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どうもどうも、天羽唱花です。
現在私は自宅にて夕食を作っている真っ最中。ちなみに今日の夕食はカレーライスとポテトサラダ!
もうほとんど出来上がっているカレーを弱火でじっくりと煮込みつつ、壁にかけてある時計へと目を向ける。
時刻はすでに8時を回っており、ほとんどの家庭が夕食を食べ終えている頃のはず。そんな時刻にもかかわらず、私がこうして夕食を温めているのはこの場にいない姉さんのためである。
姉さんは先ほどまで出現したノイズを掃討するために出撃しており、現在は戦闘後のメディカルチェックなどを受けている。特に体内洗浄は入念に行っているので、もうしばらくは帰ってくるのに時間がかかるだろう。
「……姉さん、大丈夫かなぁ」
聖遺物への適合係数が低い姉さんは”
血反吐にまみれながらも手にした力だというのに、手にした後もその命を削りながら戦っている姉さん。もしこのままノイズと戦い続けたとして、将来、姉さんの体は無事なのかという不安が胸に募る。
姉さんは意地っ張りだし、辛くても絶対に顔に出さないからなぁ。はぁ、無茶してなければいいけど……。
「あーあ、私も早く戦えるようにならないかなぁ……」
そう言い、胸元にかけたペンダントへと視線を下ろす。それは未だ訓練でしか装着したことのないシンフォギア。
私的はそろそろ大丈夫だと思うんだけど、弦十郎さんの許可が出ないので出動にはまだ時間がかかりそうだ。まぁ確かに、私のギアは戦闘には向いてないとは思うけどね。
「ただいまー」
すると玄関から姉さんの声が聞こえ、私は鍋の火を止め迎えに行く。
「おかえりー。ご飯出来てるけど、先にお風呂はいる?」
「いや、あっちでシャワー浴びてきたから飯にする」
「わかった、じゃあ準備してくるから先に部屋着に着替えてきてね」
「あーい」
重たい足取りで部屋に向かう姉さんの背中を見送り、私は夕食の仕上げをすべく台所へと向かった。
深夜、時計の針が12時を過ぎてしばらくした頃。私は姉さんの自室へと赴いていた。
木製の扉。そこにかけられた『奏』と書かれたプレート。私はドアノブへと手を伸ばし、慎重に、音を立てずに扉を開ける。
灯りのない暗い部屋。月の光が窓から差し込み、ベッドに横たわる姉さんを優しく照らし出す。
「うぅ……」
横になる姉さん。その表情は険しく、口からは絞り出すような苦しい言葉が漏れ、額には汗がじわりと滲みでている。
やっぱり今日もか……。私は持ってきていた清潔なタオルで汗を拭き取る。
ノイズと戦った日。その夜、姉さんは必ずと言っていいほど
私はあの日のことはショックであまり覚えていないから、姉さんのように魘されたりはしない。でも姉さんは違う。あの日のことを鮮明に覚えていて、だからノイズに会うたび、あの日の記憶が蘇ってしまう。
「とう、さん……かぁさん……」
苦しそうに、悲しそうに言葉が口を出る。その顔も、いつものような凛々しさは影を潜め、不安に怯える少女のそれへと変わる。
「……本当に、意地っ張りなんだから」
何でもかんでも、姉さんが一人で抱え込まなくてもいいのに。辛かったら、軽くなるまで吐き出してもいいのに。
姉さんには翼や弦十郎さん、それに二課のみんながいる。きっと姉さんの苦しみや弱音なんて、あの人たちなら全部受け止めてくれる。
私? いうまでもないでしょ。
そっと、姉さんの手を握る。すると弱々しくも、しっかりと、姉さんはその手を握り返してきた。
こうすると幾分かマシになるらしい。現に姉さんの表情も先ほどまでよりも和らぎ、規則正しい寝息が聞こえてくる。
きっと夢の中では、あの日のように、父さんと母さんに手を引かれ、笑顔で歩く私たちがいるんだろう。いや、もしかしたら、肩を並べて歩いているのかもしれない。
でもそれは、一夜の幻。目を覚ませば消えてしまう、泡沫の夢。
「でも夢の中でくらい、ゆっくりしてもいいよね。父さんと母さん、家族みんなで一緒にいてもいいよね……」
いつも頑張りすぎてるくらいなんだから、夢の中でくらい”夢”を見たっていいだろう。戻らないあの頃に、戻ってもいいだろう。
「……しょうか」
「うん、ここにいるよ。ずっと
わずかに、姉さんの手に力がこもる。
私もそれに応えるように、ほんの少し、強く握り返した。
翌日。
いつものように朝食を準備し、姉さんと一緒に食事をとり、姉さんの身だしなみをチェックし見送りをする。いつもと変わらない、日常の一コマ。
昨夜魘されていた姉さんも、朝にはすっかり元どおり。いつものように寝癖を立て、見事に制服を着崩していた。無論、私の方でちゃんと整えましたとも。
そんな日常を送る私だったが、しかし、今日はいつもと違うことが一つ。それはなんと、今日1日”お休み”をいただいているということ!
なんでかというと、弦十郎さんに「働きすぎだ、休め」と言われたからです。あの人にそう言われたら休むしかないよね、逆らったらどうなるかわかったもんじゃないもん。
まぁ暇をもらったからには有効に活用させてもらいましょうか。
午前中は洗濯と家の掃除をして……午後は久しぶりに街に出かけようかなぁ。あ、もちろん一人で。友達なんて、翼くらいしかいないからね!
そこ、ぼっちとか言わない。
「さて、それじゃあ始めますか!」
そうして私は作業へと取り掛かるのであった。
「ん〜終わった〜!」
時刻は正午を回って1時。少しかかり過ぎてしまったが、洗濯と家の掃除は完了。
もう完ッ璧! ほこりも一つ残らずデストロイしたし、新築同様と言っても過言ではないんじゃないかな?
自画自賛しつつ、綺麗になった部屋を見てほっこり笑顔を浮かべていると
──ピンポーン
唐突にインターホンが鳴る。あれ、今日何か荷物とか届いたりしたっけ?
謎の来訪者に首を傾げつつ、玄関へと向かい扉を開く。
するとそこにいたのは
「やっほ〜唱花ちゃん♪」
笑顔を浮かべ小さく手を振る、グラサンの女性だった。
「あれ、了子さんどうしたんですか?」
「いやね、私も今日お休みなのよ〜。で、弦十郎くんから唱花ちゃんも休みだって聞いて、買い物の誘いに来たってわ・け♪」
そう言い小さく立てた人差し指を左右に振るのは、二課の研究者である
あのシンフォギアを作った大天才である自称”できる女”である。あと私の催眠術の師範。
「ささっ、時間は有限よ? パパッと着替えてレッツラゴー♪」
「わかったんでそんな押さないでください!」
あと服の下に手を伸ばすなぁ! 私はイジる側であって、断じてイジられる側じゃないんだよ!
とまぁ、予想外の来客もあり、私の今日の予定は大幅に変更となったわけである。
そんなこんなで現在私は、車で約30分強の場所にある、とあるアウトレットモールへと足を運んでおります。
「いやー唱花ちゃんとは一度お買い物してみたかったのよねぇ」
「そうなんですか?」
「だって唱花ちゃん、私服あんまり持ってないらしいじゃない?」
まぁそうですね。基本、私はマネージャーとして行動してるんで。クローゼットには替えのスーツが何着かと、家で着る服が何着か。あとたまに出掛けるようで数着、外出用の服があるくらいだ。
あ、でもちゃんと流行には敏感だよ。雑誌とかも買って読んでるし。まぁそれも全部、姉さんの服を調達するためなんだけどね。
「ダメよ、ダメダメだわ唱花ちゃん! そんなあなたを、今日はこの櫻井了子がコーディネートしてあげる」
あ、なんか了子さんが燃えてる。
「さぁ行くわよ、覚悟はいいかしら?」
「あー……まぁお手柔らかに」
覚悟って、どれだけ回るつもりですか了子さん。いや、マネージャーの仕事をしてるから、幾分かお金には余裕があるんですけどね?
でもこうした誰かとのショッピングなんてあんまり行かないから、ちょっと不安があるなぁ。はいそこ、「ぼっち乙」とか言わない。
「今日でここ全部回るわよ〜!」
「え゛っ……」
そうして時が流れること二時間ちょっと。私たちはモール内にあるカフェで一息ついていた。
「やっぱり若い子と回ると楽しいわね〜♪ あっという間に時間が過ぎちゃった」
「おぅふ……」
机に突っ伏しているからわからないが、声を聞く限りでは了子さんはそれは大層ご満悦な笑みを浮かべているんだろう。
それにしてもやばい。了子さんまじやばい。この人との買い物密が過ぎる。
了子さん、店内をざっと見回っただけで私に合った服を選別するから服を選ぶ時間なんて五分もあれば事足りる。そしてそこから着せ替え人形よろしくな、私のファッションショーが始まるのである。
脱いでは着て評価をもらい、また脱いでは着て評価をする。そうやって吟味に割く時間は大体10分。その間私はずっと着替えとお披露目のサイクルを無我の境地で続けるだけ。
結果的に回った店舗は八店舗。時間にして二時間と少ししか経っていないにもかかわらず、私の体力は底をつきそうになっている。
まぁそのおかげで収穫はそれなりにあったけど……あと半年は来なくてもいいかな。
「やっぱり素材がいいと服の選び甲斐があるわね〜」
「さいですか……」
私の容姿は姉さんのようなかっこいいでもなく、翼のような綺麗でもない。どちらかといえば”可愛い系”だ。自分で言うのもなんだけど。
肩より少し長い茶髪をポニーテールにするのが私スタイル。まぁそのままおろしててもいいんだけど、姉さんと翼に被らないようにしたらここに落ち着いたわけですよ。
「にしても勿体ないわね〜。普通に女子高生として生活してれば引く手数多なのに」
「別に彼氏とかには興味ないんで。姉さんと翼の夢を支えられればそれでいいんですよ」
「もう、うら若き乙女がそんなこと言うもんじゃないわよ? 命短し恋せよ乙女ってね、恋心を知ることも大切よ?」
恋、恋ね……。
「私には愛しのマイエンジェル翼がいるので間に合ってます」
「あら、もしかしてそっち側? いいわよ、私そういうのも大好きよ?」
了子さんが言うと割と本気に聞こえるから怖いよなぁ……。
「恋なんて人によって形が変わるものよ。異性同士、なんてのは種を繁栄させるために植え付けられた、一種の固定観念にすぎないわ。大切なのは、自分の心に正直でいることよ」
「なんか妙に説得力がありますね」
「私はできる女こと櫻井了子よ? 恋の十や百なんて経験してて当たり前じゃない」
「…………それってつまりびっt──アイタァ⁉︎」
グー⁉︎ うら若き乙女の頭をグー⁉︎
思わず顔を上げると、そこにはお手本のような笑顔を浮かべた了子さんの顔が。
「び……なにかしら、唱花ちゃん?」
「……びじんはすごいですねー」
「はい、よくできました♪」
うん、私これから了子さんには逆らわない。
「さて、そろそろ休憩も終わりにしていきましょうか」
「え、まだ続くんですか……?」
「あったりまえじゃない! むしろここからが本番よ?」
あれが本気でなかったのなら、私はいったいこの先どうなってしまうのだろうか。その答えは、神のみぞ知る……なんちゃって。
そして会計を済ませ、私たちは喫茶店を後にする。そして次なる目的地へと向けて足を進めようとした、まさにその時
「──ノイズだぁああああッ!」
モール内に、私たちの平穏の終わりを告げる声が響き渡った。
いよいよ次回はオリ主がシンフォギアを初披露⁉︎
お楽しみに!