 

1人の時間を楽しむように鍛錬に費やする。やはり男として生まれた以上、負けたままではいられない。守られてばかりでは廃るというもの。未だ展望は目視することすらできないが、いつかは届かせてみせる。

 

「麦茶、ここに置いておくぞ」

 

丁度一呼吸入れたいと思っていた時、まさにタイミングよくその声は届いた。いや、タイミングは偶然ではなく必然かもしれないな。

「助かる」

 

短く礼を言って麦茶に手をつける。汗をかいた体に潤いが行き渡るのを感じる中、こちらを見る視線に目を向けた。

 

「水分補給くらい自分で管理しやがれ。熱中症になってもしらねぇぞ」

「はは、悪い悪い」

どうやら彼は僕を心配してくれてるらしい。それが少しむず痒くて笑ってしまった。

「それにしても見たことねぇ動きだったが……我流か?」

「いや、八極拳だよ。クソ野郎に教わったんだ」

「……」

「まぁ、他にも近所の大学生カップルに手ほどきを受けてるし八極拳意外にも色々やってるけど、僕の動きは僕が動きたいように動こうとした結果できた形だから見たことないのも無理はないけどね」

「そうかよ。ま、せいぜい体にはきをつけるこったな。あいつらが帰ると洗面所が混む、はやく風呂でも入ってこい」

「おう。源はどうする?」

「俺は寝る前に入る」

「なら先に貰うよ、麦茶サンキューな」

こうして僕の一日は終わる。朝起きて、ご飯を食べて、学校に行って、鍛錬して、ご飯を食べて、寝る。

それが僕の幸せだったし変わらないと思っていた。けれど、どうやらそれは幻想だったらしい。

 

ここは川神学園。

 

武に魅入られし強者達が集う場所。

 

世界有数の大財閥。九鬼家のクローンプロジェクトによって生み出されたかつての偉人達。

転校生という新たな火種によって川神学園はいまよりも高みを目指すだろう。

 

そして、なにより。

 

「久しぶりだな。 ——赤子」

「会いたくはなかったけどな、ストーカー」

 

こいつには会いたくなかった。





読了、お疲れ様でした。

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四ノ宮 白

モチーフは岸波白野。しかし魔術的素養はなくあくまでも一般家庭生まれの一般人であり、秘められた力とかそゆのは一切ない。ちなみに顔もイケメンではないので気取った話し方をすると何故かキレられる。クラスメイトの女性たちからの好感度はほどほどに低い。

実力は後々、明らかにしていく予定ではあるがこの小説自体主人公最強系ではないのでめちゃくちゃ強くはない。ただ、周りが最強というか頭おかしかったので年齢の割にはかなりできる。とはいえマジ恋世界では年齢の割に頭おかしい人が結構な数いるのでそんなに目立たない。

戦闘タイプは器用貧乏。完全に納豆小町と重なってしまったが少しこちらの方が上位互換。ほぼ我流のあちら側とは違いそれぞれに専門のキチガイがついているこちらの方が完成している。しかし僕の考えた最強の決戦兵器たる物がないため戦えば命はない。

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